マンション相続時にやるべきことは?税金の求め方も解説

亡くなった親や配偶者などがマンションを所有していた場合、遺言書の内容を確認するか、相続人全員で遺産分割協議をして新しい所有者を決めます。取得者が決まったら法務局で「相続登記」をしてマンションの名義を変更しましょう。
マンションを含めた遺産の総額が相続税の基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合は、10ヶ月以内に申告手続きも必要です。
さらに、マンションの相続には「管理組合への届出が必要」「分筆による現物分割ができない」など、土地や戸建てとは異なる注意点があることも押さえておきましょう。
この記事では、マンションを相続する際の手続きの流れと期限、登記手続きの方法、相続税の計算方法などを相続税専門の税理士が解説します。
この記事の目次 [表示]
1.マンション相続の際にやるべきこと一覧
マンションの相続は以下の手順で進めていきます。
〇マンションを相続するときの流れ
- 遺言書の有無を確認する
- 法定相続人と相続財産を調査する
- 遺産分割協議で取得者を決定する
- マンションの名義変更(相続登記)をする
- 相続税を申告・納付する
- 管理組合への届出をする
相続が開始されたら、亡くなった方(被相続人)が遺言書を残していないか確認しましょう。遺言書が残されていた場合、基本的にはその記載内容にしたがって遺産が分割・承継されるためです。
あわせて、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて「法定相続人」を確定します。被相続人の配偶者は常に法定相続人となり、その他の親族は以下の順位にしたがって決まります。
- 第1順位:子(実子だけでなく養子や認知された婚外子を含む)
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母など)
- 第3順位:傍系血族(兄弟姉妹)
マンション以外にも、預貯金、有価証券、不動産などの相続財産がないか漏れなく調査しましょう。被相続人が残した借入金や未払金などの債務も調査します。
遺言書がない場合は、法定相続人と相続財産が確定したあとに「遺産分割協議」を行います。協議には原則として相続人全員が参加しなければなりません。合意した分割内容は遺産分割協議書にまとめます。
取得者が決まったら、法務局で相続登記をしてマンションの名義を変更しましょう。相続財産の合計が一定額を超える場合は、相続税の申告も必要です。
また、マンションの相続人は管理組合に対して所有者(組合員)や管理費・修繕積立金の引き落とし口座などが変わったことを届け出る必要があります。
2.マンション相続で失敗しないために知っておくべき3つのポイント
マンション相続で押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
〇マンション相続で押さえておきたいポイント
- マンションの相続後は名義変更(相続登記)が必須
- 相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内
- 土地や戸建ての相続とは異なる注意点がある
3つのポイントについて、以下で解説します。
2-1.マンションの相続後は名義変更(相続登記)が必須
相続登記とは、法務局の登記簿に記録されている不動産の名義人を亡くなった人から相続人へと変更する手続きのことです。

令和6年(2024年)4月から相続登記が義務化されたため、相続によってマンションの所有権を取得したときは、そのことを知った日から3年以内に必ず申請しなければなりません。
正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される場合があります。
亡くなった人の名義のまま放置していると、相続した人が所有者であることを第三者へ証明できません。そのため、マンションを売却したり第三者に貸したりなどできなくなります。
遺産分割協議が長引いているなどの理由で期限内に相続登記をすることが難しい場合は「相続人申告登記」を行う方法があります。
〇相続人申告登記とは
- 自らが登記記録上の不動産の相続人であることなどを法務局の登記官に申し出て登記簿に記録する制度
相続人申告登記の申し出をした人は登記義務を果たしたものとみなされます。ただし所有権を移す登記ではないため、不動産を相続する人が決まったときは3年以内に相続登記を申請する必要があります。
2-2.相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続したマンションを含む遺産の総額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を上回る場合は、相続税の申告が必要です。
相続税の申告・納付の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。
相続税の申告が必要であるにもかかわらず、期限までに申告手続きをしていないと加算税や延滞税の対象になる可能性があります。

申告期限までに遺産分割協議がまとまらない可能性がある場合は、「未分割申告」を行って法定相続分で分けたものとして相続税を申告・納付しましょう。
未分割申告をした場合、遺産分割協議が成立して税額が確定したあと、必要に応じて更正の請求または修正申告を行います。
- 確定後の税額<当初申告額:「更正の請求」により払い過ぎた税金を還付してもらえる
- 確定後の税額>当初申告額:「修正申告」をして追加の税金を納める
未分割申告について詳しくは下記の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:【相続税の未分割申告】時効・デメリット・書き方などを解説!
