財産目録とは?相続における作成目的・書き方【無料Excel書式&記載例付】
財産目録は、相続や終活を行う際に欠かせない資料の1つです。
生前に財産目録を作成すれば、財産状況を把握できるため、相続税対策ができる・相続人の負担を軽減できるというメリットもあります。
財産目録には、法律で定められた書式や様式はありませんが、確実に相続財産を確定できるよう財産の詳細を記載しなくてはなりません。
この記事では、財産目録の作成方法や流れ、記載例を元に具体的な書き方を解説します。
無料ダウンロード可能なエクセルテンプレートも公開しておりますので、ぜひご利用ください。
この記事の目次 [表示]
1.財産目録とは
財産目録とは、一定の時点における財産内容を、一覧に整理してまとめた書類のことです。
財産目録は様々な相続シーンにおいて作成されるため、相続財産目録とも呼ばれています。
【出典:法務省ホームページ】
「財産目録はこのように作成しなければいけない」という決まりはなく、法律で定められた書式や様式はありません。
しかし、確実に相続財産を特定できるよう、各財産の詳細を記載する必要があります。
1-1.相続財産目録のエクセルテンプレート【無料ダウンロード】
税理士法人チェスターでは、相続財産目録のエクセルテンプレートを、無料公開しております。
上記のリンクをクリックして頂くと、エクセル形式の財産目録を無料でダウンロードしていただけます。
著作権は税理士法人チェスターにありますが、商用目的での利用以外は自由に使用して頂いて結構です。
なお、財産目録のみならず、終活の一環としてエンディングノートの作成を検討されている方もいらっしゃるかと存じます。
エンディングノートについて、詳しくは「エンディングノートとは?作成するメリット・効力│無料おすすめも紹介」をご覧ください。
2.相続において財産目録を作成する目的
一般的な相続において財産目録が必要となるのは以下の3つのシーンで、それぞれ作成する目的が異なります。
上記の3つのシーンにおいて、財産目録の作成そのものは義務ではありません。
しかし、財産目録があれば財産状況を把握しやすくなるため、作成されることをおすすめします。
なお、遺言執行者に就任する場合や、遺産分割調停の申立てをする場合には、財産目録の作成が義務とされています(解説は割愛します)。
2-1.遺言書を作成するため
財産目録の作成が必要となるのは、遺言書の作成時です。
遺言書には指定相続分(誰に・何を・どれだけ相続させるのか)を記載しますが、前提として財産状況を把握しなくてはなりません。
財産目録があれば、自己の財産状況を把握しやすくなり、指定相続分を決めやすくなります。
遺言書について、詳しくは「遺言書が必要な人リスト~なぜ必要?残すべき理由とは?~」をご覧ください。
2-2.遺産分割協議をするため
財産目録の作成が必要となるのは、遺産分割協議を行う場合です。
相続が発生し、被相続人が遺言書を残していない場合には、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、具体的相続分(誰が・何を・どれだけ相続するのか)を話し合う必要があります。
遺産分割協議にて具体的相続分を決める際の前提資料として、財産目録が必要になります。
なお、評価額が間違っていたり、不正確なものであったりすると、そもそも話し合いの前提条件が崩れてしまいます。
財産目録に記載する財産の評価額は、正確な価額を記載するよう注意が必要です。
遺産分割協議について、詳しくは「遺産分割協議に期限なし!ただし相続税の申告期限までに行うのがおすすめ」をご覧ください。
2-3.相続税の申告をするため
財産目録の作成が必要となるのは、相続税の申告を行う場合です。
遺産総額が相続税の基礎控除【3,000万円+(600万×相続人の人数)】を超える場合には、相続税の申告義務が課せられます。
相続税の申告においては、被相続が所有するすべての財産を相続税評価額で合計して、相続税額を計算する必要があるため、前提資料として財産目録が必要になります。
相続税の計算は通常税理士が行いますので、相続人の方が財産目録を作成する際には、正確な相続税評価額を計算する必要はありません。
ただし、相続財産に漏れがないように、財産目録を作成することを心がけましょう。
