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【ひな型付】遺産分割協議書の書き方とは?基礎から応用まで詳しく解説

遺産分割協議書は、法定相続人の全員が合意した遺産の分割方法を記載する書類です。
遺産分割協議書には定められた様式・形式はありませんが、必ず記載しなくてはならない内容があります。

遺産分割協議書の書き方を間違えると、預金の名義変更や不動産の相続登記などの相続手続きがスムーズに進まなくなります。
作成の際は、正しい書き方を理解しておくことが大切です。

この記事では、遺産分割協議書の基本的な書き方や注意点、専門家に依頼するメリットなどを、相続税専門の税理士が解説します。
見本や文例を付けて書き方を分かりやすく解説しているだけでなく、ひな形のダウンロードが可能であるため、遺産分割協議書を作成する際にぜひお役立てください。

1.遺産分割協議書とは

遺産分割協議書(読み方:いさんぶんかつきょうぎしょ)とは、遺産分割協議で取り決めた遺産の分割方法や割合について、法定相続人等が合意した内容を記載する書面のことです。

現法において、相続が発生したからといって、必ずしも遺産分割協議書を作成する義務はありません。

しかし、遺産分割協議書を作成すれば、以下のようなメリットがあるため、実務においては、遺産分割協議書を作成するケースがほとんどです

遺産分割協議書を作成するメリット

  • 相続人同士のトラブルを防ぐことができる
  • 相続手続きで遺産分割協議の合意内容を示すことができる

遺産分割協議の合意内容を遺産分割協議書に示しておくことで、相続人同士の「言った・言わない」といったトラブルを防ぐことができます。

また、相続税の申告・不動産の相続登記・預貯金の名義変更などの相続手続きでは、遺産分割協議書(もしくは遺言書)の提出を求められることが多いです。

遺産分割協議書の作成は義務ではないものの、実務では作成することが一般的ということは念頭に置いておきましょう。

注目!

次章からは遺産分割協議書が必要か不要か、作成前の準備などを解説します。

今すぐ遺産分割協議書の書き方を知りたい方は、コチラからすぐにご確認いただけます。

2.遺産分割協議書の作成は必要?不要?

相続において遺産分割協議書の作成が必要なのは、原則として「遺言書がないケース」です

法的に有効な遺言書がある場合は、原則として遺言書に従って遺産分割を行うこととなるため、遺産分割協議書の作成は不要です。

ただし、遺言書のある・なしに関わらず、遺産分割協議書の作成が必要なケースもあれば、作成が不要なケースもあります

まずはこの章で、そもそも遺産分割協議書の作成が必要なのか、不要なのかを見極めましょう。

遺産分割協議書は必要?不要?必要な場合の作成手順も解説」でも詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

2-1.遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書の作成が必要なケースの例は、以下のとおりです。

  • 遺言書に記載されていない相続財産がある場合
  • 遺言書と異なる遺産分割をする場合

遺言書で遺産の分割方法が指定されていれば、原則としてそのとおりに遺産を分割します。

しかし、遺言書に記載されていない相続財産がある場合は、その財産について遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

また、相続人全員と遺言執行者の合意があれば、遺言書と異なる遺産分割が可能となるため、遺産分割協議書の作成が必要となります。

詳しくは「遺言書の内容と異なる遺産分割」で解説しておりますので、あわせてご覧ください。

2-2.遺産分割協議書が不要なケース

遺産分割協議書の作成が不要なケースの例は、次のとおりです。

  • 遺言書で遺産分割の方法が指定されている場合
  • 法定相続人が一人しかいない場合
  • 法定相続分のとおりに遺産分割する場合

故人が遺言書で遺産分割の方法を指定していて、その遺言書のとおりに遺産を分割する場合、遺産分割協議は必要ありません。
金融機関にある口座の名義変更や不動産の相続登記などの相続手続きでは、遺産分割協議書ではなく遺言書を提示します。

法定相続人が1人であれば、その人が遺産をすべて相続するため、分割方法を示す必要はなく、遺産分割協議書の作成も不要となります。

他の法定相続人が「相続欠格」「相続廃除」「相続放棄」によって相続できなくなった結果、法定相続人が1人だけになった場合も同様です。

民法で定められた法定相続分のとおりに遺産分割する場合も、遺産分割協議書の作成は必要ありません。
ただし、合意内容を明確にしておくという意味で、遺産分割協議書を作成しておく方が望ましいでしょう。

法定相続分とは、被相続人の財産を法定相続人(相続する権利のある人)にどのように分配するかを定めた法的な割合のことです。
法定相続分について詳しくは「法定相続分とは何か?計算方法や遺留分との違いを解説!」をご覧ください。

3.遺産分割協議書の作成は専門家に任せるべき?

遺産分割協議書の作成は、必要に応じて弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家に依頼するとよいでしょう。
どの専門家に依頼すればよいかは、以下のチャートを参考にしてください。

遺産分割協議書の作成費用の相場は?誰に依頼すべきか・誰が払うのか・ポイントを解説」や「遺産分割協議書を作成できる人は?専門家のメリット、デメリットや自分で作成する場合のポイントを解説」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。

3-1.相続人同士がもめているときは弁護士に依頼

遺産分割協議の時点で相続人同士がもめているときや、もめ事が起こりそうな場合は、弁護士に依頼するとよいでしょう

弁護士に依頼する場合は、遺産分割協議の代理やサポートが主な業務となり、付随する業務として遺産分割協議書が作成されることになります。したがって、他の専門家に比べて報酬は高額になります。

