相続税の脱税はバレる?罰則・追徴課税・刑事告発まで税理士が解説

「相続税の脱税は税務署にバレる?」
「相続税の脱税をするとどうなるの?」
この記事をご覧の皆さんは、このようにお悩みではないでしょうか。
結論から言うと、相続税の脱税(故意の隠蔽・仮装)は、時効成立までに税務調査でバレる可能性が高く、見つかった場合は重い追徴課税が課されます。
隠蔽・仮装が特に悪質であれば、相続税法に基づき刑事告発され、刑事罰(懲役刑や罰金刑)が科されるケースもあります。
この記事では、相続税の脱税を税務署がどうやって見抜くのか、そして具体的にどのような追徴課税が課せられるのかを、相続税専門の税理士が解説します。
この記事の目次 [表示]
1.相続税の脱税は税務調査でバレる&追徴課税される
相続税の脱税(故意の隠蔽・仮装)は税務調査でバレる可能性が高く、見つかった場合は追徴課税(本税追加納付・重加算税・延滞税)の対象となります。
国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査(自宅訪問でのヒアリング)が行われた件数は9,512件、申告漏れ等の非違件数は7,826件とされています。
つまり、相続税の税務調査で実地調査に発展すると、82.3%の確率で無申告や申告漏れが指摘されていることとなります。
引用:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(※赤枠部分は筆者による)
重加算税の賦課件数は1,065件(13.6%)に上り、申告漏れ等が指摘された事案のうち1割強で、隠蔽・仮装があった場合に課される重加算税が賦課されています。
「税務署にバレないだろう」と考えるのではなく、正しい相続税申告を行うことが大切です。
1-1.相続税の脱税は時効が7年に延長される!逃げ切るのは難しい
相続税の時効(除斥期間)は、法定申告期限から原則5年ですが、故意の隠蔽・仮装があったと認定される「脱税」の場合は7年に延長されます。

相続税の税務調査が入りやすい時期は、法定申告期限から1~2年後が最も多いと言われています。
「7年逃げ切れば時効成立」という考え方は大きな間違いで、時効成立までに税務調査が入り、重加算税や延滞税がまとめて課されるリスクが高まります。
相続税の時効成立を待つのではなく、誤りに気づいた段階で早めに期限後申告・修正申告を行うことが重要です。
参考:相続税の時効は5年か7年│税務署は何年さかのぼる?ペナルティも解説!
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「税務署は財産の存在を知らないから隠していればバレない」というのは、立派な脱税行為です。
重い追徴課税を課せられないためにも、定められた期限までに、正確な相続税の申告・納付を行いましょう。
2.どうして相続税の脱税がバレるのか?税務署が確認する3つのステップ
相続税の税務調査では、申告内容等を確認する「机上調査(書面調査)」が行われ、単純な計算ミスや記載漏れであると判断された場合は、電話や文書による「簡易な接触」が行われます。
一方で、申告内容等に不自然な点がある場合のみ、事実確認をするため、対面で行われる「実地調査」に進みます(必ずしも全ての事案がこの順番どおりに進むわけではありません)。

相続税の税務調査は、事前通知の上で行われる任意調査です。ある日突然調査官が自宅へ踏み込んでくる「マルサ(査察)」の強制調査ではありませんので安心してください。
まずは税務署がどのように「疑わしい申告」を絞り込み、最終的に脱税(故意の隠蔽・仮装)かどうかを判断しているのか、その流れを確認しておきましょう。
2-1.STEP①KSKシステムで遺産内容が予測される
相続発生後は、死亡届の提出をきっかけに、市区町村役場や法務局から、国税庁や税務署に「被相続人が亡くなった」という情報が通知されます(相続税法第58条)。
そして税務署は「KSKシステム(国税総合管理システム)」に蓄積された申告・納税情報等のデータを活用し、被相続人の所得や資産状況などを分析します。

