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社長が死亡したら株はどうなる?相続の流れと注意点

社長が死亡したら株はどうなる?相続の流れと注意点

会社を経営していた社長が急に亡くなると、残されたご家族はまず「会社はこれからどうなるのだろう」と不安になるのではないでしょうか。とくに、社長が保有していた自社株式が相続の対象になるのかどうかは、多くの方が疑問に感じる点です。

自社株式は預貯金や不動産と同じように、相続財産として扱われます。しかし、会社を経営していた社長の相続には、一般家庭の相続にはない手続きもあります

この記事では、社長が亡くなってしまった場合に直面する以下のような事項について、順を追って解説します。

  • 社長が死亡した場合に株式はどのように扱われるのか
  • 相続の対象になる財産・ならない財産の違い
  • 新社長の選任、株式の相続、名義変更の方法
  • 連帯保証債務が重い場合、後継者がいない場合の対応
  • 自社株式にかかる相続税について

会社を経営していた社長が亡くなってお困りの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

この記事の目次 [表示]

1.社長が死亡したら自社株式は相続の対象になる

社長が死亡した場合の相続でまず押さえておきたいのは、「会社」と「社長個人」は法律上まったく別のものであるということです

会社は法人として独立した人格があり、社長が亡くなっただけで会社が消滅することはありません。また、会社名義の財産が相続の対象になるわけでもありません。

一方で、社長が保有していた自社株式は、社長個人の財産です。社長が亡くなると、自社株式は他の預貯金や不動産と同じように相続の対象となります

中小企業のオーナー社長は、自社株式の大半、あるいはすべてを自分名義で保有しているケースが多いです。自社株式の評価額が数千万円から億単位になることも珍しくなく、「株の相続」にまつわるトラブルが起こりやすい状況にあります。

1-1.社長の「地位」は相続できない【誤解しやすいポイント】

「自社株式を相続した人が、自動的に次の社長になるのでは」と考える方もいるかもしれませんが、これは誤解です。

社長(代表取締役)の地位は、本人が死亡した時点で消滅することになります。社長という地位そのものが誰かに相続されることはありません

次の社長は、株主総会などの決議によって新たに選任する必要があります。株式を多く相続した人が有力な候補にはなりますが、「自社株式を相続した人が次の社長になる」とは限らない点に注意が必要です。

1-2.譲渡制限株式でも「相続」はできる

中小企業では、勝手に第三者へ株式が渡らないよう、定款で株式に譲渡制限を付けているケースがほとんどです。譲渡制限株式は、譲渡にあたって会社の承認が必要になります。

「譲渡制限があるなら、相続もできないのでは」と思われがちですが、これも誤解です。相続は法律上「譲渡」にはあたらないため、会社の承認がなくても自社株式を相続することができます

ただし、会社が相続人に対して株式の売渡しを請求できる制度(相続人等に対する売渡請求)が定款に定められている場合もあるため、一度確認しておくことをおすすめします。

1-3.有限会社の場合も基本ルールは同じ

かつて設立することができた有限会社(現在は特例有限会社として存続)についても、相続の基本的な考え方は株式会社と変わりません。

社長が保有していた出資持分(株式)は相続の対象となり、相続人が新たな出資者(株主)としての地位を引き継ぎます。社長の地位は相続の対象ではないため、新たに選任の手続きをしなければなりません。

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社長が亡くなったときは、財産の相続や新社長の選任などさまざまな手続きが必要です。
会社の将来を確かなものにしてご家族の負担を軽くするためには、元気なうちから専門家に相談するなど、早めに準備を始めることをおすすめします。
株式会社チェスターコンサルティングでは、実務経験豊富な専任税理士が、お客様にとって最適な方法をご提案いたします。

