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相続税の未成年者控除とは?適用要件や控除額計算方法も解説

相続税の未成年者控除とは?適用要件や控除額計算方法も解説

親が若いうちに亡くなった場合や、亡くなった人の孫が養子になっていた場合などでは、未成年者が相続人になることがあります。

遺産を相続した人は、未成年であっても相続税の申告・納税の義務がありますが、未成年者は税額計算で未成年者控除を適用することができます。

この記事では、相続税の未成年者控除の適用要件のほか、控除額の計算方法や申告義務の有無について解説します。あわせて、未成年者が財産を相続するときの注意点もお伝えします。

相続人の中に未成年の人がいる場合は、ぜひ参考にしてください。

1.相続税の未成年者控除とは

相続税の未成年者控除とは、被相続人(亡くなった人)の相続財産を未成年者が取得した場合に、相続税の税額から一定の金額を差し引く制度のことです

ほとんどの未成年者はまだ働いておらず、所得がありません。また、成人するまでには教育費や養育費などがかかります。そのため、未成年者控除で相続税の負担の軽減を図っています。

2.相続税の未成年者控除の計算方法

未成年者控除の金額は、未成年の相続人が18歳に達するまでの年数によって決まります(相続税法第19条の3)。

控除額の計算式は下記のとおりです。

未成年者控除の金額=(18歳-相続した時の年齢)×10万円
(相続した時の年齢の1年未満の端数は切り捨てます。)

相続税の未成年者控除の計算方法

なお、相続の開始(被相続人の死亡)が令和4年3月31日以前の場合の未成年者控除の金額は、(20歳-相続した時の年齢)×10万円です。

2-1.相続税の未成年者控除の計算例

相続税の未成年者控除の計算方法をよりわかりやすくするため、計算例を示します。

たとえば、相続した時の年齢が7歳4か月であった場合は、未成年者控除の計算では1年未満の端数を切り捨てた7歳とします。

未成年者控除の金額は、(18歳-7歳)×10万円=110万円となります。

相続税の未成年者控除の計算例

未成年者控除は税額控除です。まず成人と同じように相続税の税額を計算し、その税額から未成年者控除の金額を差し引きます

相続した遺産の額から未成年者控除の金額を差し引いて税額を計算しないため、誤解のないよう注意が必要です。

2-2.過去に未成年者控除を適用している場合

過去の相続で未成年者控除を適用している場合に、今回の相続で控除できる金額は、最初に未成年者控除を適用したときの控除額の残額が限度となります(相続税法第19条の3第3項)。

つまり、「過去に未成年者控除を適用していないものとして通常の方法で計算した金額」と、「最初の相続のときの控除額からこれまで控除した額を引いた残額」を比較して、少ない方を控除額とします

過去に未成年者控除を適用している場合

なお、今回の相続の開始が令和4年4月1日以降であれば、最初の相続の開始が令和4年3月31日以前であっても、最初の相続のときの控除額は18歳に達するまでの年数をもとに計算します相続税法基本通達19の3-5)。

たとえば、同じ相続人が下記のように2回にわたって未成年者控除を適用するものとします。

  • 今回の相続:令和6年10月1日開始、相続人は15歳
  • 最初の相続:令和元年11月1日開始、相続人は10歳、未成年者控除により60万円控除

この場合は下記のように比較して、今回の相続で適用できる未成年者控除の金額は20万円となります。

  • (18歳-今回の相続開始時の年齢15歳)×10万円=30万円
  • 18歳-最初の相続開始時の年齢10歳)×10万円-すでに控除した金額60万円=20万円

最初の相続が開始した当時の成人年齢は20歳でしたが、今回の相続が開始したときには成人年齢は18歳に引き下げられているため、18歳に達するまでの年数をもとに控除額を計算します。

