相続税が何も分からない方へ!申告要否の判定と手続きの進め方を解説

初めての相続では「何から始めればいいのか分からない」と不安を抱える方が多いはずです。しかし、国税庁の統計によると、亡くなった方のうち相続税の課税対象となるのは約1割にとどまっており、残りの約9割は申告も納税も不要となっています。
本記事では、まず相続税がかかるかどうかの判断基準から、遺産の調査方法、申告期限までを分かりやすく解説します。
初めての相続でも迷わないための基礎知識を解説しているので、ぜひご一読ください。
この記事の目次 [表示]
1.まずは「相続税がかかるかどうか」の判断基準を知ろう
相続税は、遺産総額が基礎控除額を超える場合にかかる税金です。国税庁の統計によると、2024年(令和6年)中に亡くなった方のうち、相続税の課税対象となった方の割合(課税割合)は10.4%でした。つまり、亡くなった方のおよそ9割は相続税の課税対象とはなっていません。このため、まずは相続税がかかるかどうかを把握することが大切です。
参考:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
1-1.法定相続人の数が大切!誰が法定相続人なのかを確定しよう
相続税がかかるかどうかを知る上で重要な基礎控除額は、法定相続人の数によって決まります。法定相続人が多ければ多いほど基礎控除額は増えるため、相続が発生したらまずは誰が法定相続人なのかを確定することが大切です。法定相続人は、故人の誕生から死亡までの戸籍謄本を取得することで調査できます。
法定相続人は原則、故人の配偶者と血族(子・親・祖父母・兄弟姉妹)です。故人に配偶者がいる場合は、配偶者は必ず法定相続人になります。法定相続人になれる血族には、以下のような順位があります。
<第1順位>
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
<第2順位>
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないときに相続人になります。
<第3順位>
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人になります。
引用:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
法定相続人の範囲や順位、法律で決められている遺産の取り分については、以下の記事で詳しく解説しています。誰が法定相続人になるのかが分かるフローチャートも掲載しているので、ぜひご確認ください。
参考:【図解付き】法定相続人の範囲とは?順位と割合、相続税の計算方法も解説
1-2.基礎控除額の計算式と早見表
基礎控除額の計算式と、法定相続人の人数ごとの基礎控除額早見表は以下のとおりです。

このように、法定相続人が1人の場合は基礎控除額が3,600万円で、法定相続人の数が増えるほど基礎控除額が大きくなる仕組みになっています。
1-3.遺産総額が基礎控除額以下なら相続税の申告は不要
遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告は不要です。遺産をすべて洗い出した上で、法定相続人の数から基礎控除額を算出すると、相続税がかかるかどうかが分かります。
相続税がかかるかどうかは、以下の記事内のシミュレーションツールを使うと容易に分かるので便利です。
2.洗い出したらまず確認!相続税の対象になる財産とは?
