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被相続人とは財産を相続される故人-相続順位や続柄の調べ方

被相続人とは財産を相続される故人-相続順位や続柄の調べ方

被相続人とは、生前に所有していた財産を家族や親戚に相続される人(故人)を指します。

被相続人の死亡により、相続が開始となります。相続手続には期限が設けられているものがあるため、必ず把握しておきましょう。相続の流れと手続のポイントを知ることで、期限内にトラブルのない相続手続がおこなえます。

1.被相続人とは財産を相続される故人

「被相続人」とは、亡くなったことにより財産を相続される人をいいます。被相続人の「被」には「こうむる」の意味があり、財産を相続される人が被相続人、相続する人が相続人です。法律上や税務上の相続手続では「故人」ではなく、「被相続人」が使われるので覚えておきましょう。

2.続柄を調べるなら被相続人の戸籍謄本を取り寄せる

相続人の相続範囲や順位を明確にするために、戸籍謄本を調べましょう

相続人が複数いる場合の優先順位や相続割合は、被相続人との続柄で決まります。また戸籍謄本は、被相続人が死亡した事実の証明にも有効です。戸籍謄本の「戸籍に登録されている者」の欄を確認しましょう。

あとから相続手続に関して親族間でトラブルにならないためにも、戸籍謄本は取り寄せておく必要があります。

参考:相続手続で必要な戸籍謄本と取り寄せ方法

3.法定相続人とは被相続人の遺産を相続する権利を持つ人

相続人とは、被相続人の死亡を原因として実際に遺産を相続する(した)人を指します。相続人になれる人の範囲や優先順位は、すべて民法で定められていることから「法定相続人」と呼ばれます

ただし、被相続人が遺言書を残していた場合は、法定相続人の遺留分などを侵害しない限り、遺言書の内容に従って相続がおこなわれます。遺言書がなく法定相続人が複数いる場合は、法定相続人同士で話し合い誰がどの割合で相続するかを決定します。

4.法定相続人になる人の基準

法定相続人になれるのは被相続人の血族および配偶者です。法定相続人については民法887~890条で定められています。

また法定相続人は、被相続人との続柄によって誰が相続人として優先されるべきか、順位が決まっています。被相続人と血族関係にあるからといって、誰もが常に法定相続人になれるわけではないので注意しましょう。

4-1.配偶者-必ず法定相続人になる

被相続人の配偶者は常に法定相続人になります。その理由は、夫婦の財産は2人で築いたものとして扱われるためです。つまり、夫が亡くなった場合は妻が、妻が亡くなった場合は夫が必ず法定相続人となります。

ただし、法定相続人となるためには、役所に婚姻届を提出している法律婚であることが条件です。事実婚の場合は、いくらパートナーとして一緒に暮らしていたり、周囲から夫婦のように扱われていたりしても、法定相続人になれず相続権は認められないので注意しましょう。

一方で、被相続人が死亡した時点で離婚調停・裁判中や別居などの事実があっても、法律上の婚姻関係があれば配偶者として法定相続人になれます。

4-2.順位がある法定相続人-被相続人との関係(続柄)によって決まる

▲法定相続人の相続順位

配偶者以外の法定相続人は相続順位が定められています。相続順位とは法定相続人になれる順番であり、相続順位が高い人から優先して相続人になれます。より順位の高い法定相続人がいる場合、下の順位の人には相続権が認められません。

4-2-1.第1順位-直系卑属

相続の第1順位は直系卑属である子どもです。第1順位が最も優先されるため、被相続人に親や兄弟姉妹がいる場合でも、子どもがいれば子どもが第1順位の法定相続人になります。直系卑属とは、子どもや孫など被相続人よりあとの世代の直系血族のことです。養子や前夫・前妻との子ども、認知された子どもも含まれます。

子どもがすでに亡くなっている場合、第1順位の法定相続人となるのは子どもの子ども、つまり孫です。孫が代わりに相続人になるため「代襲相続」と呼ばれます。孫もすでに亡くなっている場合は、孫の子ども(ひ孫)が第1順位の法定相続人です。代襲相続は、法定相続人となる人物まで何代でも続けられます。