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2.相続の対象になる財産・ならない財産

社長個人の財産と会社の財産は別のものであるため、何が相続の対象になるのかを正しく整理しておくことが大切です。

社長と会社にかかわる財産のうち、亡くなった社長の相続の対象になるもの・ならないものは、おおむね以下のとおり区分できます。

相続の対象になるもの

相続の対象にならないもの

社長が個人で保有していた自社株式
社長個人の会社への貸付金(債権)
社長が連帯保証人になっていた会社の債務

会社名義の不動産・預金
会社が銀行から借りた借入金(債務)
代表取締役という役職・地位

2-1.見落としがちな「社長個人の会社への貸付金」

中小企業では、資金繰りが厳しい時期に、社長個人のお金を会社に貸し付けているケースがよくあります。この貸付金は「債権」として社長の相続財産に含まれます。

実質的には返済が見込めない貸付金であっても、会社の帳簿に残っていれば相続税の課税対象に加算されることになるため、注意が必要です。相続人が貸付金を把握しないまま申告してしまうと、あとで修正が必要になります。

2-2.会社の借入金の連帯保証人だった場合も要注意

会社の借入金について社長が連帯保証人になっているケースもよく見られます。連帯保証人の地位は相続の対象であり、連帯保証人となっていた社長が亡くなれば、相続人がその地位を引き継がなければなりません

株式や不動産といったプラスの財産よりも、連帯保証債務のほうが大きいケースもあるかもしれません。その場合は「4.連帯保証債務が重い場合は相続放棄・限定承認を検討」で解説するように、相続放棄や限定承認をすることも選択肢になります。

連帯保証債務の相続については、下記の記事もあわせてご覧ください。

参考:連帯保証人の地位も相続対象!知らなかった場合の調査法と対処法

3.新社長の選任、株式の相続、名義変更の方法

社長が亡くなったときは、従業員、取引先、金融機関などに連絡することを優先します。そのあと、「新社長の選任」「自社株式の相続」「株式の名義変更」を進めます

これらの手続きは、以下に掲げる順番のとおりに行うとは限りません。相続人同士の話し合いの状況によっては前後することがあるほか、同時に進める場合もあります。

3-1.新社長の選任方法は「取締役会の有無」で異なる【期限は2週間】

会社の事業を続けるため、速やかに新しい社長を選任します。

社長(代表取締役)の選任方法は、会社に取締役会があるかどうかによって異なります。

  • 取締役会がある会社:取締役会で代表取締役を選任
    (取締役が3人未満の場合や取締役でない人を社長にする場合は、先に株主総会で取締役を選任し、その後取締役会で代表取締役を選任)
  • 取締役会がない会社(一人会社、特例有限会社など):株主総会で代表取締役を選任
    (定款に定めがある場合は定款に従う)

新しい社長(代表取締役)を選任すれば、代表取締役就任の登記を行います。これと同時に、亡くなった社長の代表取締役退任の登記も行います。登記の期限は、死亡の日から2週間以内です

取締役が社長1人だけという、いわゆる「一人会社」の場合は注意が必要です。ただ1人の取締役であった社長が亡くなると、会社には取締役が誰もいない状態になります。事業を継続するためには、速やかに新しい取締役を選任する必要があります。

3-2.自社株式を相続する人は遺産分割協議で決める

亡くなった社長が保有していた自社株式は、相続の対象になります。

社長が遺言書を残していれば、その内容に従って相続します。遺言書がなければ、相続人全員の遺産分割協議によって誰がどれだけの株式を相続するかを決めます。

相続で自社株式を分散させてしまうと、株主同士の意見の違いから、経営上の意思決定が迅速にできなくなるおそれがあります。自社株式は後継者がすべて相続するか、少なくとも過半数を相続することが望ましいです

なお、遺産分割協議がまとまるまでの間に、新しい社長の選任など株主総会で議決権を行使する場合は、注意が必要です。

相続する人が決まるまでの間、自社株式は「相続人全員の共有状態」となります。この間に議決権を行使するときは、原則として相続人の中から権利を行使する代表者を1人定めて、会社に通知する必要があります。

