相続税の申告・相談なら年間申告実績3,000件超の
相続専門集団におまかせ

ロゴ

相続税の税理士法人チェスター

相続税の税理士法人チェスター

年間相続税申告件数 3,076件(令和7年実績) 業界トップクラス

年間相続税
申告件数

3076

業界トップ
クラス

【全国21拠点】
各事務所アクセス»

初回面談ご希望のお客様

0120-888-145

電話受付時間:9〜20時(土日祝も対応可)

全国21拠点

アクセスはこちら

不動産の遺贈とは?かかる税金や遺言書作成時の注意点を税理士が解説

不動産の遺贈とは?かかる税金や遺言書作成時の注意点を税理士が解説

「長年お世話になった人へ不動産を残したい」などと考えたときに選択肢となるのが、遺言によって特定の相手へ財産を渡せる「遺贈」です。遺贈であれば、遺産を相続する権利を持つ法定相続人ではない人にも不動産を渡せます。

一方、遺贈で受け取った不動産は原則として相続税の課税対象です。また、名義を受遺者へ移すには所有権移転登記が必要となり、渡し方によっては不動産取得税が課税されるなど、事前に押さえておきたい注意点もあります。

今回は、不動産の遺贈にかかる税金の種類と計算例、遺贈するときの注意点などを相続税専門の税理士が解説します。

この記事の目次 [表示]

1.不動産の遺贈に関する基礎知識

不動産の遺贈では、受遺者が誰かと財産の渡し方によって名義変更の申請方法と課税される税金が変わる可能性があります。

以下では、遺贈の基本的な仕組みや包括遺贈と特定遺贈の区分、相続・贈与との違いを解説します。

1-1.遺贈とは遺言によって財産を無償で譲り渡すこと

「遺贈」とは、遺言によって財産の全部または一部を特定の相手へ無償で譲り渡すことです(民法964条)。

財産を渡す人を「遺贈者(いぞうしゃ)」、受け取る人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。

遺贈の特徴は、財産を受け取る相手に制限がないことです。内縁の配偶者・孫・甥姪といった法定相続人以外の個人に加えて、法人や自治体、NPO法人にも財産を渡すことができます。

また、遺贈は遺言者による一方的な意思表示で成立するため、受け取る側の事前の承諾は不要です。遺贈は、原則として遺言者が亡くなった時点で効力を生じます。

ただし、遺言者が遺贈の意思を残していても、以下のようなケースではそれが実現しません。

〇遺言書による遺贈が実現しないケース

  • 遺言書が民法の定める方式を満たしておらず、遺言そのものが無効となった場合
  • 受遺者が遺言者の死亡以前に亡くなった場合(民法994条1項

そのため遺言書には、受遺者が先に亡くなった場合に備えて、代わりに財産を受け取る人を指定しておく方法もあります。

遺贈の基本的な仕組みについて詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺贈とは?相続との違いや税金、遺言書の注意点まで解説

1-2.包括遺贈と特定遺贈の違い

遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。同じ遺贈でも、遺言書で財産をどのように指定するかによって、受遺者が負う義務などが異なります。

包括遺贈とは「全財産の3分の1」のように、渡す財産の割合を指定して譲る方法です。一方、特定遺贈は「〇〇市〇〇の土地」のように、渡す財産を個別に指定して譲る方法です。

主な違いは以下のとおりです。

〇包括遺贈と特定遺贈の違い

項目包括遺贈特定遺贈
財産の指定方法割合を指定財産を個別に指定
借金などマイナスの財産指定された割合に応じて承継する原則として承継しない
遺産分割協議への参加相続人と同じ立場で参加する原則として参加しない
放棄の方法・期限遺贈を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述原則として期限はなく、相続人や遺言執行者への意思表示でできる※1
不動産取得税の扱い非課税相続人以外が取得した場合は課税

※1:遺言書による指定などで期限が設けられるケースもあります

包括遺贈で財産を受け取った包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を持つ立場です(民法990条)。

