相続人の人数の数え方を徹底解説|養子・代襲相続・相続放棄の注意点

相続人の人数は相続税の計算の起点となる、基礎控除や非課税枠を計算するための重要な要素です。
これらの基礎控除や非課税枠の計算では、実際に遺産を取得した「相続人」ではなく、民法や相続税法のルールに基づいた「法定相続人の数」を用います。
この数え方を1人でも誤ると、相続税の過少申告・申告漏れ・過大納税につながる可能性があるため注意が必要です。
この記事では、法定相続人の人数の数え方の基本ルールから、養子・代襲相続・相続放棄など注意が必要なケースについてまとめました。
相続人の人数別の基礎控除額や非課税枠の早見表、相続税の計算の流れもわかりやすく整理しています。相続発生後の不安解消にぜひお役立てください。
この記事の目次 [表示]
1.相続人の人数で相続税の「基礎控除」や「非課税枠」が決まる
法定相続人の人数は、相続税の計算時における重要な要素です。
この理由は、相続税の基礎控除や非課税枠は、「法定相続人の数」を基に計算するためです。
相続人の人数を用いる計算
相続人の人数の数え方を間違えると、過少申告・無申告・過大申告につながる可能性があるので注意が必要です。
まずは、法定相続人の数を基に計算する、3つの控除・非課税枠について知っておきましょう。
1-1.相続税の基礎控除の計算
相続税の基礎控除とは、すべての相続において適用できる控除のことで、相続税が課税されるか否かの目安となる数値です。
相続税の基礎控除額は、以下のように計算します(相続税法第15条)。
相続税の基礎控除額
=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が2人であれば基礎控除額は4,200万円、3人であれば基礎控除額は4,800万円となります。
相続税の基礎控除額には、相続税がかかるか否かのボーダーラインのような役割があります。
そのため、相続人の人数の数え間違いは、相続税の申告義務判定のミスに直結するため注意が必要です。
参考:【相続税の基礎控除】いくらまで無税?計算方法を早見表付きで解説
1-2.死亡保険金の非課税枠の計算
生命保険から支払われる死亡保険金は、民法上の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡を事由として支払われる金銭ですので、みなし相続財産として相続税が課税されます(被保険者=契約者≠受取人という契約形態のみ)。
しかし、死亡保険金は「遺族の生活を保障する」ことを目的とする金銭であるため、相続税法上では以下のような非課税枠が設けられています(相続税法第12条1項6号)。
死亡保険金の非課税枠
=500万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が2人で、保険会社から支払われた死亡保険金は1,500万円であったとします。
受取人が法定相続人である場合、非課税枠は1,000万円(500万円×2人)となるため、残りの500万円が課税対象となります。
参考:生命保険(死亡保険金)の相続税はいくら?非課税枠・計算シミュレーションも解説
1-3.死亡退職金の非課税枠の計算
被相続人の勤務先から支払われた死亡退職金も、民法上の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡を事由として支払われる金銭ですので、みなし相続財産として相続税が課税されます。
死亡退職金にも以下の非課税枠が設けられており、死亡保険金の非課税枠とは別枠で適用できます(相続税法第12条1項7号)。
死亡退職金の非課税枠
=500万円×法定相続人の数
死亡退職金の対象となるのは、会社から支給された退職手当金・功労金などです。
これらが支給される場合、法定相続人の人数を正しく把握しておくことで、非課税枠を最大限活用できます。
参考:死亡退職金の相続税はいくら?非課税枠・受取人についても解説
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相続人の人数は相続税の計算時の重要な要素であり、数え方を間違えると過少申告・申告漏れ・過大納税に直結します。
正確な相続税の申告義務判定を行うためにも、必ず相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
2.相続人の人数の数え方の基礎!配偶者・子・父母・兄弟姉妹
法定相続人の人数を正しく数えるためには、まず「誰が法定相続人になるのか」という基本ルールを押さえておく必要があります。
法定相続人の順位は民法第887・889・890条で定められており、上位の順位者がいる場合、下位の順位者は相続人にはなれません。

