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生産緑地とは?指定のメリット・デメリットや指定解除の流れを解説

生産緑地とは?指定のメリット・デメリットや指定解除の流れを解説

生産緑地とは、市街化区域にある農地のうち、宅地化せず残すことが望ましいとして指定された土地のことです。

所有する農地が生産緑地に指定されると税制上の優遇が受けられる一方、農業を継続することが義務づけられるなど制約もあります。

また、生産緑地の多くは指定から30年を迎え、指定を解除するかどうかの判断を迫られるケースも出ています。

ここでは、生産緑地に指定されることのメリット・デメリットと、生産緑地の指定を解除する方法を解説します。

大都市近郊に農地をお持ちの方や、生産緑地で農業をされている方はぜひ参考にしてください。

(なお、この記事では「農業」に林業や漁業も含め、「農地」には採草放牧地や森林、池沼も含めます。)

1.生産緑地とは

生産緑地とは、市街化区域内の農地のうち良好な生活環境の確保に効果があるものとして、市町村に指定された農地のことをいいます。

農地には緑地としての機能のほか、災害を防ぐ保水機能や災害時の避難先としての機能もあります。

生産緑地制度は、これらの農地の機能に着目し、市街化区域内においても安全で豊かな居住環境づくりに役立つ農地を計画的に残す目的で制定されました。

1-1.生産緑地に指定されるための3つの要件

市街化区域の農地が生産緑地に指定されるためには、次の3つの要件をすべて満たすことが必要です(生産緑地法第3条第1項)。

  1. 公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全など、良好な生活環境の確保に役立ち、かつ、公園や緑地など公共施設等の用地として適していること。
  2. 面積が500㎡以上の区域であること。
  3. 用排水など農林漁業の継続が可能な条件を備えていること。

なお、平成29年の制度改正により、市町村が条例を定めれば面積要件を300㎡まで引き下げることができます(生産緑地法第3条第2項)。

2.生産緑地に指定されるメリット

所有する農地が生産緑地に指定されると、固定資産税が減額されるほか、贈与税・相続税の納税猶予が受けられます。

この章では、生産緑地に指定されるメリットをご紹介します。

2-1.固定資産税が減額される

生産緑地に指定されると固定資産税が減額されます

固定資産税を課税するための農地の評価方法と課税方法は、農地の区分によって以下のとおり異なります。

農地の区分評価・課税方法
一般農地農地として評価・課税
市街化区域農地生産緑地農地として評価・課税
一般市街化区域農地 宅地並み評価
農地に準じた課税
特定市街化区域農地宅地並み評価・課税

一般農地(農村部の農地)では、固定資産税は農地として評価・課税され、税額は低く抑えられます。

農地は用途や売買に制限があり、不動産としての市場価値が低い点が考慮されています。

市街化区域の農地は、周辺の地価との兼ね合いなどから、宅地並みの評価で農地に準じて課税されるほか、宅地と同様に課税されます。

生産緑地は市街化区域にありながら農業以外の利用が制限されるため、固定資産税は一般農地と同様に課税され、税額は低く抑えられます

2-2.贈与税・相続税の納税猶予(免除)が受けられる

贈与や相続で農地を受け継いだ後継者が、農業を続けるなど一定の要件を満たす場合は、農地にかかる贈与税・相続税の納税が猶予(免除)されます

生産緑地も農地と同様に、納税猶予(免除)の対象になります。

納税が猶予される税額は次のとおりです。

  • 贈与税:納めるべき贈与税の全額
  • 相続税:通常の方法で計算した相続税と農業投資価格に基づいて計算した相続税の差額(下図参照)

(農業投資価格とは、農業に使用されることを前提にした売買価格として国税局が定めたもので、通常の宅地評価額よりも低く設定されています。)

納税猶予額のイメージ

この制度でははじめは納税が猶予されますが、納税猶予を取り消す条件にあてはまらなければ、やがて納税は免除されます

納税猶予を取り消す条件には、農地を譲渡した場合や農業をやめた場合、生産緑地の指定を解除した場合などがあります。納税猶予が取り消された場合は、猶予された贈与税・相続税と利子税を納めなければなりません。

贈与税・相続税の納税猶予(免除)については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせて参照してください。

農地の納税猶予の特例を利用すれば、相続税がゼロになる?