3.相続税の未成年者控除の適用要件

相続税の未成年者控除を適用するためには、以下の4つの要件を満たしている必要があります(相続税法第19条の3)。

相続税の未成年者控除の適用要件

3-1.要件①相続や遺贈によって被相続人の財産を取得すること

相続税の未成年者控除を適用するための1つ目の要件は、相続や遺贈によって被相続人の財産を取得することです。遺贈とは、遺言により財産を与えることをいいます。

被相続人の財産を取得していない人は、そもそも相続税が課されないため、未成年者控除の対象にはなりません。

3-2.要件②財産を取得する未成年者が法定相続人であること

相続税の未成年者控除を適用するための2つ目の要件は、財産を取得する未成年者が法定相続人であることです。遺言で孫に財産を与える場合は、孫は法定相続人でないことが多いので注意が必要です。

なお、相続放棄をした人がいる場合であっても、その放棄がなかったものとした場合における法定相続人が適用の対象となります。

誰が法定相続人となるかについて詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。

相続人は誰?相続人の優先順位と相続分をケース別に詳しく解説!

3-3.要件③財産を取得したときに日本国内に住所があること

相続税の未成年者控除を適用するための3つ目の要件は、財産を取得したときに日本国内に住所があることです。ただし、相続人が一時居住者で、かつ被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。

このほか、財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも、次のいずれかにあてはまれば未成年者控除を適用できます。

  • 日本国籍があり、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所があったことがある。
  • 日本国籍があり、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所があったことがない(被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除く)。
  • 日本国籍がない(被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人、非居住外国人である場合を除く)。

3-4.要件④財産を取得したときに18歳未満であること

相続税の未成年者控除を適用するための4つ目の要件は、財産を取得したときに18歳未満であることです。18歳になる年でも誕生日を迎えていなければ、未成年者控除を適用することができます。

なお、相続の開始が令和4年3月31日以前の場合は、20歳未満であることが要件となります。

4.余った控除額は扶養義務者に分けられる

未成年の相続人の相続税額から未成年者控除額を控除しきれない場合は、その残った控除額を扶養義務者の相続税額から控除することができます(相続税法第19条の3第2項)。

扶養義務者とは、未成年の相続人の父母、祖父母、兄弟姉妹などです。また、3親等以内の親族で家庭裁判所が定めた人も扶養義務者となります。

4-1.未成年者控除額を扶養義務者に分けるときの計算例

未成年者控除額を控除しきれない場合の税額計算をよりわかりやすくするため、計算例を示します。

未成年者控除を適用できるAさん(4歳)と、その兄Bさん(25歳・扶養義務者)が親の財産を相続し、相続税額はそれぞれ100万円ずつであったとします。

Aさんの未成年者控除額は、140万円(=(18歳-4歳)×10万円)となります。

この場合、Aさんの相続税額100万円より未成年者控除額140万円の方が大きく、40万円が控除しきれずに残ります

BさんはAさんの扶養義務者であることから、Aさんの税額から控除しきれなかった未成年者控除額40万円を、Bさんの税額から控除することができます

Bさんの相続税の納税額は、100万円から40万円を控除した60万円となります。

未成年者控除額を扶養義務者に分けるときの計算例

5.未成年者控除を適用して相続税額が0円になれば申告不要

未成年者控除を適用して相続税額が0円になる場合は、その未成年者の相続税の申告は不要です

これは、未成年者控除に小規模宅地等の特例や配偶者控除のような申告要件がないためです。

ただし、未成年者控除を適用して一部の相続人の相続税額は0円になるものの、その他の相続人に納付すべき相続税額がある場合は、相続税額のある人には相続税の申告義務があります

たとえば、長男・次男・三男の3人が相続人で、三男のみ未成年者である場合、三男の相続税額が0円であっても、長男と次男に相続税額があれば相続税申告が必要です。このような場合、実務では、申告が不要となった相続人も含めた全員の分をまとめて申告することが一般的です。

6.未成年者控除の申告時の必要書類

未成年者控除を適用して相続税申告をするときは、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」に記入する必要があります

申告書の様式は、国税庁「相続税の申告書等の様式一覧」からダウンロードできます。

未成年者控除額・障害者控除額の計算書

7.未成年者が財産を相続するときの注意点

最後に、未成年者が被相続人の財産を相続するときの注意点を確認します。

7-1.特別代理人が必要になる場合がある

遺産相続では、相続人の全員が遺産分割協議に参加して、遺産の分け方について話し合います。

ただし、未成年者は相続人であっても遺産分割協議に参加することができず、代理人を立てる必要があります。未成年者には、遺産分割協議をするための判断能力が十分に備わっていないとされているからです。

