相続税の申告・相談なら年間申告実績3,000件超の
相続専門集団におまかせ

ロゴ

相続税の税理士法人チェスター

相続税の税理士法人チェスター

年間相続税申告件数 3,006件(令和6年実績) 業界トップクラス
【全国15拠点】
各事務所アクセス»

孫には原則として遺留分がない!例外で認められるケースや請求方法も解説

孫には原則として遺留分がない!例外で認められるケースや請求方法も解説

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人が取得できる最低限の相続分のことです。亡くなった人(被相続人)が、遺言による遺贈や生前贈与などをしていたために不公平な遺産分割となったとき、一部の法定相続人は遺留分を主張すると民法で定められた最低割合を取得できます。

亡くなった人の孫には、基本的に遺産を相続する権利がないため、遺留分も生じません。しかし「法定相続人となるはずの子が亡くなっている」「孫が故人と生前に養子縁組をしている」などのケースでは、例外として遺留分を持つことがあります。

この記事では、孫に遺留分が認められるケースや遺留分の計算方法などを相続税専門の税理士が詳しく解説します。

この記事の目次 [表示]

1.孫には原則として遺留分が認められない

民法では、遺産を相続できる権利を持つ人(法定相続人)の範囲と優先順位も定められています。被相続人の「配偶者」は必ず法定相続人となり、他の血族は第1順位の「子」、第2順位の「直系尊属(親や祖父母など)」、第3順位の「兄弟姉妹」という優先順位にしたがって遺産を相続する権利を得ます。

民法1042条1項の規定によると、遺留分があるのは「兄弟姉妹以外の相続人」です。つまり、法定相続人のうち遺留分があるのは、配偶者、子、直系尊属(親や祖父母など)ということです。

被相続人の孫は、基本的に法定相続人にはならないため遺留分もありません

たとえば、相続が発生したときに被相続人の配偶者、子、両親、孫が存命であったとしましょう。この場合、法定相続人となるのは、配偶者と子です。子が生きていれば、孫は法定相続人にはならないため、遺留分もないのです。

ただし、後述するように代襲相続が発生したときや被相続人と生前に養子縁組をしたときなど、孫が遺産を相続する権利を得た場合は、例外的に遺留分を持つことがあります

遺留分については下記の記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。

(参考)遺留分とは何のこと?「遺留分」を知って相続トラブルを最小限に-計算や万が一の対応まで

2.孫に遺留分が認められるケース

孫に遺留分が認められるのは、以下のいずれかに該当したときです。

相続の開始時点で、被相続人の子が死亡・相続廃除・相続欠格のいずれかに該当する場合は「代襲相続」が発生し、その子(被相続人の孫)が代わりに相続権を持ちます

また、被相続人が生前に孫と養子縁組をした場合、養子となった孫は実子と同様に法定相続人です

代襲相続や養子縁組により、孫が遺産を相続する権利を取得すると遺留分が認められます。

2-1.法定相続人である子が死亡している場合

法定相続人である子が、被相続人よりも先に死亡している場合、代襲相続によりその子(孫)が「代襲相続人」となります。代襲相続人になり、親の相続権を得た孫には、遺留分が認められます

たとえば、被相続人Aさんが亡くなり相続が発生したとしましょう。本来であれば、Aさんの子である長男Bさん・次男Cさん・長女Dさんが法定相続人となり、遺産を受け取るはずでした。

しかし、長女DさんはAさんよりも先に病気で他界していたため、長女Dさんの子(Aさんの孫)であるEさんが、代襲相続人として遺産を相続する権利を持ちます。

代襲相続の例

代襲相続人となったEさんは、長女Dさんの遺留分を引き継ぎます。Aさんが遺言を残しており、Eさんの取得分が民法で保証される最低割合を下回っていたときは、遺留分を主張することが可能です。

