農業用施設の相続税評価方法
農業用施設用地とは、耕作や養畜の業務のために必要な農業用施設に使用される宅地をいいます。農業用施設とは、具体的には、農業振興地域の整備に関する法律第3条第3号及び第4号と農業振興地域の整備に関する法律施行規則第1条によって幅広く定められています。
農業用施設として代表的なものとして、次のものが挙げられます。
● 畜舎、蚕室、温室、農産物集出荷施設、農産物調製施設、農産物貯蔵施設など、農畜産物を生産、集荷、調製、貯蔵または出荷するための施設。
● 堆肥舎、種苗貯蔵施設、農機具収納施設など、農業生産資材を貯蔵または保管するための施設。
● 自己の生産する農畜産物等を原料または材料に使用して製造または加工するための施設及び、それらのものを販売するための施設。
● 廃棄された農産物または廃棄された農業生産資材を処理するための施設。
このような農業用施設用地が相続財産に含まれている場合、宅地として評価するのか、農業用施設用地として評価するのかによって、評価額に大きな差が生じます。ここでは、農業用施設用地の評価の方法について説明します。
1.農業用施設用地の評価
農用地区域内または市街化調整区域内にある農業用施設用地の評価方法は次のとおりです。
(1)まず、その宅地が農地であるとみなした場合の1平方メートルあたりの価額を算出します。
この価額は、その付近にある農地の固定資産税評価額に、国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することとされています。
(2)(1)の価額に造成費相当額を加算して、1平方メートルあたりの農業用施設用地の評価価額を算出します。
造成費相当額とは、その農業用施設用地を農地から転用する場合に通常必要と認められる造成費として国税局長によって定められた1平方メートルあたりの金額をいいます。
(3)(2)の金額に農業用施設用地の面積を乗じて、全体の農業用施設用地の価額を算出します。
評価する土地の地目が「宅地」ではなく「雑種地」である場合も、上記の方法を準用することとされています。
2.農業用施設用地の評価の例外
農業用施設用地の評価方法はこれまで説明したとおりですが、評価する農業用施設用地の位置や、都市計画法の規定による建築物の建築に関する制限の内容によっては、その付近にある通常の宅地と同等の価額で取引されることもあります。このような場合は、その付近にある通常の宅地の価額に比準して評価を行うこととされています。
【財産評価総則基本通達第2章24-5】(農業用施設用地の評価)
農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域(以下「農用地区域」という。)内又は市街化調整区域内に存する農業用施設(農業振興地域の整備に関する法律第3条第3号及び第4号に規定する施設をいう。)の用に供されている宅地(以下本項において「農業用施設用地」という。)の価額は、その宅地が農地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額に、その農地を課税時期において当該農業用施設の用に供されている宅地とする場合に通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を加算した金額に、その宅地の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
ただし、その農業用施設用地の位置、都市計画法の規定による建築物の建築に関する制限の内容等により、その付近にある宅地(農業用施設用地を除く。)の価額に類似する価額で取引されると認められることから、上記の方法によって評価することが不適当であると認められる農業用施設用地(農用地区域内に存するものを除く。)については、その付近にある宅地(農業用施設用地を除く。)の価額に比準して評価することとする。(平12課評2-4外追加)
(注)
1 その宅地が農地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、その付近にある農地について37≪純農地の評価≫又は38≪中間農地の評価≫に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基として評価するものとする。
2 農用地区域内又は市街化調整区域内に存する農業用施設の用に供されている雑種地の価額については、本項の定めに準じて評価することに留意する。
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