電子マネーも相続の対象?PayPayやSuicaの手続きと注意点とは

キャッシュレス決済が普及した現在、電子マネーは日常生活に欠かせないサービスとなりました。もし電子マネーに残高があるまま利用者が亡くなった場合、その残高は相続可能なのでしょうか。
電子マネーは目に見えにくい財産なので相続の対象外だと誤解されがちですが、実際には相続財産として扱われるケースが多く、相続税の申告が必要になることもあります。
本記事では、電子マネーの相続の基本から、PayPayやSuicaなど具体的なサービスごとの手続き、注意すべきリスクまでをわかりやすく解説します。
この記事の目次 [表示]
1.電子マネーやキャッシュレス決済の残高は相続できる
故人の電子マネーやキャッシュレス決済の残高は金融資産のひとつと考えられます。つまり、電子マネーに残高があれば相続は可能です。相続が可能ということは、相続税の課税対象ともなりえます。ここでは、電子マネーが相続税の対象となる理由と、種類によって異なる相続の手続きについて解説します。
1-1.電子マネーが相続税の課税対象となる理由
電子マネーとは電子データ化されたお金のことで、「資金決済に関する法律」に基づく「前払式支払手段」のひとつです。利用者が利用する金額を事前に支払い電子マネーの残高として積み増すことで、さまざまな支払いに充てることができます。金銭として見積もれる財産であり、現金と同様に金銭的な価値を持つため、電子マネーは相続財産とみなされます。
参考:e-GOV法令検索「資金決済に関する法律施行令」
相続の手続きをする前に、そもそも何が相続財産に該当するのかがわからないという方も多いのではないでしょうか。以下の記事で相続財産の具体例をご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:相続財産とは?具体例で相続財産に含まれるもの含まれないものを解説
1-2.カード?それともスマートフォン?電子マネーの種類によって相続の手続きは異なる
電子マネーには「カード型」や「スマートフォン(アプリ)型」など複数の形態があります。特別な登録をせず利用できるものか、アカウントを作成して利用するものかなど、電子マネーの種類によって異なります。
アカウントを作成してIDやパスワードを設定している電子マネーの多くは、相続の手続きに対応しています。一方、無記名のカード型では相続できなかったり払い戻せなかったりすることもあります。電子マネーを発行している企業によっても手続きの方法は異なるので、それぞれの規約を確認することが大切です。
1-3.相続に手続きが必要となる主な電子マネーサービス
日常的に利用している主要な電子マネーや決済サービスも相続の対象になるため、手続きが必要になります。電子マネーも大切な相続財産の一部なので、被相続人がどのようなサービスを利用していたのかを知ることが大切です。主な電子マネーは以下のとおりです。
| 電子マネーの種類 | 代表的な電子マネー | ID・パスワードが必要か | 払戻しの可否 |
|---|---|---|---|
| QRコード決済 | PayPay | 必要 (アカウント) | 可 (相続手続きにより払戻し) |
| LINE Pay | 必要 (LINEアカウント) | 可 (規約に基づき対応) | |
| 交通系ICカード | Suica | カード型は不要 アプリ型は必要 | 条件付きで可 (記名式のみ) |
| PASMO | カード型は不要 アプリ型は必要 | 条件付きで可 (記名式のみ) | |
| プリペイド型電子マネー | 楽天Edy | カード型は不要 | 不可 (原則払い戻し不可) |
| nanaco | カード型は不要 | 不可 (原則払い戻し不可) |
2.PayPay(ペイペイ)の残高を相続する手続きの流れ
PayPay(ペイペイ)はQRコードで決済できる電子マネーの代表例です。ここからは、PayPayの残高を相続する際の流れを解説します。
2-1.運営会社へ連絡しアカウントの利用停止を行う
PayPayでは、利用者が死亡した場合、相続人からの申し出により残高の精算対応が行われるケースがあります。通常の利用者都合による解約とは取扱いが異なる点に注意が必要です。
インターネット上のカスタマーサポートに問い合わせをして、アカウントの所有者が亡くなったことを連絡しましょう。ガイダンスに従って、アカウントの利用停止手続きを行います。
2-2.必要書類を提出して残額を払い戻す
カスタマーサポートの指示に沿って、必要書類を提出します。手続きが完了しアカウントを解約すると、PayPayの残額を払い戻すことができます。相続する法定相続人の口座に、PayPayの残高から所定の手数料を除いた金額が入金されれば払い戻し手続きは完了です。