そのため、借金や連帯保証債務といったマイナスの財産も一定の割合で引き継ぎ、遺産分割協議にも相続人と同じ立場で参加します。

一方、特定遺贈で受遺者が承継するのは、指定された財産のみです。相続人以外の人物が特定遺贈で不動産を取得したときは、不動産取得税が課税されます。

同じ遺贈でも、種類によって借金の承継や不動産取得税の有無は異なります。遺言書の文言を決める段階で、包括遺贈と特定遺贈のどちらを選ぶかをよく検討しましょう。

1-3.遺贈と相続の違い

遺贈も相続も、亡くなった人の財産が特定の人へ移るという点では共通しています。一方で、財産を受け取れる人の範囲は異なります

相続は、民法の定める法定相続人が財産を受け継ぐ仕組みです。遺贈では、遺言で指定した相手が財産を受け取るため、法定相続人以外の個人や法人へも渡せます。

また、不動産の名義を取得者に変更する登記の申請方法や、課税される税金と税率などにも違いが生じます。遺贈と相続の主な違いは、以下のとおりです。

〇遺贈と相続の主な違い

項目遺贈相続
財産を受け取る人遺言で指定された人・法人(相続人以外も可)民法で定められた法定相続人
前提となるもの有効な遺言書遺言書がなくても法定相続分や遺産分割協議にもとづき承継
登記手続き相続人への遺贈:受遺者が単独で申請
相続人以外への遺贈:受遺者と相続人全員(または遺言執行者)との共同申請が原則
取得する相続人が単独で申請
登録免許税相続人への遺贈は0.4%、相続人以外への遺贈は2.0%0.4%
不動産取得税相続人以外への特定遺贈は課税非課税

なお、遺言書の書き方によって登記原因(登記簿に記録する権利変動の理由)は異なる点に注意が必要です。

具体的には、法定相続人へ「相続させる」と書いた場合、登記原因は相続ですが、「遺贈する」と書くと遺贈になります。

「相続させる」と「遺贈する」の違いについては、以下の記事で解説していますのでご覧ください。

参考:「遺贈」と「相続させる遺言」の違いを解説

1-4.遺贈と死因贈与・生前贈与の違い

特定の人物に不動産を渡す方法には、遺贈のほかにも「生前贈与」や「死因贈与」があります

〇生前贈与と死因贈与

  • 生前贈与:生きている間に贈与契約を結んで財産を渡す方法
  • 死因贈与:自分が亡くなったときに特定の財産を渡すことをあらかじめ契約する方法

死因贈与は、死亡によって効力が生じる点では遺贈と同じですが、契約であるため受け取る相手の承諾がない場合は成立しません。

生前贈与も、渡す側と受け取る側の合意にもとづく契約です。渡した後の取り消しは原則として認められていません。

遺贈・死因贈与・生前贈与の違いは、以下のとおりです。

〇遺贈・死因贈与・生前贈与の違い

項目遺贈死因贈与生前贈与
相手の合意不要(遺言による一方的な意思表示)必要(契約)必要(契約)
効力が生じる時期遺言者の死亡時贈与者の死亡時契約にもとづき生前に移転
個人が受け取る場合にかかる税金相続税相続税贈与税
不動産取得税相続人以外への特定遺贈のみ課税相続人であっても課税課税

受け取る人が個人の場合、生前贈与には贈与税がかかります。死亡により財産が移る死因贈与と遺贈は、相続税の課税対象です。

ただし、死因贈与で不動産を取得した場合は、受け取る人が法定相続人であっても、不動産取得税と2.0%の登録免許税がかかります。

2.不動産の遺贈にかかる税金は主に4種類

不動産を遺贈する場合に課税されうる税金は4種類あります。各税金を負担する人と課税されるケースは以下のとおりです。

〇不動産の遺贈に関係する主な税金

税金の種類課税されるケース負担する人
相続税各人の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合個人の受遺者
登録免許税不動産の名義変更の登記を申請する場合受遺者
不動産取得税相続人以外への特定遺贈で不動産を取得した場合受遺者
みなし譲渡所得税法人へ遺贈した場合遺贈者(申告・納税は相続人)

以下で詳しく解説します。

2-1.相続税:受遺者の続柄によっては2割加算の対象

遺贈によって不動産を取得した個人の受遺者は、相続人以外の第三者であっても、相続人と同様に相続税の課税対象となります

各人が取得した遺産の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合、期限までに相続税の申告が必要です。申告期限は相続の開始を知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内です。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。

基礎控除額の計算方法

なお、相続人以外の受遺者は基礎控除額の計算上、法定相続人の数に含まれないため、相続人ではない人物へ遺贈しても非課税枠は増えません

相続税が課税されるかどうかは、相続や遺贈などで取得した財産の課税価格を合計して判定します。不動産の相続税評価額は市場価格とは異なり、国税庁の財産評価基本通達にもとづいて以下の方法で算出します。

