チェスターNEWS
「地積規模の大きな宅地の評価」を適用した市街地農地の評価方法

1.はじめに
平成30年1月1日以降に相続等によって取得した面積が広い土地の評価額の算定には、「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されます(旧:広大地の評価)。
「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に改正されたことより、土地の形状や接道状況による補正が可能となり、同評価の適用要件も明確になりました。
なお、本評価の適用要件を全て満たせば、以下に定められている「市街地農地」にも適用できます(都市計画法の用途地域が「商業地域等の土地」も同様)。

【参考:国税庁「財産評価基本通達36-4」】
本稿では「地積規模の大きな宅地の評価」を適用した、市街地農地の評価方法についてご紹介します。
>>国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」
>>チェスターニュース「地積規模の大きな宅地の評価~遺産相続の場合の注意点」
2.地積規模の大きな宅地の評価とは
地積規模の大きな宅地の評価とは、相続等によって取得した、周辺の土地と比較して「面積が広い土地の評価額」を求める評価方法のことです。
広い土地を複数の区画に分けて戸建住宅用地として分譲することを想定しており、土地の開発費用や敷地内道路(潰れ地)による価格の低下を考慮し、その減価を評価額に反映します。

なお「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件は、以下と定められています(財産評価基本通達20-2)

「三大都市圏」とは、首都圏・近畿圏・中部圏を指し、対象地域となる市町村は国土交通省「大都市圏整備法(首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法)」でご確認いただけます。
市街地農地は、市街化区域内の農地であり、「すでに宅地への転用が許可されている」もしくは「転用許可が不要」なため、戸建住宅用地として開発できます。
また市街地周辺農地・市街地山林・市街地原野についても、要件を満たせば「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できます。
相続等で取得した土地が、同評価の適用要件を満たしているか否かが不明な方は、国税庁が公開している以下のフローチャートをご利用ください。

【引用:国税庁「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました」】
3.戸建住宅用地への転用が見込めない市街地農地は適用不可
地積規模の大きな宅地の評価は、戸建住宅用地として分譲することを前提にした評価方法です。
そのため「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件を満たしていても、以下のように「戸建住宅用地として分割・分譲が見込めない市街地農地」については、同評価を適用できません(国税庁の質疑事例)。
×宅地へ転用するには多額の造成費を要するため、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合
×急傾斜地などのように宅地への造成が物理的に不可能であるため宅地への転用が見込めない場合
具体的には、田んぼなどの地盤がゆるい市街地農地で多額の造成費を要する場合や、崖地などがあって物理的に戸建て住宅の建設ができない市街地農地などが挙げられます。
このような場合には、純山林評価や不動産鑑定評価などの別の方法によって評価額が下がる場合があります。
4.「地積規模の大きな宅地の評価」を適用した市街地農地の評価方法
それでは地積規模の大きな宅地の評価を適用した、市街地農地の評価額の計算の流れを確認していきましょう。
4-1.規模格差補正率を計算する
まずは「地積規模の大きな宅地の評価」の計算式に当てはめる、規模格差補正率の計算を行います。

例えば、三大都市圏に所在する面積700㎡の地積規模の大きな土地があるとしましょう。
この場合、計算式は「(700×0.95+25)÷700×0.8」となり、規模格差補正率は0.78となります。
4-2.地積規模の大きな宅地の評価額を計算する
次に、地積規模の大きな宅地の評価額、つまり市街地農地が宅地であるとした場合の価額を計算します。

各種画地補正率とは、土地の形状や条件による「奥行価格補正率」「不整形地補正率」などや、接道状況による「側方路線影響加算率」「二方路線影響加算加算率」が該当します。
各種画地補正率について、詳しくは「相続税路線価とは?土地評価額の計算方法や路線価の調べ方を紹介!」をご覧ください。
4-3.市街地農地の評価額を計算する
市街地農地は戸建住宅用地に転用することを見込んだ価格、つまり整地・伐採・地盤改良などの造成費が必要なことを考慮して取引されるのが一般的です。
よって市街地農地の評価額を計算する際には、以下のように「1㎡あたりの造成費」を差し引いて評価を行います。

なお、「1㎡あたりの造成費」は、国税庁「路線価図・評価倍率表」に記載されています。
なお、税理士法人チェスター「市街地農地の評価 -「地積規模の大きな宅地の評価」を適用」や「倍率地域にある地積規模の大きな宅地の評価方法」では、市街地農地の評価方法をシミュレーション付で解説しているので併せてご覧ください。
5.さいごに
市街地農地の評価額を求める際には、要件を満たせば「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できます。
「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」へ改正されたことで、適用要件が明確になったものの、土地の形状や接道状況による補正をする必要があるため、従来よりも評価額の計算方法が複雑になっています。
市街地農地などの地積規模が大きな土地の評価方法を間違えてしまうと、税額の計算ミスに直結してしまいます。
相続等で市街地農地を取得された方は、相続実務に特化した専門の税理士に相談されることをおすすめします。
※本記事は記事投稿時点(2021年9月13日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
現在の状況とは異なる可能性があることを予めご了承ください。
相続人になったら必ず読んでおきたい一冊
相続税専門の税理士法人チェスターが監修する、相続人が読むべき本「相続対策と相続手続き」、会社紹介と「はじめてでも分かる!相続税申告&相続対策の基本」を押さえたDVD特典付きの資料請求を無料でプレゼントしております。
これから相続が起きそうという方も、すでに相続が起きている方にも有効活用して頂ける一冊です。
【次の記事】:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し~相続登記の申請義務化へ~