3.生産緑地に指定されるデメリット

生産緑地は税制上の優遇がある一方、農業以外の用途で利用することができません。

この章では、生産緑地に指定されるデメリットをご紹介します。

3-1.農業の継続が義務づけられる

生産緑地に指定された農地は、農地として管理しなければなりません(生産緑地法第7条第1項)。

つまり、生産緑地では農業の継続が義務づけられます

農地の管理について市町村から報告を求められたり、立入検査が実施されたりする場合もあります。

3-2.原則として工事などができなくなる

生産緑地に指定された農地では、原則として建築物など工作物の設置や、宅地造成など土地の形質の変更、水面の埋め立てなどができません(生産緑地法第8条第1項)。

ただし、農業を営むために必要な施設(温室、農業用倉庫など)であれば、市町村長の許可を得て設置できます(生産緑地法第8条第2項)。

平成29年の制度改正では、農業者の収益性を高める施設として、加工施設や直売所、農家レストランも設置できるようになっています。

このように規制は緩和されていますが、農業を継続することが前提であることは変わりません。

3-3.指定の解除が難しい

生産緑地制度は良好な生活環境の確保を目的としていることから、簡単に生産緑地の指定を解除することはできません

生産緑地の指定を解除できるのは、死亡や病気などの理由で農業ができなくなった場合や、指定から30年を経過した場合に限られます。

4.生産緑地の2022年問題は10年の延長申請で回避

現在の生産緑地の多くは、生産緑地法改正直後の平成4年(1992年)に指定されており、令和4年(2022年)には指定から30年を迎えます。

指定から30年が経過した生産緑地は、一斉に指定解除が行われる可能性があります。

指定解除された農地が宅地に転換されると、緑地の減少や地価の下落が予想されることから、「生産緑地の2022年問題」と呼ばれています。

平成29年の制度改正では、生産緑地の2022年問題の対策として、生産緑地の指定解除の時期を10年間延長する「特定生産緑地制度」が制定されました

特定生産緑地制度では、所有者の意向をもとに、指定から30年が経過する生産緑地が特定生産緑地に指定されます

指定から10年ごとに所有者の同意を得た上でさらに延長することができます。

農地が特定生産緑地に指定されると、農業の継続が義務づけられ売却や転用はできません。一方、生産緑地と同様に税制上の優遇があります。

特定精算緑地制度
(出典:「生産緑地制度の概要」国土交通省)

なお、生産緑地の指定から30年が経過した後では、特定生産緑地の指定は受けられません。

生産緑地の所有者は指定から30年が経過するまでに、特定生産緑地の指定を受けて農業を継続するか、指定を解除して宅地に転換するかを決める必要があります。

下記の記事では、生産緑地の2022年問題への対処法をご紹介しています。あわせてご覧ください。

相続税にも影響大! 生産緑地の2022年問題への対処法とは?

5.生産緑地の相続税評価

生産緑地は市街化区域内にありながら利用が厳しく制限されているため、価格は低く評価されます。

贈与税・相続税の計算のもとになる相続税評価額も一定額減額されます。

この章では、生産緑地の相続税評価額の計算方法をご紹介します。

5-1.相続税評価額の計算方法

生産緑地の相続税評価額は、その土地が生産緑地でないものとして評価した価額から一定の割合を控除して求めます。

計算式と控除の割合は次のとおりです。

生産緑地の相続税評価額 = その土地が生産緑地でないものとして評価した価額 × {1-(次の(1)または(2)に掲げる割合)}

(1)課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において市町村長に対し買取りの申出をすることができない生産緑地

(課税時期から買取りの申出をすることができる日までの期間に応じて以下の割合が定められています。)

  • 5年以下のもの : 10/100
  • 5年を超え10年以下のもの : 15/100
  • 10年を超え15年以下のもの : 20/100
  • 15年を超え20年以下のもの : 25/100
  • 20年を超え25年以下のもの : 30/100
  • 25年を超え30年以下のもの : 35/100

(2)課税時期において市町村長に対し買取りの申出が行われていた生産緑地または買取りの申出をすることができる生産緑地 : 5/100

(上記の「買取りの申出」とは、生産緑地の指定を解除するための手続きのことです。)

5-2.相続税評価額は固定資産税評価額ほどには減額できない

生産緑地の相続税評価額は一定の減額ができるものの、固定資産税評価額ほど大幅な減額はできません。

そのため、生産緑地に指定された農地に贈与税や相続税が課税される場合は、税額が高くなることが予想されます。税理士と相談したうえで、贈与税・相続税の納税猶予(免除)を適用するなどの対策を考えましょう。

贈与税・相続税の納税猶予(免除)については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせて参照してください。

農地の納税猶予の特例を利用すれば、相続税がゼロになる?

