相続税申告は共同提出が一般的!別々に提出するメリット・デメリットを解説
相続人が複数いる場合、1つの申告書を共同で提出する方法が広く利用されています。しかしながら、遺産分割が進まなかったり相続争いに発展してしまったりした場合には、各相続人が別々の税理士に依頼して申告書を提出することもあります。
別々に申告する場合は、記載内容に相違点がみられることが多く、税務調査の対象になる可能性が高いため注意が必要です。
本記事では相続税申告を共同でおこなうメリット・手続きの方法、別々に提出するデメリットやリスクを解説します。これから相続税申告の準備を始める方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.相続税申告は相続人全員での「共同提出」が基本
相続税申告は相続人全員で共同提出するのが一般的です。個別に申告することももちろん可能ですが、共同申告では1つの申告書に相続人全員が記入するだけなので、比較的簡単に手続きをおこなうことができます。
1-1.原則は1つの申告書に全員が連署して提出する
相続人が複数人いる場合、1つの申告書に全員が連署して提出する「共同申告」をするのが一般的です。「相続税法第27条」には以下のように書かれています。
申告書を提出すべきもの又は提出することができるものが二人以上ある場合において、当該申告書の提出先の税務署長が同一であるときは、これらの者は、政令で定めるところにより、当該申告書を共同して提出することができる。
引用:e-Gov法令検索「相続税法 第27条」
「共同で提出できる」というだけで、共同申告が義務づけられているわけではありません。ただし、相続人が複数人いる場合、多くのケースでは実務上共同申告をおこなうことが一般的となっています。
なお、共同提出の場合でも、実務上は相続人全員が連署した申告書を、代表者となる相続人がまとめて税務署へ提出するケースが一般的です。代表者が提出するものの、申告自体は各相続人がおこなったものとなるため、納税義務はそれぞれに生じます。
1-2.共同申告する場合の提出方法(申告期限と提出先、郵送など)
相続税の申告期限は相続を知った日の翌日から10カ月以内となっています。相続申告書の提出先は、故人が亡くなったときの住所を管轄する税務署であり、相続人の住所を管轄する税務署ではありません。

相続税の申告は以下の3つの方法でおこなえます。
- 税務署で直接提出
- 税務署へ郵送(簡易書留など記録が残る方法で送る)
- e-Tax(電子申告)を利用
2.相続税を共同申告する3つのメリット
相続税を共同申告するメリットは3つあります。それぞれのメリットを解説します。
2-1.資料収集や作成にかかる手間を大幅に削減できる
相続税申告を共同でおこなうことで、資料収集や作成にかかる手間を大幅に削減できます。これは申告書・添付書類を一つに取りまとめやすく、資料収集や作成の重複を減らせるためです。
たとえば、相続税の申告では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をはじめ、相続人の戸籍謄本や住民票が必要になります。そのほか、預貯金・有価証券の残高証明や不動産登記簿謄本といった財産に関する書類も必要です。
個別に申告をする場合は、申告書がそれぞれ必要で、添付する資料も別々に準備することになります。添付資料を取得する手間や費用も個別に発生します。
2-2.依頼する税理士を一本化でき、報酬費用を安く抑えられる
税理士に相続税申告の代行を依頼する場合、共同申告なら相続人が複数人いたとしても1回分の申告報酬で対応してもらえるのが一般的です。ただし、相続人の人数が多い場合は別途費用がかかることもあるため、事前に確認しましょう。
個別に申告をおこなう場合はそれぞれの申告分に対して報酬費用が発生するため、税理士報酬の総額は高額になります。
2-3.申告内容の整合性が取れ、税務調査のリスクが下がる
共同申告では申告内容に統一性があるので、税務調査のリスクが低くなります。申告書の根拠となる相続財産や添付書類もすべて一致しているからです。また、もし税務調査が入ったときでも対応しやすいというメリットがあります。
税務調査は任意調査として実施されることが多く、原則として求めに応じて説明・資料提示をおこないます。正当な理由がないのに対応しないでいると、調査が長引いたり不利になったりする可能性があるため注意しましょう。
税務調査は忘れた頃にやってくることが多いので、気になる方はぜひ次の記事をご一読ください。
参考:税務調査って何されるの?相続税の税務調査の概要と事前準備
3.相続税を「別々に申告(単独申告)」するデメリットとリスク
相続税申告を共同でおこなったほうがよいのは、相続税の申告を別々におこなうことにデメリットとリスクがあるからです。どのようなデメリット・リスクがあるのかを解説します。
