相続税申告はe-Tax(電子申告)でできる?メリット・やり方について

「相続税申告でe-Taxを利用するメリットは?」
「e-Taxソフトで相続税申告するやり方は?」
この記事をご覧のみなさんは、このようにお悩みではないでしょうか。
結論から言うと、個人が相続税申告をする際にe-Taxを利用するのは、難易度が高い&デメリットが多いのでおすすめしません。
スマホから気軽に相続税申告はできませんし、相続人の連名で行う共同申告もできません。
この記事では、e-Taxソフトのダウンロード方法や相続税申告のやり方をご紹介しますが、相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
この記事の目次 [表示]
1.個人がe-Taxで相続税申告するのはおすすめしない
e-Tax(国税電子申告・納税システム)とは、インターネット等を利用して、国税に関する各種手続きを電子的に行えるシステム(ソフトウェア)のことです。
e-Taxを利用すれば自宅などから申告や納税の手続きができるため、所得税の確定申告等で利用したことがあるという方も増えています。
しかし、個人がe-Taxを利用して相続税申告をするのは難易度が高く、デメリットが多いのでおすすめしません。
引用:国税庁「相続税e-Tax特設サイト」
国税庁「令和6年度におけるオンライン(e-Tax)手続の利用状況等」によると、令和6年度における相続税申告のe-Taxの利用件数は12万1,707件で、利用率は全体の50.3%とされています。
多くの人がe-Taxを利用して相続税申告をしているように見えますが、これは税理士による相続税申告を含んだ数字です。
財務省「令和5事務年度国税庁実績評価書」によると、令和5年度の相続税申告に係る税理士関与割合は86.3%です。
税理士による利用を含めたe-Taxの利用件数が50.3%ということは、個人によるe-Taⅹの利用率はごく限られていると推測されます。
1-1.e-Tax(WEB版)でスマホから相続税申告はできない
e-Taxにはスマホから手軽に利用できるWEB版(確定申告書等作成コーナー)がありますが、相続税の申告書の作成はできません。
WEB版のe-Taxソフトで作成できるのは、「所得税」「決算書・収支内訳書(+所得税)」「消費税」「贈与税」に係る申告書等のみです。

次章で詳しく解説しますが、個人がe-Taxで相続税の申告書を作成するためには、パソコン(OS/Windows)に専用ソフトをダウンロードする必要があります。
令和7年11月現在、スマホで気軽に相続税の申告書を作成することはできませんのでご注意ください。
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個人が会計ソフトを使わずにe-Taxを利用して相続税申告をするのは、紙の申告書を作成するよりも難易度が高くなりますのでおすすめしません。
相続税申告は専門的知識が求められる、特に難易度が高い税目です。相続税の申告義務がある方は、相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
2.個人が相続税申告にe-Taxを利用するデメリット
個人が相続税申告をする際に、e-Taxを利用するのをおすすめしない理由は、以下のようなデメリットがあるためです。
それでは詳細を確認していきましょう。
2-1.相続税申告に関する知識が求められる
e-Taxによる相続税申告をする場合、相続税申告に関する基本的な知識が求められます。
この理由は、e-Taxには入力方法などの解説はあるものの、相続税の申告書の作成方法に関する解説は一切ないためです。
仮に間違えた内容で相続税申告をしても、エラー表示などはされません。
過少申告をしていると税務調査が行われるリスクが高まりますし、逆に相続税を過大申告していても、税務署からの指摘が入ることはありません。
また、e-Tax特有の入力項目が増えるため、紙の申告書を作成するよりも難易度が高くなります。
2-2.相続税の自動計算機能はない
e-Taxには相続税額を自動で計算する機能はないため、自分で相続税額を正しく計算しなくてはなりません。
相続税の計算は非常に複雑で、「○○万円の不動産を相続したら相続税は○万円」とは計算できません。
相続税の課税対象となる財産の評価額を計算し、何度も足したり割ったりしながら各相続人の納税額を算出しなくてはなりません。