相続税申告について、詳しくは「相続税申告は自分でできる?不要なケース・流れ・必要書類を解説」をご覧ください。
3.財産目録を生前に作成しておく2つのメリット
財産目録は様々な相続シーンで利用されますが、法定相続人が作成するケースがほとんどです。
しかし、被相続人となる方が生前に財産目録を作成しておけば、様々なメリットがあります。
実際に終活の一環として、エンディングノートと共に財産目録を作成される方が増えています。
詳しくは「終活やることリスト「10項目」と始めるタイミングを解説」をご覧ください。
3-1.相続税の生前対策を検討できる
財産目録を生前に作成する1つ目のメリットは、相続税の生前対策を検討できることです。
自身の財産状況を把握することで、相続発生時にどの程度の相続税が課税されるのかを知ることができます。
仮に相続税が課税されるのであれば、生前贈与や資産の持ち替え等の生前対策を検討できます。実際に相続税対策の多くは、生前に行う対策がほとんどです。
生前対策について、詳しくは「【相続税対策22選+7つの控除】注意点・節税ポイントを税理士が解説!」をご覧ください。
3-2.相続人の負担を軽減できる
財産目録を生前に作成する2つ目のメリットは、相続人の負担を軽減できることです。
相続手続きには様々な期限が設けられており、相続開始から3ヶ月以内に被相続人の相続財産の調査をして、相続するか否かを決めなくてはなりません。
そして相続税の申告期限は相続開始の翌日から10ヶ月以内ですので、この期限に間に合うよう遺産分割協議を行う必要があります。
相続発生時に財産目録があれば、法定相続人は財産調査を行う手間が省け、遺産分割協議もスムーズに進めることができます。
詳しくは「【相続手続き】いつまでに手続きが必要?流れと期限をまとめて一挙解説━保存版━」をご覧ください。
4.財産目録を作成する流れ
以下は、財産目録を作成する流れですので、参考にしてください。
- 相続財産の内容を把握する
- 相続財産に係る必要書類を収集する
- 財産目録を作成する
上記の流れに沿って作業を進めれば、「どのような財産が・どこに・どれだけあるのか」を簡単に把握でき、財産目録の作成がスムーズになります。
4-1.相続財産の内容を把握する
財産目録を作成する前に、被相続人(となる人)が所有する相続財産の内容を把握しましょう。
相続財産には、「プラスの財産(積極財産)」と「マイナスの財産(消極財産)」のすべてが含まれます。
なお、死亡保険金や死亡退職金は、受取人の固有の財産となるため、遺産分割の対象にはなりません(相続税の課税対象にはなります)。
相続財産について、詳しくは「相続財産とは?具体例で相続財産に含まれるもの含まれないものを解説」をご覧ください。
4-2.相続財産に係る必要書類を収集する
次に、把握できた相続財産に係る、必要書類を収集しましょう。
この理由は、収集した相続財産に係る必要書類を元に、様々な情報を財産目録に記載するためです。
税理士法人チェスターでは、「相続税申告 資料収集準備ガイド」を無料公開しております。
必要書類の説明や取得方法について解説しておりますので、ぜひご利用ください。
4-3.財産目録を作成する
収集した資料を元に、財産目録を作成します。
「財産目録はこのように記載しなければいけない」という決まりはありませんが、以下の情報は記載しておきましょう。
- 財産目録の作成日
- プラスの財産の詳細
- マイナスの財産の詳細
相続財産の書き方は次章でご紹介しますが、財産目録には相続税評価額も記載します。
いつの時点の評価額なのかが一目で分かるよう、財産目録には作成日を記載しておきましょう。
5.財産目録の書き方!相続財産の記載例
財産目録には、相続財産を確実に特定できるよう、各財産の詳細を間違いなく記載しなくてはなりません。
この章では、税理士法人チェスターの財産目録を使った、一般的な相続財産の詳細の書き方について解説します。
必ずしもこれに従う必要はありませんので、参考までにご覧ください。
5-1.不動産(土地)の記載方法
【記載例】
所在:東京都中央区日本橋○丁目
地番:○番○○
地目:宅地
地積:○○㎡
評価額:△△△△円