2-3.注意点:アカウントの解約ができないケースがある
アカウントに送金中のお金がある、PayPay給与受取の解約が完了していないなどの場合にアカウントの解約ができないことがあります。カスタマーサポートに相談のうえ、手続きを進めましょう。
3.交通系ICカード(Suica・PASMOなど)の相続手続き
SuicaやPASMOといった交通系の電子マネーには、モバイル型とカード型があります。モバイル型ではスマートフォン端末内での操作が必要ですが、ここでは例としてカード型Suicaの残高を相続する手順を解説します。
3-1.記名式カードと定期券は払い戻しが可能
Suicaでは記名式カードと定期券は相続の手続きが可能です。払い戻される金額は以下のとおりです。
参考:JR東日本「払いもどし」
3-2.手続きに必要な書類(死亡診断書や戸籍謄本など)
相続の手続きをしてSuicaの払い戻しをするときは、JR東日本のサポートセンターに問い合わせて指示に従います。手続きに必要な書類は主に以下のとおりです。
- 利用者本人が亡くなったことを証明する書類(死亡診断書や戸籍謄本など)
- 代理で返金を受ける人の本人確認書類のコピー
必要な書類や手続きの流れは状況により異なるため、まずはサポートセンターに問い合わせてSuicaの利用者が亡くなった旨を伝えましょう。
3-3.無記名式カードや紛失している場合の取り扱い
無記名のSuicaは相続手続きや払い戻しができません。相続放棄を検討している場合には、相続財産の処分とみなされるおそれがあるため、使用には注意が必要です。
紛失しているSuicaも、残高の確認や払戻しをすることが困難です。紛失したSuicaの残高も理論上は相続財産ですが、評価ができない財産となります。
4.プリペイド型(楽天Edy・nanacoなど)の相続手続き
楽天Edyやnanacoなどのプリペイド型電子マネーは、会員登録せずにカードに入金することで利用できる電子マネーです。スーパーマーケット・コンビニエンスストア・家電量販店など、さまざまなお店で使える便利な電子マネーでもあります。ここでは、プリペイド型電子マネーの相続手続きを解説します。
4-1.楽天Edyやnanacoはカード自体の手続きは不要
楽天Edyやnanacoなどのプリペイド型電子マネーは会員登録をしておらず利用者を特定することができないため、運営会社で相続の手続きを行えません。nanacoについては、以前の規約では会員が死亡した場合に残高がゼロになり、現金の払い戻しも不可と記されていましたが、現在は削除されています。現在もnanaco残高の現金払い戻し制度はなく、実務上は相続人間での合意のもと、使い切りで整理されるケースが一般的です。
電子マネーの残高は遺産分割協議が終わるまでは共有財産となるため、誰が相続するのか相続人全員の同意のうえ決定することになります。電子マネーの残高も相続財産の一部なので、相続人の一人が勝手に使うことはできません。また、相続税の申告書にも電子マネーの残高を記載する必要があります。
4-2.会員登録済みのWAONは相続の手続きを行い残高を返金してもらう
会員登録済みの場合、プリペイド型電子マネーであっても相続の手続きができるケースもあります。たとえばWAONでは、カスタマーサポートに連絡し、利用者の死亡を伝えると残高を返金してもらえます。
手続きには、利用者の死亡を証明する書類や実印などが必要です。必要な書類や手続き方法は各サービスで異なるため、所有している電子マネーのカスタマーサポートに確認しましょう。
参考:イオン銀行「相続のお手続き」
5.電子マネーの相続で見落としやすいリスクと対処法
電子マネーはデジタル遺産になりうる財産です。スマートフォンアプリになっていることも多く、家族が存在に気づかなかったりログインできなかったりすることもあります。利用している電子マネーのサービスごとに規約が異なっており、適切な手続きをしなければ遺産相続ができない点にも注意が必要です。
また、相続税の申告後に電子マネーが見つかった場合、金額によっては修正申告が必要になることもあります。このように、電子マネーの相続では見落としやすいリスクがあり、対処法を知っておくことが大切です。
次の記事では、デジタル遺産全般の相続トラブルについて事例付きで解説しています。生前のうちに対処したほうがよいものもあるので、ぜひご確認ください。
参考:デジタル遺産が相続トラブルの原因に!?生前整理した方が良い理由を事例付きで解説
5-1.故人が利用していた電子マネーを特定するには?