2-3.土地や戸建ての相続とは異なる点がある
マンションの相続は、土地や戸建ての相続とは主に以下の3点が異なります。
〇マンション相続が土地や戸建てと異なる主な点
- 敷地は区分所有者全員の共有のため土地を分筆できない
- 管理組合への対応が必要
- 管理費や修繕積立金という維持費がかかる
マンションの敷地は区分所有者の全員が共有しているため、通常の土地とは異なり分筆(土地を複数に分けて登記する手続き)をして物理的に分けることができません。
そのため、1人がマンションを相続して他の相続人に代償金を払う「代償分割」や、マンションを売却して現金化したうえで分ける「換価分割」が選ばれるケースも多くあります。
また、多くのマンションでは、管理規約で相続などで新たに組合員の資格を取得した人は直ちに管理組合へ届け出る必要があるなどと定めています。
届出をしないと、管理費・修繕積立金の請求や口座振替手続き、総会通知・議決権行使書の送付などが滞り、管理組合との間でトラブルが生じるおそれがあります。
遺産分割協議がまとまらず、誰も住まない空き家の状態であっても、マンションを所有している限りは管理費や修繕積立金の支払い義務は発生します。
遺産分割前のマンションは相続人の共有状態となるため、相続人間で支払方法や負担割合を話し合い、滞納しないようにしましょう。
3.マンションの相続税はいくら?基礎控除、評価額、税額の計算方法
マンションを相続した際「いくらの相続税がかかるのだろうか」と気になる方は少なくありません。
相続税額は、マンションの相続税評価額やその他の遺産の評価額、法定相続人の数、適用できる特例・税額控除で異なります。
ここでは、相続税の計算手順とマンションの評価額の算出方法を解説します。
なお、マンションの相続税の計算方法は以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:マンションの相続税はいくら?相続税評価額の計算方法と相続手続き
3-1.相続税の計算手順
相続税を計算する流れは以下のとおりです。
- 各相続人の取得財産から債務・葬式費用を差し引いて課税価格を求める
- 相続人ごとの課税価格を合計する
- 合計額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を算出する
- 法定相続分で分けたと仮定して按分する
- 「取得金額×税率−控除額」で各相続人の仮の税額を計算し合計して相続税の総額を求める
- 相続税の総額を実際の取得割合で按分し税額控除を差し引いて納付税額を求める
課税価格は、不動産や預貯金などのプラスの財産から、借入金や未払金、相続人が負担した葬儀費用を差し引いた金額です。
相続人ごとの課税価格を合計し、そこから基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を引くと、相続税がかかる課税遺産総額を算出できます。
計算手順5では以下の速算表を用いて算出します。
〇相続税の速算表
引用:国税庁「No.4155 相続税の税率」
相続税は、正味の遺産総額が基礎控除額を超えた部分にのみ課税される仕組みです。基礎控除額の範囲内に収まっていれば相続税はかからず、申告も不要です。
相続が開始されたときは、遺産の評価額を適切に算出し、法定相続人も漏れなく調査したうえで正味の遺産総額と基礎控除額を比較して、相続税の申告が必要かどうか適切に判断しましょう。
3-2.マンションの相続税評価額の算出方法
マンションの相続税評価額は、建物部分の評価額と土地部分(敷地利用権)の評価額を合計して算出します。
敷地利用権とは、簡単にいえばマンションの住戸(専有部分)の所有権とセットで持っている土地の権利のことです。
建物部分は、固定資産税評価額をそのまま用います。固定資産税評価額は市町村が計算する不動産価格であり、固定資産税などの税金を計算するときの基準となる評価額です。毎年4〜6月ごろに送付される固定資産税課税明細書で確認できます。
土地部分(敷地利用権)の評価額は、敷地全体の評価額に敷地権の割合をかけて計算します。計算式は以下のとおりです。
- 土地部分の評価額=路線価(1㎡あたり)×土地面積(㎡)×敷地権の割合
路線価は、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの評価額です。敷地権の割合は、「専有部分の床面積÷すべての専有部分の床面積の合計」であり、法務局で取得できる登記事項証明書に記載されています。
路線価が定められていない地域にマンションがある場合は、倍率方式を使います。
- 倍率方式の計算式=固定資産税評価額×評価倍率
路線価と評価倍率は、いずれも国税庁ホームページの「財産評価基準書」で調べられます。
3-3.【令和6年改正】区分所有マンションの相続税評価が変更に
令和6年(2024年)1月1日以降の相続・贈与から、居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンションの住戸の部分)の評価方法が変わりました。
これは、従来の評価方法ではマンションの市場価格と相続税評価額との間に大きな乖離が生じることがあり、これを利用した過度な節税(いわゆるタワマン節税)が問題視されていたためです。
今回の改正は、課税の公平性を確保するために、市場価格との開きが大きいマンションの評価額を引き上げてより実態に近い価額に調整されます。評価額の計算式は以下のとおりです。
- マンションの相続税評価額=建物部分の評価額×区分所有補正率+土地部分の評価額×区分所有補正率
区分所有補正率とは、マンションの市場価格と従来の相続税評価額との乖離を補正する係数のことです。
評価方法が見直されたことで、マンションの相続税評価額が市場価格の6割を下回るときは、補正により6割程度にまで引き上げられるようになりました。