〇不動産の相続税評価額の求め方

  • 土地:路線価方式(国税庁が定める路線価を用いた評価方法)または倍率方式(固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する評価方法)
  • 建物:自用家屋は固定資産税評価額、貸家は借家権割合と賃貸割合に応じた額を控除

相続税額を算出した後、受遺者が被相続人の配偶者、一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)のいずれにも該当しない場合、原則として「相続税額の2割加算」が適用されます

2割加算の対象になるかどうかは、被相続人との続柄や関係によって決まります。

〇相続税額の2割加算の対象となる人・ならない人

区分該当する人の例
2割加算の対象外配偶者、子、父母、養子、代襲相続人となった孫※1
2割加算の対象兄弟姉妹、甥姪、代襲相続人ではない孫、内縁の配偶者、友人など

※1:代襲相続人ではない孫養子を除く

相続税額の2割加算の対象となる人

相続税額の2割加算について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:相続税の2割加算の対象者は誰?計算方法もわかりやすく解説

2-2.登録免許税:相続人以外の取得は税率が高くなる

登録免許税は法務局で登記手続きをする際に納める税金です。遺贈で不動産を取得した人が、所有権移転登記(相続登記)をして名義変更をする際に納めます

相続登記と登録免許税

登録免許税の税額は「固定資産税評価額×税率」で計算します。不動産の名義変更手続きをする際の税率は以下のとおりです。

〇遺贈・相続による所有権移転登記の登録免許税

 税率
相続人への遺贈固定資産税評価額の0.4%
相続人以外への遺贈固定資産税評価額の2.0%
相続固定資産税評価額の0.4%

同じ不動産を取得しても、受遺者が相続人以外の場合は税率が5倍になります。

たとえば、固定資産税評価額3,000万円の不動産の場合、相続人への遺贈にかかる登録免許税は「3,000万円×0.4%=12万円」です。

一方、相続人以外への遺贈では「3,000万円×2.0%=60万円」となり、差額は48万円に広がります。

なお、名義変更の際は、登録免許税のほかに戸籍謄本や住民票の取得費用が数千円程度かかります。司法書士へ登記を依頼する場合、数万円~10万円程度の報酬を支払うのが一般的です。

2-3.不動産取得税:相続人以外への特定遺贈で課税される

不動産取得税は、土地や建物を取得した人に対して都道府県が課す税金です。相続人以外の受遺者が特定遺贈で不動産を取得した場合にのみ課税されます。

相続人以外への特定遺贈で課税される不動産取得税

包括遺贈による取得と、相続人への遺贈や相続による取得は課税されません。

遺贈の方法と受遺者の立場による課税の有無は、以下のとおりです。

〇不動産取得税の課税の有無

遺贈の方法受遺者が相続人の場合受遺者が相続人以外の場合
包括遺贈非課税非課税
特定遺贈非課税課税

課税される場合の税額は、「課税標準額(原則として固定資産税評価額)×税率」で計算します。税率と課税標準額には、以下の軽減措置があります。

〇不動産取得税の税率と特例

  • 令和9年(2027年)3月31日までに取得した土地・住宅の税率:原則4%が3%に軽減
  • 同じ期限までに取得した宅地等:課税標準額が固定資産税評価額の2分の1
    ※上記は令和8年(2026年)7月現在のもの

たとえば、固定資産税評価額3,000万円の宅地を相続人以外の受遺者が特定遺贈で取得した場合、不動産取得税は「3,000万円×1/2×3%=45万円」です。

2-4.みなし譲渡所得税:法人に遺贈した際に課税

個人が法人へ不動産を遺贈した場合、遺贈の時点で時価によって譲渡したものとみなされ、遺贈者(被相続人)に「みなし譲渡所得課税」が課される可能性があります

課税対象となるのは、譲渡した不動産の時価から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

受遺者が不動産を後日売却した際にかかる譲渡所得税とは異なります。

みなし譲渡所得課税における納税義務者は遺贈者です。しかし、相続開始の時点で受遺者はすでに亡くなっているため、実際には相続人(または包括受遺者)が準確定申告をし、必要に応じて納税します

準確定申告の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。

準確定申告について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:準確定申告とは?必要かどうかの判断・期限・申告書の書き方を解説

例外として、国や地方公共団体へ遺贈した場合、みなし譲渡所得税は課されません(租税特別措置法40条)。公益法人等への遺贈の扱いは、「5-2. 法人に遺贈するとみなし譲渡所得税がかかることも」で解説します。