>>遺産相続専門「CST法律事務所」へ相談する

3-2.不動産がある場合は司法書士に依頼

相続人同士のトラブルがなく、遺産に不動産がある場合は、司法書士に依頼するとよいでしょう

遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼する場合は、不動産の相続登記もあわせて依頼することが多く、登記する不動産が多ければその分報酬が高くなります。

>>相続手続き専門の「司法書士法人チェスター」へ相談する

3-3.不動産がない場合は行政書士に依頼

相続人同士のトラブルがなく、遺産に不動産が含まれない場合は、遺産分割協議書の作成を行政書士に依頼してもよいでしょう
行政書士は、不動産以外の名義変更手続きができます。

3-4.相続税の申告義務がある場合は税理士に依頼

相続税の申告義務がある場合は、税理士に依頼することをおすすめします
相続税の申告義務があるのは、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を上回る場合です。

税理士に依頼する場合は、相続税の申告が主な業務となり、付随する業務として遺産分割協議書が作成されることが多いです。

まず、相続税対策を考慮した遺産分割の方法を税理士に相談し、相続税申告や遺産分割協議書の作成も依頼するとよいでしょう。

>>相続税専門の「税理士法人チェスター」へ相談する

4.遺産分割協議書を作成する前の準備

遺産分割協議書が必要な場合は、速やかに法定相続人全員で遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成しましょう。

ただし、遺産分割協議をする前に、遺言書の有無を確認して、法定相続人と相続財産を確定させておく必要があります。

ここで間違いがあると、遺産分割協議が無効になったり、再度遺産分割協議が必要になったりする場合があります。

4-1.遺言書の有無を確認する

まずは、被相続人(亡くなった人)が、遺言書を残していないか探してみましょう。

自宅で見つからない場合は、法務局か公証役場で保管されているかもしれません。
最寄りの法務局や、公証役場に問い合わせてみるとよいでしょう。

遺言書の見つけ方について、詳しくは「遺言検索システムとは?遺言書の見つけ方。利用方法や必要書類を詳しく解説」をご覧ください。

4-2.法定相続人を確定させる

遺言書の有無を確認すると同時に、被相続人の戸籍調査を行い、誰が法定相続人になるかを確定させましょう。

この理由は、遺産分割協議は「法定相続人全員」で行う必要があり、一人でも欠けると、遺産分割協議は無効になってしまうためです。

法定相続人になる人は以下のとおりで、配偶者以外の人には順位があり、先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は法定相続人になりません。

法定相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を、本籍地等の市区町村役場で取得します。

わざわざ戸籍謄本を取得するのは大げさだと思われるかもしれませんが、養子・前妻の子・認知した非嫡出子など、知らない法定相続人がいる可能性もあります。

また、相続税申告や名義変更といった各種相続手続きでも、戸籍謄本が必要になるので、この時点で準備しておきましょう。

法定相続人の確定方法について、詳しくは「戸籍調査で相続人を確定させる方法・手順をご紹介!」をご覧ください。

4-3.被相続人の財産を確定させる

続いて、被相続人の財産を調査して、遺産相続の対象になる財産を確定させます。

預貯金、有価証券、不動産などプラスの財産のほか、借金やローンなどマイナスの財産も遺産相続の対象になります。

被相続人の財産を調べるには、自宅を捜索するほか、パソコンやスマホなども確認しましょう。

不動産
  • 不動産の権利証(登記済証・登記識別情報)
  • 固定資産税納税通知書
預貯金
  • 銀行の預金通帳
  • キャッシュカード
  • アプリやメール
有価証券
  • 証券会社からの取引報告書
  • アプリやメール
債務
  • 借用書
  • 金銭消費貸借契約書

被相続人の財産を調べ方について、詳しくは「相続が発生したら遺産の調査をしましょう!!」や「故人の財産調査が必要な3つの理由と具体的な方法を徹底解説!」をご覧ください。

4-4.登記簿謄本・印鑑証明書など必要書類を準備する

続いて、登記簿謄本や印鑑証明書など、被相続人の財産に係る必要書類を準備します。

遺産に不動産が含まれる場合は登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しましょう。
預貯金が含まれる場合は銀行から残高証明書を取り寄せ、有価証券が含まれる場合は証券会社から取引残高報告書を取り寄せます。

登記簿謄本は、最寄りの法務局やオンライン(登記・供託オンライン申請システム)で取得することができます。

相続手続きで遺産分割協議書を提示する場合は、遺産分割協議書に押印する実印の印鑑証明書を添付する必要がありますので、こちらも取得しておきましょう。

印鑑証明書は市区町村役場で取得しますが、もし法定相続人が実印の印鑑登録をしていない場合は、先に印鑑登録をする必要があります。

相続における必要書類を集める方法について、詳しくは「相続に必要な書類を1週間で集めよう!書類一覧や提出先をご紹介」をご覧ください。

4-5.遺産分割協議をする

法定相続人と被相続人の財産が確定すれば、法定相続人全員で、遺産の分割方法を話し合う「遺産分割協議」を行います。

法定相続人全員で話し合うといっても、全員が一か所に集まる必要はありません。
電話で話し合って、遺産分割協議書を郵送して順番に署名押印しても構いません。

遺産分割協議がまとまらない場合は、弁護士に仲介に入ってもらい、家庭裁判所で調停を申し立てるなどして解決を図ります。

詳しくは「遺産分割協議がまとまらないときの、遺産分割調停とは?」をご覧ください。

5.遺産分割協議書の書き方!文例・ひな形付き【見本】

遺産分割協議書の書き方の見本は、以下のひな形のとおりです。

遺産分割協議書のひな形は、以下からダウンロードしていただけます。

>>遺産分割協議書のひな型をダウンロード

5-1.題名・被相続人の項目の書き方

まずは「遺産分割協議書」と題名を書き、次に被相続人(亡くなった人)の氏名・死亡年月日・最後の住所・最後の本籍・登記簿上の住所を記載します。

被相続人に係る項目は、住民票や戸籍謄本、不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を参考に記載します。