相続税に強い税理士は、相続税申告をするための税務・会計ソフトを利用して相続税額を計算しています。
これらのソフトを利用せずに、個人で相続税額を計算するのは難易度が高く、計算ミスするリスクが高まります。
2-3.複数の相続人の連名による共同申告ができない
複数の相続人がいるケースにおいて、税理士が相続税申告をする場合、相続人全員で1つの相続税の申告書を作成して、共同申告をします。
しかし、e-Taxは納税者が1人ずつ申告する仕組みであるため、相続人全員による共同申告はできません。相続人が2人いれば、申告書を2回作成する必要があります。
e-Taxソフトには「参照作成機能」があり、特定の相続人が作成した相続税申告書のデータを、他の相続人が取り込むことができます。
他の相続人の相続税の申告書は簡単に作成できるものの、人数分作成する手間はかかります。
また、複数の相続人がいる場合は、全員分の利用者識別番号が必要となりますのでご注意ください。
2-4.一度に送信できる添付書類のデータ容量に上限がある
相続税の申告書には、戸籍謄本や遺産分割協議書などの必要書類を添付しなくてはなりません。
e-Taxでもこれらの添付書類を提出できますが、データ容量に以下のような制限があります。
| 一送信あたりの上限 | 追加送信方式を併用 | |
|---|---|---|
| ファイル数 | 136ファイル | 最大1,496ファイル |
| データ容量※ | 14.0MB | 最大154.0MB |
※PDFファイルの合計
申告等データの送信方法は、同時送信方式と追加送信方式の2種類があります。
同時送信方式とは「申告書等のデータとイメージデータを同時に送信する方式」のことで、追加送信方式とは「申告等データの送信後に受信通知から追加で送信する方式」のことです。
受信通知の格納後1年間に限定して、同一の受付番号に対して10回まで送信可能です。
2-5.相続税申告用のe-Taxソフトのダウンロードが必要
e-Taxで相続税申告をする場合は、パソコンにe-Taxソフトをダウンロードする必要があります。
ただし、e-TaxソフトはMacOSに対応していませんので、自宅のパソコンがApple製であれば、WindowsOSのインストールが必要となります。
また、パソコンが古かったり容量が少なかったりすると、e-Taxソフトのダウンロードに時間がかかってしまいます。
3.相続税申告にe-Taxを利用するメリット
個人が相続税申告をする際にe-Taxを利用するのは、デメリットが多いのでおすすめしません。
しかし、以下のようなメリットがあるのも事実です。
デメリットよりもメリットの方が多いと感じる人であれば、e-Taxによる相続税申告を検討しましょう。
3-1.時間を気にせず自宅から相続税申告できる
e-Taxを利用する最大のメリットは、時間を気にせず自宅から相続税申告ができることです。
24時間いつでも相続税の申告書を作成できるため、平日に税務署に出向くのが難しい人の利便性がアップするでしょう。
また、郵送する手間も時間も省けるため、申告期限が近づいている人にもおすすめです。
3-2.本人確認書類や原本の添付が不要
e-Taxによる相続税申告では、本人確認書類や遺産分割協議書などの原本の添付が不要です。
e-Taxを利用する際の本人確認は、利用者識別番号で行いますので、住民票等の取得は不要です。
また、遺産分割協議書には印鑑証明の原本の添付が求められますが、スキャンしたイメージデータを送信するため、原本提出は不要です。
住民票や印鑑証明書などを取得する手間も費用も削減できるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
3-3.提出書類をペーパーレスで保存・共有できる
e-Taxによる相続税申告をすれば、申告書に添付した必要書類を、ペーパーレスでデータ保存できるというメリットもあります。
相続税申告では膨大な数の書類の提出を求められますが、紙ベースで保存をしていると整理するのが難しく、紛失するリスクもあります。
しかし、データ保存であれば場所も取りませんし、バックアップしておけばデータを紛失するリスクも回避できます。
必要書類をスキャンしてデータ化しておけば、他の相続人とのデータの共有もしやすくなります。
3-4.相続税のダイレクト納付できる
