公社債の相続税評価を徹底解説!種類ごとの計算式と既経過利息の扱い
国債や地方債、社債などの公社債は、相続が発生したときに相続税の課税対象になるため、亡くなった日(課税時期)の「時価」をもとに評価額を求める必要があります。
また、公社債には「証券取引所で売買されているもの」や「売買参考統計値があるもの」などの種類があるため、それぞれに応じた方法で適切に評価しなければなりません。
この記事では、公社債の相続税評価をする方法を相続税専門の税理士がわかりやすく解説します。
この記事の目次 [表示]
1.公社債の相続税評価は原則として「市場価格」の有無で決まる
公社債の相続税評価額は、原則として被相続人が亡くなった日(課税時期)における「時価(市場価格)」にもとづいて計算します。相続税法では、財産を取得したときの時価で評価することが基本原則となっているためです。
公社債の時価とは、基本的に「市場価格」あるいはそれに準ずる価格のことです。市場価格がない公社債の場合は、発行時の価格(発行価額)を基準として相続税評価額を算出します。
また、公社債の種類によっても相続税評価額の計算方法は異なります。
公社債を利払い方式で分類する場合、定期的に利子が支払われる「利付公社債」と券面額を下回る価額で発行される「割引発行の公社債」の主に2種類です。
〇利付公社債と割引発行の公社債
- 利付公社債(利付債):額面金額に対して一定の利率で定期的に利子(クーポン)が支払われる債券
- 割引発行の公社債(割引債):利子の支払いがない代わりに額面金額よりも安い価格で発行される債券
利付債は、発行時に決められた金利(利率)が満期まで変わらない固定利率債と市場の金利に連動して利率が変わる変動利率債がありますが、相続税評価額の計算方法に違いはありません。
割引債(ゼロクーポン債)は、満期時に額面金額で償還されることで購入額との差額が利益となります。
公社債を相続したときは、利付債と割引債のどちらに該当するのかを調べたうえで評価額を算出しましょう。
2.公社債の評価方法は3つの区分がある
公社債は評価のルール上、大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 上場公社債:証券取引所に上場されているもの
- 売買参考統計値のある公社債:上場はしていないが、日本証券業協会が価格データを公表しているもの
- その他の公社債:上記以外(外国債券など)
公社債の種類ごとの評価方法は以下のとおりです。
| 公社債の種類 | 評価額の計算方法 |
|---|---|
| 上場公社債 |
|
| 売買参考統計値のある公社債 |
|
| その他の公社債 |
|
※上場公社債は死亡日が休場の場合は「直近の営業日」の最終価格を用いる
※売買参考統計値は「平均値」を用いる
※売買参考統計値がある上場公社債の場合、「課税時期の最終価格」と「売買参考統計値(平均値)」の低いほうを用いる
※外国債券は(現地の市場価格がある場合)課税時期の TTB で円換算し、休日は直近日のTTBを用いるのが一般的
区分を誤って計算してしまうと評価額が本来とは大きく乖離してしまい、税務署から指摘を受ける原因になりかねません。必ず銘柄ごとにどの区分に該当するかを確認しましょう。
ここからは、上場公社債、売買参考統計値あり、その他の公社債ごとの詳細な計算方法を解説します。
2-1.上場公社債
上場公社債とは、証券取引所で売買されており、誰でも市場価格を確認できる国債や社債のことです。上場公社債の評価額は、課税時期(被相続人が亡くなった日)の最終価格を用いて計算します。
課税時期の最終価格は、日本取引所グループが公表している「東京証券取引所日報(債券相場表)」などで確認が可能です。
もし亡くなった日が土日祝日であり、公社債の取引がなく最終価格がつかない場合は、亡くなった日にもっとも近い市場営業日の最終価格をもとに評価額を計算します。
2-1-1.上場利付債の評価方法
利付債の場合、評価額は「元本が戻ってくる価値」に「死亡日までに発生しているが、まだ受け取っていない利息の手取り分」を加えて算出します。計算式は以下のとおりです。
(課税時期の最終価格+源泉所得税額相当額控除後の既経過利息の額)×券面額/100円
※「課税時期の最終価格+源泉所得税額相当額控除後の既経過利息の額」は券面額100円当たりの単価として計算
市場で公表されている価格は通常、利息が含まれていません。そのため、亡くなった日までに発生している利息(税引後)を「100円あたりの単価」として最終価格に加算し、全体の評価額を算出します。
また、既経過利息の額からは「源泉所得税額」の相当額を控除します。源泉所得税の税率は20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%・住民税5%)です。
具体的な計算例を見てみましょう。
【例】額面100万円の上場利付債を保有していた場合
亡くなった日の最終価格が「100円につき100.50円」で、前回利払い日の翌日から死亡日までの利子(税引前)が100円あたり「0.20円」であったと仮定します。
- 既経過利息(税引後)の計算
まず、受け取るはずの利息から源泉徴収税額を引いた手取り額を計算します。結果は以下のとおりです。- 0.20円 -(0.20円×20.315%)= 0.159円(小数点以下第4位切り捨て)
- 相続税評価額の算出