5-2.前文の書き方

続いて、前文(前置きとなる文章)を書きます。

前文には、「遺産分割協議を行った日付」や「法定相続人全員の氏名」を記載し、遺産分割協議を行った事実を示します。

前文の後には、被相続人の「財産ごと」に、「誰」が「どれだけ取得するか」を記載します。

5-3.不動産(土地や建物)の書き方

不動産については、所在などの項目を登記簿謄本(登記事項証明書)のとおりに記載します。

不動産の相続登記で遺産分割協議書を提出する場合は、記載内容が登記簿謄本と一致していなければ登記できない可能性もあります。

特に不動産の所在は、一般に使う住所と異なる場合があるので注意しましょう。

5-3-1.不動産(一戸建て)の場合

一戸建ての住宅については、上記文例のように「土地」と「建物」に区分して所在などの項目を記載します。

具体的には、登記簿謄本のうち、下の図の赤枠で示す部分の内容を転記します。

5-3-2.不動産(マンション)の場合

マンションなど区分所有建物については、上記文例のように「一棟の建物(建物の全体)」「専有部分の建物」「敷地権」に区分して所在などの項目を記載します。

具体的には、登記簿謄本のうち、下の図の赤枠で示す部分の内容を転記します。

5-3-3.不動産(共有持分あり)の場合

被相続人が他の人と不動産を共有していた場合は、遺産分割協議書にもその旨を記載する必要があります。

たとえば、被相続人が土地の権利のうち2分の1を所有していた場合は、上記文例のように項目の最後に「持分 二分の一」と記載します。

5-4.預貯金の書き方

預貯金については、上記文例のように「金融機関名」「支店名」「預金種別(普通・貯蓄・定期など)」「口座番号」「口座名義」を記載します。

たとえば「○○銀行の普通預金口座」とだけ記載すると、被相続人が同じ金融機関に複数の口座を開設していた場合に、どの口座を示すかが特定できません。同じ人が複数の口座をすべて取得する場合でも、口座の内容は詳細に記載しましょう。

また、金額を誤って記載した場合や残高が変わった場合に、相続手続きが滞る恐れがあるため、遺産分割協議書には口座の残高(金額)は、記載しなくても構いません。

遺産分割協議書への預貯金の記載について、詳しくは「遺産分割協議書の預金記載例|分割後の払戻手続をスムーズに行うコツ」や「遺産分割協議書は金額を書かない。財産目録を作成して相続人で確認」をご覧ください。

5-5.有価証券(株式等)の書き方

有価証券については、上記文例のように証券会社名・支店名・口座番号・口座名義を明らかにし、内訳(証券の種類・銘柄・数量)をすべて記載します。

内訳については、証券会社から取引報告書や残高証明書を取り寄せて確認しましょう。

5-6.自動車の書き方

自動車については、車検証(自動車検査証)を参照して、上記文例のように自動車登録番号(ナンバー)と車体番号を記載します。

なお、査定金額が100万円以下の自動車は、遺産分割協議書がなくても、簡易な様式の「遺産分割協議成立申立書」で、名義変更手続きをすることもできます。

自動車の相続について、詳しくは「車の相続に必要な手続きと相続税評価の方法を相続税専門税理士が解説」をご覧ください。

5-7.債務の書き方

債務については、上記文例のように債務の契約内容・債務残高・債権者(会社名など)を記載します。

被相続人の債務は遺産分割の対象とはならず、各相続人が法定相続分に応じて負担します。
ただし、実務においては、相続人同士で債務を継承する人を決めることはできます。

仮に法定相続人のうちの一人がすべての債務を継承するのであれば、「相続人○○は、被相続人の債務すべてを継承する」と書くことも可能です。

遺産分割協議書の債務の書き方について、詳しくは「遺産分割協議書への記載方法」をご覧ください。

5-8.配偶者居住権の書き方

配偶者居住権は、被相続人が亡くなった時点で住んでいた建物を、残された配偶者が一定期間または死亡するまで無償で使用できる権利のことを指します。2020年4月の民法改正により新たに認められた権利です。

配偶者居住権が創設されたことで、配偶者は住む権利を、子供をはじめとした他の親族は家を所有する権利を分けて相続することができるようになりました。

家の評価額は、配偶者居住権と所有権とに分けて計算されます。
そのため、被相続人と配偶者が暮らしていた家の評価額が、遺産全体の評価額の大半を占めるようなケースでも、より公平に分割しやすくなりました。

遺産分割協議書には、配偶者居住権と所有権を相続する相続人の氏名を記載します。

配偶者居住権について詳しくは、下記記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
(参考)配偶者居住権とは?二次相続で相続税が節税できるって本当?