故人が電子マネーを使っていたかどうかを家族が知らなければ、その存在に気づかずに放置されることもあります。相続が発生した際は、財布に入っているカードや故人がよく行っていたお店、スマートフォン内のアプリなどを確認して、使っていた可能性のある電子マネーを特定することが大切です。
銀行口座やクレジットカードからチャージしていた場合は履歴が残るので、そちらも確認しましょう。
5-2.IDやパスワードが不明でログインできない場合の対処法
IDやパスワードがわからずログインができない場合でも、むやみにさまざまなパスワードを推測してログインを試みるのはやめましょう。何度もログインの操作をしていると、アカウントがロックされたり不正アクセスとみなされたりすることがあるからです。
まずは各サービスのカスタマーサポートに問い合わせをして、相続が発生した旨を伝えましょう。相続が理由であれば、ログインができなくても相続や払い戻しの手続きを受け付けてもらえることがあります。
5-3.電子マネーを勝手に使うと「単純承認」とみなされる可能性も
先述のとおり、電子マネーは相続財産のひとつです。電子マネーは相続財産に含まれないと勘違いし、相続人が勝手に使ってしまうと単純承認とみなされて、相続放棄ができなくなるおそれがあるので注意しましょう。
単純承認とは遺産のすべてを相続することです。故人の財産には借入金やローンといったマイナスの財産がある可能性もあり、マイナスの財産が多い場合は相続放棄や限定承認を検討したほうがよいケースもあります。

しかし、遺産の一部を処分したり使ったりすると、遺産をすべて相続することになるため相続放棄ができません。故人の全財産を把握し相続放棄をしないと決めるまでは、安易に電子マネーを使うことはやめましょう。
また、相続放棄の可能性がなくても勝手に電子マネーを使うと、相続人同士のトラブルに発展することもあるため、注意が必要です。
相続を知った日から3カ月以内という相続放棄の期日までに申立てをしなければ、自動的に単純承認とみなされます。以下の記事では、限定承認や相続放棄との違いやどちらを選択すべきか考えるポイントを解説しています。ぜひ参考にしてください。
参考:単純承認とは?手続き不要で遺産相続する方法|限定承認・相続放棄との違いも
5-4.ポイント(楽天ポイント・Tポイントなど)は相続できる?
電子マネーのなかには使った金額に応じたポイントが付与されるものもあります。しかし、相続の手続きをして故人のアカウントを解約すると、PayPayやWAON、nanacoといったポイントは原則削除されます。楽天ポイントやTポイントも相続できません。
反対に、JALやANAといった航空会社のマイルは相続できます。JAL、ANAともに、所定の書類を郵送しての手続きになるため、必要な書類や送付先の住所はホームページを確認しましょう。
参考:JAL「ご利用案内・各種お手続き」
参考:ANA「マイルの相続」
6.電子マネーの相続税評価額の計算方法と申告のコツ
電子マネーは相続財産なので、残高を正しく評価して申告する必要があります。ここでは、電子マネーの相続税評価額の計算方法と申告のコツを解説します。
6-1.亡くなった当日の「チャージ残高」を評価額とする
電子マネーの相続税評価額は、亡くなった時点の残高を採用します。故人が使っていた電子マネーが見つかったら残高照会を行い、相続税申告書に記入しましょう。また、残高照会の明細も証拠資料として保管しておきます。
6-2.預貯金や現金と合算して遺産分割協議書に記載する
電子マネーは相続税申告書において預貯金や現金と同じ扱いになります。このため、遺産分割協議書には現金と預貯金に電子マネーの残高を合算して記載しましょう。
6-3.税務署はキャッシュレス決済の履歴も把握している?
税務署は税務調査の一環として、電子マネーの運営会社に照会して、調査対象の取引を確認することがあります。電子マネーの残高が高額だったり不自然な残高の動きがあったりする場合は、チェックの対象になる可能性もあります。
このように、税務署は電子マネーやキャッシュレス決済の履歴も把握しているので、相続の手続きはしっかり行いましょう。
7.まとめ:電子マネーも相続財産!忘れずに確認と手続きを
電子マネーの残高は、現金や預貯金と同じように金銭的価値があり相続財産になります。電子マネーの残高を含めて基礎控除額よりも遺産が高額であれば、相続税の申告も必要です。
故人が使っていた電子マネーを確認し、忘れずに相続の手続きをしましょう。
7-1.生前のID・パスワード管理と家族への共有が重要
会員登録済みの電子マネーはログインをする際にIDやパスワードが必要ですが、利用者本人も忘れてしまう可能性があります。また、アプリ型の電子マネーは、スマートフォンのロックを解除できなければそもそもログインができません。
とくに気を付けなければならないのが、スマートフォンの生体認証をパスコードにしている場合です。ロック解除に顔や指紋による認証が必要だと、利用者が亡くなると誰もスマートフォンを開くことができなくなります。故人のスマートフォンを開けないと、電子マネーだけではなくさまざまな手続きが困難になるでしょう。
スマートフォンや電子マネーを使っている方は、生前のうちにエンディングノートや手帳などにIDとパスワードを記入して、万が一のときに家族がログインできるようにしておくと安心です。
7-2.相続税申告の判断や手続きに迷ったら税理士へ相談
相続財産の種類が多岐にわたると、その分相続の手続きも煩雑になりがちです。それぞれの財産の相続税評価額の算出や証拠資料の収集にも手間がかかるでしょう。
相続税申告をどのようにおこなうのか、実際の手続きでどのような書類が必要かなど、困ったときは税理士へ相談すると安心です。とくに相続専門の税理士であれば、相続税申告の代行だけではなく、節税につながるアドバイスももらえるでしょう。相続全般に関してお困りのことがあれば、ぜひ相続専門の税理士法人チェスターまでお気軽にご相談ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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