続いて、計算した税引後の利息額を課税時期の最終価格(100.50円)に足し合わせて評価額を算出します。- 相続税評価額:(100.50円 + 0.159円)× 1,000,000円÷100 = 1,006,590円
計算の結果、相続税評価額は1,006,590円と算出されました。
なお、日本証券業協会が売買参考統計値を公表している上場銘柄の場合、「取引所の最終価格」と「売買参考統計値の平均値」のどちらか低いほうを用いて相続税評価額を計算します。
2-1-2.上場割引債の評価方法
割引債は、市場価格(課税時期の最終価格)のみで相続税評価額を求めます。
利子に相当する部分はすでに価格に含まれていると考えられるため、利付債とは異なり既経過利息を加算する必要はありません。計算式は以下のとおりです。
【例】額面100万円の上場割引債を保有していた場合
亡くなった日の最終価格が「100円につき98.50円」だったとします。割引債は既経過利息の計算が必要ないため、最終価格と保有額面だけで評価額が決まります。
- 相続税評価額:98.50円×1,000,000円÷100 = 985,000円
よって、相続税評価額は985,000円となります。
利付債と同様に、売買参考統計値の平均値のほうが低い場合は、そちらを用いて相続税評価額を計算することが可能です。
2-2.売買参考統計値のある公社債
証券取引所には上場していないものの、証券会社の店頭で頻繁に取引されており、日本証券業協会が「売買参考統計値」を公表している銘柄の場合は、その売買参考統計値をもとに相続税評価額を算出します。
日本証券業協会が公表する統計値には「平均値」「中央値」「最高値」「最低値」の4種類があります。このうち、相続税評価の際に用いるのは、課税時期(亡くなった日)における「平均値」です。
具体的な計算式は以下のとおりです。
- 利付債:(課税時期の平均値+源泉所得税額相当額控除後の既経過利息の額)×券面額/100円
- 割引債: 課税時期の平均値×券面額÷100円
利付債については、上場公社債と同様に源泉所得税を控除した後の既経過利息の額を加算して求めます。
具体的な銘柄の平均値を調べるには、日本証券業協会のWebサイトにある「公社債店頭売買参考統計値」から課税時期にあたる日付のExcelファイルやPDFファイルなどをダウンロードするとよいでしょう。
2-3.その他の公社債
上場しておらず、かつ売買参考統計値もない公社債には市場価格が存在しません。そのため、原則として「発行価額(額面)」をもとに相続税評価額を求めます。
評価方法は以下のとおりです。
- 利付債:(発行価額+源泉所得税額相当額控除後の既経過利息の額)×券面額÷100円
- 割引債:{発行価額+(券面額 - 発行価額)×(発行日から課税時期までの日数÷発行日から償還期限までの日数)}×券面額÷100円
3.個人向け国債など特殊な公社債の評価
個人向け国債や外国債券、転換社債などは、通常の公社債と評価方法に異なる部分があります。以下では、公社債の種類ごとに評価方法を詳しく解説します。
3-1.個人向け国債(変動10年・固定5年・固定3年)
個人向け国債とは、国が発行し、個人のみが購入できる国債のことです。元本割れがなく、最低金利が保証されている点が特徴です。
個人向け国債の相続税評価額は、市場価格ではなく「解約返戻金相当額」となります。つまり、「もし亡くなった日に中途解約をしたらいくらお金が戻ってくるか」という金額が相続税評価額になります。
計算式は以下のとおりです。
「中途換金調整額」とは、満期前に換金する場合に差し引かれるペナルティのようなものです。「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」という計算式で算出します。
この「0.79685」は「1−20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税の税率)」で求められたものです。
発行された直後や金利が上昇している局面では、中途換金調整額が経過利子を上回り、いわゆる「元本割れ」の状態になることがあります。
正しい評価額を知るためには、取扱金融機関(郵便局や銀行など)で試算をしてもらうか、財務省の「中途換金シミュレーション」を活用するとよいでしょう。
3-2.外国債券(外国公社債)
外国債券は、発行体、通貨、発行場所のいずれかが外国である債券です。
外国公社債の相続税評価額を求める方法は、基本的に国内債券と同じです。「利付債と割引債」「上場公社債、売買参考統計値が公表される銘柄、あるいはその他の銘柄」に分類したうえで評価を行います。
一方、評価の際は現地の市場価格に課税時期(被相続人が亡くなった日)の「TTB(対顧客電信買相場)」という為替レートを掛けて日本円に換算する必要があります。
TTBは、外貨を円に戻すときに適用される為替レートです。死亡日が土日や祝日で為替相場がない場合、その課税時期前の相場のうちもっとも近い日のTTBを用いて評価します。
外国公債券は為替レートの変動による影響を強く受けるため、購入時よりも円安が進んでいれば評価額(相続税)は高くなり、円高であれば低くなります。
外国債券の評価方法について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
3-3.ディスカウント債
