不動産相続で孫が土地建物を取得する方法-相続の注意点や税金についても解説

不動産相続の原則として、孫は祖父母の法定相続人ではありません。しかし、遺贈や養子縁組などの制度を活用すれば、孫でも不動産を相続できます。
ただし、制度それぞれに適用条件が決まっています。加えて、場合によっては、税金が余計にかかったり、財産を取得する権利が無効になったりする可能性があります。節税やトラブル回避を見据え、状況にあった不動産の取得方法を選択しましょう。
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1.不動産相続で孫が祖父母の財産を取得できるケース
法定相続人の範囲と順位は、以下のとおりです。
▲法定相続人の順位を表した図
亡くなった人の子、親、兄弟の順に相続順位が移るため、基本的に孫は相続人になりません。ただし以下の場合は、例外的に孫が相続人となり祖父母の財産を取得できます。
孫が相続人となる主なパターン
- 代襲相続
- 数次相続
- 養子縁組
- 遺贈
- 死因贈与
参考:法定相続分は相続人の家族構成でこんなに変わる!【ケース別で解説】
参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁
1-1.代襲相続-祖父母の子が先に死亡した
亡くなった人に子がおらず孫だけがいる場合は、代襲相続として孫が相続人になります。代襲相続とは、本来の相続人に代わって1つ下の代が相続人になることです。第1順位の子どもがいなければ孫が、第3順位の兄弟がいなければその子どもである甥や姪が代襲相続人となります。代襲相続人の範囲は以下のとおりです。
▲代襲相続の範囲
亡くなった時点でまだ生まれておらず、お腹の中にいる孫にも、代襲相続人としての権利があります。また被相続人の子どもが養子である場合、養子縁組したあとに生まれた孫であれば代襲相続人になれます。
なお、代襲相続人と通常の相続人で、相続割合が変わることはありません。代襲相続を詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
参考:代襲相続とは?【図解】対象範囲や相続割合を分かりやすく解説|相続税のチェスター
参考:民法887条|e-GOV法令検索
1-2.数次相続-祖父母の死後に相続人の子が死亡した
子どもが相続人となったにも関わらず、相続手続を完了しないうちに死亡した場合、数次相続として孫が相続人となります。
▲数次相続の例
親の死後、子どもが相続を承認する前に亡くなった場合も同様です。数次相続ではなく再転相続として、孫が親の代わりに相続人となります。相続人となる子ども自身が高齢である場合、相続の途中で亡くなってしまうことは珍しくありません。孫が数次相続で相続人となる場合、親の死後3ヵ月以内に不動産を相続するか放棄するか決定しましょう。
ただし、相続放棄できるのは、親が生前に相続放棄を選択していた場合のみです。親がすでに不動産の相続を承認していた場合、子ども(被相続人の孫)は相続放棄できません。数次相続を詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
参考:家族が相次いで亡くなったときの再転相続について解説|税理士が教える相続税の知識
1-3.養子縁組-祖父母の孫養子になる
祖父母の生前に養子縁組を結び、孫が祖父母の養子となれば法律上の立場は孫ではなく子どもとなるため、不動産の相続が可能です。養子縁組は、実の親(被相続人の子ども)が生きていても結べます。
養子に入ると祖父母の苗字を名乗ることになるものの、今までどおり親と生活していても問題はありません。相続割合も、実子と同様です。
また、相続人が増えると基礎控除額が増えるため、節税対策として養子を迎える人は少なくありません。ただし、税制上養子にできる人数は制限があるため注意しましょう。被相続人に実子がいる場合は1人、いない場合は2人までしか計算に含められません。
▲相続税法の養子縁組の人数制限
引用:養子縁組で相続税が節税できる金額と注意点を解説|税理士が教える相続税の知識
後半で詳しく解説しますが、孫を養子にすると相続税が2割加算されるといった注意点もあります。祖父母と孫の養子縁組は、メリットとデメリットをよく把握したうえで手続しましょう。
1-4.遺贈-遺言に不動産は孫に贈与すると記載してもらう
祖父母から孫に遺贈すれば、孫も不動産の相続が可能です。被相続人が遺言で財産と相続する人をそれぞれ指定すると、遺贈が成立します。
遺贈は、本来法定相続人ではない人にも可能な手続です。つまり孫だけでなく、子どもの配偶者や血縁関係にない人も不動産を相続できます。
ただし、遺贈で不動産を取得した場合、相続で取得するよりも各種税金の割合が高くなるため注意しましょう。固定資産評価額の高い不動産を相続するほど、遺贈された孫の税金負担は重くなります。
