相続人代表者指定届とは?出さなかったらどうなる?記入例や申請方法を解説

この記事をご覧のみなさんは、相続人代表者指定届という書類が市区町村役場から届いて、このようにお悩みではないでしょうか。
「相続人代表者指定届って何?出さなかったらどうなるの?」
相続人代表者指定届とは、納税義務者の相続が発生し、相続人が2人以上いる場合に、税金の納税通知書等を受け取る相続人を指定する書類のことです。
相続人代表者指定届を提出しないと、相続の状況を把握していない市区町村役場が納税通知書等の送付先を決めるため、余計な手間がかかることも考えられます。
この記事で、相続人代表者指定届の書き方や申請方法はもちろん、相続人代表者の決め方や注意点について解説しますので、速やかに提出しましょう。
この記事の目次 [表示]
1.相続人代表者指定届とは
相続人代表者指定届とは、被相続人(納税義務者)が亡くなり、その法定相続人が2人以上いる場合に、税金の納税通知書等を受け取る法定相続人を指定する書類のことです(地方税法第9条の2)。
自治体によっては、「固定資産現所有者申告書(東京都)」や「相続人代表者届出書(大阪市)」、「土地又は家屋を現に所有している者の申告書(横浜市)」と呼ばれることもあります。
引用:さいたま市「相続人代表者指定届」
相続人代表者指定届は、被相続人が所有していた不動産の新たな所有者が決まるまでの間(相続登記が完了するまでの間)、固定資産税・都市計画税の納税通知書の送付先を指定するための書類としている自治体が多いです。
ただし、住民税(市民税・県民税・森林環境税)や軽自動車税(種別割)の共通様式としたり、未払い年金等の還付の受取人を指定したりする自治体もあります。
通知を受けた税目の他に指定する税目がある場合や、税目によって異なる相続人代表者を指定する場合は、必ず市区町村役場に相談をしましょう。
1-1.相続人代表者指定届の役割
相続人代表者指定届の役割は、本来であれば納税義務者であった被相続人が納めるべき、以下のような税金の納税通知書等の送付先を明白にすることです。
| 税目 | 概要 |
|---|---|
| 固定資産税 | 1月1日時点の不動産の所有者が納める税金 |
| 住民税 | 1月1日時点で市町村に住所がある人が納める税金 |
| 軽自動車税(種別割) | 4月1日時点の軽自動車等の所有者が納める税金 |
例えば、固定資産税の納税通知書は、その年の1月1日時点で登記簿上の所有権者となっている人に対して、毎年4月~5月頃に送付されます。
しかし、基準日である1月1日よりも後に不動産の所有者の相続が発生し、法定相続人が2人以上いる場合は、市区町村役場としては「誰に固定資産税の納税通知書を送付すれば良いのか」が分かりません。

法定相続人が相続人代表者指定届を市区町村役場に提出することで、納税通知書の受領がスムーズになります。
1-2.相続人代表者が単独で納税義務を負う訳ではない
相続人代表者になったからといって、単独で納税義務を継承する訳ではありません。不動産や軽自動車等の名義人になる訳でもありません。
相続財産である不動産や軽自動車等は、新たな所有者が決まるまで、法定相続人全員の共有財産として扱われます。
そのため、これらの相続財産に係る税金ついても、法定相続人全員で連帯して納税義務を引継ぎます(相続放棄した人を除く)。