被相続人が亡くなったときに、子だけでなく孫も死亡していた場合は「再代襲」が発生し、被相続人のひ孫が代襲相続人となって、遺留分も引き継がれます

法定相続人である子が亡くなったときに起こる再代襲は、末の世代まで際限なく適用され、遺産を相続する権利や遺留分を主張する権利も引き継がれていきます。

2-2.法定相続人である子が相続廃除された場合

相続廃除とは、特定の相続人から相続権をはく奪する制度のことです。

相続人になる予定の人が、被相続人となる人に虐待や重大な侮辱をしたときや、著しい非行をしていたときは、家庭裁判所に申し立てをすることでその人の相続権をはく奪できます。

著しい非行とは「被相続人となる人の財産を勝手に処分した」「ギャンブルで何度も多額の借金を作り、被相続人となる人が代わりに返済させられた」などのことです。

被相続人の子が相続廃除により相続権を失ったときは、代襲相続が発生し、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となり、遺留分を主張する権利も認められます

相続廃除について詳しくは下記の記事で解説しているため、あわせてご確認ください。

(参考)相続廃除で相続させたくない相続人の権利をはく奪できる?

2-3.法定相続人である子が相続欠格になった場合

相続欠格とは、相続人等が民法で定められる重大な非行を行ったとき、相続権を失う制度のことです。

重大な非行とは「被相続人を故意に殺害した」「詐欺や脅迫で相続に関する遺言書の撤回や取消などをさせた」などのことです。

相続欠格は、相続廃除とは異なり手続きをしなくても相続人としての地位を失うのが特徴です。

被相続人の子が相続欠格となった場合も代襲相続が発生し、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となり遺留分が移ります

相続欠格については、下記の記事で詳しく解説していますのでご確認ください。

(参考)【簡単解説】相続欠格とは?欠格事由や相続廃除との違いについて

2-4.孫が被相続人の養子になっている場合

養子縁組により、相続開始の時点で孫が被相続人の養子になっているとき、その孫は「被相続人の実の子」として扱われ、法定相続人となります。

孫が正式な法定相続人になっているのであれば、実の子と同様に遺留分を主張できます

代襲相続との主な違いは、被相続人の子が存命であっても遺留分が認められる点です。

たとえば、被相続人のFさんに、長男Gさんと孫Hさんがいたとしましょう。通常、長男Gさんが存命であれば、孫Hさんは法定相続人や代襲相続人にはなりません。

しかし、被相続人Fさんが生前に孫Hさんと養子縁組をしていた場合、相続開始の時点で長男Gさんが存命であっても、孫Cさんは法定相続人となり、遺留分を主張できます。

なお、養子縁組には実親との親子関係を残したままにする「普通養子縁組」と、親との親子関係が切れる「特別養子縁組」がありますが、どちらの場合でも孫が被相続人と法的な親子関係にあれば、相続人としての地位を得るため、遺留分が認められます。

養子縁組について詳しくは、下記の記事をご確認ください。

(参考)養子縁組で相続対策│メリットや注意点、相続人の範囲も解説

3.孫に遺留分がある場合の相続割合は被相続人の子と同じ

孫が代襲相続または養子縁組によって相続権を持つ場合、遺留分の割合は子と同等です。

子の遺留分割合は1/2です。遺留分割合は直系尊属のみが相続人である場合は1/3、それ以外の場合は1/2と定められています(総体的遺留分割合)

遺留分割合に法定相続分を乗じて、各人の遺留分を求めます。

総体的遺留分割合×法定相続分=各人の遺留分

法定相続分と遺留分割合の違いについては以下の表でご確認ください。

遺留分と法定相続分の割合

以降では、孫が代襲相続人や養子となるケースにおける遺留分の考え方を解説します。

3-1.孫が代襲相続人となるケースの遺留分

孫が代襲相続人として遺産を相続する場合は、遺留分の割合は亡くなった親(被相続人の子)と同じです。

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者及び子の遺留分割合は1/2です。各人の遺留分は法定相続分を乗じて求めますので、配偶者1/4、子1/4となります。子が複数人いたときは人数で等分します。

