相続税の税務調査への対応方法・全手順と質問例で事前準備を!
相続税に関しては高い確率で税務調査が行われていることを知っていますか。
7月下旬から11月頃が相続税の税務調査の最盛期となっています。相続税の申告をしなくてはならない人は、税務調査とはどのようなものなのかを事前に把握しておくことが肝要です。すでに税務調査の事前通知があった人も、実際の税務調査の場でどのような質問を受けるのかを知っておくことは意義があります。
今回は、相続税に関しての税務調査について基礎的な内容を解説します。
動画でも税務調査で聞かれやすい質問について解説しています!
この記事の目次 [表示]
1.なぜ税務署は個人資産を把握することができるのか?
人が亡くなった時には、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場に「死亡届」を提出する必要があります。
人が亡くなったという情報は、翌月末までに全国で取りまとめて法務省から国税庁(税務署)に通知されます。税務署はこの時点でいつだれが死亡したかを把握することができます。加えて、市役所などからは固定資産税評価額についての情報が税務署に連絡されます。固定資産税評価額とは、だれがどのくらいの不動産を有しているかという情報です。
そのため税務署では不動産を多く所有しているという情報などから相続税の対象となりそうな人を特定できます。全国の税務署をネットワークで結んで納税者情報を一元管理できるKSKシステムというものが平成13年から導入されました。これによって相続税の申告の必要があるかどうか大体のところは判断がつくようになったようです。
さらにこのシステム自体が税務調査の必要があるかどうかの参考資料となります。
2.相続税の税務調査とは
法人税や所得税も相続税と同様に調査が行われます。ですが、その中でも一番調査される確率が高いのが相続税です。なぜならば、相続税は他と比べて高額になりがちだからです。
税務調査の目的は第一に申告漏れを見逃さないことです。申告漏れを発見するため最も調べられるのが金融資産のような隠蔽しやすいものです。過去には郵便貯金や割引債は発見されにくいとささやかれていた時期もありましたが、脱税行為となるため正しく申告をしましょう。
※割引債とは利息がなく額面以下の価格で発行される債券です。
3.税務調査で引っかかる金融資産3点
1)被相続人の預貯金
死亡する前の3年から5年の間に1回につき概ね50万円以上の金額を引き出している場合に、使い道を追及されることがあります。これは、引き出した現金を相続財産に計上せずに隠しているのではないかということを確認しています。もしくは名義預金として預金されているのではないか確認するわけです。
また、高額な不動産を売却している場合も確認が入ることがあります。金額が高額になるため、およそ20年前までさかのぼって売却代金の行く先を調べられる例もあります。相続税が発生しそうだと感じている人は、今のうちからお金の使い道は明らかにしておく必要があります。
【みんなが気になる疑問「税務署は銀行の残高照会が可能?」】
そもそも、税務署は銀行や証券会社に残高照会できるのでしょうか。答えはYESです。家族名義の預金がある可能性もあるので、被相続人だけではなく親族の口座データも調べています。
金融機関以外にお金を隠せば良いように思えますが、過去の入出金は全て確認できます。そのため、不明な入出金があれば指摘されて隠したお金についても追及されることとなります。
それなら日本国内に資産を置いておかなければバレないだろうと、海外に送金するケースもあります。しかし100万円以上の海外への送金は金融機関から税務署へ資料が提出されます。そのため海外にお金を置いていれば見つからないということはありません。
2)被相続人自体の生命保険
契約が本人名義のものではなく、妻や子となっていて、保険料を負担しているのが被相続人である生命保険が調査の対象となります。なぜならば、相続税法上では生命保険契約の保険料を負担した者の財産とみなされるからです。そのため被相続人が保険料を負担していた生命保険契約が相続税の課税対象となります。
3)家族名義の預金
預金の名義となっている人物と実際の預貯金の所有者が異なる預金を名義預金といいます。
具体例でいうと、父親が子供名義で口座を作り父が自由に入出金していたとします。名義こそ子供ですが、実質的には父のものです。父が死亡した場合には子供名義のこの預金も父の相続財産として課税対象となります。
4.税務調査が行われる時期