未成年者の代理人は、通常、法定代理人である親権者(親権者がいない場合は未成年後見人)が務めます。しかし、未成年者が相続人であるときは、多くの場合で親権者も相続人となっています。親権者が未成年の子の代理人になると、自分の利益を優先して、子が遺産を十分に受け取れなくなる恐れがあります。

したがって、未成年の子とその親権者がどちらも相続人となっている場合は、未成年の子にとって不利益にならないように、相続人以外の人を「特別代理人」に選任します

未成年の相続人が2人以上いる場合は、その人数分だけ特別代理人が必要になります。複数の子の特別代理人を兼任すると、ある特定の子の利益が優先されて他の子にとって不利益になる可能性があるからです。

未成年者の特別代理人について詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

未成年者は遺産相続できるの?特別代理人の要否や未成年者控除について

【特別代理人とは】相続で特別代理人が必要なケースと選任申立の流れ

7-2.未成年者の両親が離婚している場合は誰が代理人になるか

両親が離婚した場合は、親どうしは他人になりますが、夫婦の間に生まれた子はどちらの親とも親子の関係が継続します。したがって、どちらの親が死亡した場合でも子は相続人になります。

離婚した親のどちらかが亡くなり未成年の子が相続人になる場合に、その未成年者の代理人になれる人は下記のとおりです。

  • 子の親権者が亡くなった場合は、新たに親権者になった人または未成年後見人
  • 親権者でない親が亡くなった場合は、子の親権者

子の親権者が亡くなった場合は、離婚したもう一方の親(元の配偶者)が家庭裁判所に申し立てて親権者になることが多いです。しかし、亡くなった親権者の両親(子の祖父母)が未成年後見人となることを希望するケースだと、両者の間でトラブルになることがあります。

親権者でない親が亡くなった場合は、子の親権者(元の配偶者)が代理人になれます。子の親権者は死亡した人とは離婚しており相続人ではないことから、法定代理人として未成年の子の相続手続きができます。

なお、未成年の子が2人以上いる場合は、2人目以降の子に特別代理人を選任する必要があります。

離婚した夫婦の相続について詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。

離婚したら元夫(妻)や子供は財産相続できる?死亡したケースやトラブル回避の対策を紹介

7-3.胎児にも相続の権利がある

胎児は、まだ生まれていなくても相続の権利があります。民法では、相続において胎児はすでに生まれたことにしています(民法第886条第1項)。

相続の手続きでは、胎児にも代理人を立てます。未成年者の場合と同様に、胎児と親権者がともに相続人になる場合は特別代理人の選任が必要です。

ただし、死産であった場合には相続の権利はないため(民法第886条第2項)、遺産分割は胎児が生まれるのを待って行うことが一般的です。

胎児が生きて生まれてきた場合には、相続税の未成年者控除を適用することができます。控除額は、180万円(=(18歳-0歳)×10万円)です(相続税法基本通達19の3-3)。

胎児がいる場合の相続について詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

胎児も相続できる?胎児の相続権・代襲相続・遺産分割・相続税申告について解説

8.未成年者控除のご相談は税理士法人チェスターへ

ここまで、相続税の未成年者控除の適用や、未成年者が財産を相続するときの注意点について解説しました。

相続税の未成年者控除を適用できれば、未成年者である相続人や扶養義務者が納める相続税額が大幅に軽減されます。ただし、未成年者控除には必ず満たすべき4つの適用要件があるほか、相続税を申告すべきかどうかの判定が難しいケースもあります。

未成年者控除を適用する場合は、相続税に強い税理士に相談するのがおすすめです

税理士法人チェスターは相続税専門の税理士事務所で、年間3,000件を超える相続税申告の実績があります。未成年者控除を適用させた申告書を作成するほか、お客様に合った遺産分割方法をご提案いたします。

すでに相続が発生したお客様であれば、初回相談が無料となりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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