相続に所得税はかかる?相続税との関係や確定申告が必要なケースを解説
遺産を相続したときは相続税の申告が必要になる場合がありますが、所得税の確定申告が必要になる場合もあります。
たとえば、相続で次のようなことがあったときは、所得税の確定申告が必要になります。
- 相続した不動産を売却した
- 賃貸物件を相続して家賃をもらうようになった
- 被相続人に保険をかけていて保険金を受け取った
- 被相続人が確定申告をしていた
このように、遺産を相続した人の所得だけでなく、亡くなった被相続人の所得についても確定申告が必要です。
この記事では、遺産を相続して「所得税の確定申告」が必要になるケースと、その場合の確定申告の方法について詳しく解説します。
この記事の目次 [表示]
1.相続のときにかかる税金は?
はじめに、遺産を相続したときにどのような税金がかかるかを確認します。
遺産相続に関係する税金としては、相続税のほか、登録免許税や所得税があります。
1-1.相続税
相続税は、相続した財産に課税される税金です。相続人や受遺者(遺言で遺贈を受けた人)が、10か月以内に申告・納税する必要があります。
相続した財産の総額から負債を引いた残りが基礎控除額を超える場合に、税額が発生します。
相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で求められる金額であり、一定以上の財産がある人が課税の対象になります。
相続税が課税される場合でも、財産の評価額を引き下げる特例や一定の財産に対する非課税限度額を適用して税額を抑えることができます。
相続税の税率は10%~55%ですが、遺産の額に単純に税率をかけて税額を求めるわけではなく、少し複雑な計算が必要になります。
(参考)相続税はいくらから?3600万円まで無税?基礎控除額と相続税の計算方法
1-2.登録免許税
登録免許税は、登記などに課税される税金です。相続では、不動産の相続登記のときに課税されます。
税額は、登記する不動産の固定資産税評価額の0.4%です。ただし、相続人以外の人への遺贈では固定資産税評価額の2.0%となります。
(参考)相続登記にかかる登録免許税とは?計算方法・免除措置・納付方法まで解説
1-3.相続人の所得税(譲渡所得など)
相続とは直接の関係はないものの、相続人に所得税が課税される場合があります。
たとえば、相続した財産を売却した場合は、売却益(譲渡所得)に所得税が課税されます。
また、死亡保険金を受け取った場合も、保険の契約形態によっては所得税が課税されます。
相続人の所得税は、所得が発生した年の翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をして納税します。
相続人の所得税については、「3.相続後に相続人自身の所得税の確定申告が必要なケース」で詳しく解説します。
1-4.被相続人の所得税(準確定申告)
被相続人が亡くなった年の所得にも所得税が課税されます。
被相続人の所得税については、相続人が代わりに確定申告をします。これを「準確定申告」といいます。
準確定申告が必要になるケースは、被相続人が自営業や不動産賃貸をしていた場合などです。
準確定申告と納税の期限は通常の確定申告とは異なり、死亡から4か月以内となっています。
準確定申告については、「5.亡くなった被相続人の確定申告(準確定申告)が必要なケース」で詳しく解説します。
2.相続税と所得税はどんな関係がある?
相続税は相続した財産に課税される税金であり、所得税は年間の収入から必要経費を引いた所得に課税される税金です。
そのため、遺産を相続した場合には相続税が課税され、所得税は課税されません。
ただし、相続した財産から収入を得る場合は少し紛らわしくなります。
賃貸アパートを相続して家賃をもらうようになった場合は、賃貸物件の相続について相続税が課税され、受け取った家賃には所得税が課税されます。
2-1.相続税を申告したら確定申告も必要?
「遺産相続」と給与・事業などの「収入」は、財産をもらうという点で共通しています。
そのため両者が混同され、遺産を相続したら所得になるのではないかと思う人もいます。
しかし、遺産を相続しただけでは所得税は課税されません。
相続税を申告した場合も、他に申告が必要な所得がないのであれば、重ねて所得税の確定申告をする必要はありません。
2-2.遺産を相続すると翌年の住民税に影響する?