たとえば、被相続人に配偶者と長男、長女がいたとしましょう。この場合、配偶者及び子の遺留分割合は1/2です。

相続の開始時点で長男が亡くなっており、被相続人の孫が代襲相続人となる場合、各人の遺留分は以下のとおりとなります。

 遺留分割合法定相続分各人の遺留分
配偶者1/21/21/4
孫(長男の代襲相続人)1/21/41/8
長女1/21/41/8
代襲相続人

被相続人に配偶者がいない場合、子がすべての遺産を相続することになるため、遺留分割合は孫及び長女ともに1/2で、各人の遺留分は以下のとおりとなります。

 遺留分割合法定相続分各人の遺留分
孫(長男の代襲相続人)1/21/21/4
長女1/21/21/4

孫が複数人いる場合は、亡くなった親(被相続人の子)の遺留分を人数で等分します。亡くなった子の遺留分が1/8であり、その人に2人の子(被相続人の孫)がいた場合、孫1人あたり遺留分は「1/8×1/2=1/16」となります。

3-2.孫が被相続人の養子になるケースの遺留分

孫が被相続人の養子になっている場合、法律上はその孫が「被相続人の子」として扱われるため、実子と同じ遺留分の割合を持つことになります。

代襲相続のケースと同様に、被相続人に配偶者と長男、長女がいると仮定しましょう。長男には子(被相続人の孫)がおり、被相続人と生前に養子縁組をしていました。

この場合、法定相続人は配偶者と長男、長女、孫の計4人です。遺留分割合は、配偶者1/2、子1/2となるため、各人の遺留分は以下のとおりとなります。

 遺留分割合法定相続分各人の遺留分
配偶者1/21/21/4
長男1/21/61/12
長女1/21/61/12
孫(養子)1/21/61/12
法定相続分と遺留分

被相続人に配偶者がおらず、長男、長女、孫(養子)の3人が法定相続人となる場合、各人の遺留分は以下のとおりとなります。

 遺留分割合法定相続分各人の遺留分
長男1/21/31/6
長女1/21/31/6
孫(養子)1/21/31/6

3-3.孫が代襲相続人と養子の両方に該当するケースの遺留分

孫が代襲相続人として親の相続権を承継しつつ、かつ被相続人の養子であるために法定相続人となる場合は、いわゆる「二重相続資格者」となります

この場合「代襲相続人」と「養子としての法定相続人」という2つの立場で相続権を得られるため、それぞれに遺留分が認められます

被相続人に配偶者と長男、長女がおり、長男には1人の子(被相続人の孫)がいるケースで考えてみましょう。

被相続人は生前に孫と養子縁組をしていました。一方、被相続人が亡くなる前に長男は病気で他界してしまいます。

このケースで孫は、自身が法定相続人であるとともに、長男が亡くなったことによる代襲相続人としての地位も取得します。

遺留分割合は配偶者及び子それぞれ1/2です。子の法定相続分については、代襲相続をする孫、長女、養子としての孫の3人で分けることになるため、1人あたり1/6です。

そのため、各人の遺留分は以下のとおりとなります。

 遺留分割合法定相続分各人の遺留分
配偶者1/21/21/4
長女1/21/61/12
孫(養子・代襲相続人)1/2養子:1/6
代襲相続人:1/6
計:1/3
1/6
法定相続分と遺留分

よってこのケースでは、孫の法定相続分は1/3、遺留分は1/6となり、長女よりも割合が多くなります。

二重資格者の取り扱いについては、下記の記事で解説していますので、ご確認ください。

(参考)二重相続資格者がいた場合、法定相続人の数と法定相続分はどうなるの?図解解説付き

4.遺留分侵害額を計算する方法

孫が遺留分を侵害されたとき、以下の手順で遺留分侵害額を計算します。

ここでは、遺留分の計算手順を3つのステップに分けて解説します。

4-1.遺留分を算出する際の基礎となる財産を求める

まずは、遺留分の計算対象となる財産を求めましょう。計算手順は、以下のとおりです。

遺留分の基礎となる財産=プラスの財産+贈与した財産の価額-マイナスの財産

それぞれに該当する財産と対象期間は、下記表をご確認ください。

財産の種類対象になる期間具体例
プラスの財産相続開始日の価額不動産宅地、農地、建物、住宅、店舗、借地権、借家権など
現金・有価証券現金、預貯金、株券、貸付金、売掛金、小切手など
動産自動車、家財、貴金属、宝石、骨董品、美術品など
その他ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権など
贈与した財産相続開始前1年以内法定相続人以外への贈与の価額
相続開始前10年以内法定相続人への特別受益の価額
期間を問わない遺留分権利者を害すると知って贈与された財産の価額
(愛人への贈与など)
マイナスの財産相続開始日々の価額負債借金、買掛金、住宅ローンなど
税金関係未払いの所得税・住民税など
その他未払いの家賃・地代、未払いの医療費など