相続発生から6~8ヶ月後に、「相続税についてのお尋ね」という書面が届くことがありますが、これは「相続税の申告義務がある可能性が高い」と判断されているためです。
ただし、お尋ねが届いたからといって、申告義務が確定しているわけではありません。申告義務がないのであれば、その旨を記載して回答することとなります。
参考:税務署から相続税についてのお尋ねが届いた時の対応方法とポイント
2-2.STEP②「お尋ねの回答」や「申告書の内容」を照会する
相続税についてのお尋ねの回答や、提出された申告書の内容は、税務署が保有する「KSKシステム(国税総合管理システム)」の情報と照合されます。
これは被相続人や相続人の所得・資産内容等と突き合わせることで、回答内容や申告内容に不自然な点がないかを確認するためです。
例えば…
- 予想よりも申告額が極端に少ない
- 所有しているはずの財産が申告されていない
- 名義預金や使途不明金の可能性がある
- 不動産の評価方法に不自然な点がある
「単純な記載漏れ」や「計算ミス」であると判断されれば、電話や文書による「簡易な接触」によって税務調査は完了します。
一方、脱税(故意の隠蔽・仮装)が疑われる不自然な点が見つかった場合は、次のステップである「実地調査」に進みます。
参考:KSKシステムとは?相続税の税務調査の対象に選定される仕組み
2-3.STEP③実地調査や反面調査で「故意か過失か」を見極める
脱税(故意の隠蔽・仮装)が疑われるケースでは、単なる財産の洗い出しではなく、その不自然な点が「故意」なのか「過失」なのかを見極めるために、実地調査が行われます。
実地調査とは、税務署職員が相続人の自宅等を訪問し、遺産の状況や申告内容について直接ヒアリングを行い、自宅で保管されている帳簿・通帳・契約書類などを確認する調査のことです。

実地調査の前後には、必要に応じて「反面調査」が行われます。
反面調査とは、被相続人や相続人と関わりのあった第三者に照会する調査で、金融機関・取引先企業・勤務先・不動産業者・保険会社など幅広い関係者が対象となります。
実地調査と反面調査を経て「脱税(故意の隠蔽・仮装)であった」と認定されると、最も重いペナルティである「重加算税」が課されることとなります(次章で詳しく解説します)。
3.相続税の脱税の罰則は追徴課税!重加算税と延滞税とは
相続税の脱税(故意の隠蔽・仮装)が発覚した場合、罰則として以下の「追徴課税」が課されることとなります。
追徴課税の内訳
- ①本税の追加納付
- ②重加算税(脱税に対する罰則)
- ③延滞税(納付が遅れたことに対する罰則)
相続税の脱税は「故意の隠蔽・仮装」が前提となる行為であるため、加算税の中で最も重い「重加算税」の対象となります。
さらに、納付が遅れた期間に応じて延滞税が自動的に加算されるため、発覚が遅れるほど負担が膨らむ仕組みです。
3-1.重加算税(脱税に対する罰則)
重加算税とは、故意の隠蔽・仮装があった場合に課される、最も重い加算税のことです。
重加算税は「追加で納める税額」に対して、以下の税率を乗じて計算します。
| 状況 | 重加算税の税率 |
|---|---|
| 期限までに申告書を提出した(過少申告) | 35% |
| 期限までに申告書を提出していない(無申告) | 40% |
重加算税が課されるのは、あくまで「故意の隠蔽・仮装」という事実認定があった場合のみです。
自主的に修正申告・期限後申告を行うことで、加算税が軽減される場合があります。ただし、隠蔽・仮装の事実がある場合には、自主的に申告したからといって必ず重加算税を回避できるわけではありません。申告漏れに気づいた段階で、早めに対応することが重要です。
参考:相続税の重加算税とは【令和7年度版】事例・税率・計算方法を税理士が解説
3-2.延滞税(納付が遅れたことに対する罰則)
延滞税は、納付が遅れた日数に応じて課される利息的なペナルティです。
延滞税の税率は、原則として「納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年7.3%」「納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後は年14.6%」です。
しかし近年は低金利の状態が続いているため、平成12年以降は毎年税率が変動します(令和8年は年2.8%と年9.1%)。