住民税は、都道府県や市区町村に納める税金で、基本的に所得に応じて課税されます。
遺産を相続しただけでは所得税が課税されないのと同様に、住民税も課税されません。
そのため、遺産を相続したことが原因で、翌年の住民税が大きく増加するということはありません。
ただし、賃貸アパートを相続して家賃をもらうようになったことで、住民税が増加する場合があります。これは所得が増えたことが原因であり、遺産を相続したことで住民税が増えたわけではありません。
3.相続後に相続人自身の所得税の確定申告が必要なケース
この章では、遺産を相続したのちに相続人自身の所得税の確定申告が必要になるケースを具体的にご紹介します。
3-1.相続した財産(不動産など)を売却した
不動産など相続した財産を売却した場合には、売却益(譲渡所得)が所得税の対象となるため、確定申告が必要です。
3-1-1.譲渡所得とは
譲渡所得とは、不動産や株式などの財産を譲渡することによって生じる所得のことです。売却額から購入額を引いた売却益と考えるとわかりやすいでしょう。
譲渡所得の金額は、次の算式で計算します。
- 譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
取得費は、譲渡した財産を購入した金額のほか購入するためにかかった費用も含めます。詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。
(参考)不動産を譲渡した時の税金はいくら?所得税計算に必要な取得費とは?
(参考)相続で取得した上場株式を譲渡!譲渡所得等に係る取得費の計算方法
譲渡費用とは、財産を譲渡するために直接かかった費用のことです。不動産を売却するときの仲介手数料などのほか、株式を売却するときの委託手数料などが該当します。
不動産の譲渡では、一定の要件を満たした場合に特別控除額が適用できます。
たとえば、自宅を譲渡した場合には譲渡益から3,000万円まで控除することができます。令和9年までの時限措置として、空き家になった被相続人の自宅を譲渡した場合にも3,000万円の特別控除があります。
不動産、株式以外の財産を譲渡した場合は、50万円の特別控除があります。
株式の譲渡では、特別控除額はありません。
3-1-2.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得に対する所得税の計算方法には、分離課税と総合課税があります。
分離課税は、不動産、株式の譲渡に適用されます。給与所得など他の所得とは合算せず、不動産、株式それぞれの譲渡に関する所得だけで税額を計算します。
総合課税は、不動産、株式以外の財産の譲渡に適用されます。給与所得など他の所得と合算して税額を計算します。
なお、総合課税の対象になる譲渡所得のうち、所有期間が5年を超える財産を譲渡した場合の長期譲渡所得は、その金額の2分の1が税額計算の対象になります。
3-1-3.譲渡所得税の税率表
譲渡所得に対する税率は下記のとおりです。所得税のほか、復興特別所得税、住民税の税率もあわせてご紹介します。
譲渡所得の区分 | 税率 |
---|---|
不動産長期譲渡所得 | 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) |
不動産長期譲渡所得(軽減税率) | 14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%) |
不動産短期譲渡所得 | 39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%) |
株式 | 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) |
不動産、株式以外の財産の譲渡所得(総合課税) | 所得税の税率は所得の額に応じて変動(5%~45%) 復興特別所得税は所得税額の2.1% 住民税の税率は10% |
不動産の譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられ、税率が異なります。なお、相続した財産の所有期間は、被相続人がその不動産を取得した日から通算できます。
所有期間が10年を超える自宅を売却した場合は、長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について軽減税率を適用することができます。
3-1-4.相続した不動産の売却益は二重課税にならないか?