特別受益とは、特定の相続人が被相続人から生前に受けた特別な利益のことです。被相続人から贈与された結婚資金や住宅購入資金、不動産などが該当します。

たとえば、被相続人が亡くなったときのプラスの財産が7,000万円、被相続人が生前に贈与した財産が2,000万円、債務が500万円の場合、遺留分の基礎となる財産の金額は以下のとおりです。

遺留分の基礎となる財産=プラスの財産+贈与した財産の価額-マイナスの財産
=「7,000万円+2,000万円-500万円=8,500万円」

4-2.遺留分の金額を計算する

遺留分の基礎となる財産を計算したあとは、遺留分の割合を掛け合わせて遺留分の金額を算出します。計算式は、以下のとおりです。

遺留分額=遺留分の基礎となる財産の金額×各人の遺留分の割合

たとえば、遺留分の基礎となる財産の金額が4,000万円、遺留分の割合が1/8の場合、遺留分額は「4,000万円×1/8=500万円」です。

4-3.遺留分侵害額を計算する

最後に、下記の計算式で遺留分の侵害額を計算します。

遺留分侵害額を計算

遺留分の侵害額を計算するときは、被相続人から生前に受けた特別受益を差し引く点に注意が必要です。

ここで、モデルケースをもとに遺留分侵害額をシミュレーションします。まずは、代襲相続により孫が遺留分を取得するケースです。

【例】被相続人に配偶者と子Aがおり、もう1人の子Bは被相続人より先に亡くなっているために、Bの子である孫Cが代襲相続人となる場合の遺留分額と遺留分侵害額を計算します。

このケースにおけるプラスの財産8,000万円、生前に贈与した財産2,000万円、マイナスの財産400万円の場合、遺留分の基礎となる金額は、以下のとおりです。

  • 遺留分の基礎となる財産:8,000万円+2,000万円−400万円=9,600万円

遺留分割合は1/2、各相続人の法定相続分は、配偶者が1/2、子Aが1/4、孫Cが1/4ですから、各人の遺留分は配偶者1/4、子A1/8、孫C1/8となります。

各人の遺留分を計算すると、下記のとおりとなります。

  • 配偶者:9,600万円×1/4=2,400万円
  • 子A:9,600万円×1/8=1,200万円
  • 孫C(Bの子):9,600万円×1/8=1,200万円

計算の結果、孫Cの遺留分額は1,200万円となりました。

孫Cが相続で取得したプラスの財産が200万円であり、特別受益や相続したマイナスの財産がない場合、遺留分侵害額は以下のとおりです。

  • 遺留分侵害額:自己の遺留分額−贈与された財産−相続で取得したプラスの財産+相続で取得したマイナスの財産
    =1,200万円−0円−200万円+0円
    =1,000万円

よって、このケースで孫Cの遺留分侵害額は1,000万円と算出されました。

続いて、孫が養子縁組で遺留分を取得するケースで試算します。

【例】被相続人に配偶者と子A・子Bがおり、さらに孫C(Bの子)が被相続人の養子となっている場合の遺留分額と遺留分侵害額を計算します。

先ほどと同じくプラスの財産8,000万円、生前に贈与した財産2,000万円、マイナスの財産400万円の場合、遺留分の基礎となる金額は「8,000万円+2,000万円−400万円=9,600万円」です。

各相続人の遺留分割合は1/2で、法定相続分は、配偶者が1/2、子A・子B・養子Cが各1/6ずつとなります。よって各人の遺留分は、配偶者1/4、子A1/12、子B1/12、養子C1/12となります。

各人の遺留分を計算すると、下記のとおりです。

  • 配偶者:9,600万円×1/4=2,400万円
  • 子A:9,600万円×1/12=800万円
  • 子B:9,600万円×1/12=800万円
  • 養子C(Bの子):9,600万円×1/12=800万円

