相続の手続きに税理士は必要?自分でできるケースと税理士の選び方を解説

相続税申告は必ず税理士に依頼しなければならないわけではなく、自分で手続きをおこなうことも可能です。しかし、財産の内容や相続人の状況によっては、専門家に依頼したほうが結果的に安心かつ有利になるケースも少なくありません。
本記事では、税理士が必要なケース・不要なケースの判断基準と、後悔しない税理士の選び方についてわかりやすく解説します。
この記事の目次 [表示]
1.相続税申告は自分でできる?それとも税理士に依頼するべき?
相続の手続きのなかで、相続税申告の代理をおこなえるのは税理士や税理士法人のみです。相続の手続きのどのような点に不安があるのかによって、依頼すべき専門家は異なります。誰に手続きを頼めばよいのかについては「相続手続きは誰に頼む?状況別の依頼先と費用相場、専門家の選び方を解説」を参考にしてください。
相続税申告は原則自分でおこなうことができますが、場合によっては税理士に依頼したほうがスムーズに手続きが進むことも多くあります。申告書の根拠となる資料の準備や財産評価額の計算などが複雑な場合は、自分で申告をおこなうのに手間がかかることがあるからです。
また、申告内容に誤りがあると、本来より多く相続税を納めてしまったり修正申告が必要になったりするなど、デメリットやリスクがあります。
一方、税理士に依頼すると手間や時間がかかることはなくなりますが、所定の手数料が必要です。
このように、自力で申告した場合の手間・時間・リスクと税理士への手数料のバランスを考慮し、税理士に依頼すべきか判断するとよいでしょう。
2.そもそも相続税の申告は必要?
相続が発生したらすべてのケースで相続税の申告が必要というわけではありません。相続財産の内容や金額によっては、申告が不要となることもあります。
国税庁の統計では、相続税の課税対象となる割合は10%前後にとどまっています。つまり、9割の相続に関しては相続税の申告が不要です。
引用:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
このため、まずは相続税の申告が必要なのかどうかを確認することが重要です。
2-1.相続税申告の要不要は「基礎控除」で決まる
相続税には基礎控除があり、遺産総額が基礎控除を超えなければ相続税はかからず申告も不要です。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算できます。法定相続人の人数が多いほど基礎控除額も高額になるので、まずは相続人が何人いるのか、また誰が相続人なのかを確定することが大切です。
相続人が誰なのかについては民法で決まっています。詳しくは「【図解付き】法定相続人の範囲とは?順位と割合、相続税の計算方法も解説」をご確認ください。
2-2.特例や特別控除を利用して非課税になる場合も申告は必要
相続税には基礎控除のほかにも特例や特別控除があり、条件を満たせば利用できます。特例や特別控除を利用することで、相続税額を大幅に軽減できたりゼロになったりすることがあります。
特例や控除を適用して税額がゼロになる場合でも、適用を受けるためには申告が必要です。特例や特別控除は自動的に適用できるわけではなく、申告しなければ利用できない場合もあるからです。
代表的な特別控除には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などがあります。それぞれの適用要件や計算方法は次の記事でご確認ください。
参考:【相続税の配偶者控除】1.6億円が無税に!条件・注意点・計算方法を解説
参考:小規模宅地等の特例を完全解説!対象条件や手続きを知って相続税を節税しよう
3.税理士が不要な(自分で申告できる)可能性が高い3つのケース
自分で相続税申告ができる可能性が高いケースを3つご紹介します。この3つのケースでは税理士に依頼する必要がないことがほとんどです。
3-1.遺産が預貯金のみなどシンプルで、評価が簡単な場合
遺産が現金や預貯金など評価が簡単な財産のみだと、相続税申告はシンプルです。計算が苦手でなければ、自分で申告ができるでしょう。
3-2.相続人同士の話し合いが円満に進んでいる場合
相続人同士がコミュニケーションをしっかり取れており、遺産分割協議が円満に進んでいる場合は申告が簡単になります。申告の根拠になる資料の準備や相続税の計算も、相続人同士で手分けして進められるので労力を分散できるでしょう。
3-3.申告手続きの知識があり、時間に余裕がある場合
相続税申告についての知識があり、申告準備に時間をかけられる場合、自力での申告が可能でしょう。相続税申告への知識が最低限のものであっても、勉強しながら進められる時間的な余裕があれば、税理士に頼らず申告することも苦ではないかもしれません。
4.自分で相続税申告をした場合のリスクとは?