6.生産緑地の指定を解除する方法

生産緑地に指定されるメリット・デメリットの項目でもお伝えしたように、生産緑地に指定されると、税制上の優遇がある一方、利用が厳しく制限されます。

土地を自由に利用したいのであれば、生産緑地の指定を解除しなければなりません

この章では、生産緑地の指定を解除できる条件と、解除の手続きの流れをご紹介します。

6-1.生産緑地の指定を解除できる条件

生産緑地の指定を解除できるのは、以下のいずれかにあてはまる場合です。

  • 農業の主たる従事者が死亡もしくは病気等で農業に従事できなくなった場合
  • 生産緑地の指定から30年が経過した場合

6-2.生産緑地の指定解除の手続きの流れ

生産緑地の指定を解除するには、市町村に生産緑地の「買取りの申出」をします

市町村が必要と認めれば生産緑地は買い取られます。市町村が買い取ることができない場合は、他の農家に買い取りをあっせんします。

それでも買い手がつかない場合は、農地としての管理義務(行為制限)は解除されることになります

生産緑地制度の概要
(出典:生産緑地制度の概要」国土交通省)

7.生産緑地の指定を解除する場合の注意点

最後に、生産緑地の指定を解除する場合の注意点をご紹介します。

生産緑地の指定を解除すると、土地は自由に利用できるようになりますが、それまで受けていた税制上のメリットがなくなります。

贈与税・相続税の納税猶予を受けていた場合は一度に多額の納税をしなければならないため、特に注意が必要です

7-1.納税猶予されていた贈与税・相続税が課される

生産緑地の指定を解除すると、贈与税・相続税の納税猶予が取り消されます

納税猶予が取り消されると、猶予されていた贈与税・相続税に加えて、猶予されていた日数に応じた利子税も納めなければなりません。

生産緑地の指定解除で市町村や他の農家に土地が買い取られた場合は、その収入で納税ができます。

しかし、単に農地としての管理義務(行為制限)が解消されただけであれば収入はないため、納税ができないことも予想されます。

贈与税・相続税の納税猶予を受けていた場合は、生産緑地の指定を解除する前に、納税額がいくらになるかを見積もることが重要です

そのうえで、早急に土地を売却するか、あらかじめ納税資金を準備しておくなどの対策が必要です。

なお、生産緑地の指定から30年を経過して特定生産緑地の指定を受けなかった場合は、現在の所有者が農業を続けている間は引き続き納税が猶予されます。ただし、後継者への相続では納税猶予が受けられません。

7-2.固定資産税が高くなる

生産緑地の指定を解除すると、固定資産税は宅地と同様に課税され、税額が大幅に高くなります。税額が100倍以上になることもあります。

固定資産税は、土地を所有している間は毎年発生します。生産緑地の指定を解除するのであれば、収益が得られるように活用方法を検討するか、早急に売却するなどの対策が必要です

なお、生産緑地の指定から30年を経過して特定生産緑地の指定を受けなかった場合は激変緩和措置があり、5年間かけて宅地並みの税額に引き上げられます。

7-3.思うように土地が売れるとは限らない

生産緑地の指定を解除すると宅地に転換して売却することもできますが、思うように土地が売れない恐れもあります。

まずは不動産会社に相談して、宅地としての需要があるかどうか確認することをおすすめします。

場合によっては、生産緑地の指定を解除しないで売却したほうがよいこともあります。

8.まとめ

ここまで、生産緑地に指定されることのメリット・デメリットと、生産緑地の指定を解除する方法を解説しました。

生産緑地は税制上の優遇が受けられる一方で、農業以外の用途で利用することができません。

指定の解除には厳しい条件があり、解除できたとしても税負担が大きくなります。

生産緑地の多くは指定から30年を迎え、所有者は農業を継続するか、指定を解除して宅地に転換するかの判断を迫られています。生産緑地のメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身の状況に合わせて慎重に判断することが大切です。

税理士法人チェスターは相続税専門の税理士法人として、生産緑地の申告経験もあります。生産緑地の納税猶予や今後の対応について税制面でのご相談を承ります。

グループ会社には不動産売却や活用に強い株式会社チェスターがあり、農地の売却のご相談もあわせてお伺いします。

生産緑地をお持ちで今後の対応をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

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