評価方法の詳しい計算については、以下で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:【2024年改正】タワマン節税とは?改正後の影響と対策をわかりやすく解説
3-4.相続税の負担を抑える特例・税額控除
相続税の負担を抑える特例・税額控除には以下のようなものがあります。
| 名称 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例 | 評価額の減額 | 被相続人の自宅や事業に使われていた宅地等の評価額を最大80%減額する特例 |
| 配偶者の税額軽減 | 税額控除 | 配偶者の取得分が1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額まで非課税となる制度 |
| 未成年者控除 | 税額控除 | 18歳未満の相続人について成人までの年数に応じた額を控除 |
| 障害者控除 | 税額控除 | 85歳未満の障害者について85歳までの年数に応じた額を控除 |
| 相次相続控除 | 税額控除 | 10年以内に2回相続が発生した場合に、2回目の相続税から一定額を差し引ける制度 |
| 贈与税額控除 | 税額控除 | 相続財産に加算された生前贈与財産に課税された納税済みの贈与税額を相続税額から控除 |
| 外国税額控除 | 税額控除 | 海外の財産について外国で相続税を支払った場合に、その税額を日本の相続税額から控除 |
一定の要件を満たし、マンションの土地部分(敷地利用権)が特定居住用宅地等に該当した場合、小規模宅地等の特例により330㎡まで評価額を80%減額できます。
各特例や税額控除は要件を満たせば併用できる場合もあるため、組み合わせて適用することができれば税負担をより抑えられるでしょう。
ただし、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減などは、適用した結果として税額が0円になる場合でも、相続税申告書の提出が必須となる点には注意が必要です。
また、遺産分割が完了している必要もあるため、未分割申告をする際は配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用できません。
しかし、未分割申告の際に「申告後3年以内の分割見込書」を申告書に添付すると、遺産分割が完了したあと4ヶ月以内に更正の請求をすることで特例が適用できます。
特例・税額控除の要件や控除額について詳しくは、以下で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:相続税の控除・特例とは【一覧表付】要件・控除額を税理士が解説
3-5.マンションの相続税額をシミュレーション
では、マンションを相続するときの相続税はどのように計算するのでしょうか。シミュレーションで確認してみましょう。
3-5-1.ケース1:基礎控除内で税額0円になるケース
まず、遺産総額が基礎控除額を下回っており、相続税がかからないケースを見ていきます。
【例】相続人が妻と子2人の合計3人、相続財産が相続税評価額3,000万円のマンションと預貯金500万円のケースを考えます。
遺産総額と課税遺産総額の算出
まず「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で基礎控除額を求めます。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
法定相続人は3人であるため、基礎控除額は4,800万円となりました。
相続税の判定
遺産総額は「マンション3,000万円+預貯金500万円=3,500万円」です。
よって遺産総額3,500万円が基礎控除額4,800万円の範囲内に収まっているため、相続税は0円です。申告手続きも不要となります。
3-5-2.ケース2:小規模宅地等の特例を適用しない場合
続いて、遺産総額1億8,000万円・相続人3人、小規模宅地等の特例を使わない場合の相続税を試算します。
【例】相続人が配偶者と長女・長男の合計3人、相続財産が特例適用前の評価額1億円のマンション(建物部分6,000万円・土地部分4,000万円)と預貯金8,000万円のケースを考えます。
配偶者がマンションと預貯金の一部を、長女と長男が残りの預貯金を取得するものとして相続税額を計算します。
課税遺産総額の算出
遺産総額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を求めます。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税遺産総額:遺産総額1億8,000万円−基礎控除額4,800万円=1億3,200万円
課税遺産総額は1億3,200万円となりました。
相続税の総額の算出
課税遺産総額1億3,200万円を法定相続分(配偶者1/2・長女1/4・長男1/4)で分けると、各人の取得金額は配偶者6,600万円、長女と長男はそれぞれ3,300万円となります。
相続税の速算表をもとに各人の仮の税額と相続税総額を計算すると結果は以下のとおりとなります。
- 配偶者の仮の税額:6,600万円×30%−700万円=1,280万円
- 長女の仮の税額:3,300万円×20%−200万円=460万円
- 長男の仮の税額:3,300万円×20%−200万円=460万円
- 相続税の総額:1,280万円+460万円+460万円=2,200万円
相続税の総額は2,200万円と算出されました。
各相続人の納付税額
相続税の総額2,200万円を、各相続人が実際に取得した金額に応じて按分します。
配偶者がマンションと預貯金2,000万円、長女と長男が預貯金3,000万円ずつ取得する場合、各人の課税価格は以下のとおりとなります。
- 配偶者の課税価格:マンション1億円+預貯金2,000万円=1億2,000万円
- 長女の課税価格:預貯金3,000万円