3.不動産を遺贈した場合の相続税をシミュレーション

では、不動産を遺贈する場合、いくらの相続税が課税されるのでしょうか。以下では、相続人以外の受遺者が不動産を特定遺贈で取得するケースをもとに税額を試算します。

【例】遺産の総額が1億円、法定相続人が子2人(長男・次男)であり、遺言により被相続人の甥が自宅不動産3,000万円を特定遺贈で取得したケースを考えます。

前提条件は次のとおりです。

〇シミュレーションの前提

  • 被相続人:父(母はすでに死亡)
  • 法定相続人:子2人(長男・次男)
  • 受遺者:被相続人の甥(きょうだいの子で、相続人ではない)
  • 遺産総額:1億円(自宅不動産3,000万円+預貯金など7,000万円)
  • 自宅不動産の内訳:相続税評価額で土地2,400万円・建物600万円
  • 遺言の内容:甥へ自宅不動産3,000万円を特定遺贈
  • 長男・次男の取得分:預貯金など7,000万円を3,500万円ずつ取得
  • その他の前提:債務・葬式費用はなく、特例・税額控除も適用しない

妻に先立たれて自宅で1人暮らしをしていた父の世話は、遠方で暮らす長男・次男に代わり、近くに住む甥が長年担っていました。

そのため、父は通院の付き添いなどの世話に報いる形で、甥へ自宅を遺贈する内容の遺言を残していました。

このようなケースにおける相続税額を試算していきます。

基礎控除額と課税される遺産総額を算出
まず、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で基礎控除額を求めます。受遺者である甥は法定相続人の数に含めないため、計算結果は以下のとおりとなります。

  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円

遺産総額1億円から基礎控除額4,200万円を差し引いた金額が、相続税の課税対象となります。

  • 課税される遺産総額:1億円-4,200万円=5,800万円

相続税の総額を算出
次に、課税される遺産総額5,800万円を、法定相続人が法定相続分(長男2分の1、次男2分の1)で取得したものと仮定して分けます。

この仮の取得金額は、相続税の速算表にもとづき「法定相続分に応じた取得金額×税率-控除額」で計算します。

法定相続分は1人あたり2分の1であるため、長男と次男の仮の取得金額は2,900万円となり、それに対する税率は15%、控除額は50万円です。

  • 長男:2,900万円×15%-50万円=385万円
  • 次男:2,900万円×15%-50万円=385万円
  • 相続税の総額:385万円+385万円=770万円

相続税の総額770万円は、受遺者の甥が取得した財産も含めた遺産全体をもとに計算した金額です。

実際の取得割合で按分
続いて、相続税の総額770万円を、各人が実際に取得した財産の割合で按分します。取得割合は、甥が3,000万円÷1億円で30%、長男と次男がそれぞれ3,500万円÷1億円で35%です。

  • 甥:770万円×30%=231万円
  • 長男:770万円×35%=269万5,000円
  • 次男:770万円×35%=269万5,000円

2割加算後の各人の納付額
甥は被相続人の一親等の血族(子や父母)にも配偶者にも当たらないため、按分後の税額231万円に2割加算を適用します。

  • 甥の加算額:231万円×20%=46万2,000円
  • 甥の納付額:231万円+46万2,000円=277万2,000円
  • 3人の納付額の合計:甥277万2,000円+長男269万5,000円+次男269万5,000円=816万2,000円

2割加算が適用されることで、甥の相続税額は46万2,000円高くなる結果となりました。

また、相続人以外の受遺者である甥が特定遺贈で不動産を取得した場合、登録免許税の税率が上がるほか、不動産取得税もかかるため、実際の金銭的な負担の差はさらに広がります。

なお、上記の試算はあくまで一例であり、実際の税額は不動産の評価方法や債務・葬式費用の有無、特例の適用可否などで変わります。

不動産の遺贈を検討している場合は、相続税専門の税理士へ相続税額の試算を依頼するのも1つの方法です。

4.不動産を遺贈するときのポイント

不動産を遺贈する場合、遺贈者は「遺言書に何をどう書くか」を慎重に検討する必要があります

遺言書の内容次第では遺贈が実現しなかったり、相続人と受遺者との争いを招いたりするおそれがあるためです。

以下では、不動産を遺贈したいと考える遺贈者に向けて、遺言書を作成する前に押さえておきたい項目を解説します。

4-1.遺留分を侵害しない内容にする

不動産を特定の相手へ集中して渡す遺言は、相続人との争いを招くおそれがあります。配偶者・子・父母など一定の相続人には、法律上保障された最低限の取り分である「遺留分」があるためです民法1042条)。