5-9.ゴルフ会員権の書き方

ゴルフ会員権は、会員制のゴルフ倶楽部※1を利用できる権利です。
ゴルフ会員権があると、割安料金でプレイをしたり、優先的にプレーの予約をしたりできます。

一般的に数十万〜数千万円と比較的高値で取り引きされているため、ゴルフ会員権の多くには財産的な価値があり、相続が発生したときに相続税の課税対象となります。

相続税の課税対象となるゴルフ会員権が遺産に含まれる場合、遺産分割協議書にはゴルフ倶楽部の名称や会員番号を記載します。

なお、プレー権のみのゴルフ会員権は、相続財産としての価値がないため、相続税評価は不要であり、遺産分割協議書に記載する必要もありません。

遺産分割協議書を作成する前に、該当のゴルフ倶楽部に問い合わせをして、必要な情報を確認しておくことが大切です。

ゴルフ会員権の相続税評価について詳しくは、下記記事をご確認ください。
(参考)ゴルフ会員権の相続税評価

5-10.名義財産の書き方

名義財産とは、実際の所有者と名義人が異なる財産のことです。
たとえば、被相続人の子供名義の口座でも、贈与の事実がなく被相続人が管理していた場合は、名義財産の一種である名義預金となります。

名義財産は、名義が被相続人のものではないというだけで、実際は被相続人の相続財産であることに変わりはありません。
したがって、遺産分割の対象となり、相続税の課税対象にもなります。

名義財産がある場合、遺産分割協議書には被相続人と名義が異なる財産であることや名義人の氏名を記載します。

5-11.後日判明した財産の扱いの書き方

遺産分割協議を行うまでには被相続人の財産をすべて調べますが、後日、それまで把握していなかった財産が見つかることもあります。税務調査によって、新たな財産や名義財産が把握されることが少なくありません。

後日財産が判明する場合に備えて、通常は「後日判明した財産をどのように扱うか」についても遺産分割協議書に明記します。

具体的には、次のいずれかの対応を決めておきます。

  • 再度遺産分割協議を行う
  • 相続する人を決めておく
  • 法定相続分で分割する

5-11-1. 再度遺産分割協議を行う

後日判明した財産だけを対象に、改めて遺産分割協議を行うと決めた場合、遺産分割協議書には、「本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人全員がその財産について再度協議を行うこととする」と記載します。

再度遺産分割協議をすることは手間がかかりますが、どのような遺産が見つかった場合でも柔軟に対応できるという利点があります。

再度遺産分割協議をする場合の手順や注意点について、詳しくは「遺産分割協議はやり直し可能|5つの具体例とトラブルを防ぐ方法」をご覧ください。

5-11-2. 相続する人を決めておく

後日判明した財産を相続する人を、あらかじめ決めておく場合、遺産分割協議書には、「本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人○○がすべて取得する」と記載します。

この場合は、後日新たに財産が見つかっても遺産分割協議を行う必要はありません。

しかし、見つかった財産が高額である場合は、他の相続人とトラブルになる場合もあります。
一度相続する人を決めて合意したとしても、高額の財産が見つかると気持ちは変わるものです。

このようなトラブルを避けるため、一定の金額を超える財産が見つかった場合は、再度遺産分割協議を行うよう定めるという方法もあります。

5-11-3. 法定相続分で分割する

後日判明した財産を、法定相続分で分割すると決めた場合、遺産分割協議書には、「本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、各相続人が法定相続分の割合で取得する」と記載します。

ただし、見つかった財産が、すべて法定相続分で分割できるとは限りません。

不動産が見つかった場合は、共有名義になってしまうなど、不都合が生じることも考えられます。

5-12.後文の書き方

次に、後文に「誰が遺産分割協議書を保管するか」を明記します。
これにより、遺産分割協議書が何枚存在するのかを、示すことができます。

通常は、法定相続人の人数分だけ遺産分割協議書を作成し、各自保管することとなります。

5-13.作成年月日と署名押印欄の書き方

作成年月日と法定相続人の住所を記入し、自筆で署名と実印で押印します。

日付は実際に遺産分割協議をした日、または最後に署名した人が署名した日付を記入します。
住所と相続人の箇所は住民票に記載されている住所と氏名を記入します。

5-14.遺産分割協議書を書くときの注意点

この章の最後に、遺産分割協議書を書くときの注意点をまとめます。

  • 遺産や債務の内容は正確に記載する
  • 不動産の所在などは登記簿謄本に記載されているとおりに記載する
  • 後日財産が判明した場合にどのように分割するか明記する
  • 相続人全員が自筆で署名し実印を押印する
  • 数枚にわたる場合はそれぞれの用紙の間に契印を押す

6.遺産分割協議書の書き方(応用編)

前章では、遺産分割協議書の基礎的な書き方をご紹介しました。

しかし、以下のようなケースに当てはまる場合、遺産分割協議書の書き方が通常とは異なります。

  • 未成年者・知的障害のある人・認知症の人がいる場合
  • 代償分割を行う場合
  • 換価分割を行う場合
  • 包括遺贈を受けた受遺者がいる場合

6-1.未成年者・知的障害のある人・認知症の人がいる場合

法定相続人の中に未成年者・知的障害のある人・認知症の人がいる場合、単独では法律行為ができません。

そのため、本人の代わりに「特別代理人」や「成年後見人」が、遺産分割協議に参加することとなります。
特別代理人について、詳しくは「相続で未成年者がいる場合に必要な特別代理人とは?相続税の未成年者控除についても解説」をご覧ください。

特別代理人が遺産分割協議に加わる場合、遺産分割協議書の「前文」と「法定相続人の署名押印」の書き方が、通常とは異なります。

特別代理人がいる場合の遺産分割協議書のひな形は、以下からダウンロードしていただけますので、参考にしてください。

>>遺産分割協議書(特別代理人版)のひな形ダウンロード

6-2.代償分割を行う場合の書き方

代償分割とは、法定相続人の誰かが特定の財産を相続したことにより、他の法定相続人よりも多額の財産を取得することとなった場合に、代償金を支払って他の法定相続人の不足分を補填する分割方法のことです。