4-2-2.第2順位-直系尊属

相続順位の第2順位は、直系尊属である親です。被相続人に親はいるが子どもや孫はいない場合、親が法定相続人になります。配偶者と親がいる場合は、配偶者と親が法定相続人です。

自分より前の世代の直系血族を直系尊属と呼びます。直系尊属の代襲相続も、直系卑属と同様に何代でも続けられます。例えば、親がすでに死亡していて祖父母が存命の場合は、親の親である祖父母が法定相続人です。祖父母も死亡していて曾祖父母が存命ならば、曾祖父母が代わりに法定相続人になります。

参考:直系尊属・直系卑属の意味を図で解説!直系卑属の相続についても紹介

4-2-3.第3順位-兄弟姉妹とその子ども

相続順位の第3順位は兄弟姉妹です。被相続人に子どもや孫、親や祖父母がおらず兄弟姉妹のみがいる場合、兄弟姉妹が法定相続人になります。被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人です。

子どもや孫、親や祖父母がおらず兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子ども(被相続人から見て甥姪)が代わりに法定相続人になります。

ただし、甥姪もすでに亡くなっている場合、その子どもが法定相続人になるわけではありません。直系卑属や直系尊属の場合と異なり、代襲相続は一代限りなので注意しましょう。

参考:推定相続人・法定相続人・相続人、違いはあるの?誰が何に該当するの?

5.法定相続人から外れる人の基準

相続に関して不正や罪を犯している人、または人格に問題がある人は法定相続人から外せる制度があります。具体的には以下の2つです。

不適格な人物を法定相続人から外せる制度

  • 相続欠格
  • 相続廃除

また、遺言により特定の法定相続人に「相続させない」とすることも可能です。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が認められており、最低限の相続割合は受け継ぐことができます。

5-1.相続に関して不正や犯罪を犯していた人-相続欠格

もともと相続人としての資格がある人が、相続の場面で不正や犯罪をおこなった場合「相続欠格」に該当し、相続権がはく奪されます。相続欠格にあたるケースは以下のとおりです。

相続欠格にあたる5つのケース

  • 被相続人や同順位より上の相続人を死亡させた、または死亡させようとした場合

  • 被相続人が殺害されたのを知りながら、告発や告訴をしなかった場合

  • 詐欺や強迫によって被相続人が遺言を撤回・変更・取消することを妨害した場合

  • 詐欺や強迫によって被相続人に遺言の撤回・変更・取消をさせた場合

  • 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠蔽した場合

参考:民法891条|e-Gov

相続欠格にあたる場合は、強制的に相続権がなくなります。よって、被相続人や他の相続人の意思は関係なく、家庭裁判所での申立ても必要ありません。ただし、相続欠格の効力が及ぶのは欠格者本人のみのため、相続欠格者に子どもがいた場合は代襲相続が可能です。

以上のとおり、およそ相続人としてふさわしくない者には、相続権を与えないことが法律で決まっています。

参考:相続欠格とは。相続人に重大な非行があると遺産を相続できない

5-2.人格に問題がある人-相続廃除

被相続人が、遺留分を有する推定相続人から虐待や侮辱を受けたり非行があったりした場合には、相続人の地位を失わせることができます。これを「相続廃除」と呼びます。遺留分を有する推定相続人とは、配偶者、子、親など「相続が開始した場合に相続人となるべき者」を指します。

相続人の廃除にあたるケースは以下のとおりです。

相続人の廃除にあたる3つのケース

  • 虐待(被相続人に対する暴力や耐えがたい精神的苦痛)
  • 重大な侮辱(被相続人の名誉や感情を著しく害すること)
  • 著しい非行(犯罪、被相続人の財産の浪費、素行不良など)

参考:民法892条|e-Gov

相続人廃除を適用するためは、相続欠格と異なり被相続人が家庭裁判所に請求する必要があると、民法893条に定められています。よって、被相続人が生前に家庭裁判所に行くか、遺言書で意思表示をしておかなければなりません。