遺留分は、算定の基礎となる財産額に一定割合を乗じて求めます。算定の基礎となる財産額は、相続開始時の財産に一定の贈与を加え、債務を差し引いて求めます。割合は以下のとおりです。

〇遺留分を算定する基礎となる財産額に対する割合

  • 配偶者や子が相続人に含まれる場合:2分の1
  • 直系尊属(父母・祖父母など)のみが相続人:3分の1
相続人と相続の遺留分

各相続人の遺留分は、遺産全体に対する割合を各自の法定相続分で按分した額です。たとえば、相続人が子2人のみの場合、遺産全体に対する遺留分は2分の1、子1人あたりは4分の1となります。

遺留分を侵害する内容の遺言書が残されていた場合、侵害された相続人は受遺者に対して遺留分侵害額請求ができます。令和元年(2019年)7月1日施行の改正民法により、請求は金銭の支払いを求める形に一本化されました。

遺留分を侵害するような遺言書を作成してしまうと、受遺者は相続人から現金の支払いを求められる可能性があります。支払いに充てる資金がない場合は、受け取った不動産を売却せざるを得なくなるかもしれません。

トラブルを防ぐには、遺贈する不動産の評価額をもとに各相続人の遺留分を試算し、遺留分に相当する現金や預貯金を相続人へ残すことも検討しましょう

あわせて、生前に家族へ遺贈の意向と理由を伝えておくことでも、争いを避ける効果が期待できます

遺留分侵害額請求について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺留分侵害額請求とは?請求できるケース・時効・やり方・計算方法を解説

4-2.公正証書遺言での作成も検討する

財産を渡す遺贈者が自筆で作成する「自筆証書遺言」では、日付の記載漏れや署名・押印の不備、紛失などで遺言書が無効になりかねません。そこで検討したいのが「公正証書遺言」です。

〇公正証書遺言とは

  • 公証人が遺言者から内容を聞き取って作成する遺言書

公正証書遺言は、法律実務の専門家である公証人が、法定の方式や遺言内容を確認し、法的に整理した文言で作成するため、自筆証書遺言と比べて方式不備などによる無効のリスクを抑えられます

作成には証人2人以上の立会いが必要であり、原本は公証役場または日本公証人連合会が運営するシステムに保管されます。

自筆証書遺言と公正証書遺言の主な違いは、以下のとおりです。

〇自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成する人遺言者本人公証人(遺言者から内容を聞き取って作成)
費用費用をかけずに作成できる財産の価額に応じた公証人手数料がかかる
保管する場所遺言者本人(法務局の保管制度も利用可)紙の原本:公証役場
電磁的記録の原本:日本公証人連合会のシステム
方式の不備による無効日付や署名押印の漏れなどで生じるおそれ公証人が確認するため可能性は低い
紛失・改ざん保管制度の利用で防げる心配がない
家庭裁判所の検認原則として必要不要

公正証書遺言は検認(遺言書の存在や状態を確認する手続き)も不要なため、遺贈による名義変更の手続きに早く着手できます。

自筆証書遺言を作成する場合は、令和2年(2020年)7月に開始された法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用するのも1つの方法です。この制度を利用すると、自筆証書遺言が法務局に保管され、検認が不要になり紛失のリスクも防げます。

ただし、自筆証書遺言では、不動産の記載が曖昧で物件を特定できないといった不備も生じかねません。「自宅」などと書くのではなく、登記事項証明書のとおりに不動産の所在地などを記載しましょう。

公正証書遺言について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:公正証書遺言とは?効力・メリット・費用・作成方法を解説

4-3.遺言執行者を指定しておく

相続人以外へ不動産を遺贈する場合、受遺者が単独で法務局での名義変更手続きを進めることはできません。

受遺者と相続人全員による共同申請となるため、協力しない相続人が1人でもいる場合は手続きが止まるおそれがあります。

こうした事態に備えて、遺言書で「遺言執行者」を指定しておく方法があります。

〇遺言執行者とは

  • 遺言の内容を実現するために必要な手続きを担う人

遺言執行者を指定してある場合、遺贈の履行はその遺言執行者が担います。受遺者は、相続人全員の協力を得なくても遺言執行者と共同で名義変更手続きを進められます

また、不動産を売却して現金化したうえで渡す「清算型遺贈」をする場合も、遺言執行者を指定するとよいでしょう。

遺言執行者の指定に加え、不動産の売却、諸費用や税金の精算、残額の交付といった職務の範囲を遺言書に明記することで、手続きをスムーズに進めやすくなります。

遺言執行者には、相続人以外の第三者のほか、司法書士・弁護士・税理士などの専門家も指定できます。相続人と利害が対立しにくい専門家を遺言執行者に選ぶのも1つの方法です。