計算の結果、養子Cの遺留分額は800万円となりました。

養子Cが相続で取得したプラスの財産が200万円であり、特別受益や相続したマイナスの財産がない場合、遺留分侵害額は以下のとおりです。

  • 遺留分侵害額:自己の遺留分額−贈与された財産−相続で取得したプラスの財産+相続で取得したマイナスの財産
    =800万円−0円−200万円+0円
    =600万円

よって、養子Cの遺留分侵害額は600万円と算出されました。

5.孫が遺留分を侵害されたときの4つの対処方法

孫の遺留分が他の相続人や遺贈を受けた人によって侵害される場合は、「遺留分侵害額請求」を侵害している相手に対して行います。遺留分侵害額請求を行使するときは、以下の手順で進めます。

手順を1つずつみていきましょう。

5-1.まずは話し合いでの解決を目指す

遺留分を侵害されたときは、いきなり調停や訴訟といった法的手段を取るのではなく、まずは当事者同士での話し合いで解決を目指しましょう

とくに、遺留分を侵害する相手と親しい間柄であれば、話し合いで解決できる可能性があります。

話し合いをする際には、遺産の内訳や評価額、遺留分を計算した根拠などを明確にしておくとスムーズです。自身で交渉が難しい場合は、弁護士に代理を依頼してもらうのも1つの方法です。

話し合いにより解決したときは、後日トラブルにならないように合意した内容を文書で残しておくことをおすすめします。

遺留分侵害額の「合意書(和解書)」を作成し、遺留分の割合や金額、支払方法、支払期日などを明記し、当事者の署名・押印をして各人が保管をするのが望ましいです。

5-2.内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付する

話し合いで解決に至らないときや相手が話し合いに応じないときなどは、内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付します

内容証明郵便で利用する理由は、遺留分侵害額請求書を送付した事実と日付を証拠として残すためです。

遺留分は、相続開始または侵害を知ってから1年以内に遺留分侵害額請求をしないと、時効により権利が消滅します。相続の開始や遺留分の侵害をまったく知らない場合でも、被相続人が亡くなった日から10年が経過すると請求権を行使できません。

遺留分を侵害する相手方に、遺留分侵害額請求の意思表示をすると時効が中断されます。請求の意思表示は口頭でもできますが、言った言わないのトラブルに発展する恐れがあります。そのため、内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送付し、請求をした事実を証拠に残すことが大切です。

5-3.遺留分侵害額請求調停の申し立てをする

内容証明で請求の意思を示しても、相手が応じないまたは話し合いが平行線をたどる場合には、家庭裁判所で「遺留分侵害額請求調停」を申し立てる方法があります。

調停では、裁判所が両者の主張や事情などを整理し、解決案を提示したり助言をしたりして話し合いによる解決を進めていきます。

申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意して定めた家庭裁判所です。

申し立てに必要な書類としては、申立書や被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本などです。

5-4.遺留分侵害額請求訴訟を申し立てる

調停でも合意に至らない場合には「遺留分侵害額請求訴訟」を提起できます。

訴訟では、当事者双方の主張や証拠書類などをもとに裁判所が審理をします。裁判官から和解を提示されることもあり、それに合意すると訴訟は終了しますが、合意しない場合は判決となります。

訴訟を起こすためには、裁判所に訴状の提出が必要です。提出先は、遺留分の請求金額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所です。

