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遺産分割の進め方を解説。書面に残すときに気を付ける点を把握しよう

遺産分割の進め方を解説。書面に残すときに気を付ける点を把握しよう

遺産分割をするとき、遺言書があるならそれに従います。ない場合には相続人全員で話し合いをし、どのように遺産を分割するか決めなければいけません。手順や分割方法のほか、話し合いがまとまらなかったときの対処法も紹介します。

1.遺言書がないときの遺産の分け方

1.遺言書がないときの遺産の分け方

亡くなった被相続人が遺言書を残していない場合、遺産分割の仕方について、相続人全員による話し合いが必要です。話し合いはどのような形式で行われるのでしょうか?『特別受益』や『寄与分』のほか、相続税申告の時期も考慮しながら進めましょう。

1-1.相続人全員で遺産分割協議を行う

遺産分割の方法を話し合う場のことを『遺産分割協議』といいます。遺産分割協議は必ず『法定相続人』全員で実施しなければいけません。1人でも欠けていると無効になるため要注意です

法定相続人は民法で定められています。被相続人に配偶者がいれば、配偶者は必ず法定相続人です。加えて『子ども』『親』『兄弟姉妹』の順番で、順位が高い人から法定相続人になります。

例えば配偶者と子ども2人がいるなら、その3人が法定相続人です。法定相続人の中に未成年者がいるときには、その代理人も参加しなければいけません。

1-2.対面や電話、書面等で分け方を決める

話し合いの場をどのように設けるかは決まっていません。対面で集まれる場所に全員いるなら、じかに集まり話し合ってもよいでしょう。

遠方に住んでいて移動が難しいようであれば、電話やビデオ通話で話し合っても構いません。書面を作成し、その内容を確認してもらう形で進める方法もあります。

どのような形式で実施したとしても、話し合いの内容を記録しましょう。書面を作り署名押印してもらったり、録音しておいたりすれば、トラブルの防止に役立ちます

1-3.特別受益や寄与分を考慮する

遺産分割の割合を決めるときには、『特別受益』を考慮します。特別受益とは、相続人が被相続人から特別に受け取った財産のことです。

相続する遺産とは別にまとまった財産を受け取っているとすると、ほかの相続人と比べて不公平感が出てしまいます。特別受益の考慮によって、平等な遺産分割が可能です。

同様に『寄与分』も考えます。相続人の誰かが特別な働きをした結果、被相続人の財産が増えたり、必要以上に減るのを避けたりできるケースがあるでしょう。

このように特別な寄与をした相続人に、ほかの相続人より多く財産を分けるのが寄与分です。例えば家業の手伝いや、介護に取り組んだケースが該当します。

1-4.相続税申告の時期を意識しよう

相続税の申告は、被相続人の死亡を知ってから『10カ月以内』に行わなければいけません。話し合いが難航し遺産分割ができない状態では、納税するのも難しいでしょう。

遺産分割協議が完了しなければ、本来なら受けられる『配偶者の税額の軽減』や『小規模宅地等の特例』が適用されません。遺産分割協議が長引きそうなら、税務署に法定相続分による相続税の申告書を提出し、併せて、『申告期限後3年以内の分割見込書』を提出しましょう。

(参考)相続税の申告期限までに遺産分割が間に合わない場合の未分割申告

この手続きをしておけば、申告期限から3年以内に遺産分割協議を完了させ、完了から4カ月以内に『更正の請求書』及び『修正申告書』を提出することで、『配偶者の税額の軽減』や『小規模宅地等の特例』を利用できます。

(参考)相続税の修正申告を自分で提出するときの流れ-申告すべき事例もチェック
(参考)相続税の配偶者控除とは?配偶者は1億6千万円相続しても無税になる?
(参考)土地を相続するとき、必ずチェックすべき小規模宅地等の特例とは?

2.遺産分割のやり方は主に4種類

2.遺産分割のやり方は主に3種類

法定相続分通りに遺産分割すればトラブルにはならない、と考えている人もいるかもしれません。しかし遺産は必ずしも公平に分けられるものばかりではなく、協議が進まないケースもあります。

スムーズに遺産分割を実施するには、4種類の分割方法をチェックしておくと役立ちます。

なお、相続財産全てに対し、この4つの方法のどれか一つに統一する必要はなく、個々の財産によって、分割方法を変えることもできます。

2-1.そのまま分ける「現物分割」

遺産を現物のまま分けるのが『現物分割』です。遺産の内訳が現金のみであれば、決められた割合で分ければ完了します

しかし遺産が不動産といった現物資産のみの場合、分けるのは至難の業です。例えば遺産は実家のみで、子どもが2人いるとき、家を二等分するわけにはいきません。

2-2.「共有」

相続財産を複数の者によって支配・利用されている状態を『共有』といいます。持分が明確にでき公平感はあります。

しかし、財産を利用・処分するには共有者の同意が必要となり、売却も賃貸もしにくくなってしまいます

これではどちらか一方しか遺産を引き継げなくなってしまいます。受け取れなかった相続人は不満に感じるでしょう。ここまで極端なケースではなくても、公平に分けるのが難しい方法です。