参考:遺言執行者とは│資格は必要?権限や義務・報酬まで解説

4-4.受遺者の税負担や手続きの負担に配慮する

被相続人の兄弟姉妹・甥姪・友人などへ不動産を遺贈する場合、受遺者は原則として相続税の2割加算の対象となります。

加えて、不動産は現金と違ってすぐに換金するのが困難です。不動産のみを遺贈された受遺者は、納税資金を用意できないおそれがあります。また、取得した後は固定資産税や維持管理の費用がかかり続けます。

かえって受遺者に迷惑をかけてしまう事態を避けるためにも、不動産を遺贈する場合は以下のような対策もあわせて検討しましょう

〇受遺者の負担を軽くする主な対策

  • 不動産とあわせて現金や預貯金も遺贈する
  • 受遺者を生命保険金の受取人に指定する

相続人以外の受遺者が受け取る保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は適用されませんが、受取人へ直接支払われるため、相続税の納税資金などに充てられます

また、受遺者本人へ生前に遺贈の意向を伝えておくことも大切です。本人に受け取る意思を事前に確認することで、遺贈が放棄されて遺贈者の希望が実現しなくなる事態を避けやすくなるでしょう。

4-5.負担付遺贈では遺言書に負担の内容を具体的に書く

不動産を渡す代わりに、残された配偶者の世話やペットの飼育などをお願いしたいと考えている場合は「負担付遺贈」をするのも1つの方法です

〇負担付遺贈とは

  • 受遺者に一定の義務(負担)を負わせることを条件とする遺贈

負担付遺贈をする場合は、負担する内容や期間・頻度などを遺言書に記載します。

記載内容が曖昧であると、どこまで果たした時点で義務を終えたことになるのかなどをめぐって、受遺者と相続人が対立しやすくなります。

そのため、遺言書には以下の項目を具体的に記載しましょう。

〇負担付遺贈の遺言書に記載する項目

 記載のポイント
負担の内容「生活の世話をみる」など抽象的な表現だけでなく、「通院に月2回付き添う」「週1回、日用品の買い物を行う」など、行為の内容や範囲を具体的に記載する
負担により利益を受ける人氏名・生年月日・続柄を明記し、誰のための負担であるかを明確にする
負担の期間・頻度「〇〇が亡くなるまで」「毎月2回」など、始期・終期や頻度を具体的に記載する
負担にかかる費用の扱い介護費用、交通費、日用品の購入費、不動産の修繕費や維持管理費などについて、誰がどの範囲まで負担するのかを明確に記載

なお、負担付遺贈では負担による利益を受ける人と受遺者の双方に相続税がかかる可能性があります。

負担付遺贈を検討する際も、相続税専門の税理士に相談し、当事者にいくらの相続税がかかるのかを試算してもらうとよいでしょう。

5.不動産を自治体や法人へ遺贈寄付する場合の注意点

「相続人がいない」「自分の財産を社会のために役立ててほしい」と考えて、不動産を自治体やNPO法人へ寄付する形で遺贈したいと望む人もいます。

ただし、不動産は現物のままでは受け取ってもらえないことが多く、法人へ遺贈した場合には想定外の税負担も生じかねない点には注意が必要です。

5-1.自治体や団体は不動産の遺贈寄付を受け付けないことが多い

遺言によって自治体やNPO法人などの団体へ財産を寄付する方法を「遺贈寄付」と呼びます。

現金の遺贈寄付を受け入れる団体は多く見られます。一方、不動産を現物のまま受け付ける自治体や団体は多くありません

とくに、以下のような換価(売却)が困難または長期化が想定される不動産や、権利関係が複雑な不動産は受け入れを断られやすい傾向にあります。

〇受け入れを断られやすい不動産の例

  • 山林や原野
  • 農地
  • 老朽化した建物
  • 共有持分になっている不動産
  • 地方にある別荘・リゾート物件

現物不動産の寄付を受け付けていたとしても、基本的には一定の基準に該当する必要があります。

そのため、遺言書を作成する前に現物不動産の受け入れ可否や条件を寄付先へ確認しておきましょう

現物での寄付が難しい場合は「清算型遺贈」をする方法もあります。清算型遺贈は、遺言執行者などが不動産を売却して現金化したうえで寄付をするため、寄付先の選択肢を広げられるでしょう