3-1.遺産総額の全体像がつかめず、計算ミスや申告漏れの原因になる
単独申告では財産の調査も個別におこなうことになります。相続人同士で情報を共有していないと、相続財産のすべてを洗い出すのが難しいため、申告漏れや計算ミスが起きる可能性が高くなるでしょう。
実際の相続財産のほうが申告よりも高額だった場合は追徴課税のリスクもあります。
令和6事務年度において追徴課税の対象となったのは7,826件で、1件あたりの追徴課税額は平均867万円でした。
参考:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
このように、相続税の追徴課税は高額になりがちです。追徴課税を求められたときにどのような対応をしたらよいのかについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
参考:相続税の追徴課税はいくら?計算シミュレーション・対応方法を解説
3-2.「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」が適用できない可能性がある
遺産分割協議ができずに相続税を別々に申告する場合、「未分割申告」をおこなうことになります。未分割申告とは、仮に法定相続分で相続したことにして申告をおこなうことです。
そして、正式に相続財産の分割を終えたあとに実際の分割財産に基づいて修正申告、もしくは更正の請求をします。未分割申告よりも実際に納める税額が多い場合におこなうのが修正申告、少ない場合は更正の請求です。
申告・納付期限までに遺産分割が終わっていない場合、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」を適用できません。ただし、遺産分割後の更正の請求などでこれらの特例は適用を受けられることもあります。
相続税の未分割申告については以下の記事で詳しく解説しています。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減のほかにも、未分割申告は遺産分割を終えてからの申告よりも不利な点があるので、ぜひご一読ください。
参考:【相続税の未分割申告】時効・デメリット・書き方などを解説!
3-3.申告内容の不一致から、税務調査の対象になりやすい
個別に申告をすると、それぞれの申告書の内容に矛盾が生じる可能性が高く、税務調査の対象になることもあります。
たとえば、ほかの相続人が相続放棄をしていたのにそれを知らなかった場合、計算の前提となる基礎控除額が変わる可能性があるでしょう。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算するため、法定相続人の人数の影響を受けるからです。
ほかにも、相続財産の内容や遺産総額が申告書ごとに異なっているケースもあります。
税務調査が入ったときも、それぞれの申告書に記載した内容に整合性がないと対応が難しいでしょう。
3-4.別々に申告したからといって「連帯納付義務」からは逃れられない
相続税の「連帯納付義務」とは、相続人が複数いてその中の誰かが相続税の納付をしていなかった場合、ほかの相続人が代わりに納付する義務を負う制度です。相続人のうちの誰かが期限内に相続税の納付をしていなかった場合、税務署から連絡がきて代わりに支払いを求められることがあります。
申告を別々にしており、ほかの相続人が納めるべき税額を知らなかったとしても、連帯納付義務からは逃れることはできません。
自分は期限内に納税を済ませていても、ほかの相続人が相続税を支払っていない場合は催促状が届くことがあります。遅れた分だけ延滞税が発生し、最終的には財産を差し押さえられてしまう可能性もあるので注意しましょう。
参考:相続税の連帯納付義務とは?拒否するとどうなる?期間や金額も解説
4.申告を別々にせざるを得ないケースとは?具体的な理由を紹介
先述のとおり、相続人が複数いるなら共同申告は一般的であり、おすすめの方法です。しかし、あえて単独申告を選ばなければならないケースもあります。ここからは、共同申告できない状況や理由を解説します。
参考:相続税申告は相続人ごと別々に可能!メリット・注意点も解説
4-1.遺産分割協議がまとまらない・相続人同士の仲が悪い
相続人のなかに連絡が取れない人がいて遺産分割協議ができない、相続人同士の仲が悪いなどの理由により共同申告できないケースもあります。連絡の取れない相続人がいる場合や遺産分割協議で揉めている場合は、先述のとおり「未分割申告」をして法定相続分で遺産分割したものとして仮申告をおこないましょう。
遺産分割協議書の作成までは済ませたものの、仕事や生活の都合で手続きを一緒に進められない場合やなるべく顔を合わせたくない場合も、それぞれが遺産分割協議書をもとに単独申告をおこないます。