少し税金に詳しい人であれば、「遺産を相続したときに相続税が課税されて、次にその財産を売ったときに所得税が課税されるのは二重課税ではないか」と思われるかもしれません。
税務上は、「遺産の承継」と「承継した遺産の売却益」は異なるものであり、二重課税にはあたらないとされています。
しかし、相続税を納めてすぐそのあとに譲渡所得税を納めると負担が大きいため、こうした負担を軽減する「取得費加算の特例」が設けられています。
取得費加算の特例では、相続した財産を3年10か月以内に売却した場合に、相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を求めることができます。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
(参考)取得費加算の特例で節税!計算方法や注意点、併用可能な特例をわかりやすく解説
3-2.死亡保険金を受け取った
死亡保険金を受け取った場合は、多くの場合相続税の課税対象になります。
しかし、保険料を負担した人と死亡保険金の受取人が同一である場合は、相続税ではなく所得税の課税対象になります。
たとえば、妻が夫を被保険者とする保険に加入して自分で保険料を負担し、夫の死亡時に死亡保険金を受け取った場合は、確定申告をしなければなりません。
死亡保険金に課税される税金は、生命保険の契約関係によって異なります。
保険料負担者と保険金受取人が同一である場合は所得税が課税されますが、保険料負担者と被保険者が同一である場合は、相続税の課税対象になります。
また、保険料負担者、被保険者、保険金受取人がそれぞれ異なるケースでは、贈与税の課税対象になります。
3-2-1.死亡保険金を一時金で受け取った場合
一時金で受け取った死亡保険金に所得税がかかる場合は、一時所得として課税されます。
一時所得の金額は、次の算式で計算します。
- 一時所得=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円)
死亡保険金以外に一時所得がないとすれば、受け取った死亡保険金からすでに支払った保険料を差し引き、特別控除額を引いた金額が一時所得となります。特別控除額を引く前の金額が50万円未満の場合は、その残額を差し引きます。
一時所得は、その金額の2分の1を給与所得など他の所得と合算して税額を計算します。
3-2-2.死亡保険金を年金として受け取った場合
年金として受け取った死亡保険金に所得税がかかる場合は、雑所得として課税されます。
雑所得の金額は、次の算式で計算します。
- 雑所得=総収入金額-必要経費
年金として受け取った死亡保険金については、1年の間に受け取った年金の額からその金額に対応する保険料を差し引いた金額が雑所得となります。
3-2-3.年金形式の保険金は二重課税にならないか?
年金形式の保険金については、二重課税が問題となったケースがありました。
一定期間年金が支給される保険に加入した人が死亡した場合は、年金受給権に相続税が課税され、年金を受け取るときに所得税が課税されます。これが二重課税にあたるとして問題になり、最高裁判所において二重課税を認めない旨の判決がありました。
現在は、年金の雑所得の計算で収入金額を非課税部分と課税部分に分けることで、二重課税の問題は解消されています。
3-3.収益物件を相続した
賃貸アパートや駐車場など収益物件を相続した場合は、賃料収入が不動産所得となり、所得税の確定申告が必要です。
不動産所得の金額は、次の算式で計算します。
- 不動産所得=総収入金額-必要経費
なお、被相続人が死亡してから収益物件の所有者が決まるまでの間は、相続人が全員で収益物件を共有していることになります。賃料収入は法定相続分に応じて相続人全員に分配されるため、相続人は全員確定申告を行う必要があります。
3-3-1.被相続人が青色申告をしていた場合
被相続人が青色申告をしていた場合は、収益物件を相続した相続人は改めて青色申告の承認申請をする必要があります。被相続人が受けていた青色申告の適用が、自動的に相続人に引き継がれるわけではありません。
申請の期限は、原則として死亡の日から4か月以内です。ただし、被相続人が9月、10月に死亡した場合はその年の12月31日まで、11月、12月に死亡した場合は翌年の2月15日までとなります。
3-4.未支給年金を受け取った
被相続人が年金を受け取っていた場合は、死亡した時点でまだ受け取っていない未支給年金が発生します。被相続人の遺族は一定の要件のもと、未支給年金を受け取ることができます。
公的年金と企業年金(死亡月までの分)の未支給分は遺族に支給されるものであり、相続税は課税されません。ただし、遺族の一時所得として確定申告が必要になる場合があります。
一時所得の金額は、次の算式で計算します。下記の金額の2分の1が税額計算の対象になります。
- 一時所得=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円)
未支給年金を受け取る遺族は年金の保険料を支払っていないため経費は考慮せず、総収入から特別控除額を引いて一時所得を計算します。
未支給年金については、下記の記事もあわせてご覧ください。