各法定相続人の税金の負担額については、法定相続分もしくは指定相続分と定められています(地方税法第9条2項)。
相続開始後の固定資産税について、詳しくは「不動産相続時に固定資産税は誰が払う?納税額の確認方法も解説」をご覧ください。
1-3.相続人代表者指定届を出さなかったらどうなる?
相続人代表者指定届の提出は義務ではありませんので、出さなかったからといってペナルティや罰則などはありません。
各種税金の納税通知書等は、市区町村役場が決めた法定相続人に送付されることとなります(地方税法第9条の2第2項)。
法定相続人同士の関係性が良く、相続手続きなどに協力的であれば問題はありません。
しかし、関係性が悪い場合や疎遠であり、納税通知書が届いた事実を共有されず、期限までに税金が納められない場合は、ペナルティが課せられるリスクもあります(固定資産税を滞納したら延滞金がかかります)。
相続手続きをスムーズにするためにも、速やかに相続人代表者指定届を提出されることをおすすめします。
2.相続人代表者指定届を提出すべき3つのケース
相続人代表者指定届を提出すべきなのは、法定相続人が2人以上いて、なおかつ以下に該当するケースです。
法定相続人が1人のみの場合、必然的にその人に固定資産税の納税通知書が送付されますので、相続人代表者指定届の提出は不要です。
法定相続人について、詳しくは「法定相続人とは?【図解あり】範囲・順位・相続割合まで解説」をご覧ください。
2-1.基準日から納税通知書等が送付されるまでの間に相続が開始した場合
相続人代表者指定届を提出すべきなのは、基準日から納税通知書等が送付されるまでの間に、相続が開始した場合です。
| 税目 | 基準日 | 納税通知書等の送付 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 1月1日 | 4~5月頃 |
| 住民税 | 1月1日 | 5~6月頃 |
| 軽自動車税(種別割) | 4月1日 | 5月初旬 |
例えば、固定資産税は基準日である1月1日時点で、法務局に登記されている所有者に対して課税される税金で、4月~5月に納税通知書が送付されます。
そのため、1~4月までに相続が開始した場合は、固定資産税の納税通知書の送付先が被相続人のままになっています。
まだ固定資産税の納税通知書が届いていないのであれば、速やかに相続人代表者指定届を提出しましょう。
2-2.次の基準日までに相続財産の名義変更が完了していない場合
相続人代表者指定届を提出すべきなのは、次の基準日までに相続財産の名義変更が完了していない場合です。
先述した通り、固定資産税の納税通知書は、1月1日時点の不動産の所有者に対して送付されます。
仮に相続が開始した年中に遺産分割協議が成立し、同年内に相続登記(不動産の名義変更)も完了していれば、相続開始の翌年の固定資産税の納税通知書は、新たな所有者に対して送付されます。
しかし、相続が開始した年の12月末までに相続登記が完了していない場合は、相続開始の翌年の固定資産税の納税通知書は、被相続人名義のままとなってしまいます。速やかに相続人代表者指定届を提出しましょう。
2-3.遺産相続トラブルに発展している場合
相続人代表者指定届を提出すべきなのは、遺産相続トラブルに発展している場合です。
相続トラブルが発生した場合、遺産分割協議がまとまらず、誰が不動産や軽自動車等を取得するのかが決まらず、各種名義変更も完了しません。
しかし、相続財産に係る税金の納税義務がなくなるわけではなく、新たな所有者が決まるまでは、法定相続人全員に納税義務があります。
遺産相続トラブルに発展している場合、解決するまでに長い時間がかかることも想定されます。
相続人代表者指定届を提出しておけば、その人に納税通知書が送付されるため、納税通知の見落としや、相続人間の連絡不足による未納を防ぐことができます。
3.相続人代表者指定届の書き方や申請方法【記入例あり】
相続人代表者指定届の様式は市区町村によって異なりますが、書き方はほぼ同じです。
以下は東京都中野区の相続人代表者指定届の記入例ですので、参考にしてください。
引用:中野区「相続人代表者指定(変更)届 記入例」
相続人代表者指定届には、基本的に以下の情報を記載することとなります。
- 相続人代表者の情報(氏名・住所・生年月日・性別など)
- 被相続人の情報(氏名・住所・生年月日・死亡年月日・性別など)
- 法定相続人全員の情報(氏名・続柄・住所など)
自治体によりますが、法定相続人全員の情報を記入する欄に、相続分の記載を求められることもあります。
この場合の相続分は、法定相続分ではなく「実際の分割割合」のことを指し、相続分が未確定の場合は記入不要とされることが多いです。
相続人代表者指定届の書き方が分からない場合は、各自治体のHPを確認したり、市区町村役場の窓口で相談したりすると良いでしょう。
3-1.相続人代表者指定届の申請方法
相続人代表者指定届の申請方法は、以下の3種類あります。
- 窓口で申請する
- 郵送で申請する
- 電子申請(オンライン申請)
市区町村役場から送付された相続人代表者指定届に記入して、①窓口申請や②郵送申請することが一般的です。
自治体によっては、③電子申請が可能な場合もありますので、市区町村役場の公式ホームページを確認されることをおすすめします。
4.相続人代表者指定届の提出でよくある質問Q&A
相続人代表者指定届の提出において、よくある質問をまとめましたので参考にしてください。
4-1.相続人代表者はどうやって決めるの?
相続人代表者は、法定相続人全員で話し合った上で、原則として法定相続人の中から決めることとなります。
具体的には、以下のポイントを総合的に判断して決めるのが一般的です。
- 不動産などを取得する予定の人
- 役所などで相続手続きを行っている人
- 法定相続分が最も多い人(配偶者など)
詳しくは「代表相続人とは?役割・選定基準・選び方のポイント・注意点も解説」をご覧ください。
4-2.相続人代表者指定届はいつ届く?誰に届くの?
相続人代表者指定届がいつ届くのかは、自治体の事務処理の進捗状況によって異なります。
誰に送付されるのかは、相続順位・法定相続分・相続人の住所などを基に判断されます。
市区町村役場から相続人代表者指定届が届いていない場合は、自治体のホームページからダウンロードされることをおすすめします。
4-3.相続人代表者指定届はいつまでに提出すべき?
相続人代表者指定届に提出期限はありませんが、速やかに提出をしましょう。
相続が発生した後は、健康保険や年金に係る相続手続きを行いますので、この段階で市区町村役場に相談されると良いでしょう。
なお、自治体によりますが、市区町村役場から送付された相続人代表者指定届には、提出期限が記載されていることがあります。
4-4.相続人代表者指定届に添付する必要書類は?
相続人代表者指定届に添付する必要書類は、自治体や申請方法によって異なります。
窓口申請をする場合は、相続人代表者の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・健康保険証等)の提示を求められることが多いです。
この他、被相続人や相続人代表者の居住地や世帯状況によって、相続関係が分かる資料の提出を求められる事もあります。
例えば、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や法定相続情報一覧図、遺産分割協議書、法的に有効な遺言書などです。
また、届出者が相続人代表者でないときは、委任状(任意様式)の提出を求められることもあります。
5.相続人代表者指定届の提出に係る注意点
相続人代表者指定届を提出する際の注意点についてまとめましたので、参考にしてください。
5-1.税金の納付先の市区町村が複数ある場合
税金の納付先の市区町村が複数ある場合は、相続人代表者指定届を、それぞれの市区町村に提出しなければなりません。
なお、各種税金の納付先は、以下の通り定められています。
| 税目 | 管轄 |
|---|---|
| 固定資産税 | 不動産が所在する市区町村 |
| 住民税 | 1月1日時点で被相続人の居住地であった市区町村 |
| 軽自動車税 | 4月1日時点で使用の本拠の位置である市区町村 |
例えば、被相続人の居住地がA県で、B県とC県に土地を所有していた場合、A県・B県・C県にそれぞれ相続人代表者指定届を提出しなければなりません。
各自治体によって、相続人代表者指定届の様式も異なりますので、事前に必ず確認をしてから提出をしましょう。
5-2.相続放棄した法定相続人がいる場合
相続放棄した人は、はじめから法定相続人ではなかったとして取扱われるため、被相続人の納税義務は継承しません。
そのため、相続放棄をした人を除いた上で、相続人代表者を決めることとなります。
相続放棄をしたために相続人代表者指定届を提出していないものの、市区町村役場から相続人代表者に選ばれることもあります。
この場合は、家庭裁判所が発行した相続放棄申述受理通知書の写し、もしくは相続放棄申述受理証明書の提出が必要になります。