3-3.会社の株主名簿を書き換えて株式の名義を変更する

自社株式を相続する人が決まれば、会社の株主名簿を書き換えて株式の名義を変更します。

新しい株主は、株式の名義を変更することではじめて株主としての権利を得ます。名義変更そのものに期限はありませんが、早めに手続きをするほうがよいでしょう。

4.連帯保証債務が重い場合は相続放棄・限定承認を検討

2-2.会社の借入金の連帯保証人だった場合も要注意」でお伝えしたように、亡くなった社長が会社の借入金の連帯保証人になっていた場合は、相続人が連帯保証人の地位を引き継がなければなりません。

会社が借入金を返済できれば大きな問題はありませんが、返済が滞るようなことがあると、連帯保証人の地位を引き継いだ相続人が金融機関から返済を求められることになります。

株式や不動産といったプラスの財産よりも連帯保証債務のほうが大きく、相続人の負担が重くなる可能性がある場合には、相続放棄や限定承認といった手続きを検討します

4-1.相続放棄・限定承認の期限は3ヶ月【単純承認とみなされる行為に注意】

相続放棄は、財産・債務を含め一切の財産を相続しないための手続きです。債務を引き継がなくてよい一方、プラスの財産も一切引き継ぐことができなくなります。限定承認は、相続したプラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ手続きです。

これらの手続きは家庭裁判所への申し立てが必要であり、「相続の開始を知った日から原則3ヶ月以内」という期限があります

相続放棄・限定承認・単独承認

なお、株式の名義変更や議決権の行使など、相続財産を処分したとみなされる行為をすると、法律上相続を「承認」したことになり(単純承認)、その後は相続放棄や限定承認ができなくなるおそれがあります。相続放棄や限定承認を検討する場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄や限定承認について詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。

参考:相続放棄とは?期限・手続きの流れ・費用をわかりやすく解説
参考:相続の限定承認とは?相続放棄との違い・デメリット・手続きの流れ・費用を解説

4-2.相続放棄しても生命保険金・死亡退職金は受け取れる【見落としがち】

「相続放棄をすると、何も受け取れなくなるのでは」と不安に思う方も多いかもしれませんが、例外があります。

亡くなった社長に掛けられていた生命保険の死亡保険金や、会社から支給される死亡退職金は、受取人固有の財産として扱われるため、相続放棄をしても受け取ることができます。相続放棄を検討している場合でも、死亡保険金や死亡退職金の有無は確認しておくことをおすすめします。

相続放棄した際の生命保険金・死亡退職金の受け取り

ただし、死亡保険金や死亡退職金は、相続税の計算上「みなし相続財産」として課税対象に含まれるため注意が必要です。

4-3.相続人全員が相続放棄すると「相続財産清算人」が清算する

相続放棄をすれば連帯保証債務の負担を免れることができますが、財産を相続する人が誰もいないと清算に手間がかかるため注意が必要です

社長が亡くなって相続人全員が相続放棄をした場合は、自社株式を含めた相続財産は「相続財産清算人」によって清算されます。相続財産清算人は、利害関係者が家庭裁判所に申し立てることによって選任されます。相続放棄をした人も、利害関係者として申し立てをすることができます。

清算には少なくとも半年以上かかるほか、弁護士などの専門家が相続財産清算人に選任された場合は、月額数万円の報酬が相続財産から支払われます。

相続財産清算人による財産の清算については、下記の記事もあわせてご覧ください。

参考:相続財産清算人とは?いつ必要になる?役割や選任の流れ、費用を解説

5.後継者がいない場合は会社の解散・清算も選択肢

後継者が見つからず事業の継続が困難な場合は、会社を存続させない、つまり解散・清算をすることも選択肢です

株主総会の決議によって解散を決定し、清算人を選任したうえで、会社の財産を整理して債権者への支払いなどを行います。

なお、会社の負債が資産を上回る債務超過の状態にある場合は、通常の清算手続きでは対応できず、裁判所を通じた破産や特別清算の手続きが必要になります。この判断には専門的な知識が必要になるため、企業の破綻処理に詳しい弁護士へ早めに相談することをおすすめします。

6.自社株式に相続税はかかる?まずは評価額を把握

亡くなった社長が保有していた自社株式は、他の預貯金や不動産と同じように相続税の対象となります。しかし、相続税には基礎控除があり、相続財産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した金額までであれば相続税はかかりません。