法的に婚姻関係が成立している被相続人の配偶者は常に法定相続人となり、その他は子→父母→兄弟姉妹の順で法定相続人が決まります。
法定相続人の範囲について、詳しくは以下ページをご覧ください。
参考:法定相続人とは?【図解付き】範囲・順位・割合と相続税への影響を解説
2-1.法定相続人が第一順位の「子(直系卑属)」である場合
被相続人に子(直系卑属)がいる場合は、全員が第一順位の相続人になります。
例えば、被相続人に配偶者と子ども2人がいれば、相続人の人数は3人となります。

第一順位である「子」は実子のみならず、養子・認知した婚外子(非嫡出子)・代襲相続人(孫)も含まれます。
ただし、養子の人数には特別な上限が定められており、普通養子・特別養子・孫養子のどの養子に該当するのかで取扱いが異なるのでご注意ください。
まずは「子がいる場合は必ず第一順位になる」という原則は、押さえておきましょう。
2-2.法定相続人が第二順位の「父母(直系尊属)」である場合
被相続人に子がいない場合に限り、父母(直系尊属)が第二順位の相続人となります。
例えば、被相続人に配偶者がいるものの子はおらず、父母が健在であれば、相続人の人数は3人です。

なお、被相続人の父母がすでに亡くなっているものの、祖父母が健在であれば、祖父母が相続人となります(これは代襲相続ではありません)。
父母も祖父母もいない場合は第二順位が存在しないため、次の第三順位へ相続権が移ります。
2-3.法定相続人が第三順位の「兄弟姉妹(傍系卑属)」である場合
被相続人に子がおらず、すでに父母も他界している場合は、兄弟姉妹(傍系卑属)が第三順位の相続人となります。
例えば、被相続人に配偶者はいるものの子がおらず、父母はすでに他界している場合、兄弟姉妹が2人いれば、相続人の人数は3人です。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(甥姪)が代襲相続人となり、相続人の数が増える可能性があります。
3.相続人の人数の数え方に注意が必要な5つのケース
法定相続人の人数は、原則どおりに数えればよい場合がほとんどです。
しかし、以下のような例外的なケースでは、相続税法上の取扱いが変わるため、相続人の人数に含めるかどうかを検討しなくてはなりません。
この章では、それぞれのケースにおいて「相続人の人数に含めるか否か」を解説しますので確認しておきましょう。
3-1.相続人が養子である場合
相続人が養子である場合、相続税法では「法定相続人の数」に数える養子の人数に、上限が定められています(相続税法第15条2項)。
実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか、養子を法定相続人の人数に含めることはできません。

ただし、養子の人数制限が適用されるのは、「普通養子縁組」をした養子のみです(孫養子を含む)。
特別養子縁組をした養子や、再婚した配偶者の実子を養子とした場合(連れ子養子)などは、税法上「実子と同等」として扱われるため、この人数の制限は適用されません。
なお、民法においてこのような制限はありませんので、すべての養子も実子と同じ相続権を有することとなります。
参考:養子縁組すると相続はどうなる?実親の相続権や節税メリットについて解説
3-2.代襲相続があった場合
代襲相続があった場合、法定相続人の人数が増える可能性があります。
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が死亡等により相続できない場合に、その人の子が代わりに相続権を得る制度のことです。