訴訟により下された結果に相手がしたがわない場合、強制執行により財産の差し押さえが可能となります。

ただし、訴訟を提起するときは手間や時間、費用がかかります。法律に関する専門知識や経験も求められるため、訴訟を起こす際は弁護士へ依頼するのが一般的です。

6.孫の遺留分に関する注意点

孫の遺留分に関する主な注意点は、以下のとおりです。

ここでは、孫の遺留分に関してとくに知っておきたい4つの注意点を挙げ、それぞれについて詳しく解説します。

6-1.遺留分の請求には時効がある

遺留分には「1年の消滅時効」と「10年の除斥期間」という2つの時効があります。遺留分侵害額請求は、時効が過ぎるまでに行使をしなければなりません

まず、相続が開始したことと遺留分を侵害されていることの両方を知ったときから1年以内に請求しないと、権利は消滅します。

また、相続開始や遺留分侵害の事実を知らなかったとしても、被相続人が亡くなった日から10年が経過すると遺留分侵害額請求はできません。

侵害された遺留分を取り戻すためには、1年の消滅時効や10年の除斥期間が過ぎる前に遺留分侵害額請求の権利を行使することを相手方に伝える必要があります。

権利を行使する意思表示は口頭でもできますが、時効の前に権利を行使した証拠を残すためにも、内容証明郵便を用いて遺留分侵害額請求書を相手に送ることをおすすめします。

6-2.孫の親が相続放棄をすると遺留分は生じない

相続放棄とは、亡くなった人の財産を相続する権利をすべて放棄する手続きのことです。相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをすると相続放棄ができます。

相続放棄をした人は「初めから相続人ではなかった」という扱いになります。相続放棄をした人の子(被相続人の孫)に代襲相続は発生せず、遺産を相続する権利を持たないため、遺留分はありません。

相続放棄をしたほうがよいケースや手続きの方法などは、下記記事でご確認ください。

(参考)相続放棄とは?メリット・デメリットから手続き方法・期限など基礎知識を解説

6-3.孫の親が遺留分放棄をしていると遺留分侵害額請求ができない

遺留分の放棄とは、遺留分侵害額請求の権利を自ら手放す手続きのことです。遺留分放棄が成立すると、その相続人は遺留分を一切主張できなくなります

被相続人の子が、相続開始前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄していた場合、代襲相続人である孫は遺留分を侵害されたとしても、遺留分侵害額請求はできません

遺留分を放棄するメリットやデメリット、手続きの方法について詳しくは下記記事をご覧ください。

(参考)遺留分放棄は生前と相続発生後で手続き方法が異なる!遺留分放棄を理解しよう

6-4.孫が遺言で遺産を相続する場合は遺留分がない

被相続人が残した遺言によって孫が遺産を取得する場合、その孫が法定相続人や代襲相続人ではないのであれば遺留分は生じません

法定相続人や代襲相続人ではない場合、法定相続分がないためそもそも遺留分の計算もできません。孫が遺言書で遺贈してもらった財産が極端に少なかったとしても、他の相続人に対して遺留分は主張できないのです。

孫に遺留分が生じるのは、代襲相続によって法定相続人の地位を引き継いだときや、被相続人と生前に養子縁組をしており、自身が法定相続人となるケースに限られます。

7.遺留分の請求以外で孫が財産を取得する方法

孫は基本的に法定相続人とはならず、遺留分が生じて民法で定められる最低保証分の遺産を取得できるケースも限られます。そこで、孫に財産をわたしたいときは、以下のような方法が取られることもあります。

以下では、それぞれの方法やポイントを簡潔に解説します。

なお、孫に遺産を相続させる方法については、下記記事で解説していますのでご確認ください。

(参考)孫に相続させる方法は?遺言書の作成や養子縁組の方法と注意点を解説

7-1.生前に財産を贈与する

被相続人が存命であるうちに財産を贈与してもらう方法です。亡くなる前であれば、孫へ確実に財産を渡せるだけでなく、相続発生時に相続税の課税対象となる財産が減り、税負担を軽減する効果が期待できます

生前贈与の際に活用されることが多い方法に「暦年課税贈与」があります。暦年課税贈与は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を差し引き、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。贈与税の基礎控除額である年間110万円の範囲内で財産を贈与するのであれば、贈与税は課税されません。

また「相続時精算課税制度」を利用する方法もあります。これは、累計2,500万円の特別控除を超えるまで何度でも無税で財産を贈与できる代わりに、贈与者が亡くなったときに贈与した財産の価額を相続税の課税対象に加えるという制度です。

他にも、教育資金や住宅取得資金などを贈与するときは、特例を受けることで一定金額までの贈与が非課税となります。

7-2.遺言書で遺贈をしてもらう

遺言書に「孫へ財産を遺贈する」と記載した遺言書を作成する方法もあります。遺産相続では、亡くなった人の意志がもっとも尊重されるため、孫に遺産をわたす旨を記載した遺言書を残していると、基本的にはそのとおりに承継されます