代償分割について、詳しくは「代償分割とは?遺産を分割する方法や相続税の課税価格の計算方法」をご覧ください。

代償分割がある場合、遺産分割協議書には「誰が何を取得する代償として、代償金を誰にいくら支払うのか」を記載しなくてはなりません。
これは代償分割が贈与とみなされる可能性を廃除するためです。

特別代理人がいる場合の遺産分割協議書のひな形は、以下からダウンロードしていただけますので、参考にしてください。

>>遺産分割協議書(代償分割版)のひな型ダウンロード

6-3.換価分割がある場合の書き方

換価分割とは、遺産の全部または一部を売却して現金化し、相続人間で分割する方法のことです。
換価分割の対象が不動産の場合は、大きく分けて以下の2パターンがあります。

  • 共同登記:相続人全員の共有名義で相続登記をしたのちに売却する方法
  • 単独登記:相続人の中から選定された代表者の単独名義で相続登記をした後で売却する方法

換価分割をする場合、遺産分割協議書には以下の点を明記しましょう。

  • 換価分割をすること
  • 不動産を売却し、売却代金を各相続人の法定相続分などの合意した割合に応じて分割すること
  • 売却の際に支払う手数料や税金などの費用を売却代金から控除した残りを分割すること
  • 共同登記をする場合は、不動産を共有する相続人とそれぞれの持分割合
  • 単独登記をする場合は、不動産を代表して相続する相続人の氏名

6-4.包括遺贈を受けた受遺者がいる場合の書き方

包括遺贈とは、法定相続人以外の人が具体的な特定の財産ではなく、たとえば「遺産の2分の1」など「遺贈する割合」を遺言書で指定されて、被相続人から遺贈されることです。

包括遺贈された受遺者については、法定相続人と同じ権利を持つため、遺産分割協議によって具体的にどの財産を取得するのかを決めなければなりません(他に法定相続人や包括受遺者がいない場合は不要)。

包括遺贈について、詳しくは「包括遺贈と特定遺贈の違いとは?判断ポイント・トラブル防止の注意点や手続き方法」をご覧ください。

包括遺贈を受けた受遺者と法定相続人で遺産分割協議をする場合は、前章でご紹介した基礎的な遺産分割協議書の書き方で大丈夫です。

しかし、「なぜ法定相続人以外の人(包括受遺者)が遺産分割協議に参加しているのか」を明白にするため、遺産分割協議書には法定相続人ではなく「包括受遺者である旨」を記載しなくてはなりません。

6-5.数次相続が起こった場合の書き方

数次相続とは、遺産分割が完了する前に相続人の誰かが亡くなってしまうケースのことです。

たとえば、被相続人Aの相続人がB、C、Dだったとしましょう。
もし相続人Bが遺産分割前に亡くなり、Bの相続人がE、Fだったとすると、E、FがBの立場(相続人の地位)を引き継ぎ、Aの遺産分割協議に参加することになるのです。

数次相続が発生した場合、遺産分割協議書を作成する際は、「数次相続が起きたこと」を明記しましょう。
先ほどの例でいえば、「被相続人Aの相続開始後、相続人Bが死亡したため、Bの相続人E、FがBの相続人の地位を承継し、本協議に参加した。」などと遺産分割協議書に明記します。

また、当事者の肩書きを記載する際は、相続人Bは「相続人兼被相続人B」、新たな相続人となったE、Fは「相続人兼被相続人Bの相続人E」「相続人兼被相続人Bの相続人F」といったように記載します。

なお、数次相続が発生した場合の遺産分割協議書の書き方は、事案によって異なるため、作成の際は相続税を専門とする弁護士や税理士、司法書士などに相談することをおすすめします。

7.遺産分割協議書を作成する際の注意点

遺産分割協議書の作成には、いくつか注意すべき点があります。
主な注意点は、以下のとおりです。

  1. パソコンでの作成も可能
  2. 被相続人や相続人の情報は正確に記載する
  3. 誰がどの財産を相続するのかを明確に記載する
  4. 慎重に協議をした結果を記載する
  5. 生命保険の死亡保険金や死亡退職金の記載は不要
  6. トラブルを避ける場合は公正証書化しておく

作成時の注意点を1つずつみていきましょう。

7-1.パソコンでの作成も可能

遺産分割協議書の作成方法に決まりはありません。
パソコンと手書きのどちらで作成してもよく、用紙の大きさや文字の大きさなどにも制限はないため、作成する相続人がもっとも合っている方法を選ぶとよいでしょう。

どちらか迷った場合は、間違いを訂正しやすいパソコンを勧めます。
ただし、パソコンで遺産分割協議書を作成する場合は、相続人等の署名は手書きしましょう。

7-2.被相続人や相続人の情報は正確に記載する

遺産分割協議書には、被相続人と相続人それぞれの情報を正確に記載する必要があります。

被相続人については、氏名、住所、本籍地、死亡日などを間違いなく記入しましょう。
相続人については、氏名や住所などを印鑑証明書のとおり正しく書くことが大切です。

7-3.誰がどの財産を相続するのかを明確に記載する

遺産分割協議書は、遺産をどのように分割したのかを明らかにする書類です。
そのため、誰がどの財産を相続するのかは、明確に記載しなければなりません。

たとえば、預貯金であれば金融機関名や口座番号などを具体的に記載します。
不動産の場合は、土地と建物とそれぞれについて、登記簿謄本(不動産全部事項証明書)などの記載内容をもとに以下の項目を明記します。