先述のように、相続税申告は自分でおこなうことが可能です。しかし、相続税申告を自分でおこなう場合、以下の2つのリスクが想定されます。
- 計算ミスや申告ミスが起きやすい
- 節税につながる特例・控除の制度を適用できない可能性がある
上記のようなリスクによって、単に税金面で損をすることがあるだけではなく、過少申告の場合は追徴課税が必要になることもあります。万が一追徴課税が必要になった場合は、延滞税や利子税なども発生します。
追徴課税は相続税額が高いほど高額になりうるため、「相続税の追徴課税はいくら?計算シミュレーション・対応方法を解説」を参考に金額の算出方法などを把握しておくとよいでしょう。
5.税理士への依頼をおすすめする5つのケース
自分で申告するよりも税理士への相続税申告の代行を依頼したほうがよいことも、もちろんあります。主なケースを5つご紹介します。
5-1.遺産総額が大きく、財産の種類が複雑な場合
遺産総額が大きい、もしくは財産の種類が複雑な場合は税理士に依頼するのがおすすめです。
目安として遺産総額が1億円以上の場合は税理士に相続税申告を代行してもらうのがよいでしょう。
遺産総額が大きい場合は、計算ミス・申告ミスがあると申告額と実際との金額に大きな差が出てしまう可能性があります。この場合、追徴課税が必要になったときに、支払いが高額になりがちです。
また、財産の種類が幅広く複雑な場合も、計算ミスが起こりやすいので税理士に依頼することをおすすめします。
5-2.土地や非上場株式など評価が難しい財産がある場合
遺産のなかに評価が難しい財産がある場合、自分で評価せず税理士に依頼したほうが安心です。
評価が難しい財産とは、具体的には土地(とくに、旗竿地や不整形地、がけ地など)・非上場株式・賃貸不動産などが挙げられます。
土地や非上場株式など評価が難しい財産も、知識があり計算が得意な人は評価することが可能です。評価方法が気になる場合は、以下の記事を参考にしてください。
参考:【奥行価格補正率とは】土地評価額の計算方法等をプロが解説
参考:非上場株式(取引相場のない株式)の相続税評価のすべて
5-3.生前贈与や名義預金がある場合
故人から生前贈与を受けていた相続人がいた場合や名義預金がある場合は、相続税申告の計算が複雑になるため、税理士に依頼したほうがよいでしょう。
亡くなる数年前に故人が生前贈与をおこなっていた場合は、贈与した金額を相続財産に含めて相続税の計算をしなければなりません。これを「生前贈与加算」といいますが、令和6年(2024年)の税制改正により、加算期間は段階的に3年から7年へ延長されています。
2026年時点では税制改正の経過措置があり、相続発生の時期によって生前贈与加算の期間が変わってくるので注意が必要です。
詳しくは「生前贈与とは?相続との違い・メリット・デメリット・注意点・非課税枠を解説」をご確認ください。
名義預金とは名義は家族になっているが、実際には被相続人の財産とみなされる預金のことです。名義預金があると税務調査が入りやすくなるため、税理士に税務調査も対応してもらえると安心です。名義預金に関しては「名義預金とは│条件や相続税が課税されない方法、時効も解説」を参考にしてください。
5-4.相続人同士の関係が複雑、または揉めている場合
法定相続人が複数おり遺言書がない場合、相続人全員の合意による遺産分割協議書を作成する必要があります。相続人の関係が複雑で連絡の取れない相続人がいたり揉めていたりする場合は、遺産分割協議書の作成が困難になるでしょう。
相続税申告には期限があり、相続を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納税を済ませる必要があります。相続人全員の合意が取れなくても期限内に相続税申告を済ませなければならないため、仮に法定相続分の遺産を取得したものとして申告する「未分割申告」という、特別な申告方法をおこなう必要があります。
遺産分割協議がまとまらない場合の対策や手続きについては「相続で揉めたら裁判?実際の事例・費用・訴訟までの流れを解説」を参考にしてください。
5-5.手続きの手間を省き、正確な申告をしたい場合
相続税申告の手続きは煩雑です。準備をしなければならない書類が多く、収集するだけでも手間がかかります。相続税申告に必要な書類は以下のとおりです。