(参考)未支給年金の確定申告は必要?相続税申告・所得税確定申告の対象について
4.所得税が生じた場合の確定申告の方法
確定申告が必要な場合は、所得が発生した年の翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に申告書を提出して納税します。
この章では、所得税の確定申告の方法をご紹介します。
4-1.税務署の相談窓口で手続きをする
例年、確定申告の時期になると、各地の税務署などで確定申告の相談窓口が設けられます。相談窓口では、職員のアドバイスを受けてその場で申告書を作成することができます。所得の計算に必要な資料を持っていくようにしましょう。
なお、所得金額が大きい場合や内容が複雑な場合は、税理士に依頼するよう勧められることがあります。
4-2.「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書を提出する
税務署や相談窓口が遠い場合は、インターネットの「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成することができます。
「確定申告書等作成コーナー」では、所得に関する必要事項を入力するだけで自動的に申告書が作成されます。作成された申告書は、印刷して税務署の窓口に提出するほか、郵送による提出もできます。
4-3.国税電子申告・納税システム「e-Tax」で申告する
国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、インターネットで確定申告をすることもできます。
「確定申告書等作成コーナー」や「e-Taxソフト」で、所得に関する必要事項を入力するだけで自動的に申告書が作成されます。なお、「e-Tax」の利用には、利用者識別番号や電子証明書(マイナンバーカードなど)の取得が必要です。
個人でご利用の方 | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
4-4.税理士に確定申告を依頼する
確定申告を税理士に依頼すると、報酬として少なくとも5万円程度かかります。しかし、手続きとしては手間がかからず確実です。
自分で確定申告ができない場合や、手続きを行う時間が取れない場合、所得の金額が大きい場合などでは、報酬を支払ってでも税理士に依頼することをおすすめします。
5.亡くなった被相続人の確定申告(準確定申告)が必要なケース
続いて、亡くなった被相続人の確定申告(準確定申告)が必要になるケースを具体的にご紹介します。
準確定申告についての解説は、下記の記事もあわせてご覧ください。
(参考)準確定申告とは?申告期限や必要書類の書き方、不要なケースを解説
5-1.被相続人が生前に確定申告を行っていた
被相続人が下記のいずれかに該当して所得税の確定申告を行っていた場合は、亡くなった年の所得について準確定申告が必要です。
- 個人事業主であった
- 賃貸アパートなどを経営して不動産所得があった
- 年間の給与収入が2,000万円を超えていた
- 年間の年金受取額が400万円を超えていた
- 20万円を超える副収入(必要経費を除く)があった
遺産を相続して相続税を申告する場合は、所得税の準確定申告が必要かどうかも確認することをおすすめします。相続税は、一定額以上の財産がある人が亡くなったときに課税されるものです。被相続人に相続税の対象になるほどの財産があった場合は、準確定申告が必要になることが多いと考えられます。
被相続人が生前に継続的に確定申告をしていた場合は、自宅で申告書の控えや税務署からの郵便物が保管されているかもしれません。遺品にこれらのものがないか確認するとよいでしょう。
5-2.亡くなった年に財産の異動があった
被相続人が亡くなった年に財産の異動があった場合は、準確定申告が必要になる場合があります。
たとえば、次のようなことがあれば、亡くなった年の所得について準確定申告が必要です。
- 亡くなった年に株式や不動産などを売却していた
- 亡くなった年に保険金を受け取っていた(相続税、贈与税の対象となる場合を除く)
5-3.還付を受けたい場合
源泉徴収された所得税があって還付を受けたい場合にも、準確定申告が必要です。
次のようなときは、準確定申告をすることで納めすぎた所得税が還付される可能性があります。
- 高額の医療費を支払って医療費控除が適用できる場合
- 年末調整が行われていない場合
- 配偶者控除、扶養控除、雑損控除、寄附金控除を適用できる場合
5-4.準確定申告をしなくても良いケース
準確定申告は誰もが必要になるわけではありません。
被相続人が年金生活をしていた場合では、年金収入(国民年金、厚生年金、共済年金)が400万円以下で、かつ、年金以外の年間所得が20万円以下である場合には、準確定申告を行う必要はありません。
ただし、前項でお伝えしたように、準確定申告をすることで源泉徴収されていた所得税が還付される場合があります。
6.準確定申告の方法
亡くなった被相続人の準確定申告を行う場合は、被相続人に代わって相続人が税務署に申告書を提出して納税します。
この章では、準確定申告の方法をご紹介します。
6-1.準確定申告をするのはだれ?