- 長男の課税価格:預貯金3,000万円
- 課税価格の合計額:1億2,000万円+3,000万円+3,000万円=1億8,000万円
各人の課税価格をもとに相続税の税額を計算すると結果は次のとおりとなります。
- 配偶者の按分後の税額:2,200万円×1億2,000万円÷1億8,000万円=1,466万6,600円
- 長女の按分後の税額:2,200万円×3,000万円÷1億8,000万円=366万6,600円
- 長男の按分後の税額:2,200万円×3,000万円÷1億8,000万円=366万6,600円
※100円未満切り捨て
配偶者の税額は1,466万6,600円と算出されましたが、取得分が1億6,000万円以下のため、配偶者の税額軽減により納付税額は0円となります。
最終的な納付税額は、長女と長男の366万6,600円、合計733万3,200円です。
3-5-3.ケース3:小規模宅地等の特例を適用する場合
最後に、遺産総額と法定相続人をケース2と同じであるとして、マンションの土地評価に小規模宅地等の特例を適用したときの税額を試算します。
【例】相続人が配偶者と長女・長男の合計3人、相続財産が1億円のマンション(建物部分6,000万円・土地部分4,000万円)と預貯金8,000万円であり、土地部分(敷地権)に小規模宅地等の特例を適用します。
マンションの土地部分が特定居住用宅地等に該当するとして評価額と相続税額を求めます。
マンションの評価額の算出
土地部分について、小規模宅地等の特例による80%減額を反映した評価額を求めます。
- 土地部分の評価額:4,000万円×(1−0.8)=800万円
- 特例適用後のマンション評価額:建物部分6,000万円+土地部分800万円=6,800万円
課税遺産総額の算出
特例適用後のマンション評価額と預貯金を合算し、基礎控除額を差し引きます。
- 特例適用後の遺産総額:マンション6,800万円+預貯金8,000万円=1億4,800万円
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税遺産総額:遺産総額1億4,800万円−基礎控除額4,800万円=1億円
課税遺産総額は1億円となりました。
相続税の総額の算出
課税遺産総額1億円を法定相続分(配偶者1/2・長女1/4・長男1/4)で分けると、仮の取得金額は配偶者5,000万円、長女と長男はそれぞれ2,500万円となります。速算表をもとに各人の仮の税額と総額を計算します。
- 配偶者の仮の税額:5,000万円×20%−200万円=800万円
- 長女の仮の税額:2,500万円×15%−50万円=325万円
- 長男の仮の税額:2,500万円×15%−50万円=325万円
- 相続税の総額:800万円+325万円+325万円=1,450万円
相続税の総額は1,450万円と算出されました。
各相続人の納付税額
相続税の総額1,450万円を、各相続人が実際に取得した金額に応じて按分します。
ケース2と同様に、配偶者がマンションと預貯金の一部、長女と長男が残りの預貯金を半分ずつ取得する場合、各人の課税価格は次のとおりとします。
- 配偶者の課税価格:特例適用後のマンション6,800万円+預貯金2,000万円=8,800万円
- 長女の課税価格:預貯金3,000万円
- 長男の課税価格:預貯金3,000万円
- 課税価格の合計額:8,800万円+3,000万円+3,000万円=1億4,800万円
各人の税額は以下のとおりとなります。
- 配偶者の按分後の税額:1,450万円×8,800万円÷1億4,800万円=862万1,600円
- 長女の按分後の税額:1,450万円×3,000万円÷1億4,800万円=293万9,100円
- 長男の按分後の税額:1,450万円×3,000万円÷1億4,800万円=293万9,100円
※100円未満切り捨て
今回のケースも配偶者の取得分は1億6,000万円以下のため、配偶者の税額軽減により納付税額は0円となり、最終的な納付税額は長女と長男の293万9,100円ずつ、合計587万8,200円となります。
小規模宅地等の特例を使わないケースの納付税額733万3,200円と比較して145万5,000円下がる結果となりました。
4.マンションの名義変更(相続登記)をする方法
先述のとおり相続登記が義務化されたため、マンションを相続したときは忘れずに法務局で名義変更手続きをしましょう。
ここでは、相続登記に必要な書類、手続きの流れ、費用について解説します。
4-1.相続登記に必要な書類
相続登記をする際は、戸籍謄本や住民票などの書類を集め、登記申請書を作成して相続したマンションの住所を管轄する法務局に提出します。
遺産分割協議をしてマンションを取得する人を決めた場合の必要書類は、以下のとおりです。
| 必要書類 | 入手先 |
|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場※1 |
| 被相続人の住民票除票または戸籍の附票 | 住民票の除票:最後の住所地の市区町村役場 戸籍の附票:本籍地の市区町村 |
| 相続人全員の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書) | 各相続人の本籍地の市区町村役場※1 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 住所地の市区町村役場※2 |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 住所地の市区町村役場 |
| 固定資産課税明細書 | 毎年4月ごろに市区町村から送付 |
| 遺産分割協議書 | 相続人が作成し、全員の実印を押印 |
| 登記申請書 | 自身で作成 |
※1:本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)の戸籍等であれば本籍地以外の市区町村の窓口でも請求が可能(コンピュータ化されていない一部の戸籍等を除く)
