不動産などの分割しずらい相続財産は代償分割を利用するべき?代償分割を利用するための7つのポイント
相続財産の方法には現物分割、換価分割、代償分割の3つがあります。それぞれにメリットデメリットがありますが、その中でも「代償分割」を選択する人が増えてきています。
代償分割とはどういうもので、どういったことに注意すればよいのでしょうか?
1.遺産分割の方法は3種類

まず遺産分割の3つの方法について説明していきます。
(1)現物分割
現物分割とは、相続する各々の財産についてどれを相続するが決めるものです。
例えば、相続人が長男と長女の2人の場合を考えてみましょう。被相続人(亡くなった人)の財産として、A、B、Cの3つの土地があり、D銀行に預金があったとします。その場合にAの土地は長男、Bの土地は長女、Cの土地は長男、Dの銀行預金は長女が相続するというように1つずつ相続人を決める方法です。

(2)換価分割
次に換価分割とは、相続財産を全て現金化して現金で分け合うものです。
ほとんどの場合で、相続財産には現金以外の土地や建物などが含まれていますので、そういった場合は売却するなどして、全て現金化した後に分配します。

(3)代償分割
最後に代償分割ですが、これはある相続人が特定の財産を相続したことにより、他の相続人より多額の財産を相続してしまった場合に現金などで不足分を補てんする分割方法です。
例えば長男が5,000万円の土地を相続し、長女が3,000万円の建物を相続した場合を考えてみましょう。

このままだと長男が2,000万円分おおく相続してしまいますが、5,000万円の土地を相続財産が均等になるように分割するのも大変です。そのため、土地を分割するのではなく、現金で1,000万円を長男から長女へ支払うことによって、相続額を平均にします。

この方法を採用した場合の相続金額は、長男5,000万円-1,000万円=4,000万円、長女3,000万円+1,000万円=4,000万円となり、均等に相続することが可能になります。
2.代償分割を利用するメリット
では、代償分割はどのような場合に利用するとメリットがあるのでしょうか?
代償分割を利用する時は、基本的には相続割合通りに分割してしまうと後々面倒なことが起こり、相続人が誰も得をしない場合です。
たとえば、土地や建物は分割して相続すると、1筆ごとの面積が小さくなり利用しにくくなることで、評価額が下がることがあります。
また、建物の所有権が複雑になってしまうことで、売却をする際にはスムーズにいかなくなる可能性もあります。そのような事態を避けるために特定の相続人に全て相続させて、その代わりに現金(代償金)を支払うことで、納得をしてもらうために利用されるケースが多いです。
3.代償分割を利用する時の遺産分割協議書例
遺産分割協議書(サンプル) 被 相 続 人 山田太郎 本籍◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 生年月日昭和○○年○○月○○日 死亡年月日平成○○年○○月○○日 最後の住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 上記の者の相続人全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。 1.相続人山田長男は次の遺産を取得する。 【土地】 所在 ◯市◯町◯丁目 地番 ◯番◯ 地目 宅地 地積 1,000.00平米 【建物】 所在 ◯市◯町◯丁目 家屋番号 ◯番◯ 種類 木造 構造 瓦葺2階建 床面 積 1階42.00平米 2階35.00平米 2.相続人山田長女は次の遺産を取得する。 【現金】金3,000,000円 【預貯金】 ○○銀行○支店普通預金口座番号11111111 3.山田長男は、第1項記載の遺産を取得する代償として、山田長女に平成◯年◯月◯日 までに、金5,000,000円を支払う。 4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人山田長男がこれを取得する。 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を何通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。 平成◯○年◯○月◯○日 【相続人山田長男の署名押印】 住所 氏名実印 【相続人山田長女の署名押印】 住所 氏名実印 |
4.代償分割と贈与税の関係
代償分割を利用するということは、A相続人からB相続人へ財産を贈与するということですが、贈与税はかかってしまうのでしょうか?
代償分割を利用して財産を贈与しても、これは相続税の課税対象となっている財産ですので、新たに贈与税が課されることはありません。ただし、代償分割で贈与されたものであることを証明できなければただの贈与とみなされていまいますので、上記例のように遺産分割協議書に必ず「代償として支払う」ということを明記しておくようにしましょう。
5.代償分割時の相続税計算方法
代償分割時の相続税は次のように計算します。
長男が相続税評価額3,000万円、代償分割時の時価4,000万円の土地を相続し、代償として長女に1,000万円を支払った場合について。

ただし、代償金額の1,000万円が代償分割時の時価4,000万円を基準に決められていた場合については、違う計算式で計算する必要があります。

相続時に課税される相続財産は、実際に取引される価格とは異なります。特に土地や建物については低い評価額で計算されるため、時価額を参考にして代償分割を行う場合は注意が必要です。
相続時の評価額についての説明は長くなってしまうため今回は省略しますが、特に土地については低く評価されることが多く、相続税対策でアパートなどを建設している場合には、貸家建付地としてさらに評価が低くなります。
6.代償分割を利用する時の注意点
建物や土地など、簡単に分割することができないものが多い相続の時に役立つ代償分割ですが、いくつか注意点があります。
代償分割を行う際に代償とされるものは現金が多いです。これは現金であれば不足分ちょうどを用意しやすいことやもらった方も使い勝手が良いためだと思われます。
ただし、現金でなくても代償とすることは可能ですので、例えば土地や建物、権利でも大丈夫です。
また、先述したように代償のために支払うことを遺産分割協議書に明記しておかなければ、贈与とみなされることがありますので、注意しましょう。
最後に代償分割の代償は土地や建物でも可能だと述べましたが、これらの代償には不動産取得税や登録免許税などの別途費用が必要となってしまうことを忘れないようにしておきましょう。
7.代償分割を分納にしたいけど?
代償金の金額が多い時に分割払いにしたい場合もあるかもしれません。これについては、特に決まりはなく、代償を受け取る側が分割でも良いと認めてくれさえすれば問題ありません。
ただし、分割払いにすることを遺産分割協議書に明記しておくことは忘れないようにしましょう。
まとめ
代償分割のポイントをご紹介しました。
相続財産を分割しにくいときには利用することを検討してみましょう。
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