準確定申告は相続人(包括受遺者も含む)が行います。
相続人が2人以上いる場合は、連名で1枚の準確定申告書を提出します。各相続人が別々に提出する場合は、申告の内容を他の相続人に通知しなければなりません。
(包括受遺者とは、遺言で特定の財産を指定せず、財産と負債を含めて一定の割合を包括的に受ける人のことをいいます。相続人と同等の権利義務があります。)
6-2.準確定申告書はどこに提出する?
準確定申告書は、亡くなった被相続人が住んでいた場所を管轄する税務署に提出します。相続税の申告先と同じ税務署になります。
税務署に直接あるいは郵送で提出するほか、令和2年分以後は、国税電子申告・納税システム「e-Tax」で準確定申告をすることもできます。
個人でご利用の方 | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
6-3.準確定申告の期限は?
準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。納税の期限も同じです。
たとえば、被相続人が6月15日に死亡して、相続人が同じ日にそのことを知った場合は、準確定申告の期限はその年の10月15日となります。
また、被相続人が12月15日に死亡した場合は、準確定申告の期限は翌年の4月15日となります。この場合、通常の確定申告の期限(翌年の3月15日)を過ぎてしまいますが問題はありません。
なお、被相続人が前年の確定申告を済ませていなかった場合は、亡くなった年と前年の2回分の準確定申告を行う必要があります。
6-4.準確定申告の必要書類は?
準確定申告では、下記の書類が必要になります。
- 所得税の確定申告書(第一表、第二表)
- 所得税確定申告書の付表
- 源泉徴収票
- 医療費控除の明細書(医療費の領収書)
- 生命保険料・地震保険料の控除証明書
- 還付金の受領に関する委任状
- 申告する人の本人確認書類
これらの必要書類を集めることはそれほど難しくはありません。しかし、これまで確定申告をした経験のない人が確定申告書を作成するのは難しいでしょう。
準確定申告の手続きや申告書作成が難しい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
6-4-1.所得税の確定申告書
準確定申告には専用の申告書の様式はありません。
通常の所得税の確定申告書の様式(第一表、第二表)を使用し、表題の「確定申告」の前に「準」の文字を書き足します。
準確定申告書の詳しい記入方法は、下記の記事をご覧ください。
(参考)準確定申告とは?申告期限や必要書類の書き方、不要なケースを解説
6-4-2.所得税確定申告書の付表
2人以上の相続人の連名で準確定申告を行う場合は、「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添付する必要があります。
付表は下記よりダウンロードすることができます。詳しい記入方法は、付表の裏面に記載されています。
死亡した者の 年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
(「e-Tax」で準確定申告を行う場合は、相続人が1人だけの場合でも付表を提出する必要があります。)
参考:所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について
6-4-3.源泉徴収票
被相続人が給与や年金を受け取っていた場合は、源泉徴収票を添付します。
給与の源泉徴収票は、勤務していた会社に発行を依頼します。
年金の源泉徴収票は、死亡届を提出した相続人に宛てて送付されます。送付されない場合は、別途申請が必要になります。
6-4-4.医療費控除の明細書(医療費の領収書)
準確定申告で医療費控除を受ける場合は、「医療費控除の明細書」を添付します。
医療費の領収書は申告書に添付する必要はありませんが、税務署からの求めに応じて提示できるよう、5年間保存しておく必要があります。