相続財産に不動産(土地)が含まれる場合は、登記簿謄本を参考に、財産目録に所在・地番・地目・地積・評価額などを記載しましょう。
なお、土地の相続税評価額については、路線価方式や倍率方式を元に計算する必要があります。
ご自身での計算が難しければ、仮の数字として固定資産税の課税明細に記載されている固定資産税評価額を入力しておきましょう。
土地の相続税評価額の計算方法について、詳しくは「相続税路線価とは?調べ方や評価額の計算方法、固定資産税路線価との違いを解説」をご覧ください。
5-2.不動産(建物)の記載方法
【記載例】
所在:東京都中央区日本橋○丁目○番○○
家屋番号:○○番の○○
種類:居宅
床面積:1階○○㎡ 2階○○㎡
評価額:△△△△円
相続財産に不動産(建物)が含まれる場合は、登記簿謄本を参考に、財産目録に所在・家屋番号・種類・床面積・評価額などを記載しましょう。
建物の相続税評価額は、原則として「固定資産税評価額×1.0」で計算します。
しかし、家屋や建物の種類や利用状況により、相続税評価額の計算式が異なりますのでご注意ください。
詳しくは「家屋(建物)の相続税評価額の計算方法!調べ方や節税対策も解説」をご覧ください。
5-3.預貯金・現金の記載方法
【記載例】
銀行名:○○銀行
支店名:○○支店
種目:普通
口座番号:000001
口座名義:△△△△
評価額:△△△△円
相続財産に銀行の預貯金が含まれる場合は、財産目録に銀行名・支店名・種目・口座番号・口座名義などを記載します。
評価額については、相続開始(死亡時)時点の残高を記載します。
5-4.有価証券(上場株式等)の記載方法
【記載例】
証券会社:○○
証券株式会社
支店名:○○支店
口座番号:0000001
口座名義:△△△△
銘柄:株式会社●●
株数:△△株
評価額:△△△△円
相続財産に証券会社に預けている有価証券が含まれる場合は、財産目録に証券会社名・支店名・口座番号・口座名義はもちろん、個別銘柄名や保有していた株式数も記載します。
なお、評価額については、相続開始時点(死亡時点)での相続税評価額を記載します。
相続税評価額については、相続開始日の最終価格、相続開始日を含む月・前月・前々月のそれぞれの平均価格のうちもっとも低い単価を銘柄ごとに適用して計算を行います。
詳しくは、「有価証券における相続税評価額計算|具体例や相続で損しないための節税方法も」をご覧ください。
5-5.自動車の記載方法
【記載例】
自動車登録番号:○○123△456T
車体番号:00000000000
相続財産に自動車が含まれる場合は、車検証などを参考に、財産目録に自動車登録番号や車体番号を記載します。
確実に財産が特定できるよう、車種・走行距離・初年度登録日などを記載しても良いでしょう。
5-6.借金・債務・葬式費用の記載方法
【記載例①】
借入先:○○銀行○○支店
借入残高:10,000,000円
【記載例②】
債権者:○○葬儀社
債務金額:500,000円
借金・債務・葬式費用がある場合は、どこに対していくらの返済義務があるのかを明確に財産目録に記載する必要があります。
相続開始日(死亡日)時点で未払いとなっている金額を記載します。
6.財産目録を作成する際の3つの注意ポイント
財産目録を作成する際に、注意したいポイントが3つあります。確認していきましょう。
6-1.財産の漏れがないようすべて記載する
財産目録を作成する際には、相続財産の漏れがないようにすべて記載しましょう。
例えば、遺産分割協議の前提資料として財産目録を作成したにも関わらず、一部の財産の記載漏れがあったとします。
遺産分割協議が終了した後に財産の記載漏れに気付いた場合、漏れた財産についてもう一度遺産分割協議をする必要があり、手間も時間もかかってしまいます。
財産の記載漏れがないよう、財産目録にはすべての情報を記載しましょう。
6-2.財産目録自体に法的効力はない
財産目録はあくまで相続財産の情報をまとめた資料であり、遺言書ではありません。
仮に財産目録に遺産分割の希望を記載しても、法的効力はありませんのでご注意ください。
相続財産の分割方法を指定する場合は、必ず自筆証書遺言や公正証書遺言を作成しましょう。
詳しくは、「自筆証書遺言書の作成から使用に至るまで、知っておくべき4つのこと」をご覧ください。