e-Taxによる相続税申告をすれば、相続税をダイレクト納付できるようになるのも大きなメリットです。
ダイレクト納付とは、e-Taxから電子申告をして納付利用の届出をすることで、預金口座からの口座引落としによって相続税を納付する方法のことです。
平日に金融期間や税務署の窓口に行く必要なく、24時間いつでもインターネットで相続税を納付できます。
納付手数料もかかりませんし、納付書を作成する手間も省くことができます。
ダイレクト納付についての詳細は、国税庁「ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続」をご覧ください。
4.相続税申告をe-Taxでするための3つの事前準備
e-Taxを利用して相続税申告をする場合は、以下の3つの事前準備が必要ですので、予め知っておきましょう。
具体的な事前準備については、e-Tax公式「e-Taxソフトについて」も参考にしてください。
4-1.利用者識別番号を取得する
e-Taxソフトをダウンロードして、全ての機能を利用するには利用者識別番号を取得する必要があります。
利用者識別番号とは、e-Taxを利用するために必要な、半角16桁の番号のことです。
引用:e-Tax「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて」
WEBで「e-Taxの開始(変更等)届出書」を作成し、納税地を所轄する税務署長に「開始届出書」を提出(送信)すれば、利用者識別番号と暗証番号が通知されます。
なお、所得税の確定申告などですでに利用者識別番号を所有している人は、新たに取得する必要はありません。
4-2.電子証明書を取得する
e-Taxを利用して申告等データを作成した場合、電子署名が必要になりますので、予め「電子証明書」を取得する必要があります。
電子証明書とは、データの作成者が誰なのか、送信されたデータが改ざんされていないかを確認するために用いられる、本人確認の役割を果たすものです。
個人でe-Taxを利用して相続税申告をするのであれば、「公的個人認証サービス」を利用することとなります。
詳細は、「e-Taxで利用できる電子証明書」をご覧ください。
4-3.パソコンにe-Taxソフトをインストールする
利用者識別番号と電子証明書を取得したら、e-Taxソフトをパソコンにインストールします。
引用:e-Tax「e-Taxソフトのダウンロードコーナー」
e-Taxソフトは、「e-Taxソフトのダウンロードコーナー」からダウンロードできます。
5.相続税申告をe-Taxで行う手順・流れ【やり方】
e-Taxで相続税申告をするための事前準備が完了したら、e-Taxソフトを使って相続税申告をします。
具体的なやり方は以下の手順ですので、参考にしてください。
「e-Taxソフト操作マニュアル」も参考にしてください。
5-1.e-Taxソフトを起動する
まずはe-Taxソフトを起動して、操作画面を確認しましょう。
引用:国税庁「e-Taxソフト操作マニュアル」
基本操作をマスターして、電子申告の流れを確認しておくと安心です。詳しくは、「3 電子申告を始める」をご覧ください。
5-2.相続税の申告書を作成する
まずは「申告・申請等基本情報画面(相続税申告用)」に基本情報を入力し、その後相続税の申告書を作成します。

相続税の申告書は、紙ベースの申告書と同じく、第9表~第15表で財産や債務に関する情報を入力するところから始めます。
その後、第4表~第8表で税額控除を適用させた後、第1表で相続税の納付額を計算し、第2表で相続税の総額を計算します。
詳しくは、「【2025年最新】相続税申告書の書き方を3ステップで徹底解説!必要書類から提出までわかる完全マニュアル」をご覧ください。
5-3.添付書類を組み込む
次に、相続税の申告書に添付する、必要書類の組み込みを行います。
- 必要書類のPDFデータをパソコンに取り込む
- e-Taxソフトの「添付書類一覧」画面で「組み込み」をクリック
- 組み込みたい添付資料を選択して「開く」をクリック
なお、イメージデータは項目ごとに、複数の添付書類をまとめておくことが推奨されます。
詳しくは、「【相続税の申告書の添付書類・必要資料】綴じ方、入手方法も解説」をご覧ください。
5-4.作成した申告書等に電子署名を付与する
納税者が作成した申告書であることを証明するために、申告書等に電子署名を付与します。