6-4-5.生命保険料・地震保険料の控除証明書
準確定申告で生命保険料控除や地震保険料控除を受ける場合は、保険会社が発行する控除証明書を添付します。
保険料の控除証明書は、通常は10月頃まで送られてこないため、必要に応じて保険会社に発行を依頼します。
6-4-6.還付金の受領に関する委任状
還付金がある場合に相続人の代表者がまとめて受け取るときは、「還付金の受領に関する委任状」を提出する必要があります。
委任状の書式は、下記よりダウンロードすることができます。
6-4-7.申告する人の本人確認書類
申告書の提出時には、相続人全員の本人確認書類(マイナンバー関係書類)を添付する必要があります。
マイナンバーカード(表裏両面)の写しのほか、マイナンバーの通知カードの写しと身元確認書類(運転免許証や健康保険証、パスポートなど)の写しを組み合わせることもできます。
7.準確定申告を行うときの注意点
最後に、準確定申告を行うときの注意点をご紹介します。
準確定申告では、所得控除の適用について注意点があるほか、申告や納税が遅れた場合には罰則が適用されます。
7-1.準確定申告で所得控除を適用するときの注意点
準確定申告では、通常の所得税の確定申告と同様にさまざまな所得控除が適用できます。
ただし、控除の対象になる費用や控除の有無の判定について、次のような点に注意が必要です。
7-1-1.医療費控除
準確定申告で医療費控除を適用できるのは、死亡した日までに被相続人が支払った医療費です。
死亡後に相続人が支払ったものは控除の対象になりません。
7-1-2.社会保険料・生命保険料・地震保険料控除
準確定申告で社会保険料・生命保険料・地震保険料控除を適用できるのは、死亡した日までに被相続人が支払った保険料です。
7-1-3.配偶者控除・扶養控除
準確定申告で配偶者控除や扶養控除を適用できるかどうかは、被相続人が死亡した日の現況で判定します。控除額の月割計算は行いません。
7-2.罰則として税金が課されるケースもある
期限までに準確定申告と納税をしなかった場合は、「延滞税」と「無申告加算税」が課されます。
7-2-1.延滞税
延滞税は納税が遅れたことに対する利子のようなもので、本来の納付期限の翌日から所得税を納付した日までの日数に応じて税額が計算されます。
直近の延滞税の税率は下記のとおりです(いずれも令和4年1月1日~令和6年12月31日の割合です)。
- 申告書の提出日の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
- 申告書の提出日の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%
(申告を期限内に行った場合は上記の「申告書の提出日」を「申告期限」に読み替えます。)
上記以外の期間の税率は、国税庁ホームページをご覧ください。
国税庁ホームページ 延滞税の割合
7-2-2.無申告加算税
無申告加算税は、期限までに申告しなかったことに対するペナルティーです。期限を過ぎてから自主的に申告した場合のほか、税務調査を受けて申告した場合に課税されます。
無申告加算税の税率は下記のとおりです。自主的に申告した場合は税率が低く抑えられています。
なお、課税を免れるために証拠書類を偽装したなど特に悪質な場合は、無申告加算税に代えて重加算税(税率40%)が課されます。
8.まとめ
ここまで、遺産を相続して「所得税の確定申告」が必要になるケースと、確定申告の方法について解説しました。
遺産を相続したときは相続税が課税され、所得税は課税されません。
しかし、相続した財産を売却した場合や収益を生む財産を相続した場合では、相続人の所得について確定申告が必要です。また、亡くなった人の所得について準確定申告が必要になることもあります。
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