ディスカウント債とは、額面の金額よりも安い割引価格で発行されつつ、額面に対して利息も支払われる債券のことです。利付公社債と割引発行公社債の中間的な性質を持っており、償還日までは特定の指数に連動して価格が変動しますが、満期の時には額面の金額で償還されるという特徴があります。
ディスカウント債の相続税評価額は以下の計算式で求めます。
発行価額+{額面金額と発行価額の差額×(発行日から課税時期までの日数÷発行日から償還期限までの日数)}+経過利息の額(源泉徴収相当控除後)
評価額を求める際は「購入時の価格」に「時間の経過で積み上がった償還差益(含み益)」と「まだ受け取っていない利息」の両方を足します。
発行価額に償還差益と利息の両方を足す理由は、ディスカウント債が「大幅な割引発行によって安く買える」「利払いによって利息がつく」という2つの性質を併せ持っているためです。
単なる利付債として評価すると「安く買ったことによる償還差益」が反映されません。一方、割引債の評価方法では「利息」が漏れてしまいます。
そのため、財産評価基本通達に基づき、両方の要素(時間の経過で増える償還差益と未収の利息)を合算することで評価することが相応しいとされています。
なお、もし「亡くなった日の時点における予想売却価額」が評価額を下回るならば、「予想売却価額(既経過利息を加算して源泉徴収税額を差し引いたもの)」で評価してもよいとされています。
3-4.転換社債(CB/転換社債型新株予約権付社債)
転換社債(CB)とは、定期的に利息を受け取る社債としての性質と、決められた条件で発行企業の株式に交換できる権利を持つ債券です。債券の安全性と株式の収益性を兼ね備えた金融商品といえます。
転換社債の評価方法は以下のとおりです。
| 評価方法・計算式 | |
|---|---|
| 1. 金融商品取引所に上場されている転換社債 | (金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格※1×券面額÷100)+源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額×券面額÷100 |
| 2. 日本証券業協会に店頭登録された転換社債 | (日本証券業協会の公表する課税時期の最終価格※1×券面額÷100)+源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額×券面額÷100 |
| 3. 上記以外の転換社債(非上場等) | 発行会社の株価が転換価格以下の場合(株価≦転換価格) (発行価額×券面額÷100)+源泉所得税相当額控除後の既経過利息の額 発行会社の株価が転換価格を超える場合(株価>転換価格) |
※1:最終価格がない場合は、課税時期に最も近い日の最終価格を採用
基本的には通常の利付公社債と同じ方法で評価しますが、非上場で日本証券業界の店頭登録もなく、かつ発行会社の株価が転換価格を超える場合は評価方法が異なる点には注意が必要です。
4.評価額に加算する「既経過利息」の計算と注意点
利付公社債やディスカウント債の相続税評価においては「既経過利息(きけいかりそく)」を正しく計算することが大切です。
既経過利息は「前回の利払日の翌日から、死亡日までの期間」に対応する利息です。
亡くなった日の時点ではまだ口座に支払われてはいないものの、時間の経過とともに発生している「もらう権利のある利息」であるため、相続財産に含めて評価額を計算する必要があります。
また、評価額を求める際は既経過利息の20.315%を「源泉所得税相当額」として差し引きます。それぞれの計算式は以下のとおりです。
- 既経過利息:額面100円あたりの金額×利率×経過日数÷365
- 源泉所得税相当額:既経過利息×20.315%
公社債の売買価格には既経過利息が含まれていない「裸値段」であるケースがほとんどであるため、別途計算する必要がありますが、基本的には口座を開設する先の金融機関に依頼できます。
相続税を計算する際は評価額を正確に算出する必要があるため、公社債の既経過利息は自身で計算するのではなく、金融機関に依頼するほうがよいでしょう。
5.公社債の相続税評価に必要な書類と調査方法
公社債の相続税評価額を算出するためには、口座がある証券会社から「残高証明書」を取り寄せます。
残高証明書を発行する際は「被相続人の死亡が確認できる書類(例:戸籍謄本・住民票除票の写し)」や「被相続人と相続人の関係性が確認できる書類(例:戸籍謄本・戸籍全部事項証明書)」など、金融機関が指定する書類が必要です。
残高証明書に記載される情報や請求時の必要書類、請求手順などは証券会社によって異なります。
相続が開始されたときは、亡くなった人が口座を開設していた証券会社を速やかに特定し、相続の際に必要な手続きや請求できる書類などをよく確認しましょう。
6.公社債の評価は複雑!正確な計算は税理士へ
公社債は「上場か非上場か」「利付債か割引債か」などで評価方法が異なります。また、個人向け国債やディスカウント債、外国債券などは通常とは異なる評価ルールがあるため、公社債を相続する場合は相続税の専門知識がないと正確に評価額を算出することは難しいでしょう。
そこで、公社債の相続税評価については相続税専門の税理士に相談することをおすすめします。
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