※2:遺産分割協議書に押印された印鑑に関するもの
これまで、戸籍謄本などを収集するときは亡くなった人の本籍地を管轄する市区町村役場に請求する必要がありましたが、令和6年(2024年)3月1日からは「戸籍証明書等の広域交付制度」が始まり、最寄りの役場の窓口でも取得できるようになりました。
申請書の様式や記載例は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」から無料でダウンロードできます。
遺言書がある場合や、法定相続人の全員で法定相続分どおりに分割する場合、必要書類が異なります。
書類の取得に時間がかかることも想定されるため、マンションの所有者が亡くなったときは、早めに必要書類を確認して計画的に集めましょう。
4-2.自身で相続登記をする場合の流れ
自身で相続登記を進める場合の流れは以下のとおりです。
〇自身で相続登記をする流れ
- 登記事項証明書を取得しマンションの登記内容を確認する
- 遺言書の確認または遺産分割協議で新しい所有者を決める
- マンションの所在地を管轄する法務局を調べる
- 必要書類を収集する
- 登記申請書を作成し書類とともに法務局へ提出する
- 登記識別情報通知を受け取る
相続が開始されたら、登記事項証明書を取得して、マンションの専有部分(マンションの住戸など区分所有者が単独で所有する部分)や敷地権の有無・割合、所有者などを確認します。
申請書類の提出方法は窓口・郵送・オンライン申請の3とおりです。
〇相続登記の申請方法
- 法務局窓口での提出:管轄法務局の不動産登記窓口へ申請書類を直接持参する
- 郵送:管轄法務局宛てに申請書類一式を郵送する
- オンライン申請:登記・供託オンライン申請システムからインターネット経由で申請する
申請に不備がなければ、受理後2週間~1ヶ月程度で登記が完了し、登記識別情報通知が交付されます。
相続登記の手続きは、マンションの相続人自身でもできますが、司法書士に依頼することも可能です。
たとえば、相続人が多い場合や複数の不動産がある場合、市区町村役場や法務局で手続きをする時間を確保することが難しい場合は、司法書士に任せたほうがよいでしょう。
4-3.登記手続きをする際の費用(登録免許税・司法書士報酬)
相続登記にかかる主な費用には、登録免許税と司法書士報酬、必要書類の取得費用があります。
〇相続登記にかかる主な費用
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
- 司法書士報酬:3万~10万円程度が目安
- 必要書類の取得費用:数千~1万円前後(戸籍謄本が1通450円、除籍謄本が750円、住民票や印鑑証明書が300円程度が目安)
登録免許税は、法務局で登記手続きをするときに国へ納める税金です。
仮に固定資産税評価額が6,000万円のマンションを相続した場合、登録免許税は「6,000万円×0.4%=24万円」です。
登録免許税には以下の免税措置が設けられており、以下のケースでは納税が免除されます。
〇登録免許税の免税措置(令和9年3月31日まで)
- 相続により土地を取得した者が相続登記をせずに亡くなった場合の相続登記
- 評価額100万円以下の土地を相続する場合の相続登記
司法書士報酬は、相続登記を司法書士に依頼する場合の費用です。目安は3万~10万円程度ですが、依頼先の司法書士事務所や案件の複雑さなどで変わります。
相続人自身で相続登記をするのであれば、司法書士報酬はかかりません。
5.マンションを相続するときの分け方
マンションを複数の相続人で分ける場合の方法は、4つに分かれます。
〇マンションの主な分け方
- 現物分割:マンションをそのままの形で特定の相続人が取得する方法
- 代償分割:マンションを取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う方法
- 換価分割:マンションを売却して得た代金を相続人で分ける方法
- 共有分割:複数の相続人がマンションを共有名義で保有する方法
4つの分け方について、それぞれの特徴や注意点を解説します。
5-1.現物分割
現物分割は、遺産を物理的にそのままの形で各相続人へ分配する方法です。「長男はマンションと預貯金2,000万円、長女は預貯金3,000万円と株式3,000万円」といったように、財産の種類ごとに分けます。
現物分割のメリットとデメリットは以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
現物分割であればマンションを手放さずに済むため、相続人が引き続き住んだり、賃貸に出して家賃収入を得たりすることが可能です。
売却による現金化や他の相続人に対する金銭の支払いといった手間もかかりません。
ただし、土地のように分筆はできないため、マンションの住戸を相続人ごとに物理的に分けて相続することは基本的にできません。
相続人が複数いる場合、マンション以外の相続財産が少ないと、現物分割によって公平に分割することが難しくなります。
現物分割が向くのは、以下のようなケースであると考えられます。
- マンションを引き継ぎたい相続人がいる
- マンション以外にも預貯金や株式などの遺産が十分にある
5-2.代償分割
代償分割は、特定の相続人がマンションを取得し、他の相続人へ代償金を現金で支払う分け方です。メリットとデメリットは以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
代償分割であれば、被相続人のマンションを取得して住み続けたり、賃貸マンションを相続して引き続き賃料収入を得たりできます。
現物分割をすると不公平になるような場合でも、代償金を支払って清算することで、より公平に遺産を分割しやすくなるでしょう。
一方で、マンションを取得する相続人には、代償金を支払うだけの資力が求められます。