相続税の対象となる財産にはプラスの財産とマイナスの財産があります。プラスの財産からマイナスの財産を差し引くことで、遺産総額を算出します。
故人が残した財産のなかには相続税の対象になるものとならないものがあるので、ぜひ以下の記事でご確認ください。
参考:相続税の対象になる・ならない財産【一覧】課税対象の判定基準も解説
2-1.プラスの財産(預貯金・有価証券・不動産など)
相続税の対象となるプラスの財産は「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」となっています。具体的には以下のようなものがプラスの財産です。
- 現金
- 預貯金
- 有価証券
- 不動産
- 生命保険金(みなし相続財産)
※500万円×法定相続人の数の非課税枠あり - 宝飾品
- 貸付金
- 特許権
- 著作権 など
参考:国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
これらの財産はそれぞれ金銭的な価値に評価すると何円になるのかを算出して、相続税の計算をします。
次の記事では、相続税法上の計算をする際に用いる相続税評価額の計算方法を解説しています。相続税評価額の計算方法によって相続税がかかるかどうかが変わってくるので、ぜひ参考にしてください。
2-2.マイナスの財産(借金・葬式費用・未払いの医療費など)
マイナスの財産とは、借入金や未払いの医療費など、被相続人が残した債務を指します。これらの債務は、相続税の計算上、課税価格から差し引くことができます(債務控除)。
また、葬式費用は厳密には被相続人の債務ではありませんが、相続によって必然的に発生する費用であることから、相続税法上、債務とは別に課税価格から控除することが認められています。葬式費用には、葬儀社への支払いのほか、僧侶へのお布施や通夜振る舞いの飲食費なども含まれます。
一方、香典返しにかかった費用や、墓地・墓石の購入費用、初七日や四十九日などの法会に要した費用は、相続税の計算上、葬式費用として控除することはできません。
葬式費用として差し引けるもの・差し引けないものについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2-3.生前贈与があった場合の注意点
故人から生前に暦年課税による贈与を受けていた場合は、所定の年数まで遡って贈与財産の価額を相続財産に加算する必要があります(生前贈与加算)。これまで相続開始前3年以内に受けた贈与財産が加算の対象でしたが、令和5年度税制改正により、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、加算対象期間が最長で相続開始前7年以内に延長されることとなりました。
もっとも、改正には経過措置が設けられており、令和8年(2026年)12月31日までに開始した相続については、従来どおり加算対象期間は相続開始前3年以内のままです。令和9年(2027年)1月1日以後に開始する相続から加算対象期間が段階的に延長され、令和13年(2031年)1月1日以後に開始する相続で完全に7年となります。
なお、延長された4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、その合計額から100万円を控除した残額が加算対象となります。生前贈与があった場合は、相続開始日に応じて加算対象期間が異なりますので注意しましょう。
参考:生前贈与の非課税枠は年間110万円以内!注意点や節税対策を解説
3.亡くなった家族の財産状況がまったく分からない場合の調査方法
家族であっても、どのような財産を保有しているのか分からないことはあるでしょう。とくに離れて暮らしていたり長年疎遠だったりすると、亡くなった家族の財産状況がまったく分からなくて困ったという声もよく聞きます。
多くの家庭では、金庫や仏壇、棚などに通帳や権利書などをまとめて保管しているようですが、見つからない場合は手探りで探す必要があります。
3-1.郵便物や通帳、財布から手掛かりを探そう
郵便物や通帳、故人が使っていた財布は財産状況を知る手掛かりになります。財産状況が分からない場合はぜひ確認してください。
古い通帳に残高がある場合もあるので、保管されている通帳はすべて確認しましょう。
取引のある銀行、証券会社、保険会社からは定期的に郵便物が届くことがあります。固定資産税通知書は毎年5月頃に郵便で届くので、故人が保有している不動産を知る手掛かりになるでしょう。
財布のなかには、利用していた銀行のキャッシュカードが入っていることもあります。近年通帳を発行しない銀行も増えているものの、キャッシュカードは発行していることが多いため、財布やカードケースを確認することが大切です。
利用している金融機関が分かれば、通帳が見つからなくても問い合わせをして相続の手続きができます。
3-2.不動産があるかどうか不明なときは「所有不動産記録証明制度」と「名寄帳」で調査する
「故人が自宅以外にも土地を持っていたようだが所在地が分からない」「昔、故人から不動産を複数所有していると聞いたが真偽が分からない」など、相続財産のなかに不動産が存在するのかどうかも分からない場合は所有不動産記録証明制度を利用するとよいでしょう。