6-3.自筆証書遺言に添付する場合は署名押印が必要
自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成した場合は、各ページ(毎葉)に署名押印が必要となります。
- パソコンで片面に記載…表面か裏面に署名押印
- パソコンで両面に記載…両面に署名押印
このルールは平成31年1月13日から施行された、自筆証書遺言に関する新たなルールです。
詳細は、法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」をご覧ください。
7.財産目録の作成が難しい場合には専門家に依頼を
財産目録を作成するのが難しい場合は、専門家に依頼をしましょう。
財産の内容や規模にもよりますが、財産目録の作成のみであれば、数万円程度で依頼が可能です。
なお、どのような相続シーンで財産目録が必要なのかによって、作成を依頼する専門家が異なります。
7-1.遺言書を作成する場合
財産目録の作成のみならず、遺言書の作成サポートも含めて依頼をする場合は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に依頼しましょう。
相続手続きを専門とする行政書士法人チェスターでは、円満相続・税金対策を叶える「公正証書遺言作成サポート」をご提案しております。
チェスターの「公正証書遺言作成サポート」の基本料金の中には、財産目録の作成のみならず、証人2名分の料金や不足書類の収集報酬も含まれます。
税金に関するご相談については、税理士法人チェスターが承ります。遺言作成サポートをご検討の方は、まずはお気軽にお問合せください。
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7-2.相続登記の義務がある場合
相続税の申告義務はないものの、遺産分割協議をする必要があり、その前提資料として財産目録を作成したい場合は、司法書士や行政書士などの専門家に依頼をしましょう。
なお、相続財産に不動産が含まれている場合は、相続登記の義務がありますので、司法書士に依頼されることをおすすめします。
司法書士に依頼をすれば、相続登記の申請手続きに係る業務の一環として、遺産分割協議書や財産目録の作成をしてくれます。
相続登記を専門とする司法書士法人チェスターでは、「相続登記プラン」をご提案しております。
基本サービス内に「相続不動産に係る遺産分割協議書の作成」が含まれており、相続不動産の売却サポートなどもアドバイスさせていただきます(不動産以外も記載する場合は加算あり)。
相続登記の義務がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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7-3.相続税の申告義務がある場合
相続税の申告義務がある場合は、税理士に財産目録を含む遺産分割協議書の作成を依頼しましょう。
税理士が相続税申告を行うためには、財産目録はなくてはならない必要書類です。
そのため、相続税申告業務の一環として、財産目録を作成してくれます。財産目録を作成する費用として、別途報酬を請求されることもありません。
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基本サービス内に財産目録の作成はもちろん、二次相続を踏まえた税額シミュレーションを元に、納税額が軽減される遺産分割方法などもアドバイスさせていただきます。
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8.まとめ
財産目録に定められた様式や書式はありませんが、確実に相続財産を確定できるよう、必要書類を元に詳細を記入しなくてはなりません。
財産目録を作成するのが難しい場合は、必要な相続手続きサポ―トを依頼する専門家に、財産目録の作成についても相談しましょう。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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