したがって、自社株式の評価額がどの程度になるかを早めに把握しておくことが、対策の第一歩になります

相続税の基礎控除と申告の要否

6-1.自社株式の評価額は税理士に依頼して算出する

非上場企業の自社株式には市場価格がないため、相続税の計算にあたっては、国税庁が定める方法に従って評価額を算出します

代表的な評価方法には、同業種の上場企業の株価をもとに評価する「類似業種比準方式」と、会社の純資産額をもとに評価する「純資産価額方式」などがあります。会社の規模によってどちらを用いるか、あるいは両者を併用するかが異なります。

評価方法の詳細は下記の記事で解説していますが、専門家でない人が自分で評価額を算出することは極めて困難です。自社株式の評価額を知りたい方は、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

参考:非上場株式(取引相場のない株式)の相続税評価のすべて

6-2.相続税がかかるかどうかの判定(自宅を持つオーナー社長の場合)

自社株式の評価額がわかれば、相続税がかかるかどうかの判定ができます。たとえば、次のような家族構成・財産のケースで考えてみましょう。

モデルケース(持ち家があり株式評価額が大きいケース)

  • 被相続人:会社経営者(自社株式の100%を保有)
  • 相続人:妻、長男、長女(合計3人)
  • 財産内訳:自宅の土地・建物(評価額5,000万円)、自社株式(評価額1億円)、預貯金3,000万円
  • 財産総額:1億8,000万円

このケースの相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」です。財産総額1億8,000万円はこれを大きく上回るため、相続税の申告と納税が必要になります。なお、自宅の土地については、要件を満たせば「小規模宅地等の特例」により評価額を大幅に減額できる可能性があります。

一方、財産のほとんどが現金や自宅で、自社株式の評価額がそれほど大きくない小規模な会社の場合は、財産総額が基礎控除の範囲内におさまり、相続税がかからないケースもあります

6-3.妻が株式を相続した場合の税負担【配偶者控除との関係】

配偶者が財産を相続する場合は、「配偶者の税額軽減」という制度があります。配偶者が取得した財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは、相続税がかからない仕組みになっています。

配偶者が財産を相続する場合の配偶者の税額軽減

たとえば、上記のモデルケースで妻が自宅の土地・建物(評価額5,000万円)と自社株式(評価額1億円)を相続しても、相続税はかかりません。ただし、将来妻が亡くなったときのことも考慮しておかないと、長男や長女の相続税の負担がかえって重くなるおそれがあるため注意が必要です。

6-4.納税資金が足りない場合の対処法【事業承継税制の活用】

オーナー企業の株の相続では、「財産はあるのに納税資金が足りない」という事態が起こりやすいです。自社株式の評価額は高くても、売却して現金化することが難しいためです。

このような場合の選択肢の一つに、「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」(いわゆる法人版事業承継税制)があります。

一定の要件を満たして都道府県知事の認定を受けることで、株式にかかる税金の納付が猶予されます。ただし、適用要件や手続きは複雑であり、利用する場合は早い段階で税理士に相談することをおすすめします。

参考:事業承継税制とは│要件や期限、メリット・デメリットを解説

7.ご家族が困らないために社長が生前にできる相続対策

ここまで、社長が死亡した場合に株式がどのように扱われるかをはじめ、新社長の選び方など相続の流れについて解説しました。

しかし、実際に社長が死亡してから対応できることには限りがあります。たとえば、後継者を1人に決めきれず自社株式が複数の相続人に分散してしまうと、会社の意思決定がスムーズに進まなくなるおそれがあります。連帯保証債務や納税資金の問題も、生前に対策をしておくかどうかで負担の大きさが変わってきます。

後継者に株式を集中させるための遺言書の作成や生前贈与、事業承継税制の活用など、生前にできる対策は少なくありません。会社の将来を確かなものにしてご家族の負担を軽くするためには、元気なうちから専門家に相談するなど、早めに準備を始めることをおすすめします。

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