所有不動産記録証明制度は、令和8年(2026年)2月2日から運用が開始された制度で、登記簿上、特定の名義人が所有者として記録されている全国の不動産を一覧にした証明書(所有不動産記録証明書)を発行するものです。これを利用することで、相続人が存在を知らなかった不動産も把握しやすくなります。請求先は全国の法務局・地方法務局の登記所で、書面またはオンラインによる請求が可能です(手数料がかかります)。
なお、この証明書は請求書に記載された氏名・住所の組合せをもとに検索されるため、登記簿上の氏名・住所が現在の情報と一致していない不動産は抽出されない場合があります。そのため、本制度のみで全ての不動産を把握できるとは限らず、後述の名寄帳など従来の調査方法と併用することが重要です。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」
所有不動産記録証明制度を利用して故人名義の不動産を洗い出したら、その不動産が所在する市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取り寄せましょう。名寄帳とは、市区町村が管轄している課税対象の不動産がすべて記載されている書類です。名寄帳には固定資産税評価額や未登記建物の情報も載っているので、相続税の申告準備に欠かせない資料といえます。
名寄帳は相続人である旨を示す戸籍謄本や本人確認書類を提出の上、市区町村役場で申請をおこないましょう。
3-3.預貯金口座の照会と残高証明書の取得方法
郵便物などによって取引のある金融機関を特定できたら、通帳がなくても口座の照会、残高証明書を取得することができます。
金融機関ごとに手続きの方法は異なりますが、故人の死亡したことを証明する書類、故人と相続人との関係が分かる書類、相続人の本人確認書類、実印などが求められるのが一般的です。手数料もかかるので、金融機関に事前確認しましょう。
また、2025年4月1日から「口座管理法(預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律)」に基づく仕組みが本格的に運用開始され、相続が発生した際に、相続人が金融機関の窓口で、預金保険機構を通じて被相続人名義の口座の有無を一括して照会できるようになりました。
ただし、照会できるのは生前にご本人がマイナンバーとひも付けの届出をしていた口座に限られ、ひも付けされていない口座は対象外です。また、利用には金融機関ごとに所定の手数料がかかります。マイナンバーとひも付けされていない口座については、従来どおり通帳・郵便物などからの調査が必要となります。
3-4.気を付けたい「デジタル遺産」の探し方
デジタル遺産とは、故人が所有していたデジタル形式の財産のことです。
最近では、スマートフォンやパソコンなどを使ってインターネット上のみで取引する銀行口座や証券会社が増えています。また、故人がFX口座や暗号資産の口座で取引をしていた場合も、デジタル遺産となることが多いでしょう。このほか、動画や音楽配信サービスのサブスクリプションや定期購読など、インターネット上で契約をしているサービスも、定期的な支払いが必要なデジタル遺産といえます。
これらのデジタル遺産は、通帳などといった目に見える形での取引履歴がないため、見つけにくいのが特徴です。
デジタル遺産はスマートフォンのアプリで取引しているケースが多いため、まずはスマートフォンのロックを解除してアプリの存在を確認することが大切です。スマートフォンの暗証番号が分からないと、デジタル遺産があるかどうかを把握することができません。故人の手帳やエンディングノートなどにスマートフォンの暗証番号が書かれていないか確認しましょう。
デジタル遺産は相続人が見つけることが困難で、結果的に相続トラブルの原因になることが多々あります。このため、デジタル形式の財産を所有している方は生前のうちに対策をしておくことが大切です。以下の記事では生前におこなっておきたいデジタル遺産対策を紹介しているので、ネットバンキングやネット証券を利用している方はぜひご一読ください。
参考:デジタル遺産が相続トラブルの原因に!?生前整理した方が良い理由を事例付きで解説
4.相続税申告までの流れと期限をざっくり把握しよう
これまでの解説から「相続税の申告・納税が必要だ」と分かったら、さっそく相続税申告準備を進める必要があります。
まずは、相続税申告までの流れと期限をざっくりと把握しておきましょう。
4-1.最重要!申告期限は「10カ月以内」
相続税申告の期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。期限までの10カ月の間に、遺産をすべて洗い出し、相続人とどのように遺産分割するのかを決める必要があります。
遺産分割協議書を作成する際には、相続人全員の署名・押印(実印)が必要となるため、疎遠だったり遠方に住んでいたりする相続人がいる場合は早めの準備が欠かせません。