  • 土地:所在地や番盤、地目(土地の種類)、地積など
  • 建物:所在地や構造、床面積、家屋番号など

曖昧な表現は避け、第三者が見ても理解できるように、相続する財産と相続する人を記載しましょう。

7-4.慎重に協議をした結果を記載する

遺産分割協議書は、相続人全員で話し合って作成するものです。
協議の結果、合意した内容を記載するため、相続人の全員が納得できるまで慎重に話し合いましょう。

一度作成した遺産分割協議書を変更する場合、再度、相続人全員の合意を得なければなりません。
再作成が必要になると、相続税の申告や不動産の名義変更などの手続きが遅れる可能性もあります。

協議後に後悔をする相続人がいることのないようしっかりと協議をし、その結果を遺産分割協議書に記載することが大切です。

7-5.生命保険の死亡保険金や死亡退職金の記載は不要

生命保険の死亡保険金や死亡退職金は、受取人が直接受け取る財産(受取人固有の財産)であるため、原則として遺産分割協議の対象外です。

そのため、遺産分割協議書には死亡保険金や死亡退職金のような受取人固有の財産を記載する必要はありません。

7-6.トラブルを避ける場合は公正証書化しておく

相続人同士のトラブルが想定される場合、遺産分割協議書を公正証書にするのも1つの方法です。
公正証書とは、法務局に所属する公証人が作成する公文書のことです。

公正証書には高い証明力があるため、相続人同士でトラブルとなり裁判に発展した際には有力な証拠として扱われます。
また、公証人は法律の専門家であるため、遺産分割協議書を作成する際、必要に応じて法的な視点でのアドバイスをもらうこともできます。

もし、遺産分割協議書を公正証書で作成するのであれば、強制執行に関する文言を入れるのも一案です。
合意した内容に反する相続人がいた場合、裁判を経ずに強制執行ができるようになるためです。

たとえば、遺産分割協議書に「代償金を支払うべき人が代償金を支払わない場合は強制執行に服する」と記載をしていると、裁判をすることなく強制執行により代償金を回収できます。

遺産分割協議書を公正証書で作成した方がよいケースについて詳しくは下記記事をご覧ください。
(参考)遺産分割協議書を公正証書で作成する方がよいケースとは

8.遺産分割協議書が無効になるケース

遺産分割協議書を作成しても、場合によっては無効になることがあります。
ここでは、遺産分割協議書が無効となる代表的なケースを解説します。

8-1.法定相続人の全員で遺産分割協議をしなかった場合

遺産分割協議は、法定相続人全員の合意が必要です。
たとえ1人でも欠けていれば、その遺産分割協議は無効となります。

たとえば、協議の後に故人の認知していた婚外子がいることが判明した場合、作成した遺産分割協議書は無効となり、再度協議をしなければなりません。

相続が発生した際は、戸籍謄本などの書類で法定相続人に該当する人物をよく確認したうえで、遺産分割協議をしましょう。

もし行方不明の相続人がおり、いくら捜索をしても見つからなかった場合は、家庭裁判所の手続きにより不在者財産管理人を選任して、その相続人の代わりに遺産分割協議に参加してもらう必要があります。

8-2.判断能力のない相続人の成年後見人を選任せずに協議をした場合

認知症や知的障害などで判断能力が不十分な相続人がいる場合、その人の代理人となる成年後見人を選任し、遺産分割協議に参加させる必要があります。これは、判断能力が乏しい相続人にとって不利な内容で遺産が分割されてしまうのを防ぐためです。

判断能力の乏しい相続人がいるにもかかわらず、成年後見人を選任せずに遺産分割協議をした場合、その協議で合意した内容や作成した遺産分割協議書は無効となります。

また、未成年の相続人がいるにもかかわらず、特別代理人を選任せずに遺産分割協議をした場合も無効です。
親と未成年の子がいずれも相続人である場合に、親が未成年の子の代理人となって協議に参加すると、互いの利益が相反してしまうため、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

8-3.分割内容が公序良俗に違反する場合

遺産分割協議の内容が、公序良俗に反する場合、その協議は無効となります。
公序良俗に反するとは、法律や社会的な倫理規範に違反するようなケースです。

たとえば、遺産分割協議書に違法な取引や犯罪行為、人権侵害などの条項が含まれていると、公序良俗に違反しているといえます。

公序良俗違反の程度によっては、遺産分割協議書全体が無効となることがあります。
遺産分割協議を行う際は、問題のある内容を盛り込まないよう慎重に検討することが大切です。

9.遺産分割協議を取り消せるケース

遺産分割協議書を作成し、相続人全員で合意したとしても、後から取り消せるケースがあります。
遺産分割の内容について重大な勘違いをしていたり、他の相続人に騙されていたりした場合には、民法の規定により、遺産分割協議における意思表示を取り消すことが可能なのです。

9-1.相続人が錯誤による無効を主張したとき

遺産分割協議の内容について重要な勘違い(錯誤)をしたまま同意してしまった場合、民法95条1項により、遺産分割協議を取り消せる可能性があります。錯誤の例は、以下のとおりです。

〇錯誤の例

  • 本来であれば時価が1,000万円の遺産を、無価値と思い込んで他の相続人に譲ってしまった
  • 首都圏にある不動産を相続できると思っていたが、実際に相続したのは地方都市にある不動産だった

ただし、遺産分割協議に同意をする理由(動機)を勘違いした場合、遺産分割協議を取り消すためには、その動機が他の相続人に対して明らかにされていなければなりません。

たとえば、実際には1,000万円の財産が無価値であると信じて遺産分割に同意をした場合、「その遺産に価値がないから遺産分割に同意した」という動機が、他の相続人に明らかにされている必要があります。