家庭裁判所で相続人廃除が認められると、該当する推定相続人は相続人資格を喪失します。遺言書で相続人廃除の意思表示をした場合は、家庭裁判所の審判が確定した時点で、相続開始時にさかのぼって相続人資格の喪失となります。

廃除により推定相続人が相続人でなくなっても、代襲相続は可能です。

参考:相続廃除は相続させたくない相手に使える?相続欠格との違い

6.相続人の相続割合は被相続人との続柄で異なる-事例でチェック

▲法定相続人の相続割合

▲法定相続人の相続割合

相続人は、被相続人との続柄によってそれぞれ遺産の相続割合が異なります。相続割合は民法によって決められており「法定相続分」といいます。

しかし、法律で決まっているからといって、必ず法定相続分で分割しなければならないわけではありません。相続分は相続人たちの間で協議し、合意が得られれば自由に分割できます。この場合は、遺産分割協議書を作成します。協議しても合意に至らなかった場合は、法定相続分に基づいて分割するとよいでしょう。

6-1.配偶者と子ども-2分の1ずつ

被相続人に配偶者と子どもがいた場合の相続割合は、配偶者が2分の1、子どもも2分の1です。子どもが2人以上いる場合には、遺産の2分の1を子どもの人数で割って計算します。配偶者は2分の1のままです。また、配偶者がおらず子どものみがいる場合は、子どもが遺産のすべてを相続します。

次に代襲相続の例として、被相続人に長男と次男がいたが、長男はすでに死亡しているケースをみてみましょう。長男に子どもが2人いた場合は代襲相続が生じるため、法定相続人は長男の子ども2人と次男の計3人です。相続割合は長男の子ども1人あたりの相続分が4分の1、次男は2分の1になります。

6-2.配偶者と被相続人の親-配偶者3分の2・親3分の1

被相続人に配偶者と親がいる場合の相続割合は、配偶者が3分の2、親が3分の1です。両親が2人とも存命の場合は、3分の1を2分するので6分の1ずつになります。配偶者は3分の2のままです。また、配偶者がおらず親のみがいる場合は、親が遺産のすべてを相続します。

6-3.配偶者と被相続人の兄弟姉妹-配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1

被相続人に配偶者と兄弟姉妹がいる場合の相続割合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

兄弟姉妹が2人以上いる場合は、相続財産の4分の1を兄弟姉妹の人数で割って計算します。配偶者は4分の3のままです。また、配偶者がおらず兄弟姉妹のみがいる場合、兄弟姉妹が遺産のすべてを相続します。

参考:法定相続分は相続人の家族構成でこんなに変わる!【ケース別で解説】

7.被相続人に関するQ&A

相続が発生すると、どのような家庭であってもトラブルが生じる可能性があります。相続問題は決して、遺産額の大きい富裕層だけに起きやすいわけではありません。最高裁判所の調査によれば、相続問題で裁判に発展しているケースの7割以上がごく普通の家庭です。

参考:遺産分割事件等の審理について|裁判所

遺産分割などの相続問題は、家庭ごとのさまざまな事情や背景が重なって生じます。もし「相続手続がうまくいかない」「トラブルが起きないか不安だ」などの場合は、相続手続に詳しい専門家に相談するとよいでしょう。

7-1.被相続人の借金が見つかったらどうすればいい?

被相続人の借金が見つかった場合は、限定承認または相続放棄することで相続人の負担を減らせます。相続では原則として、被相続人が遺したプラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も相続しなければなりません。場合によっては、相続人が多額の借金を背負う可能性も生じます。

そこで、相続人には「限定承認」「相続放棄」の2つの制度により救済の道が用意されています。「単純承認」を含めたそれぞれの相続方法の違いは下記のとおりです。

 効果制度利用の手続
単純承認すべての財産を相続申述の必要なし
限定承認プラスの財産を限度としてマイナスの財産を引き継ぐ 家庭裁判所に書類提出
(相続人全員の同意が必要)
相続放棄すべての財産を放棄 家庭裁判所に申述書提出
(相続人1人で申立て可能)