「署名可能一覧」の画面を表示すれば、電子署名の付与が可能な送信前の申告・申請等が表示されます。
そして申告書を選択して電子証明書を指定すれば、電子署名が付与されます。
5-5.申告書等を送信する
電子署名の付与が完了したら、送信可能な申告・申請等を確認して、受付システムに送信します。
- 申告・申請などを選択する
- 「送信」をクリック
- 受付システムにログインする
申告・申請等の送信が完了すると、受付システムから送信結果が即時通知されますので確認しましょう。
6.相続税申告でe-Taxを利用する際のポイント
e-Taxによる相続税申告をする場合は、以下の3つのポイントを抑えておきましょう。
それでは詳細を確認していきましょう。
6-1.相続税額の計算方法
e-Taxソフトには相続税の自動計算機能はありませんので、相続税額の計算方法を予め知っておかなくてはなりません。
相続税を計算するためには、課税遺産総額から相続税の基礎控除を差し引き、法定相続分で按分したと仮定して税率を乗じ、家族全体の相続税額を計算します。
そして家族全体の相続税額を、実際の分割割合に応じて按分し、さらに各人の属性によって税額控除を適用しなくてはなりません。

相続財産の内容が預貯金だけであり、法定相続人の数が1人などであれば、ご自身で計算していただけます。
しかし、正確な相続税額を計算するためには、相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
詳しくは、「相続税の金額はいくら?【早見表あり】平均や計算方法も解説」をご覧ください。
6-2.参照作成機能の使い方
個人がe-Taxを利用して相続税申告する場合、各相続人がそれぞれ申告書を作成しなくてはなりません。
ここで便利なのが、e-Taxソフトの「参照作成機能」です。
参照作成機能とは、特定の相続人が作成した相続税申告書のデータを、他の相続人が取り込める機能のことです。
一部の入力項目を変更するだけで、他の相続人の相続税の申告書を簡単に作成できます。
具体的なやり方は、「相続税申告書を作成する」をご覧ください。
6-3.相続税の申告内容の修正方法
個人がe-Taxを利用して相続税申告したものの、申告データに間違いがある場合は、訂正をしなくてはなりません。
申告期限内であれば、訂正後の申告データを作成して送信します。
この際に提出するのは、提出した部分だけではなく、すべての申告書等を送信しなくてはなりません。
追加で添付書類を提出する場合は、申告書等送信票(兼送付書)とともに提出することとなります。
ただし、申告期限を過ぎている場合は、手続き方法が変わりますので、最寄りの税務署に問い合わせをしましょう。
詳しくは、e-Tax公式「データ送信(送信及び送信確認)」をご覧ください。
7.相続税申告はe-Taxではなく税理士に依頼がおすすめ
個人でe-Taxを利用して相続税申告するのは難易度が高く、メリットよりもデメリットの方が多いです。
所得税の確定申告等でe-Taxを使い慣れている人であれば、相続税申告も簡単にできるように思われます。
しかし、相続税の計算方法や申告書の作成方法は、非常に複雑です。
特例や税額控除を適用しないと、相続税額が過大になる可能性も否定できませんし、申告内容に不備があると税務調査が入るリスクもあります。
相続税申告は相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
7-1.税理士法人チェスターにご相談を
税理士法人チェスターは、年間3,000件超えの相続税申告実績を誇る、相続税専門の税理士法人です。
各種特例や税額控除を適用した正確な相続税額の計算はもちろん、複数の相続人の方の共同申告も承ります。
すでに相続が発生されているお客様でしたら、初回面談が無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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税理士法人チェスターは相続に関する業務のみに特化している専門事務所であり、創業からこれまで培ってきた知見やノウハウがずっと引き継がれているため、難解な案件や評価が難しい税務論点にもしっかり対応致します。
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