プロベート手続きとは│手続きの流れから回避方法まで解説

プロベートとは、亡くなった方の財産がアメリカやシンガポールなどの海外にある場合に行う、現地の裁判所を通じた遺産の名義変更・清算手続きのことです。
海外に財産を持つ方が亡くなった場合、日本の相続とは異なるルールが適用されるため、このプロベート手続きが必要になることがあります。
本記事では、プロベート手続きの仕組みや日本の相続との違い、具体的な手続きの流れ、そして複雑なプロベートを回避できる財産について、相続専門の税理士が解説します。
この記事の目次 [表示]
1.プロベート手続きとは
プロベート(PROBATE)手続きとは、裁判所の決めた執行者が遺言者の有無の確認を行い、申告や納税、相続人の財産の管理を行い、分割から受け渡しまでを行うものです。アメリカでの主要な相続手続きになります。
例えば、亡くなった日本人の財産がアメリカにある場合、被相続人(亡くなった人)の名義を相続人名義に変更するためには、原則としてプロベートという裁判所の手続きが必要となります。
亡くなった人が残した財産(遺産)が日本にあるのか、海外にあるのかによって、その手続きも異なります。
2.遺産の承継手続き~日本の財産と海外の財産の違い
被相続人が残した財産が日本にあるのか、海外にあるのかによって、その相続手続きは異なります。日本の財産と海外の財産における引き継ぎ方の違いについて整理しましょう。
2-1.遺産が日本の財産の場合
日本在住の日本人が亡くなり、その遺産が日本にある場合、相続人が遺産を取得する際の相続手続きは、日本の民法に従い、次のようになります。
- 遺言がある場合:原則として、その遺言に従う
- 遺言がない場合:相続人間の遺産分割協議によって、相続財産の帰属を決める
2-2.遺産が海外の財産の場合
遺産が海外にある場合には、その外国の法律が日本の法律と異なっているのであれば、これらの関係を調整する必要があります。そして、外国の法律と日本の法律との関係を調整するものとして「国際私法」がありますが、相続関係について国際間を調整する法律としては、「法の適用に関する通則法」や「遺言の方式の準拠法に関する法律」などが挙げられます。
例えば、法の適用に関する通則法36条では、「相続は被相続人の本国法による」と規定されています。
これによると、日本在住の日本人がアメリカにある財産を残して亡くなった場合は、被相続人の本国法は日本の法律に従うことになりますので、アメリカにある財産についても、日本の法律(民法)に従って相続すればよいことになります。
しかし、財産がアメリカ国内の金融機関や土地である以上、現地の機関(銀行や裁判所など)を通す必要があり、その際にアメリカ側の独自のルール(手続き)の壁にぶつかることになります。
2-2-1.アメリカの場合
例えばアメリカでは、原則として次のようになります。
- 不動産の相続は、不動産の所在地の法律に従う。
- 動産の相続は、被相続人の居住地の法律に従う。
このように、財産が動産か不動産かによって相続手続きを規律する法律(準拠法)を区別することを相続分割主義と言います。
アメリカにおける相続手続きについて改めて整理すると以下のようになります。
①アメリカに所在する財産が不動産だった場合
不動産の所在地であるアメリカの法律に従うことになりますので、被相続人名義の不動産を相続人名義に変更することは簡単にはできません。
アメリカでは、相続財産は一旦、遺産財団(estate)に帰属します。そして、裁判所の管理の下、プロベートを経た上で相続人の帰属となります。
アメリカには日本の法務局のような不動産登記を扱う公的機関がないことも名義変更を難しいものとしています。
②アメリカに所在する財産が動産だった場合
被相続人の居住地である日本の法律に従うことになりますので、理論上としては、日本の民法を適用して、遺産を相続人名義に変更することとなりますが、実際にはこちらもプロベート手続きを経ることが想定されます。
3.プロベートの手続きの流れと必要性
前述のように、アメリカなどの英米法系の国では次のような相続手続となります。
まず、被相続人の財産は一旦、遺産財団(estate)に帰属しますが、遺言があるかないかによって手続きを実施する者が異なります。
遺言がある場合は、遺言で指定されている遺言執行人(executor)が、裁判所の監督の下、相続財産を把握し、その中から債務や管理費用、米国遺産税等の費用を差し引いた残りを各相続人に分配します。
遺言がない場合は、プロベート裁判所が選任した遺産管理人(administrator)が上記の遺産執行人の役割を担います。
遺言の有無に関わらずプロベート手続きは必要であり、一般的なプロベート手続きの流れは、以下のようになります。
《一般的なプロベート手続きの流れ》
- ⅰ)裁判所に申立て
- ⅱ)裁判所が「遺言執行人」又は「遺産管理人」を承認
- ⅲ)遺産の整理・財産目録の作成・債務の支払(遺産税の申告・納税)
- ⅳ)財産の分配
- ⅴ)裁判所に報告
これらのプロベート手続きは、その財産が所在する州の裁判所等で行われます。どちらの場合でも、現地語に翻訳した死亡証明書や宣誓供述書など多数の書類を用意しなければならず、日本に住む相続人にとっては非常に複雑で面倒な手続きになります。
通常は、弁護士などの専門家に依頼して手続きを進めていくこととなりますが、財産の種類や額、相続人の状況等により様々で、6か月から長ければ1年〜3年程度の期間を要します。
遺産が少額であればプロベートを省略できることもありますが、米国やシンガポール等に多額の資産を保有している場合、基本的にはプロベートを経なくてはなりません。