一般的に申告の6ヶ月から2年後くらいの間で行われます。時期的には7月から10月が税務調査のピークといわれています。法人や個人の確定申告で忙しい2月から6月まではあまり相続税の税務調査は行われないでしょう。また、税務署では6月末を年度替わりとしています。人事異動などが行われ煩雑な時期ですので7月初旬は確率が低いでしょう。
5.相続税の税務調査の期間
相続税の税務調査は相続人の個人宅(被相続人の自宅が残っていれば被相続人の自宅)へ税務署の調査官が訪問する形式で実施されます。基本として調査は2日間続き、何か問題が生じれば整理して修正申告を行うかどうかを税務署と相続人(または税理士)の間で話し合います。
6.相続税の税務調査対象となる確率
国税庁の『平成30事務年度における相続税の調査等の状況』によると、相続税の実地調査件数は12,463件(令和4事務年度8,196件)となっています。提出された相続税の申告書は136,891件だったので、ここから割り出すと、税務調査が実施される割合は約9%で、11件に1件が調査対象ということです。
7.相続税の税務調査の流れ
以下の一連の流れは相続人だけで対応することはできます。ですが相続専門の税理士に立ち会ってもらう方が賢明です。専門知識のある税理士が同席することで、追徴される税額が半額まで下がったという事例もあります。
1)税務署職員からの連絡
調査官が調査に取り掛かる予定日の1週間から10日ほど前に日程調整のための電話があります。
2)相続人の立ち合い
相続税の税務調査では相続人全員が立ち合いを求められることがあります。仕事があったり離れた場所に住んでいたりすると相続人全員が立ち会うことは容易ではありませんが、税務調査があるという連絡は必須です。なぜかというと、調査の結果追加で税金を納めなくてはならない場合にそれぞれの相続人に支払い義務があるためです。
3)調査場所
相続税の調査は、被相続人が生前に生活の拠点としていた自宅で行うことが原則です。
4)時間帯と人数
調査が始まるのはだいたい10時からで、調査官は2人組が基本となっています。
5)現物の確認調査
相続税の調査では自宅内の状況も確認します。相続対象となる財産がどのような状態で保管されているかを把握します。被相続人が生前にどのように活動していたかも一緒に確認しています。
6)調査終了
複雑で困難な場合には調査が数ヶ月以上にわたることもあります。調査を行っていき大まかなめどがついたならば顧問税理士もしくは相続人代表に対して調査結果と疑問点を示します。
7)指摘事項へ対応
相続税の税務調査の結果、申告漏れと思われる事項や金額が示されます。それに基づいて税理士は相続人と指摘事項の認否を検討していきます。
8)加算税と延滞税の確認
加算税と延滞税がある場合には内容を調査官に確認しておきましょう。
9)申告の修正
相続税の税務調査の結果、申告漏れ財産があれば修正申告をします。修正申告書の提出には相続人全員の了解が必要となります。申告漏れでの増額分は相続人全員が負担しなくてはなりません。
税務調査が入った場合には、誘導尋問のようなことをされるケースもあります。何も悪いことをしていなくても不安に感じることもあるでしょうから、税理士に依頼することを検討するのがよさそうです。なお、以下に税務調査官による質問の事例と意図についてまとめました。
【税務調査官の質問例…なぜその質問をするのか?】
8.税務調査後でも還付請求できる
相続税の税務調査を受けた結果として、追加で相続税を徴収されてしまう人もいるでしょう。この追加で徴収された人の中には、還付のための請求を行うことで相続税が戻ってくる可能性もあります。
税務調査では、申告漏れなど追加で納税が必要な事項について指摘されます。一方、土地の価額の過大評価など、還付の対象となる事項については指摘がありません。そのため、土地の価額を過大に評価していたことがわかれば、還付請求をすることができます。
相続税還付とは?払い過ぎる理由・事例、還付金請求は○年以内なら可能!
9.まとめ
今回は、税務調査について解説しました。
相続税の税務調査に強い税理士と弱い税理士がいますので、相談する場合には、相続税の税務調査に強い税理士に依頼しましょう!
相続税専門の税理士法人チェスターは、年間2,300件以上の相続税申告実績があります。相続税申告では、税務調査のリスクを下げるために「書面添付制度」を活用した申告書を作成させていただいており、税務調査率は僅か0.6%です(全国平均10%)。
安心できる相続税申告を行いたい方はお気軽にご相談ください。
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