また、代償金の金額を決める際にマンションの価値を相続税評価額、固定資産税評価額、時価(実勢価格)のどれで算出するかで揉めるケースが少なくありません。
たとえば、マンションを取得する側が代償金の支払額を抑えるために、時価よりも低い相続税評価額での評価を主張し、受け取る側の相続人と意見が対立してトラブルに発展することがあります。
代償分割が向くのは、以下のようなケースであると考えられます。
- マンションを手放したくないものの、現物分割では公平に分けることが難しい
- マンションを取得する相続人に代償金の支払能力がある
5-3.換価分割
換価分割は、マンションを売却し、得られた代金を相続人で分ける方法です。主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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換価分割であれば、現金化したうえで分割するため、相続人の人数や希望などに応じて配分しやすいです。
売却した後は、管理費や修繕積立金、固定資産税といったランニングコストもかかりません。
ただし、マンションの立地や築年数などによっては売れ残る場合があります。また、売却益(譲渡所得)が生じて譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課税されることもあります。
マンションを手放したくないと考える相続人がいると、売る・売らないで意見が割れてトラブルになるかもしれません。
換価分割が向くのは、以下のようなケースです。
- 相続人が誰もマンションを引き継ぎたがらない
- 代償金を支払える相続人がいない
5-4.共有分割
共有分割は、複数の相続人がマンションを共有名義のまま保有する分け方です。この方法を選ぶとさまざまなトラブルが起こる可能性があるため、基本的にはおすすめできません。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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マンションを共有名義で相続する場合、売却したり代償金を支払ったりすることなく公平に分割できるため相続人の負担は少ないといえます。
しかし、マンションの売却・賃貸・建替えには、共有者の一定数の同意が必要です。共有者同士で意見が対立すると、マンションの売却や活用などができないまま放置されてしまいかねません。
また、共有者が亡くなるとその配偶者や子供などに共有持分が相続されることで、関係者の人数が増えていき意思決定がさらに難しくなるケースもあります。
共有者の誰が固定資産税や管理費、修繕積立金などを支払うかで意見が割れてトラブルになるケースも多々あります。
一般的に不動産を共有するのは好ましくないとされているため、選択するとしても以下のような場合に限定したほうがよいでしょう。
- 相続人同士の関係が良好で、意思決定しやすい
- 将来の売却や活用の方針に全員が合意している
6.マンションを相続した後の3つの選択肢
マンションを相続した後の選択肢としては「相続人やその家族が住む」「売却する」「賃貸に出す」の3つの選択肢があります。

どの選択肢を選ぶべきかは、相続人の生活状況・経済状況や、マンションの立地・築年数などで変わります。以下では3つの選択肢のメリット・デメリットを解説します。
6-1.相続人やその家族が住む
相続人やその家族が、相続したマンションに住むという選択肢です。以下のようなメリットとデメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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被相続人と一緒に暮らしていた配偶者や子供などは引き続き住まいを確保できます。故人と別居しており、賃貸住宅に住んでいた親族がマンションを相続して住むと、毎月の住居費を抑えることも可能です。
要件を満たすと、小規模宅地等の特例を適用して相続税評価額を80%まで減額できます。
一方で、住み続ける間は固定資産税・管理費・修繕積立金がかかります。また、他の選択肢とは異なり、まとまった売却代金や継続的な家賃収入などは得られません。
6-2.売却する
相続したマンションを売却して現金化する選択肢です。主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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売却したあとは、管理費・修繕積立金・固定資産税など維持費を支払ったり、マンションを管理したりする必要がありません。
資産価値の高いマンションを相続した場合、売却によってまとまった現金を得ることも可能です。
ただし、マンションを売却すると相続人やその家族が住まいとして利用したり、第三者に貸し出したりすることができなくなります。
売却して生じた利益(譲渡所得)は譲渡所得税の課税対象となり、翌年に確定申告も必要となるため、手続きの手間や金銭的な負担がかかりやすい選択肢といえるでしょう。
6-3.賃貸に出す
相続したマンションを第三者に貸し出すという選択肢です。以下のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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マンションを賃貸に出すと定期的な収入を得られます。給与や年金などに加えて収入源が1つ増えることで家計がより楽になる可能性があります。
また、所有権を手放さないため、将来的に自身や家族の住まいとして利用することも可能です。
一方で、入居者が見つからない間は家賃収入を得られません。入居者のクレーム対応や退去時の立会いなども必要となります。