通常、修正申告や期限後申告が法定申告期限から1年を超えて行われた場合、「延滞税の計算期間の特例」が適用され、1年超過分の期間は延滞税の計算対象から除外されます。
しかし、相続税の脱税(故意の隠蔽・仮装)と認定された場合、延滞税の計算期間の特例は適用されません。
脱税の事実が発覚したのが何年後であっても、法定申告期限の翌日から納付日までの全期間分の延滞税が課されるという、脱税特有の重いペナルティとなります。
参考:相続税の延滞税・加算税はいくら?税率・計算方法・免除特例も解説
4.相続税の脱税が悪質と判断されると刑事告発!実刑になるケースも
相続税の税務調査で脱税(故意の隠蔽・仮装)を指摘された場合、重加算税などの追徴課税となるケースが大半です。
しかし、特に悪質である場合や免れた税額が高額な場合は、刑事告発に発展して実刑判決が下されるケースもあります。
この章では、実際に刑事告発された裁判例から、「実刑になったケース」と「無罪になったケース」2つの実例をご紹介します。
4-1.判例①多額の現金を自宅に隠匿して過少申告を行った事例
被告人は実父の死亡に伴い、あらかじめ解約した定期預金(現金約60億円)を自宅のガレージ等に隠匿していました。
その上で、税理士に対して「財産はない」と虚偽の説明をし、本来の課税価格より大幅に過少な申告書を提出して、約27億9,794万円を脱税しました。
弁護側は「家族名義の預金は家族のもの」と主張しましたが、裁判所は「大半が実質的に被相続人に帰属する相続財産である」と認定しました。
被告人が犯行を主導しており刑事責任は重いとされたものの、被告人は修正申告を行い、本税や重加算税など合計約50億円を納付しました。
高齢・病気である点が考慮され、求刑(懲役4年6月・罰金10億円)から減刑されたものの有罪判決(懲役2年6月・罰金5億円)となりました。
出典:裁判所「大阪地方裁判所第12刑事部(平成20(わ)1689)」
4-2.判例②家族名義財産の誤解による過少申告が無罪になった事例
夫の相続において、被告人である妻が預貯金や有価証券を除外して申告書を提出し、相続税1億4,090万円を免れたとされました。
しかし裁判所は、「家族名義の財産に対する誤解」や「隠蔽工作はなかった」などの理由から「被告人に税を免れようとする意図があったとは認められない」と判断しました。
結果として、単なる不注意や誤解による過少申告であり、犯罪を構成する「不正の行為」には当たらないとして無罪判決が言い渡されました(求刑は懲役1年6月、罰金3,500万円)。
出典:裁判所「神戸地方裁判所第4刑事部(平成25(わ)56)」
5.相続税の脱税に関するよくある疑問
相続税の脱税に関する、よくある質問をまとめたので参考にしてください。
5-1.Q1:相続税を逃れる合法的な方法はある?
相続税を逃れるための「脱税」は違法行為ですので、絶対にやめてください。
一方で、相続税法で認められた範囲内で税負担を抑える「節税」であれば、合法的に行うことができます。
代表的な方法としては、贈与や生命保険の非課税枠を利用する生前対策や、小規模宅地等の特例の適用などが挙げられます。
いずれも要件や手続きが細かく定められているため、専門家にシミュレーションしてもらうことをおすすめします。
参考:【相続税対策22選】相続税を減らすための節税のポイントを解説
5-2.Q2:少額の申告漏れでも脱税とみなされる?
相続税の脱税に該当するかどうかは、金額の大小だけで判断されるわけではなく、「故意の隠蔽・仮装」の有無が焦点となります。
たとえ少額であっても、「意図的に財産を隠していた」と認められれば、重加算税の対象になり得ます。
反対に、金額が大きくても「単純な評価誤り」や「認識違い」であれば、脱税ではなく過少申告加算税にとどまる可能性があります。
5-3.Q3:一部の相続人だけが財産隠ししていたら他の相続人はどうなる?
共同相続人のうち一人だけが名義預金などを隠していた場合、その事実を知らなかった他の相続人にまで責任が及ぶわけではありません。
ただし、修正申告や追徴課税の手続きは、相続人全体の申告内容に関わってくるため、無関係のままでもいられません。
相続財産の状況は、できる限り家族間で情報を共有しておくことが望ましいでしょう。
5-4.Q4:脱税を疑われないための生前対策はある?
相続税の脱税を疑われないためには、贈与のたびに贈与契約書を作成し、通帳や印鑑は名義人自身が管理するようにしましょう。
これらは、税務署から「名義預金」と疑われないための基本的な対策です。
最も確実なのは、生前の段階から税理士に相談し、正しい形で節税策を進めていくことです。
参考:名義預金に時効はない!名義預金と認定されないための対策方法を解説
6.相続税の脱税かも?不安なら今すぐ税理士に相談を
ここまで読んで、「もしかすると自分の申告にも漏れがあるかもしれない」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。
「様子を見よう」「時効を待とう」と先送りにすることは、脱税とみなされるリスクを高めるだけです。
申告漏れに気づいた場合は、早めに修正申告や期限後申告を行うことが重要です。自主的に申告することで加算税が軽減される場合がありますが、隠蔽・仮装の事実がある場合には、重加算税が課される可能性があります。
また、修正申告の要否判断や書類の作成には専門的な知識が必要であり、自己判断で対応されるのはおすすめできません。まずは相続税に詳しい税理士に相談しましょう。
6-1.税理士法人チェスターにご相談を
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在籍する国税OB税理士による審査体制を整えており、複雑な相続税の申告内容や修正申告にも専門的に対応しています。
相続税の修正申告や期限後申告は、タイミングが早いほど追徴課税が軽減されるため、申告漏れに気づいた段階で速やかに対応することが重要です。
すでに相続が発生しているお客様でしたら、初回面談が無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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