ただし、受遺者となる団体が遺贈を放棄した場合、不動産は相続人が引き継ぐことになるため、遺贈者の意思は実現しません。

寄付を断られてしまったときに備えて、別の寄付先や取得者を指定する予備的な条項を遺言書に定めるのも1つの方法です。

5-2.法人に遺贈するとみなし譲渡所得税がかかることも

前述のとおり、法人へ不動産を現物のまま遺贈した場合、遺贈者にはみなし譲渡所得税が生じる可能性があります。

不動産を法人に遺贈寄付すると、相続人はその不動産の売却代金を受け取れないにもかかわらず、申告・納税の義務のみが生じる形になり、遺贈者の善意がかえって親族間のトラブルを招きかねません。

現物不動産の遺贈によるトラブルを防ぐうえでも、清算型遺贈が有効な選択肢の1つとなります。売却代金から税金や諸費用を差し引いた残りを寄付でき、相続人に納税義務のみが残る事態を避けやすくなるためです。

また「不動産の遺贈にともなう税金や諸費用は受遺法人が負担する」といった旨を遺言書に明記する方法もあります。

これは、前述の負担付遺贈と呼ばれる方法です。申告・納税義務が生じるのは相続人である点に変わりはありませんが、承諾を得られれば実質的な金銭負担を寄付先の自治体・団体に負ってもらえます。

なお、国や地方公共団体に遺贈したときや、公益法人等への遺贈であり国税庁長官の承認を受けたときは、租税特別措置法40条によりみなし譲渡所得税は課税されません。

ただし公益法人等への遺贈では、取得した財産を公益目的事業に直接利用することや、親族の相続税を不当に減少させないことなど、複数の要件を満たす必要があります。

不動産を法人に遺贈した場合は、遺言書の作成時に税理士や弁護士など専門家に相談し、相続人に想定外の税負担が発生しないようにすることをおすすめします。

5-3.遺贈された法人には法人税や登録免許税などがかかる可能性がある

不動産の遺贈寄付では、受け取る法人の側にも税負担が生じる場合があります。受け入れ先の法人にかかる主な税金は、以下のとおりです。

〇不動産の遺贈を受けた法人にかかる主な税金

 課税される場合
法人税時価に相当する金額が受贈益として益金に算入される場合
登録免許税名義変更の登記を申請する場合(税率は2.0%)
不動産取得税特定遺贈で不動産を取得した場合

法人が無償で不動産を取得した場合、時価に相当する金額が益金(法人税の計算上の収益)に算入されます。

一方で、寄付先が公益法人等やNPO法人、非営利型一般社団法人に該当する場合、収益事業に当たらない所得には法人税が課されません。

出資者の持分がない一般社団法人などへの遺贈では、親族等の相続税の負担を不当に減少させると認められた場合、受遺法人を個人とみなして相続税が課されます。

6.不動産の遺贈に関するよくある質問

最後に、不動産の遺贈に関して寄せられることの多い質問に回答します。

6-1.不動産の遺贈は放棄できる?

受遺者は遺贈を放棄できるため、不動産の受け取りを強制されることはありません

放棄する方法は遺贈の方式で異なります。

  • 特定遺贈:遺贈義務者(相続人または遺言執行者)への意思表示のみで放棄が可能
  • 包括遺贈:自分のために遺贈があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述(放棄する旨の申し立て)が必要

放棄をしたあとは原則として撤回できないため、財産の内容などを調べたうえで慎重に検討することが大切です。

6-2.農地や共有名義の不動産も遺贈できる?

農地や共有名義の不動産も遺贈の対象にできますが、いくつか注意点があります。

農地を相続人以外へ特定遺贈する場合は、農地法にもとづく農業委員会の許可が必要です。

共有名義の不動産の場合、遺贈の対象になるのは遺贈者本人の持分のみです。他の共有者の持分までは渡せません。

また、持分を取得した受遺者は他の共有者との共有関係となるため、不動産の管理や売却などの方針をめぐるトラブルに巻き込まれる可能性がある点には注意が必要です。

6-3.遺贈と相続ではどちらの税負担が軽い?

遺贈と相続の税負担は、受け取る人が相続人の場合、基本的に大きく変わりません。一方、相続人以外への遺贈では、登録免許税率が2.0%となり、特定遺贈であれば不動産取得税もかかります

また、受遺者が被相続人の配偶者・一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)に該当しない場合は、原則として相続税額の2割加算の対象です。

6-4.遺贈された不動産を売却した場合の税金は?