遺言書は、ルールにしたがって適切に作成することが大切です。「遺言書を書いた日付が記載されていない」「署名・押印がない」などの不備があると遺言書が無効になります。

また、遺言書による遺贈をしたことで他の法定相続人の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求をされてトラブルに生じる可能性がある点には注意が必要です。

7-3.被相続人と生前に養子縁組をする

養子縁組を結ぶことで、孫は被相続人の実の子として扱われるようになり、法定相続人としての相続権を得ることができます

また、養子縁組をしたことで法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人)」や、生命保険金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」が増額され、税負担を軽減する効果も期待できます。

ただし、基礎控除額や非課税枠の計算時にカウントできる養子の人数は、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

7-4.生命保険の保険金受取人となる

孫を生命保険の保険金受取人に指定し、死亡保険金という形で財産をわたすのも1つの方法です。

生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産であるため、遺産分割協議の対象になりません。そのため、生命保険を用いると、孫に財産を確実にわたすことができます

ただし「法定相続人ではない孫が保険金受取人になると非課税枠(500万円×法定相続人の数)が受けられない」「2割加算の対象になり相続税額が2割増しになる」などの注意点があります。

孫を保険金受取人に指定して生命保険に加入する際は、相続税専門の税理士や生命保険会社の担当者などとよく相談することが大切です。

孫を保険金受取人にするときの注意点については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

(参考)死亡保険の受取人を孫に!相続税の対象になる?孫が受取人の死亡保険の注意点

8.孫の遺留分や相続に関する悩みは専門家に相談を

孫には原則として遺留分は認められませんが、代襲相続や養子縁組で権利を得られる場合があります。孫に遺留分が生じる場合、侵害額の計算方法や請求手続きには複雑な部分があるため、相続問題に詳しい弁護士に相談をするとよいでしょう。

チェスターグループの法律事務所では、実績が豊富な弁護士が遺留分を始めとした遺産相続に関するご相談を承っております。相続に関する悩みがある方は、まずはお気軽にお問合せください。

孫に財産を引き継がせる方法を検討している方は、税理士法人チェスターにご相談ください。

税理士法人チェスターは、相続税申告の実績が年間3,000件以上を誇る相続税専門の税理士法人です。相続税申告手続きだけでなく生前贈与に関するご相談も無料で承っておりますので、お困りの方はお気軽にご連絡ください。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

相続対策も相続税申告もチェスターにおまかせ。

「相続税の納税額が大きくなりそう」・「将来相続することになる配偶者や子どもたちが困ることが出てきたらどうしよう」という不安な思いを抱えていませんか?
相続専門の税理士法人だからこそできる相続税の対策があります。

そしてすでに相続が起きてしまい、何から始めていいか分からない方もどうぞご安心ください。
様々な状況をご納得いく形で提案してきた相続のプロフェッショナル集団がお客様にとっての最善策をご提案致します。

相続の基礎知識と対策がすべて分かる資料請求をご希望の方はこちらをご確認ください。
DVDとガイドブックの無料資料請求はこちらへ
相続税対策
各種サービスをチェック!
無料面談相続税申告
ご相談をされたい方はこちら!/

今まで見たページ(最大5件)

関連性が高い記事

カテゴリから他の記事を探す

お約束いたします

チェスターの相続税申告は、税金をただ計算するだけではありません。
1円でも相続税を低く、そして税務署に指摘を受けないように、
また円滑な相続手続きを親身にサポートします。

アイコン

資料請求

お電話

問合せ

アイコン

0120-888-145

既存のお客様はこちら

受付時間
9:00-20:00

土日祝も
対応可

お電話

【無料面談予約】

全国
共通

0120-888-145

0120-888-145
※ 既存のお客様はコチラから▼
ページトップへ戻る
【予約受付時間】
9時~20時 (土日祝も対応可)

【無料面談予約】

全国
共通

0120-888-145

お電話はこちら
※ 既存のお客様はコチラから▼