▲登録免許税と不動産取得税の比較
遺贈する際の相続税を詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
参考:遺贈には相続税がかかる!遺贈を行う際に知っておきたいこと|税理士が教える相続税の知識
1-4-1.包括遺贈と特定遺贈では受遺者の権利が異なることに注意
遺贈には以下の2種類があります。
遺贈の種類
- 包括遺贈
- 特定遺贈
包括遺贈は「○○(孫)に全体の何割の財産を相続させる」といった遺言による遺贈です。一方、特定遺贈では「○○(孫)にこの不動産を相続させる」と財産の種類と相続人を具体的に指定します。
つまり、特定遺贈の場合は遺言書に沿って相続手続を進めるとよいため、遺産分割協議の必要がありません。一方、包括遺贈は割合しか指定されていないため、孫とほかの相続人で遺産分割協議が必要となります。民法上、包括受遺者(遺言で指定された孫)とほかの相続人の権利義務は同等です。
(包括受遺者の権利義務)
第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
とはいえ、遺産分割協議を経なければ包括受遺者は財産を取得できません。確実に孫に不動産を相続させたい場合は、特定遺贈の選択がおすすめです。どちらの遺贈を選択するかは、以下の記事でメリットとデメリットをそれぞれ把握して慎重に決めましょう。
参考:知らないと損!包括遺贈・特定遺贈の違い徹底比較ガイド|税理士が教える相続税の知識
1-5.死因贈与-祖父母の死亡を条件とした契約を結ぶ
死因贈与であっても、孫が不動産を取得できます。死因贈与とは、特定の人が亡くなることを条件として結ぶ贈与契約です。例えば、祖父と孫の間で「祖父が亡くなったらこの不動産を孫に贈与する」と契約を結んだ場合、その契約は死因贈与となります。
死因贈与は両者が同意しさえすれば、口頭でも成立する契約です。親権者の同意があれば祖父母と18歳未満の子どもとの間でも契約を結べます。さらに、人が亡くなることを条件とした契約のため、一方的に祖父母から撤回されることもありません。
ただし、孫が死因贈与契約を結ぶ場合、特定遺贈と同じく税金の割合が高くなります。
死因贈与 | 遺贈(特定遺贈) | |
---|---|---|
登録免許税 | 一律2.0% | 法定相続人:0.4% 法定相続人以外:2.0% |
不動産取得税 | 一律4.0% | 法定相続人:非課税 法定相続人以外:4.0% |
▲不動産を死因贈与した場合の各種税率
死因贈与の手続方法や注意点を詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
参考:死因贈与とは?遺贈との違いやメリット・デメリット、契約手続きの方法を解説 | 相続税のチェスター
参考:民法第554条|e-Gov法令検索
2.孫が不動産を相続する際にかかる税金
孫が祖父母から不動産を相続する際にかかる税金は、主に以下の3種類です。
孫が不動産を相続する際にかかる税金
- 相続税
- 登録免許税
- 不動産取得税
それぞれの相続方法や取得する不動産の評価額によって、税率や計算方法が変わります。誤った相続税を申告すると、税務署から脱税として指摘されることも考えられます。また、不動産の相続税は計算が複雑であるため、税理士に相談して正しい税金の額を計算してもらうと安心です。
2-1.相続税-財産総額により税率が異なる
相続税は、以下の計算式で算出します。
基礎控除額は、「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。また、税率や控除額は基礎控除後の取得金額により異なるため、以下の表を参照しましょう。
手計算でも算出可能ですが、相続税計算シミュレーションを利用すると簡単です。相続人数と相続する財産の額を入力するだけで、相続税額を計算できます。
ただし、不動産を相続する場合、そもそもその土地や建物にいくらの価値があるのか算出する方法が複数あります。つまり、どのように計算するかによって税額が変化するのです。さらに、小規模宅地の特例といった制度を利用することで節税できる場合もあります。
不動産の相続税は計算が特に複雑であるため、税理士への相談がおすすめです。
参考:【相続税の基礎控除】計算式・相続税申告の要否・注意点も解説|税理士が教える相続税の知識
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
2-2.登録免許税-固定資産税評価額から算出
不動産を取得し名義変更する際、登録免許税がかかります。登録免許税は不動産の固定資産評価額に税率をかけて計算する税金です。税率は以下のとおり、どのように不動産を取得するかで異なります。