遺贈された不動産を売却して生じた利益(譲渡所得)は、譲渡所得税の課税対象です。

譲渡所得税がかかるのは、売却代金の全額ではなく、売却で出た利益の部分です。売却代金から、取得費(不動産の購入代金など)と譲渡費用(仲介手数料など売却にかかった費用)を差し引いて計算します。

一定の要件を満たす場合には、譲渡所得から特別控除額を差し引くことも可能です。

税額は、課税の対象となる譲渡所得に税率をかけて求めます。税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間に応じて決まります。

  • 所有期間5年超:20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)
  • 所有期間5年以下:39.63%(所得税・復興特別所得税30.63%+住民税9%)

令和9年(2027年)分からは復興特別所得税の一部が防衛特別所得税に置き換わりますが、合計の税率は変わりません。

なお、「取得費加算の特例」や「相続空き家の3,000万円特別控除」を適用できると譲渡所得税の負担を軽減することが可能です。それぞれの制度の内容は、以下のとおりです。

〇売却時に適用できる主な特例

  • 取得費加算の特例:納めた相続税のうち売却分に対応する額を取得費に加算できる特例
  • 相続空き家の3,000万円特別控除:被相続人の自宅の売却益から最大3,000万円を差し引ける特例

取得費加算の特例と相続空き家の3,000万円特別控除について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:取得費加算の特例とは?要件や計算方法、併用可能な特例を税理士が解説
参考:空き家特例(3,000万円特別控除)とは?小規模宅地等の特例との併用も解説

6-5.遺贈で取得した不動産は登記しないとどうなる?

令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化されました。遺贈のうち義務化の対象となるのは、相続人が受遺者となるケースです。

期限は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です。正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料の対象になります。義務化の施行日より前に遺贈で取得した不動産も対象です。

相続人以外の受遺者は、登記義務の直接の対象ではありません。

しかし、登記をしないうちに、相続人から不動産を取得した第三者が先に登記を備えた場合、受遺者はその第三者に遺贈による所有権の取得を主張できなくなるおそれがあります。

登記をしないままでは、受遺者名義で買主への所有権移転登記や金融機関の抵当権設定登記を行うことができず、売却や担保設定を円滑に進められません。

不動産を遺贈されたときは、義務化の対象であるかどうかに関わらず、速やかに相続登記を済ませましょう

相続登記の義務化について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:【相続登記の義務化】過去分も対象!期限・罰則・費用も解説

7.不動産の遺贈にかかる税金は相続税専門の税理士法人へ相談を

不動産を遺贈すると、受遺者に相続税や登録免許税、不動産取得税がかかる可能性があります。とくに相続税については、遺贈する不動産の評価額が高く、2割加算も適用されると税負担が重くなりかねません。

受遺者に想定外の金銭的負担が生じないようにするためにも、不動産の遺贈を検討する際は相続税に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。

税理士法人チェスターは、相続税の申告を専門とする税理士法人です。年間申告実績は3,076件(令和7年度)と業界トップクラスであるだけでなく、グループ内には司法書士が在籍しているため、相続税の申告から不動産の名義変更までまとめてご依頼いただくことも可能です。

また、不動産の遺贈にかかる税金の試算や遺言書の作成を含む生前対策についての相談も承っています。不動産の遺贈でお悩みの方は、税理士法人チェスターへお問い合わせください

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

公正証書遺言の作成ならチェスターにお任せ下さい

「遺言があれば、相続発生後の多くの争いを防ぐことができます。
さらに、相続発生後の手続きもスムーズに進めることができ残された方の負担が大幅に軽減されます。
チェスターグループでお客様の大切な遺言作成のサポートをお手伝いさせて下さい。

公正証書遺言作成サポート

今まで見たページ(最大5件)

関連性が高い記事

カテゴリから他の記事を探す

お約束いたします

チェスターの相続税申告は、税金をただ計算するだけではありません。
1円でも相続税を低く、そして税務署に指摘を受けないように、
また円滑な相続手続きを親身にサポートします。

アイコン

資料請求

お電話

問合せ

アイコン

0120-888-145

既存のお客様はこちら

受付時間
9:00-20:00

土日祝も
対応可

お電話

【無料面談予約】

全国
共通

0120-888-145

0120-888-145
※ 既存のお客様はコチラから▼
ページトップへ戻る