借金を相続することがわかった場合、限定承認をすれば、被相続人が遺したプラスの財産の総額を限度として借金を支払えばいいことになります。限定承認は、相続開始後3ヵ月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。また、相続人全員の同意が必要です。

一方、マイナスの財産があまりに多く、相続しないほうがいいことが明らかな場合は、相続放棄を検討しましょう。相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続せずに放棄することです。「プラスの財産だけ受け継いでマイナスの財産は放棄する」ことはできないので注意しましょう。

相続放棄は、相続開始を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。こちらは限定承認と異なり、相続人全員の同意は必要ありません。

参考:相続の放棄の申述|裁判所

限定承認も相続放棄も、期限までに家庭裁判所で手続をおこなわないと単純承認したものと扱われます。期限を過ぎると、いかなる理由があっても負債まですべて相続することになるため注意しましょう。

参考:「単純承認」「相続放棄」「限定承認」、3つの方法

7-2.被相続人の預金を死亡直後に引き出したいときはどうすればいい?

被相続人の死亡後は、預貯金の一部のみ相続人が単独で払戻しを受けられます。被相続人の死亡が金融機関に知らされると、被相続人の預金口座は凍結されます。この場合に預金口座からお金を引き出すには、家庭裁判所に仮払いを申立てるか、金融機関の窓口に仮払いを申し出る必要があります。具体的な手続の流れは以下のとおりです。

家庭裁判所への申立て 遺産分割の調停または審判を申し立てる

預貯金の引き出しが必要な理由を示し、仮払いを申立てる

必要な理由が認められれば、他の相続人の利益を損なわない範囲で仮払いが認められる
金融機関窓口への申出 遺産分割前に申し出る

以下の計算式に従い、上限金額の範囲内で相続人単独で払戻を受ける

相続開始時の預金額×法定相続分×1/3
(※上限金額は1つの金融機関につき150万円まで)

仮払いを受ける際は、他の相続人の利益を害さないことが求められます。また、仮払いを受けた金額によっては相続財産の処分に着手したものと扱われ、相続放棄ができなくなるため注意が必要です。

参考:被相続人の死亡後に葬儀費用を銀行から下ろす方法・生前にできる対策

7-3.被相続人の預金調査をしたいときはどうすればいい?

被相続人の預貯金がいくらあるか調べたいときは、被相続人の使っていた口座の通帳やカードを金融機関に持って行き、残高照会に応じてもらいましょう。通帳やカードと一緒に、自分が法定相続人であることを証明する戸籍謄本を窓口に持参すると、預貯金の有無や残高の照会をしてもらえます。

被相続人の通帳やカードの場所がわからない場合は、金融機関から被相続人宛てに郵便物が届いていないか調べてみてください。もし相続人の知らない金融機関からハガキや封書が届いていたら、該当の金融機関に持参して口座情報を照会してもらいましょう。

また、預貯金を調べたいけれど何をすればよいかわからない場合は、専門家に調査を依頼することも可能です。ただし、対応できる調査範囲や費用相場は専門家によって異なるため、相続人の事情に応じて依頼先を選ぶようにしましょう。

なお、専門家別の対応領域や費用相場の大まかな目安は、以下の記事を参照ください。

参考:財産調査にかかる費用を専門家別にチェック|税理士法人チェスター

8.相続トラブルの未然防止はチェスターグループへ相談

相続は、相続割合や不適切な相続人を外す制度などが法律で決まっているものの、遺言や遺産分割協議である程度自由に決められる部分も多くあります。そのため、相続人同士で意見が合わなかったり、手続が複雑でスムーズに相続が進まなかったりなどのトラブルが生じやすくなります。

もし相続に関するトラブルを未然に防止したい場合は、専門家に相談することをおすすめします。チェスターグループであれば、相続を熟知した専門家が、相続財産の調査・相続人の調査・法定相続分や遺留分計算・遺産分割協議書の作成・不動産の名義変更などの煩わしい手続を引き受け、スムーズに相続を進めるお手伝いをいたします。

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