登録免許税の税率 | |
---|---|
代襲相続・数次相続・養子縁組などによる相続 | 遺贈や死因贈与などによる取得 |
0.4% | 2.0% |
上記のとおり、相続人として不動産を取得する場合の税率は0.4%ですが、遺贈や死因贈与などの形で取得した場合は2.0%となります。
例えば、不動産の固定資産評価額が1億円だったと仮定しましょう。相続による取得であれば相続税は40万円ですが、贈与により取得した場合は200万円です。
ただし以下の条件を満たす不動産に、登録免許税はかかりません。
登録免許税がかからない不動産の条件
- 対象の土地が市街化区域外にある
- 法務大臣が指定する土地である
- 土地の価額(固定資産税評価額)が10万円以下である
また、数次相続の場合は親が払うはずだった登録免許税を免除される場合があります。登録免許税の計算や納付方法は、下記記事をご覧ください。
参考:相続登記に必要な登録免許税の計算方法・納付方法を解説|税理士が教える相続税の知識
参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
2-3.不動産取得税-不動産価格から算出
相続以外の手続で不動産を取得した場合、不動産取得税が発生します。具体的には遺贈や死因贈与、生前贈与といった形で不動産を取得した場合です。固定資産の価額に指定の税率をかけ、計算された税額を支払わなければなりません。税率は以下のとおり、建物の種類によって異なります。
取得日 | 平成20年 4月1日~ 令和6年 3月31日まで |
---|---|
土地・家屋(住宅) | 3.0% |
住宅以外の家屋 | 4.0% |
なお、生前贈与で相続時精算課税制度の適用を受けた場合であっても相続とは見なされず、不動産取得税が発生するため注意しましょう。
3.孫が不動産を相続する際の注意点
孫が不動産を相続する場合、以下の2点に注意しましょう。
孫が不動産を相続する際に知っておきたいこと
- 孫が相続や贈与によって祖父母の財産を取得する場合は相続税が2割加算される
- 法定相続人に保障された取り分である遺留分の侵害に注意
3-1.孫が相続によって祖父母の財産を取得する場合は相続税が2割加算される
代襲相続以外の方法で孫が祖父母の不動産を取得する場合、相続税が2割加算されます。国税庁では、相続税が2割加算される人を以下のとおり定義しています。
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
図にすると以下のとおりです。
上記の図は、相続税が2割加算される人を示しています。相続前に死亡した長男の子どもは代襲相続となるため、2割加算になりません。しかし、長女の子ども(孫娘)に遺贈で不動産を相続させた場合や、孫を養子として相続人に加えた場合は、どちらも相続税が2割加算されます。加算額の計算方法は、以下のとおりです。
相続税額の2割加算が行われる場合の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額×0.2
例えば、税額控除前の相続税額が100万円であれば加算額を含めた税額は、合計120万円となります。相続する財産の額が大きいほど、税金の負担も増える計算です。
参考:不動産の相続税計算や評価方法は?相続税対策や手続きも解説|税理士が教える相続税の知識
3-2.法定相続人に保障された取り分である遺留分の侵害に注意
遺贈や死因贈与は、遺留分侵害請求の対象となります。遺留分とはそれぞれの相続人に最低限保障される相続財産です。
例えば「祖父が亡くなったら持っているすべての不動産を孫に渡す」といった内容で死因贈与を結んだとしましょう。この場合、ほかの相続人の遺留分を侵害している可能性があります。侵害された遺留分は、相続人が訴えれば取り戻せる可能性が高くなります。
つまり遺言や死因贈与契約があっても、ほかの相続人の遺留分を侵害する内容であった場合はトラブルの原因になるため注意しましょう。
参考:遺留分侵害額の請求調停|裁判所
参考:民法1042条|e-GOV法令検索
4.税制や贈与について理解して祖父母の不動産をスムーズに相続しよう
孫が祖父母の不動産を取得するには、複数の方法があります。それぞれ税制や手続にメリットとデメリットがあるため、迷いが生じた場合はぜひ司法書士法人チェスターへご相談ください。相続関係の実績豊富な司法書士がサポートいたします。また、相続税の計算でお困りの際は、税理士法人チェスターへお問い合わせください。相続問題に特化した税理士が、状況に合わせて最適な手続をご提案いたします。
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