2-3.現金化して分ける「換価分割」

現物のまま遺産を分けるのが難しい場合、売却し現金化して分ける『換価分割』を行ってもよいでしょう。現金以外の遺産を全て売却し、得た現金を分けるため、公平に分けやすい方法です

ただし不動産の売却に譲渡所得税が課されるかもしれません。また、売り急ぐと売却価額が低くなるかもしれません。税金の負担が増える可能性や売却価額に注意しつつ、実施するとよいでしょう。

2-4.遺産、代償金でバランスをとる「代償分割」

中には、親と実家で同居していた相続人がいるケースもあります。その場合、換価分割では住む家がなくなってしまうでしょう。このよう場合には『代償分割』が役立ちます。

遺産を現物で受け取った相続人が、ほかの相続人に対して代償金を支払うことで、分割したものとして扱う方法です。この方法を選択するには、現物で遺産を引き継ぐ相続人に、代償金を支払う資力がなければいけません。

また代償金の金額によっては遺産分割協議が進まない可能性もあります。

3.遺産分割協議書を作成する

3.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議を実施したら『遺産分割協議書』を作成しましょう。現時点で何もトラブルがないとしても、今後どうなるかは誰にも分かりません。後々もめることがないよう、話し合いの内容を書面に残しておくと安心です。

3-1.遺産分割協議書の必要性

法定相続人全員で話し合い、遺産分割について決定したら、あとは分割するだけです。遺産分割協議書の作成は、法的に義務付けられてはいません。

ただし相続人が複数いるなら、遺産分割協議書を作成しておくのが適切です。後々のトラブル防止につながります

また不動産を法定相続分と異なる割合で相続登記するときや、相続税を申告するときには、遺産分割協議書が必要です。これらの手続きのためにも、作成しておきましょう。

3-2.遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書に決められた書式はありません。ただし話し合いの結果や相続財産について正しく記載されていないと、せっかく作っても必要なときに使えない可能性があります

例えば相続財産は確実に特定できるように書きましょう。不動産であれば登記簿謄本に記載されている通りに、預貯金であれば口座番号まで指定します。

加えて相続人全員の署名と、実印での押印も必要です。実印は住民登録している市区町村に登録してある印鑑を指します。

実印で押印し印鑑証明を添付しておけば、書類が正しい手続きのもと作成されたものとすぐに立証可能です。

『遺産分割協議書』の作成について、詳細は下記もご覧ください。

遺産分割協議書は必要?不要?必要な場合の作成手順も解説|相続大辞典|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】

4.遺産分割協議が成立しない場合

4.遺産分割協議が成立しない場合

話し合いを重ねても遺産分割協議が成立しないこともあります。このような場合には、家庭裁判所で『調停』を行います。調停でも遺産分割が決まらないと『審判』です。遺産分割協議が難航した際の流れもチェックしておきましょう。

4-1.遺産分割調停で話し合いを進める

相続人同士の話し合いである遺産分割協議で遺産分割が決まらないときや、話し合いに非協力的な相続人がいるときには、家庭裁判所へ『遺産分割の調停』を申し立てます。

1人もしくは複数人で、そのほかの相続人を相手に申し立てる形式です。調停では事情聴取や資料の提出が求められます。加えて遺産の鑑定も実施し、合意に向けての助言や解決案の提示が行われます

反対する相続人が1人でもおり、話がまとまらないと調停は不成立です。

4-2.調停が不成立の場合は遺産分割審判へ移行

調停がまとまらない場合は『遺産分割の審判』へ移行します。移行は自動的に行われるため、申立人である相続人が行う手続きは特にありません

合意形成が目的の調停に対し、審判は裁判所が客観的な第三者として解決方法を示す手続きです。そのため相続人の中に反対している人がいるとしても、審判の結果に従わなければいけません。

5.分割方法を理解してスムーズな話し合いを

5.分割方法を理解してスムーズな話し合いを

遺言書がない中で遺産分割をする際には、相続人全員で話し合う遺産分割協議を設けます。分割の割合や方法を話し合い、決定した内容は遺産分割協議書を作成し記録しておくと安心です。

話し合いは対面はもちろん、電話やメールでも構いません。相続人全員の合意で協議が成立します。

話し合いがまとまらないときには、家庭裁判所に調停の申立をしますが、ここでも合意に至らないかもしれません。調停不成立の場合には、自動的に審判へ移行する仕組みです。

遺産の承継は相続税の納税とも関係します。相続税の申告期限である10カ月も意識しつつ、手続きを進めましょう。相続税については『税理士法人チェスター』への相談がおすすめです。

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