代襲相続人となる孫や甥姪が複数名いる場合、すべての代襲相続人を相続人の人数に含めることとなります。
例えば、本来の相続人である子がすでに死亡していて、代襲相続人となる孫が2人いれば、その2人を法定相続人の人数に加えます。
代襲相続人の数が増えれば、法定相続人の人数も自動的に増えることとなります。
参考:代襲相続とは?代襲相続人の範囲はどこまで?相続割合や遺留分を解説
3-3.相続放棄があった場合
相続放棄があった場合は、相続放棄をした人も相続人の人数に含めて、基礎控除や非課税枠を計算しなくてはなりません(相続税法第15条2項)。
相続放棄をした場合、法的には「最初から相続人ではなかった」として扱われるものの、相続税の計算においては公平性を保つことが優先されるためです。
ただし、相続放棄した人が死亡保険金や死亡退職金を受け取る場合、非課税枠は適用できません(相続税法基本通達12-7、12-9)。
参考:相続放棄した場合の相続税の計算方法│基礎控除・生命保険の非課税枠も解説
3-4.相続欠格・相続廃除があった場合
相続欠格や相続廃除があった場合、該当する人は、相続税の基礎控除や非課税枠の計算式における「法定相続人の数」から除外されます。
これは、相続欠格や相続廃除が、「相続人の地位そのものを失う制度」であるためです。
ただし、相続欠格や相続廃除に該当する人に子がいる場合は、代襲相続によってその子が法定相続人(代襲相続人)となります。
代襲相続が起こった場合は、基礎控除や非課税枠の計算式に含む、法定相続人の人数が増える可能性があるのでご注意ください。
なお、相続欠格や相続廃除に該当する人が、死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合、非課税枠は適用できません(相続税法基本通達12-7、12-9)。
ただし、代襲相続によって新たに法定相続人となった孫や甥姪が死亡保険金を受け取る場合、その代襲相続人自身には非課税枠が問題なく適用されます。
参考:【簡単解説】相続欠格とは?欠格事由や相続廃除との違いについて
3-5.遺言書があった場合
遺言書で相続人以外の人(受遺者)に財産を渡すことが指定されていても、法定相続人の人数は変わりません。
受遺者は「遺言によって財産を取得する人」であり、相続権を有する相続人ではないためです。
基礎控除額や非課税枠の計算には、遺言の内容にかかわらず、法定相続人の人数を用います。
遺言書がある場合でも、人数の数え方は原則どおりである点を押さえておきましょう。
参考:遺言書がある場合の相続税はどうなる?手続きと注意点を解説
4.相続人の人数別!相続税の基礎控除額と非課税枠の早見表
相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算し、死亡保険金・死亡退職金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で決まります。
そのため、法定相続人の人数が分かれば、基礎控除額や非課税枠が具体的にいくらになるのかを確認できます。
相続人1人~5人の場合の、基礎控除額・死亡保険金の非課税枠・死亡退職金の非課税枠を一覧でまとめたので参考にしてください。
| 基礎控除額 | 非課税枠 (死亡保険金) | 非課税枠 (死亡退職金) | |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 500万円 | 500万円 |
| 2人 | 4,200万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 3人 | 4,800万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 4人 | 5,400万円 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 5人 | 6,000万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
法定相続人が1人増えるごとに、基礎控除額は600万円、非課税枠は500万円ずつ増える仕組みです。
まずは、ご自身の家庭の人数に当てはめて、控除額・非課税枠の目安を確認しておきましょう。
ただし、相続税にはいくつもの控除や特例があるため、これらの基礎控除や非課税枠を「どのタイミングで適用するのか」が分かりにくい場合があります。
次章で相続税の計算の流れをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
5.相続人の人数は相続税の総額の計算にも影響する
相続税の総額を計算する際にも、法定相続人の人数が重要な役割を果たします。
これは、家族全体に課される相続税の総額は、法定相続分に応じて分割したと仮定して計算する仕組みになっているためです。

この章では、相続税の計算の流れを4つのステップに分けて解説します。
どのタイミングで基礎控除や非課税枠を適用するのかも整理していますので、参考にしてください。
参考:相続税はいくらかかる?自分で計算するための仕組みと手順【税理士監修】
5-1.STEP①相続税の課税価格の合計を計算する
相続税の計算では、まず相続税の課税価格(財産の評価額)を計算することとなります。
相続税の対象となる財産を個別に評価して、相続財産の総額を計算します。

死亡保険金や死亡退職金の非課税枠は、このタイミングで適用します。
つまり、相続税の課税価格に含めるのは、「非課税枠を差し引いた後の死亡保険金・退職金」です。
参考:相続税の対象になる・ならない財産【一覧】課税対象の判定基準も解説
5-2.STEP②相続税の基礎控除を差し引く
次に、相続人の数を基に計算した相続税の基礎控除を差し引き、課税遺産総額を計算します。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算します。