| 必要書類名 | 取得場所 | 手数料 | 詳細/注意点 |
|---|---|---|---|
| 相続人全員の マイナンバー資料 | 自宅 | ― |
|
| 相続人全員の 身元確認書類のコピー | 自宅 | ― |
|
| 亡くなった方の戸籍謄本 (出生~死亡) | 最寄りの役所 | 1通450円 (除籍謄本、改正原戸籍:1通750円) | 一定の場合には、過去に本籍地があった全ての役所で請求する必要あり |
| 相続人全員の 戸籍謄本 | 最寄りの役所 | 1通450円 | ― |
| 亡くなった方の 住民票or戸籍の附表 | 住民票 戸籍の附表 | 1通300円前後 | 基本的にはどちらでもOK (一定の場合には戸籍の附表) |
| 相続人全員の 住民票or戸籍の附表 | 住民票 戸籍の附表 | 1通300円前後 | 基本的にはどちらでもOK (一定の場合には戸籍の附表) |
| 法定相続情報一覧図 | 法務局 | 無料 | 必須ではないがあると便利 |
| 遺産分割協議書 (ある場合は遺言書) | 相続人が作成 | ― | 自筆証書遺言がある場合は検認が必要 |
| 印鑑証明書 (相続人全員分) | 相続人の住所地の役所等 | 1通300円前後 | 遺産分割協議書を作成する必要がない場合は不要 |
このほか、相続財産の内容によって、預貯金通帳の残高証明や不動産の登記簿など、さまざまな書類が必要となります。
このため、相続税申告の準備ができるほどの時間的な余裕がない場合は税理士に任せるのがおすすめです。相続税申告のプロである税理士に依頼すれば、正確な申告ができるでしょう。
6.税理士に依頼する5つのメリット
相続税申告を税理士に依頼するメリットは主に5つあります。それぞれのメリットを詳しく解説します。
6-1.メリット1:特例や特別控除を利用して節税が期待できる
相続税には基礎控除のほかに特例や特別控除があり、適用できれば節税が期待できます。しかし、専門家でなければ、そもそも使える特例や特別控除があるのかどうかもわからないということがあるでしょう。
相続に関する専門知識を持っている税理士に相談することで、さまざまな角度から節税につながるアドバイスをもらえる可能性があります。また、特例や特別控除を適用するには要件を満たしたり必要な書類を準備したりする必要があるため、専門家に任せると手続きの手間を軽減できるでしょう。
参考:相続税の控除・特例とは【一覧表付】要件・控除額を税理士が解説
6-2.メリット2:複雑な申告手続きをミスなくスムーズに進められる
相続財産が現金のみであればそこまで難しくはありませんが、不動産などの資産が多い場合、相続税の計算も少し複雑になります。資産が多ければ金額も大きくなるため間違いが起こりやすい傾向にあります。
相続税に強い税理士に依頼することで、複雑な申告手続きもミスなくスムーズに進められるでしょう。
6-3.メリット3:税務調査の対象になる可能性を低減できる
相続税の申告書には税理士の署名を記載する欄があります。この欄に署名・押印があるということは、税理士が申告に関与していることを示すものであり、税務署に対して申告内容の信頼性を一定程度示す効果が期待できます。
これに加え、相続税申告の際に「書面添付制度」を利用するとさらに安心です。書面添付制度とは、正確に作成した申告書であることを税理士がお墨付きを与えるものです。税理士に相続税申告を依頼した場合のみ利用できる制度なので、詳しくは「相続税申告の書面添付とは│メリットとリスクをプロが解説」をご参照ください。
6-4.メリット4:二次相続まで見据えた最適な遺産分割を提案してもらえる
「二次相続」とは、配偶者が亡くなったあとに起こる相続のことです。二次相続では基礎控除額が少なくなるだけではなく、節税効果の高い配偶者控除も使えなくなるため、相続税の負担が大きくなることが懸念されます。
二次相続は避けられない課題なので、相続財産が多い場合は一次相続のときから税理士にサポートしてもらえると安心です。二次相続と一次相続の違いや相続税対策は「二次相続とは?【税理士監修】一次相続との違い・相続税対策のポイントを解説」で詳しく解説しています。
6-5.メリット5:他の専門家(弁護士・司法書士)との連携も任せられる
相続の手続きでは、税理士だけではなくほかの専門家との連携が必要なケースもあります。たとえば、相続人同士が揉めているケースでは弁護士の関与が必要です。不動産を相続した場合の相続登記は、司法書士が専門家となります。