4-2.ほかの相続人に知られたくない財産や事情がある
自分だけが故人からもらっていた生前贈与や生命保険金などがある場合、ほかの相続人に知られたくないという理由から単独申告を希望する方も多くいます。しかし、ほかの相続人が把握していない生前贈与や保険金の申告には注意が必要です。申告内容に矛盾が出てしまうので、税務調査の対象になりやすいからです。
また、生前贈与があったことを内緒にしていても、申告内容は「申告書等閲覧サービス」などの制度により、一定の要件のもとで確認できる場合があります。つまり、別々に申告したとしても、ほかの相続人が開示請求をすれば生前贈与を隠し通すことはできません。
参考:国税庁「B1-61 贈与税の申告内容の開示請求手続」
反対に、ほかの相続人が生前贈与を受けていたかどうかについて、申告内容の開示請求をすれば自分が知ることも可能です。相続税を正確に申告するために、開示請求が必要になることもあるでしょう。
以下の記事では、過去の申告内容を閲覧する際の手続きを解説しているので、ぜひご一読ください。
参考:申告書等閲覧サービスとは~相続税申告の際に過去の申告内容を確認できる~
5.相続税申告書を共同提出する際の流れと書き方
これまで相続税申告書は共同提出するのがおすすめだと説明してきましたが、実際にはどの程度の手間がかかるのかが気になる方も多いでしょう。ここからは、共同申告する際の流れと申告書の書き方を解説します。
5-1.申告書第1表への署名とマイナンバーの記載
共同申告する相続人の氏名・住所・マイナンバーを、相続税申告書の第1表などに記載することで共同提出する申告書となります。「財産を取得した人」の欄が複数あるので、そこに相続人の情報や相続によって取得した財産の価額を記入します。
申告書には共同申告しない相続人の氏名や相続した金額を書くことも可能です。その際は、氏名の横にある「参考(参考として記載している場合)」に○を付けます。
引用:国税庁「複数の相続人等がいる場合の相続税の申告書の作成方法」
5-2.相続税申告書本体に押印は原則不要だが、添付書類のなかには実印が必要なものも
令和3年度税制改正により、相続税の申告書に相続人の押印は不要になりました。ただし添付書類の遺産分割協議書には、相続人全員の実印を押印する必要があります。スムーズに手続きができるように、実印や印鑑証明を準備しておくと安心です。
遺産分割協議書の記入を間違えたときは、修正液などを使わず二重線と訂正印で訂正します。正しい訂正方法や印鑑の押し方を知っておくと、トラブルを防ぐことにつながるでしょう。
参考:遺産分割協議書の捨印や訂正印の正しい押し方|図でわかりやすく解説
5-3.申告書を共同作成・提出する際の注意点
相続税の申告では、相続人全員が遺産の内容や金額を共有することが大切です。また、大前提として故人が作成した遺言がないかどうかを確認することも重要です。遺言が見つかったら、原則的には遺産分割協議をせず遺言の内容どおりに相続をすることになります。
相続税を共同申告する際は、書類に共同申告する相続人全員が記入する必要があります。申告時に添付する遺産分割協議書も相続人全員の署名と押印が必須なので、遠方に住んでいたり海外在住だったりする相続人がいる場合は、期限内に申告ができるように書類を郵送するなどの工夫が必要です。
相続税の申告では、申告書以外にも大量の書類を添付しなければならないケースもあります。e-Taxで申告する場合も、書類だけを郵送する必要が出てくるかもしれません。共同で相続税の申告をおこなう際は、日程に余裕をもって準備しましょう。
相続関係の書類に署名できない相続人がいても、ほかの人が代わりに署名や押印をすることはできません。病気や障がいによって署名ができない場合は、成年後見人の選任手続きなどが必要になるケースもあります。
6.遺産相続のご相談は相続専門のチェスターへ
相続人が複数いる場合では相続税申告を共同提出するのが一般的です。しかし、相続人同士の仲が悪かったり知られたくない財産があったりすると、別々に申告をおこないたいと考える方もいるでしょう。しかし、単独申告は申告に矛盾が生じやすく、税務調査の対象になる可能性が高まります。可能な限り共同で申告をおこなうことをおすすめします。
連絡のつかない相続人がいたり相続人が海外在住者だったりすると、期限内に相続税の申告・納付ができないこともあります。共同申告が困難な場合は、ぜひ相続専門のチェスターにご相談ください。経験豊富な税理士が、難しい状況の遺産相続にも対応しております。税務調査への立ち会いも対応可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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