相続廃除で相続させたくない相続人の権利をはく奪できる?
財産を遺して亡くなった場合、その財産を引き継ぐ人を相続人と言います。
基本的には民法で定められている法定相続人に該当する人であれば相続する権利があるため相続人となります。法定相続人の中に「絶対に財産をあげたくない!」という人がいる場合でもその人が相続できてしまうのでしょうか?
「絶対に財産をあげたくない!」と思う理由が相当なものであれば、相続人の権利を剥奪する「相続の廃除(相続人の廃除)」という制度があります。今回は相続廃除についてご説明します!
この記事の目次 [表示]
1.相続廃除(相続人廃除)とは
相続廃除(相続人廃除)とは「相続人の廃除」つまり、相続する人の権利を剥奪することを言います。
相続廃除の手続きが行われ相続廃除された相続人は、廃除の取消しをされない限り相続することができません。
とはいえ、簡単に相続廃除ができるというわけではありません。
相続廃除は家庭裁判所にて手続きを行う必要があります。また、相続廃除の申し立てを行うことができるのは相続人が以下の要件に該当するような行為を行った場合に限ります。
相続欠格とはどう違う?
相続廃除と同様、相続人がその相続権を失うものに「相続欠格」があります。
この二つはよく混同されますが、相続欠格が、被相続人の殺害や脅迫といった事由により被相続人の意思と関係なく相続権を失うのに対し、相続廃除では被相続人が自らの意思により手続きを行うか遺言を遺すことにより相続権がはく奪されます。
また、相続欠格は事由に当てはまれば取り消されることはありませんが、相続廃除は被相続人の意思によるものですので取り消すことが可能な点も異なります。
2.相続廃除(相続人廃除)の対象となる相続人
相続させたくない人がいるのであれば、遺言に遺しておけば良いのでは?とも思いますよね。
しかし、遺言だけでは絶対に相続させないということが難しいケースがあります。
相続人となる人の中には「遺留分」という権利がある人がいます。この遺留分は相続人が遺言等により財産を取得できないことになっても、財産を受け取ることができるようにと定められた、最低限の相続分を言います。
そのため被相続人となる人が、ある推定相続人に対して相続させたくない!と遺言に記載しても、その人が遺留分を持っている相続人であり、かつ遺留分減殺請求を行った場合は遺留分は相続できるのです。したがって、相続廃除の対象となる人は「遺留分のある推定相続人」と決められています。
ちなみに、推定相続人が兄弟姉妹(第3順位)だった場合、遺留分がありません。そのため相続廃除は行わずに遺言に記載しておくことで相続させないことが可能です。
つまり、推定相続人で遺留分のある配偶者や子(第1順位)、両親(第2順位)の相続する権利を剥奪したい場合には相続廃除を行う必要があることになります。
相続廃除が認められることによって、その推定相続人は相続する権利の一切を失うため、遺留分の請求もできなくなるのです。
遺留分と遺留分減殺請求に関しての詳細は下記をご覧ください。
相続前に知っておきたい遺留分の知識!遺留分減殺請求って何!?
相続廃除(相続人廃除)した場合、代襲相続は行われる?
法定相続人が既に死亡していた場合に、その相続人に代わってその子や孫が相続権を得ることを「代襲相続」と言います。
実は、相続廃除が認められた場合でも、代襲相続は可能です。
例えば、被相続人が子供の一人に相続廃除の手続きを行い認められたとしても、その人物に更に子(被相続人にとっては孫)がいる場合は、相続廃除者の子に相続権が引き継がれることになります。
代襲相続の範囲等については下記記事をご覧ください。
3.相続廃除(相続人廃除)の流れ
相続廃除には生前に行う「生前廃除」と遺言による「遺言廃除」の2つがあります。
生前廃除の方法
被相続人となる人が、ご自身で相続廃除の手続きを行います。
手続きは、被相続人となる人が住んでいる住所地を管轄している家庭裁判所で「推定相続人廃除申し立て」を行います。申し立てを行うと、家庭裁判所が調停や審判によって審理を行います。審議の結果、相続人の非行や虐待・侮辱等の事実が認められ、調停成立(審判確定)がされると、調停調書謄本もしくは審判書謄本(確定証明書)が発行されます。
その書類と併せて、調停成立(審判確定)の日から10日以内に被相続人となる人の本籍地の市区町村役所/役場に「推定相続人廃除届」を提出します。
この届出が受理されると、該当する推定相続人の戸籍の身分欄に相続廃除を受けた旨が記載されます。
遺言廃除の方法
遺言廃除では、被相続人となる人が自身の遺言書に廃除の旨を遺し、被相続人の死後手続きが行われます。
遺言廃除の場合は、遺言執行者が「推定相続人廃除申し立て」を行うことになります。そのため、遺言執行者を決めておく必要があります。遺言執行者を誰にするかということを、しっかりと遺言に記載しておきましょう。
遺言廃除の場合は、遺言執行者が被相続人の亡くなったときに住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に推定相続人廃除申し立てを行います。
4.相続廃除(相続人廃除)は取り消すこともできる
相続廃除の申し立ての審判が成立し、相続廃除が決定した後に相続廃除を取り消すこともできます。取り消しができる人は相続廃除の申し立ての請求権者となりますので、生前廃除であれば被相続人となる人、遺言廃除であれば遺言執行者が行います。
相続廃除の取り消しが行われると、廃除の対象となった相続人も財産の相続が可能になります。
まとめ
今回は相続廃除についてご説明させていただきました。生前廃除や遺言廃除により遺留分のある相続人の相続の権利を剥奪することが可能ですが、相続廃除は簡単に成立/確定するものではありません。どうしても相続廃除したい相続人がいる場合には専門家と相談のうえすすめて行くことをおすすめします。
相続廃除は生前廃除の場合、調停成立または審判確定から効果が発生しますが、遺言廃除で成立・確定した場合には、被相続人が亡くなった日から効果が生じることになります。併せて覚えておいてください。
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