また、「少し調べれば遺産に1,000万円の価値があることが分かった」など、相続人に重大な過失がある場合は錯誤による遺産分割協議の取り消しはできません。

遺産分割協議後に第三者が遺産を取得した場合、その第三者が善意無過失であれば、その第三者に対して錯誤による取り消しを主張できない点にも注意が必要です。

たとえば、父親が亡くなり、長男と次男が遺産を相続するとしましょう。
遺産分割協議の結果、父親が住んでいた家は長男が相続することに決まりました。
長男は相続した家を、第三者であるAさんに売却します。

その後、次男は錯誤があったとして、遺産分割協議の取り消しを主張します。
しかし、家を購入したAさんは、遺産分割の際に錯誤があった事実は知らず、また、購入の際は登記簿謄本や売買契約書をよく確認するなど適切な対応をしていました。

この場合、Aさんに落ち度はなく、錯誤の事実を知らなかったため、善意無過失となります。
そのため、長男や次男は、Aさんに対して家の購入の取り消しを主張することはできません。

9-2.詐欺や強迫によって分割に同意したとき

他の相続人やその他の人物に騙されて遺産分割に同意してしまった場合は、民法96条1項に基づき、詐欺を理由に遺産分割協議を取り消すことができます。

たとえば、本来であれば遺産分割協議の対象になるはずの高額な不動産の存在を、他の相続人が故意に隠していた場合、詐欺を理由に遺産分割協議の取り消しを主張することが可能です。

また、遺産分割の際に特別受益として相続財産に持ち戻されるはずの財産が生前贈与されていたにもかかわらず、その事実が隠されていた場合も、詐欺により遺産分割協議を取り消せる可能性があります。

他の相続人に脅されて仕方なく遺産分割に同意した場合は、強迫を理由として遺産分割協議を取り消すことも可能です。
たとえば、「遺産分割に同意をしなければ暴行する」などと脅す行為は、強迫となります。

ただし、詐欺や強迫による取り消しにおいても、錯誤と同様に、善意無過失の第三者に対抗することはできません。

相続人以外の第三者による詐欺があった場合、遺産分割協議を取り消せるのは、他の相続人が詐欺の事実を知っていた場合や、知ることができた場合に限られます。

一方、相続人以外の第三者から強迫があった場合、他の相続人がその事実を知らなかった場合でも、遺産分割協議の取り消しが可能です。

10.遺産分割協議書の書き方でよくある質問

遺産分割協議書の書き方において、よくある質問をまとめました。

10-1.遺産分割協議書はいつまでに作成すべき?

遺産分割協議書の作成に期限は設けられていません。
ただし、相続税の申告は相続が開始した日の翌日から10ヶ月以内に済ませる必要があります。

被相続人が遺言書を残していなかった場合、遺産分割協議が終わらないことには、遺産分割協議の内容を反映した相続税の申告と納税もできません。
期限内に相続税の申告・納税ができるよう、相続が発生した際は、速やかに遺産や法定相続人を調査し、相続人同士で遺産分割協議をして遺産分割協議書の作成を済ませることが大切です。

なお、相続税の申告期限までに遺産分割協議が未了であっても、申告期限までに相続税の申告(未分割申告)と納税は必要となります。

10-2.遺産分割協議書はどこでもらえる?書き方に法的な決まりや様式はある?

遺産分割協議書の書式やひな型は、役所や銀行の窓口に置かれているわけではありません。

預金や自動車の相続では、遺産分割協議書に代わる専用の書式が用意されている場合がありますが、これらの書式はあくまでも個別の財産だけに通用するものです。

預金や不動産などあらゆる種類の遺産をすべて記載するのであれば、相続に携わる専門家が作成した遺産分割協議書のひな型を使うと便利です。

前章でもご紹介しましたが、相続税専門の税理士法人チェスターが実際に使用している、遺産分割協議書のひな型もありますので、ぜひご利用ください。

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10-3. 遺産分割協議書の表紙は必要?

遺産分割協議書の表紙は必須ではありませんが、作成される方がよいでしょう(特に枚数が多い場合)。

遺産分割協議書は様々な相続手続きで使用するため、表紙があれば他人に不必要に内容を見られることを避けられます。

遺産分割協議書の表紙には「遺産分割協議書」と記載し、下部に被相続人の名前を記入するか否かは自由に選択しましょう。

10-4. 遺産分割協議書の枚数が多くなったら?

遺産分割協議書の枚数が多くなったら、書類を1つにまとめて「契印」を押す必要があります。

これは、遺産分割協議書のページの連続性を示すためで、ページを抜き取られたり差し替えられたりすることを避けるためです。

遺産分割協議書をまとめる方法は2種類ありますが、遺産分割協議書の枚数によって対応されるとよいでしょう。
遺産分割協議書への契印の押し方について、詳しくは「遺産分割協議書の捨印や訂正印の押し方|解説図でひと目で確認」をご覧ください。

10-4-1. 遺産分割協議書が2~3枚の場合

遺産分割協議書が2~3枚であれば、書類の左側をホッチキスでとめてまとめましょう。

そして全ページの見開きごとに、契印を押します(法定相続人全員分)。
具体的には、以下のようなイメージです

10-4-2. 遺産分割協議書が4枚以上の場合

遺産分割協議書が4枚以上であれば、ホッチキスでとめるだけではなく、専用テープを使って製本することをおすすめします。

製本テープを使用する場合、すべてのページに契印を押す必要はありません。

製本した遺産分割協議書の「表紙」と「裏表紙」の製本テープの帯部分に、法定相続人全員の実印で契印をするだけでOKです。
具体的には、以下のようなイメージです。

10-5. 遺産分割協議書を複数作成した場合の注意点は?