管理会社に管理を委託することもできますが、別途委託料がかかるため、自身で管理する場合に比べて手取り収入は減ってしまうでしょう。
7.マンション相続で起こる可能性があるトラブルと対策
マンション相続では以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
〇マンション相続で起こりやすいトラブル
- 兄弟姉妹の共有名義にしたことで意見が割れた
- 納税資金を準備できない
- 小規模宅地等の特例を使えない
- 老朽化したマンションを相続してしまう
- 売却時の税負担が重くなった
5つのトラブルについて、それぞれの背景と具体的な対策を解説します。
7-1.兄弟姉妹の共有名義にしたことで意見が割れた
共有名義のマンションを売却したり間取りを変更するなどの大規模なリフォーム工事をするときは、共有者全員の同意が必要です。
賃貸に出す場合や水回りの内装工事などをする場合は持分価格の過半数の同意を得なければなりません。
また、固定資産税や管理費、修繕積立金を共有者で協力して支払っていくことになります。
そのため、兄弟姉妹でマンションを共有すると以下のようなさまざまなトラブルが生じることがあります。
〇共有名義のトラブル例
- 共有者の1人がマンションの売却に反対しているために処分できない
- 賃貸に出す場合に賃料設定や収入の配分などで不満が生じる
- リフォームや修繕の方針について意見が合わず、内装や設備の老朽化が放置される
- 固定資産税や管理費、修繕積立金を誰がいくら負担するかで揉める
- 管理組合の対応や総会での意思表示で意見が割れる
- 共有者の1人が持分を勝手に売却してしまう など
たとえば、マンションを手放そうにも共有者の1人が「思い出が詰まった実家を売却したくない」と反対して兄弟姉妹間で意見が対立し、仲違いをしてしまうかもしれません。
また、誰が管理組合とやり取りをするのか、総会でどのような意思表示をするのかで共有者間の意見が合わずに揉めるケースもあります。
共有者が持分を勝手に買取業者へ売却したことで、面識のない第三者と共有する事態になってしまうことも代表的な事例です。
こうしたトラブルを防ぐためには、そもそも共有名義を避けて、現物分割、代償分割、換価分割を検討するのが望ましいといえます。
7-2.納税資金を準備できない
相続税は現金での一括納付が原則のため、納税資金を準備できず、対応に苦労してしまうこともあります。
とくに、相続財産の大半がマンションなどの不動産であり、手元の現金が少ないと、被相続人の死亡を知った日から10ヶ月という期限内に納税資金を用意するのが難しくなるでしょう。
納税資金を確保するためにマンションを売る方法もありますが、買い手を探す必要があるため、すぐに現金化できるわけではありません。
そのため、相続税の納税資金の準備が難しいときは、マンションの売却とあわせて以下の方法での対応を検討しましょう。
〇納税資金を準備する主な方法
- 金融機関からの借入れで納税資金を用意する
- 延納制度や物納制度を活用する
延納とは、税務署に申請をして相続税を分割払いにしてもらう制度のことです。延納期間中は利子税が発生します。また、延納を利用するためには担保の提供が必要となる場合もあります。
金銭納付や延納でも納付が難しいときは、不動産や有価証券などの現物で相続税を納める「物納」が認められる場合があります。
このように、納税資金の確保が難しいときの対処方法にはさまざまな種類があるため、そのままでは一括納付が難しいとわかった段階で相続税専門の税理士へ相談するとよいでしょう。
7-3.小規模宅地等の特例を使えない可能性がある
亡くなった親と別居していた親族がマンションを相続する場合、小規模宅地等の特例の要件を満たせず対象外となることがあります。
被相続人が住んでいたマンションをその配偶者が取得する場合、取得者ごとの要件はありません。
配偶者ではない同居の親族が取得する場合、取得者の要件は「相続税の申告期限までマンションの居住と保有を継続する」と比較的シンプルです。
一方、別居の親族がマンションを相続する場合は、いわゆる「家なき子特例」の要件をすべて満たす必要があります。主な要件は次のとおりです。
〇家なき子特例の主な要件
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人の自宅に同居していた相続人がいないこと
- 取得者が相続開始前3年以内に一定の親族や法人が所有する持ち家に住んでいないこと
- 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していないこと
- 申告期限まで宅地等を保有すること など
参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
たとえば、被相続人と別居していた親族が持ち家を所有している場合、マンションを相続しても小規模宅地等の特例は使えません。
家なき子特例の要件を満たせないと、特例が使えず相続税の負担が重くなる可能性があります。
対策としては、相続が発生する前から特例が適用できるかどうかを相続税専門の税理士へ相談しておくとよいでしょう。
小規模宅地等の特例について詳しくは、以下で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:小規模宅地等の特例を完全解説!対象条件や手続きを知って相続税を節税しよう
7-4.老朽化したマンションを相続してしまう
築年数が古いマンションを相続することには、以下のとおりさまざまなリスクがあります。
〇老朽化したマンションを相続するリスク
- 買い手や借り手が付きにくく売却・賃貸が難しい
- 修繕積立金の残高不足で大規模修繕が実施できないことがある
- 内装や設備の老朽化でリフォーム費用が大きく膨らむ など