この時点で課税遺産総額が0円以下であれば相続税はかからず、申告義務もありません。
逆に課税遺産総額が1円以上あれば、相続税が課税されますので、申告が必要となります。
5-3.STEP③法定相続分で按分して税率や控除を適用する
課税遺産総額が確定したら、一旦法定相続分で分割し、相続税の税率を乗じて控除を適用します。
このように「一旦法定相続分で分割した」と仮定するのは、すべての相続における公平性を保つという目的があるためです。

例えば、課税遺産総額が6,000万円で、法定相続人が子3人である場合、法定相続分は2,000万円ずつです。
ここに税率を乗じるため、2,000万円×税率15%-控除額50万円となり、1人あたりの仮の相続税額は250万円と算出されます。
5-4.STEP④相続税の総額を計算する
法定相続分に応じた仮の相続税額を合計して、相続税の総額を計算します。
これが家族全体に課せられる相続税の総額、つまり1つの相続において相続人全員に対して課せられる相続税の総額です。

相続税の総額を各相続人が実際に取得する財産の割合に応じて按分し、各人の相続税の納付税額を計算します。
最後に、属性に応じた税額控除(配偶者控除等)を適用して、実際の相続税の納付額を算出します。
6.相続人の人数に関してよくある疑問まとめ
相続人の人数は、相続税の控除額や非課税枠、さらには総額計算にも影響するため、誤解しやすいポイントが多くあります。
ここでは、特に質問の多い相続人の人数に関する疑問をまとめて解説します。
6-1.Q1:相続人の平均人数は何人?
A:相続人の平均人数は2.17人です。
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、被相続人数16万6,730人に対し、相続人数(納税者)は36万1,260人でした。
被相続人1人あたりの平均は、36万1,260人÷16万6,730人で、約2.17人と算出されます。
一般的な家庭では「配偶者+子1~2人」や「子1~2人」が多いため、相続人の人数もこの範囲に収まる傾向があります。
6-2.Q2:相続人が3人いる場合の相続分はどうなる?
A:相続人が3人いる場合は、「誰が相続人なのか」で法定相続分が変わります。
例えば、配偶者+子2人の合計3人であれば、配偶者の相続分1/2、子どもの相続分1/2(各自1/4ずつ)です。
一方で、子どもだけで合計3人の場合は、相続分は均等に1/3ずつとなります。
6-3.Q3:相続人がいない場合はどうなる?
A:法定相続人がいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。
ただし、被相続人と特別な関係があった人は、「特別縁故者」として家庭裁判所に請求できる場合があります。
遺言書があれば受遺者が財産を取得できるため、相続人がいない場合は遺言の有無が非常に重要です。
参考:法定相続人がいない場合(相続人不存在)の遺産の行方と生前対策
6-4.Q4:胎児は相続人の人数に含まれる?
A:お腹の中にいる胎児も、相続人として人数に含まれます。
民法では「胎児は相続については既に生まれたものとみなす」と規定されていますが、出生後に生存していることが条件です。
死産の場合は相続人の人数に含まれませんので、相続開始時点で妊娠中の場合は、出生後に人数が確定します。
参考:胎児は相続できる│相続権の発生条件・相続税等を徹底解説
6-5.Q5:内縁の妻や夫(事実婚)は相続人の人数に含まれる?
A:内縁の妻や夫(事実婚のパートナー)は、法定相続人の人数には含まれません。
法律上の婚姻関係が成立していないことから、配偶者としての相続権が認められていないためです。
財産を渡したい場合は、遺言書で受遺者として指定する必要があります。
7.相続人の人数の数え方に迷ったら相続専門の税理士へ相談を
相続人の人数は、相続税の計算に直結する重要な要素です。
人数を1人でも誤って数えると、過少申告・申告漏れ・過大納税につながる可能性があるため注意が必要です。
特に、養子・代襲相続・相続放棄・相続欠格や廃除・遺言書の有無などは、自己判断が難しいケースが多く、専門的な確認が必要です。
不安がある場合は、相続専門の税理士に相談して、正しい相続人の人数を確定してもらいましょう。
7-1.税理士法人チェスターにご相談を
税理士法人チェスターは、年間3,000件以上の申告実績を誇る、相続税専門の税理士法人です。
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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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