相続放棄をした人が複数人いる場合は、全員分の相続放棄申述受理通知書などの提出が必要ですので、必ず市区町村役場の地方税担当課に相談をしましょう。
相続放棄申述受理証明書について、詳しくは「相続放棄申述受理証明書とは?取得方法や申請書の書き方【ダウンロードリンク付き】」をご覧ください。
6.被相続人の遺産を相続する人が決まったら名義変更を
被相続人名義の遺産を相続する人が決まったら、速やかに以下のような名義変更を行いましょう。
- 不動産…法務局で相続登記
- 軽自動車等…軽自動車検査協会で名義変更
令和6年4月1日から、相続登記の義務化が施行されました。
施行日以前に相続等で取得した不動産も、相続登記の義務化の対象となりますのでご注意ください。
6-1.相続等で取得した不動産は「相続登記」を
相続等で取得した土地や建物などの不動産は、相続登記(正式名称:相続による所有権の移転登記)をしましょう。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の名義を相続等で取得した人に変更する手続きのことです。

令和6年4月1日以降に相続等で不動産を取得した人は、その不動産の所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなくてはなりません(不動産登記法第76条の2)。
なお、令和6年3月31日までに相続等で不動産を取得した人は、令和9年3月31日までに相続登記をしなくてはなりません。
相続登記の義務化に伴い、期限までに申請手続きをしなければ罰則が課せられる可能性があります。また、相続不動産の売却などもできません。
相続等で不動産を取得した人は、早い段階で相続登記を済ませましょう。
詳しくは「相続登記しないとどうなる?放置する8つのデメリットと申請手続きの流れ」をご覧ください。
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6-2.相続等で取得した軽自動車等は「名義変更」を
相続等で軽自動車を取得した人は、所有が決まった日から15日以内に、名義変更(移転登録)の申請をしなくてはなりません(道路運送車両法第13条)。
軽自動車の名義変更をしないと、売却することができません。

なお、軽自動車の名義変更を行うのは、新しい使用者が軽自動車を使う場所を管轄する、軽自動車検査協会の事務所・支所・分室です。
詳しくは「自動車の所有者が死亡した際の手続き│名義変更の期限・相続税も解説」をご覧ください。
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7.まとめ
相続人代表者指定届が届いた方のために、基礎知識や書き方、申請方法についてご紹介しました。
相続人代表者指定届の提出は義務ではありませんが、税金の納付が遅れればペナルティを課せられるリスクもあります。
なるべく早い段階で相続人代表者を決め、必要な場合は複数の市区町村役場に、相続人代表者指定届を提出しましょう。
税務について不明点がある方は、必ず相続に強い税理士にご相談ください。
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