遺産分割協議書を法定相続人の人数分作成した場合、割印を押す必要があります。

この理由は、複数の遺産分割協議書の内容が同じであること、つまり原本と控えの関連性を示すためです。

具体的には、以下のようにすべての書類が重なるように、実印を押すこととなります。

10-6. 遺産分割協議書をなくしたらどうする?

遺産分割協議書の原本を紛失してしまった場合、他の相続人から原本を借りて相続の手続きを進める方法があります。
遺産分割協議書のコピーが残っていたとしても、相続に関する手続きには原則として利用できません。

遺産分割協議書の原本を再作成するためには、すべての相続人に再度署名・押印してもらう必要があります。
協力してくれない相続人がいると、遺産分割協議書の再作成はできません。

また、当時の相続人のうち亡くなっている人がいる場合は、その方の相続人全員の協力を得る必要があり、さらに手間がかかる可能性があります。

そのため、遺産分割協議がまとまったら、記載内容が同じであり相続人全員の署名・押印がある遺産分割協議書を相続人の人数分作成し、各自が原本を保管するのが望ましいでしょう。また、作成した遺産分割協議書は金庫や鍵のかかる引き出しなど安全な場所に保管し、紛失しないように努めることが大切です。

11.遺産分割協議書の提出先

遺産分割協議書には、遺産分割協議の合意内容を法務局、金融機関、税務署など第三者に示す役割があります。

遺産相続の手続きでは、それぞれ次の機関に遺産分割協議書を提出します。

相続手続き 提出先
不動産の名義変更(相続登記) 法務局
預貯金の払い戻し 銀行など金融機関
有価証券の名義変更 証券会社(非上場株式は発行会社)
自動車の名義変更 運輸支局など(軽自動車は軽自動車協会)
相続税の申告 税務署

各種相続手続きに関して、詳しくは「相続手続きの流れと期限を一挙解説!いつまでにどのような手続きが必要?」をご覧ください。

12.遺産分割協議証明書とは

遺産分割協議証明書とは、遺産分割協議でまとまった内容を証明する文書のことです。

遺産分割協議証明書と遺産分割協議書は似ていますが、いくつか異なる点もあります。遺産分割協議証明書のメリットやデメリット、書き方なども知っておきましょう。

12-1. 遺産分割協議書をなくしたらどうする?

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、どちらも遺産分割協議で決定した内容を証明する書類です。両者の違いは、主に以下の内容です。

遺産分割協議書 遺産分割協議証明書
部数 一部でもOK 全員分
協議内容 全てを記載 一部のみでもOK
署名押印 相続人全員分 相続人1人のみでOK
効力 部数一部のみでOK 全員分を集める必要あり

遺産分割協議書には協議内容をすべて記載した上で、合意した法定相続人全員分の署名押印が必要です。

遺産分割協議証明書は、全員分を作成する必要があるものの、協議内容をすべて記載する必要はなく、その相続人1人のみの署名押印だけでOKです。

12-2. 遺産分割協議証明書のメリットとデメリット

遺産分割協議証明書には、メリットとデメリットがあります。

12-2-1. 遺産分割協議証明書のメリット

遺産分割証明書のメリットは、法定相続人がそれぞれ個別に署名押印ができることです。

なお、原本は本人が保管し、控えを他の法定相続人に渡す必要があります。

そのため、法定相続人同士が遠方に住んでいる場合や、相続人の人数が多い場合などでは、遺産分割協議書に比べて署名・押印に要する日数を短縮しやすく便利です。
すべての遺産分割協議証明書を1つにまとめるだけで、遺産分割協議書と同じ効力を持つこととなります。

12-2-2. 遺産分割協議証明書のデメリット

遺産分割協議証明書のデメリットは、原本を保管しているのは本人のみという点です。

そのため、代表者が1人で相続手続きができないこともあります。

12-3. 遺産分割協議証明書の書き方

それでは、遺産分割協議証明書の書き方について、確認していきましょう。

12-3-1. 記載する内容・例

遺産分割協議証明書の書き方は、基礎的な遺産分割協議書の書き方と同じです。以下は遺産分割協議証明書に必ず記載する内容ですので、参考にしてください。

記載する内容

  • 被相続人の情報
  • 取得する財産の詳細
  • 相続人の情報
  • 作成した日付
  • 署名押印(自分のみ)

なお、遺産分割協議証明書が複数枚になる場合は契印が、複数部を作成する場合は割印が必要となります。

12-3-2. 書き方のポイント

遺産分割協議証明書の書き方のポイントは、以下のとおりです。

  • 題名は「遺産分割協議“証明”書」と記載
  • 前文は「次のとおり分割を協議したことを証明する」でもOK
  • 法定相続人の署名押印は自分1人分だけ

13.遺産分割協議書を作成するときは正しい書き方を理解しよう

相続が発生した場合、実務では遺産分割協議書の作成が必要となるケースがほとんどです。

遺産分割協議書は相続人が自分で作成することもできますが、間違えた書き方をしたがために、相続手続きがスムーズに進まなくなることもあります。

ご自分で作成するのが難しそう…という方はもちろん、相続人同士でもめている場合や、遺産分割についてアドバイスを受けたい場合は、専門家に遺産分割協議書の作成を依頼しましょう。

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