4.プロベート手続きを回避できる財産所有形態
上記のようなプロベート手続きには時間も費用もかかりますが、プロベート手続きが不要となる財産所有形態もあります。その財産所有形態は、次のようになります。
4-1.不動産の共同保有(Joint Tenancy with right of survivorship)
不動産の共同保有とは、共同保有者全員が全体の価値を均等に共有する財産の所有形態です。この所有形態で、権利者の誰か1人が亡くなった場合には、亡くなった人の権利が残りの権利者に吸収されることになります。
例えば、夫婦でアメリカの不動産を取得する場合に、共同保有しておくと、夫が亡くなった場合には妻に、妻が亡くなった場合には夫に、一方の持分が自動的に引き継がれることになります。それゆえ、プロベート手続きを経る必要はありません。
では、この場合、日本の税法上はどのような取り扱いとなるでしょうか。
日本に居住する夫婦がアメリカの不動産を共同保有している場合に、夫が亡くなった際に妻が引き継ぐ持分は、死因贈与(遺贈)により財産を取得したものとして、日本の相続税の対象となります(国税庁・質疑応答事例)。
なお、上記の不動産の共同保有は、日本の共有とは異なります。日本の共有は、例えば、1つの不動産を持分割合に応じて各持分権者が不動産を所有しており、これらの持分は、不動産の共同保有のように持分が均等である必要はありません。仮に、共有者の誰か1人が亡くなった場合、その人の持分については、その死亡した持分権者の相続人が相続することになり、不動産の共同保有のように、残りの権利者に自動的に引き継がれるようなことはありません。
4-2.預金の共同口座
2人以上の名義で預金口座を開設する共同口座(Joint account)があり、この共同口座の名義人のうち1人が死亡した場合、他の名義人の中で生存者受取権(survivorship)を持つ人の名義となります。
この場合も、財産が自動的に引き継がれることから、プロベート手続きを経る必要はありません。
4-3.生前信託(Living trust)の活用
Living trust契約を作成し、自身の財産をトラスト受託者名義に変更してトラストの財産とし、自身の死後に当該財産を譲り受ける人(受益者)を決めておく「生前信託」という方法があります。
これによって、自身が死亡した場合に、財産が自動的に受益者に引き継がれることから、プロベート手続きを経る必要はありません。
4-4.その他の所有形態
上記のような方法以外にも、プロベート手続きを経ないで財産を引き継がせる方法としては、次のようなものがあります。
- 死亡時払戻し時条項(Pay-on-death designation)
あらかじめ指示された者の名義に財産の所有を自動的に変更するもの - 不動産について死亡時譲渡証書(Transfer on death deed)により、相続があった場合の取得者を生前に登記しておく方法
5.国際相続におけるQ&A
最後に、国際相続におけるよくある質問に解答します。
5-1.国際相続でも遺言書に効力はある?
遺言書があれば遺言書に添って相続人へ遺産分配を行っていきます。
アメリカでは、相続の際には遺書を十分に意識して遺言書を残した方の意思を十分に尊重します。
遺産処理の責任者を任命するとともに、遺言書を十分尊重し、遺産の内容を確認します、遺書の内容に従って手続きを行っていきます。
アメリカでの相続では税金の割合も日本と違いますので、弁護士に支払い代金も様々です。
相続の際には高いとされていますが、アメリカのプロベート手続きにはその財産が所在する州の裁判所で行われます、遺言の有無、財産の種類や財産額、相続人の状況等により様々ですが1年から3年程度の期間を要することになり、相続の際には証拠と、遺書、また法的に問題がないかどうかをしっかり調べます。
5-2.日本と外国で二重課税にならない?
日本とアメリカの相続税、二カ国分を支払うことが求められる可能性がありますので、二重課税を避けるために設けられている制度で外国税額控除という制度があります。
アメリカで支払う金額(相続税、遺産税)を日本の相続税から引きます。
そのためアメリカでの相続税に詳しい米国内の弁護士の専門的な知識が必要になります。
相続人が日本にいる時や相続人が日本国内に居住しているときには、日本国内の弁護士と、米国内の弁護士が、出来るだけ英語で取引をすることが大切です。
アメリカの相続税に詳しい現地のロイヤーは信頼でき、またミスがないように専門的な弁護士との契約が必須です。
すべてのコミュニケーションは英語にて行われるため、日本にいる相続人と、日本国内での弁護士や専門家にも語学力が求められ、プロベートに関しての経験と、実績のある弁護士が一層効果的な、相続を行うことが出来ます。
相続者がアメリカ国籍で、アメリカ在住の方には日本での弁護士の必要性もありませんが、日本語のみで手続きを進める際には日本の国際弁護士への相談が必要になります。
参考:相続税の外国税額控除とは?二重課税を防ぐ手続き・計算方法を解説
6.まとめ
プロベートは、被相続人の財産が海外にある場合に避けて通れない手続きです。複雑な手続きを円滑に進めるためには、現地の法律の理解だけでなく、日本と現地の双方の税制(二重課税や外国税額控除など)への正確な対応が求められます。
このようなお悩みをお持ちの方は、国際相続に強い専門家へ相談することをおすすめします。
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