なお、期限内に遺産分割が成立しない場合でも、未分割のまま法定相続分で申告することは可能ですが、その場合は配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった主要な特例を当初申告で適用できないため、税負担が大きくなる可能性があります。また、期限内に申告・納税ができない場合は、延滞税や加算税が課されることがあります。
相続税の延滞税・加算税は、延滞した日数が長いほど高額になります。特別な事情がない限り、相続税の申告・納税は期限内に済ませましょう。
参考:相続税の延滞税・加算税はいくら?税率・計算方法・免除特例も解説
4-2.亡くなったあとから相続税申告・納税までのステップ
家族を亡くしたとき、突然相続と言われても何から手を付けたらいいのか分からないという方も多いはずです。ここからは、亡くなったあとから相続税納税までのステップを解説します。
ご逝去後にまずおこなうことは葬儀の準備です。葬儀を依頼する葬儀社を決めて、日程や葬儀の形式を検討します。死亡後7日以内に死亡届を役所に提出する必要がありますが、これは葬儀の準備期間にあたるため葬儀社のスタッフが代行してくれるのが一般的です。
死亡届は役所に提出すると返却されません。その後の相続の手続きで必要になるため、5部程度死亡届をコピーして保管しておくとよいでしょう。
相続税申告・納税までの準備は葬儀後から始まります。申告手続きの流れは以下のように遺言書があるかどうかで異なるため、まずは遺言書を見つけることが大切です。

各ステップにおける必要書類については、以下の記事で詳しく解説しています。複雑な相続関係や評価しづらい財産がなければ相続の手続きは自分でできますので、ぜひ参考にしてください。
参考:相続税申告を自分でやる方法【税理士解説】必要書類・注意点まで
5.相続税申告で悩んだときの相談先
相続税の申告は自分でおこなうことが可能です。しかし、相続税申告に向けて作業をしていくなかで、分からないことが出てくることもあるでしょう。
相続税申告で悩んだときは、早めに専門家に相談するのがおすすめです。お悩み別に適切な相談先をご紹介します。
5-1.申告方法や制度についての簡単な相談なら「税務署」へ
相続税申告の方法や制度についての簡単な疑問を解決したい場合は、税務署の無料相談がおすすめです。税務署での相談には、電話相談と管轄の税務署での面談があり、面談なら個別具体的な相談にも対応してもらえます。
電話相談の場合は直接「国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901)」に電話します。電話をかけると音声ガイダンスが流れるので、案内に従って相談したい内容の番号を選択しましょう。受付時間は8時30分~17時(土日祝日及び12月29日~1月3日を除く)です。
面談を希望する場合は、まずは管轄の税務署で面談の予約をする必要があります。家系図や財産目録といった相談に必要な資料を集め、面談日当日に相談したい内容のメモと一緒に持参するとスムーズに話ができるでしょう。
参考:国税庁「税についての相談窓口」
税務署では税務申告の代行や節税のアドバイスには対応していません。より踏み込んだ内容を相談したい場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
5-2.申告の代行、節税のアドバイスを希望なら「税理士」へ
税務署では対応できない、申告の代行や節税のアドバイスを希望するなら税理士への相談がおすすめです。ひとくちに税理士といっても専門分野は異なるため、相続税についての相談をしたいなら相続の経験が豊富な税理士を選ぶとよいでしょう。
税理士は相続税を節税できる特例や特別控除についてアドバイスをくれたり、面倒な相続税申告の代行をおこなったりできます。税理士は初めての相談に無料で対応するのが一般的なので、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
6.相続税の不安はチェスターに相談して解決しよう
相続税の申告というと、身構えてしまったり何も分からなくて不安になったりする方が多いのではないでしょうか。
相続税の申告が必要な人は全体の1割程度なので、まずは自分に相続税の申告・納付が必要なのかを知ることが大切です。相続税がかかるかどうかを知るためには、法定相続人が誰なのかを特定し、故人が所有していた財産をすべて洗い出す必要があります。
「連絡が取れない法定相続人がいる」「故人の財産状況が分からない」「想定よりも相続税がかかりそう」など、相続税の申告準備をしているなかで不安が出てくることがあるかもしれません。そういったときは、ぜひ税理士に相談するとよいでしょう。
税理士法人チェスターは相続専門の税理士集団です。経験豊富な税理士が所属しているため、相続税に関するさまざまなお悩みに対応できます。まずはお気軽に無料面談をご利用ください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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