買い手も借り手も付きにくい築古のマンションを相続すると、管理費や修繕積立金の支払いが続き、相続した人の財産を食い潰してしまいかねません。
修繕積立金が計画通りに積み立てられていないと、大規模修繕の工事費用を賄うために、数十万~数百万円程度の一時金を支払うよう求められるケースもあります。
大規模修繕が実施できず、マンションの経年劣化や破損がそのまま放置されてしまうと、資産価値がさらに低下してしまいかねません。
亡くなった方が築古のマンションを所有していた場合は「相続放棄」をするのも1つの方法です。
相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述すると、マンションを含むプラスの財産、および借入金や未払金などの負債を一切相続しなくなります。
ただし、相続放棄をしても、相続財産管理人が選出されるまではマンションの管理義務が残ります。そのため、不動産会社による買取など、専門家とも相談のうえ他の方法も検討しましょう。
7-5.売却時の税負担が重くなった
相続したマンションを売却したときの売却益(譲渡所得)に課される譲渡所得税の負担が重くなるケースもあります。税負担が重くなる主な理由は以下のとおりです。
〇譲渡所得税の負担が重くなる理由
- マンションの購入価格がわかる書類が見当たらない
- 相続空き家の3,000万円特別控除を適用できない
譲渡所得は「収入金額−(取得費+譲渡費用)」で計算します。
取得費は、被相続人がマンションを購入した際の購入代金などです。譲渡費用は、仲介手数料や印紙税など売却にかかった費用を指します。
マンションの売買契約書など購入金額が確認できる書類がないときは、収入金額の5%を「概算取得費」として譲渡所得を計算できます。
しかし、概算取得費は本来の取得費よりも極端に低くなることも多く、譲渡所得が大きくなって税負担が重くなる傾向にあります。
また、亡くなった人が所有していた空き家を売却するときは、一定の要件を満たすと「相続空き家の3,000万円特別控除」を適用して譲渡所得から最高3,000万円を控除できますが、区分所有マンションは対象外です。
相続したマンションを売却するときは、売買契約書など購入時の価格がわかる書類を探しましょう。
また、事前に税理士へ相談し、税額のシミュレーションをしてもらって売却後にいくら手元に残るのかを確認することで資金計画を立てやすくなります。
8.マンション相続に関するQ&A
マンション相続でよく寄せられる質問について回答します。
8-1.4,000万円のマンションを相続したら相続税はいくらかかる?
相続税額は、法定相続人の数や他の財産との合計額によって変わるため、一概には言えません。
相続税は遺産総額のうち基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える部分にのみ課税されるためです。
たとえば、遺産総額がマンション4,000万円と預貯金2,000万円の計6,000万円の場合、法定相続人が子供1人であると相続税は合計で310万円ですが、子供3人になると120万円に減少します。
税額を正確に算出するためには、法定相続人や相続財産を漏れなく調査し、相続税専門の税理士にも相談することをおすすめします。
8-2.マンションに相続税がかからないケースは?
マンションを含む遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
仮に遺産総額が4,500万円、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となるため、相続税はかからず原則として申告も不要です。
遺産総額が基礎控除額を超えていても、配偶者の税額軽減などを適用することで税額が0円になることもあります。ただし、適用する特例や税額控除によっては期限内に相続税の申告をする必要があります。
8-3.親が管理費や修繕積立金を滞納していた場合の支払い義務はどうなる?
マンションを相続した人は、被相続人が滞納していた管理費と修繕積立金の支払い義務を引き継ぎます。
民法では、相続人は相続開始時から被相続人の財産に属する権利義務を承継するとされているためです。
法定相続人が複数いる場合、滞納されている管理費・修繕積立金は、原則として各相続人が法定相続分に応じて負担しますが、遺産分割協議で「マンションを相続する人が全額負担する」などと取り決めることも可能です。
相続放棄をすると支払い義務は免れますが、預貯金や株式などプラスの財産もすべて相続できなくなります。
なお、相続開始時点で未払いとなっていた管理費・修繕積立金は、金額が確実と認められる場合、相続税の計算上、債務控除の対象となる可能性があります。
9.マンション相続は相続税の専門家に相談しよう
マンションを相続したときは、取得する人を決めて評価額を適切に計算し、相続登記や相続税申告などの手続きを計画的に進めていく必要があります。
とくに相続税の計算では、令和6年(2024年)からの評価方法の見直しや小規模宅地等の特例の要件など専門知識や実務経験がなければ判断が難しい部分もあります。
「評価額の計算を誤った」「要件を満たしていないにもかかわらず特例を適用してしまった」などの事態を防ぐためにも、マンションの相続に関しては相続税専門の税理士へ相談することをおすすめします。
税理士法人チェスターは、相続税を専門とする税理士法人です。相続税申告の件数は年間3,000件以上と日本国内にある事務所の中でもトップクラスの実績を誇ります。
マンションをはじめとする不動産の評価額の算定や申告書の作成に加えて、特例を活用した節税策の提案や税務調査対策なども総合的にサポートいたします。マンションを相続する際は、税理士法人チェスターまでお気軽にご相談ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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