専門家同士の連携が可能な税理士に相続税申告を依頼することで、一気通貫で相続の手続きをおこなえることもメリットといえるでしょう。
7.税理士に依頼するデメリット
先述のように税理士への依頼はメリットが多い一方、デメリットもあります。税理士への依頼を検討する際は、2つのデメリットを把握しておくことをおすすめします。
7-1.デメリット1:税理士報酬(費用)が発生する
税理士に依頼すると手数料として報酬の支払いが必要になります。税理士報酬は遺産総額によって変動することが多く、遺産総額の0.5%~1%が相場です。相続関係が複雑だったり不動産が多かったりする場合は追加費用がかかることもあります。
7-2.デメリット2:税理士とやり取りが必要
自分で申告をする場合は書類の収集や評価額の計算など、すべてを自分のペースで進められます。一方で、税理士に依頼する場合は税理士とのやり取りが必要です。税理士との相性が悪いとやり取りがストレスになることも考えられます。
オンラインで対応できるのかなども確認し、コミュニケーションが取りやすい税理士を選ぶことが大切です。
8.失敗しない!相続に強い税理士選びのポイント
相続税申告の代行を依頼する場合は、相続税に強い税理士を選ぶことが重要です。ここでは、相続に強い税理士を選ぶために確認したいポイントを解説します。
8-1.相続税申告実績を確認する
税理士は税務申告の専門家ではありますが、税の種類は多岐にわたっています。すべての税理士が相続税申告に詳しいわけではないため、相続税申告の実績を確認して経験豊富なのかどうかを判断することが大切です。
実は、税理士試験の相続税法は選択制となっており、選択せずに税理士資格を取得することができます。相続税法を選択して合格した税理士であっても、実務として一度も対応したことがないという税理士もいます。このような経験がない税理士にお願いした場合、求めている成果を確実に得られるとは言い切れません。
相続税の申告を年間で30件以上実施しているかどうかを目安として税理士を選びましょう。
8-2.報酬体系が明確で分かりやすいか
税理士報酬には規定がないため、事務所によって異なります。相続税申告の実績がある税理士に見積をいくつかもらい、比較してみると相場がわかるでしょう。報酬体系が明確でわかりやすい税理士を選ぶと安心です。
ただし、報酬額は低いほうがよいというわけではありません。報酬額があまりにも低い場合は経験が少ない税理士の可能性があります。
8-3.丁寧でコミュニケーションが取りやすいか
相続税申告を依頼するということは、財産について税理士に話をする必要があるということです。このため、コミュニケーションが取りやすい、信頼できる税理士を選ぶことが重要です。
正式な依頼をする前に、可能であれば一度は面談し、担当予定の税理士と話をしてみましょう。営業担当者ではなく、実際の実務を行う担当者と面談することがポイントです。
8-4.二次相続や節税対策まで提案してくれるか
故人が生前に築いた財産を守るためにも、二次相続や節税対策は重要な課題といえます。これらの課題に対して、適切な提案をしてくれる税理士を選ぶことが大切です。
将来的に支払う税額を軽減できれば、報酬を支払ってでも税理士に依頼する意味が増すでしょう。税理士報酬よりも節税できた金額が大きければ、トータルで見たときに得になるからです。
このため、相続税対策も含めた実績がある税理士を選ぶとよいでしょう。
9.納得のいく申告のために、まずは専門家へ相談を
相続税申告は自分で行うことも可能ですが、財産の内容や相続関係によって難易度が大きく異なります。とくに不動産や非上場株式が含まれる場合や、特例を適用できる場合は、税理士に依頼することで正確かつ有利な申告につながる可能性が高まります。
一方で、財産がシンプルで申告内容に不安がない場合は、自力での申告も選択肢となるでしょう。重要なのは、自身の状況に応じて最適な方法を選ぶことです。判断に迷う場合は、早めに相続に強い税理士へ相談し、納得できるように申告を進めましょう。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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