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【小規模宅地等の特例】相続税評価額を最大80%減額!適用要件・計算方法を解説

【小規模宅地等の特例】相続税評価額を最大80%減額!適用要件・計算方法を解説

「小規模宅地等の特例とは?適用要件は?」
「同居していない場合はどうなるの?二世帯住宅なら?」

この記事をご覧のみなさんは、このようにお悩みではないでしょうか。

小規模宅地等の特例とは、被相続人等の自宅や事業をしていた宅地等の相続税評価額を、最大80%減額できる特例のことです

相続税の節税効果が非常に高い特例ですが、宅地等の利用区分によって設けられた、非常に複雑な適用要件をすべて満たす必要があります。

この記事では、小規模宅地等の特例の適用要件や評価額の計算方法、相続税申告の際の添付書類について、税理士が解説します。

この記事の目次 [表示]

1.小規模宅地等の特例とは土地の評価額を最大80%減額できる制度のこと

小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅や事業をしていた宅地等(土地・敷地権)について、一定の要件を満たす場合には、その宅地等の評価額を最大80%まで減額できる特例のことです

ここでいう宅地等とは、家屋がある土地のみではなく、マンションなどの敷地権や借地権なども含みます。

小規模宅地等の特例

被相続人の自宅の土地の相続税評価額が1億円だった場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用できれば、その土地の相続税評価額が2,000万円まで減額されるということです。

小規模宅地等の特例について、国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」もご覧ください。

1-1.小規模宅地等の特例が設けられた背景

被相続人が所有していた自宅や事業のための土地は、相続人の生活基盤となる非常に重要な財産です。

このような財産にフルで相続税をかけてしまうと、相続人の生活を脅かす可能性があります。

納税資金を捻出するために住居を失うことも想定されますし、事業を継続できなければ生活も成り立ちません。

このように、残された遺族や相続人の生活基盤を守るために、土地の評価額を大幅に減額できる特例措置が設けられているわけです。

1-2.小規模宅地等の特例が相続税にもたらす節税効果

相続税の対象となるのは、被相続人が所有していた金銭的価値がある資産(不動産・預貯金・株式など)から、マイナスの財産(葬儀費用・未払金・債務)などを差し引き、一定の範囲の生前贈与財産を持ち戻した後の「課税遺産総額」です。

この課税遺産総額が相続税の基礎控除を超えた部分に対して、相続税が課税されます。

小規模宅地等の特例が相続税にもたらす節税効果

小規模宅地等の特例を適用すれば、土地の評価額を最大80%減額できるため、正味の遺産総額を下げることができます

小規模宅地等の特例を適用した結果、相続税の課税遺産総額が基礎控除以下となり、相続税が0円になるケースもあります(適用して相続税0円になっても申告は必要)。

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小規模宅地等の特例は、相続税の節税効果が非常に高い制度です。
しかし、宅地等の利用区分によって適用できる上限面積や減額割合が異なる上に、適用要件が非常に複雑です。
小規模宅地等の特例の適用要否判定はもちろん、適用した場合の土地の相続税評価額の計算は、必ず相続税に強い税理士に依頼をしましょう。

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2.特例の対象となる宅地等は4種類!限度面積や減額割合が異なる

小規模宅地等の特例の適用対象となる宅地等は、主に4種類の利用区分に分類され、それぞれ適用できる上限面積や減額割合が異なります

 上限面積減額割合
特定居住用宅地等(住んでいた土地)330㎡80%
特定事業用宅地等(事業をしていた土地)400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等(同族会社のための土地)400㎡80%
貸付事業用宅地等(貸付事業をしていた土地)200㎡50%

小規模宅地等の特例は、あくまでも相続税の納税のために事業用や居住用の土地を手放すような事態を防ぐための制度です。

そのため、評価額が減額される対象となる面積の上限が、宅地等の利用区分に応じて定められています。

2-1.特定居住用宅地等(住んでいた土地)

特定居住用宅地等とは以下のいずれかに該当する宅地等のことで、限度面積330㎡/減額割合80%を適用することが可能です

  • 被相続人が住んでいた宅地等
  • 被相続人と生計を一にしていた親族が住んでいた宅地等

被相続人が自宅を2つ以上所有していた場合は、特例の適用判定が複雑になります。

被相続人が自宅と別荘を所有していた場合、自宅のみが特定居住用宅地等となり、別荘に小規模宅地等の特例は適用できません。

ただし、被相続人が自宅と生計一親族の自宅を所有していた場合、被相続人の自宅と生計一親族の自宅の両方に小規模宅地等の特例を適用できます(上限面積は330㎡まで)。

詳しくは、「特定居住用宅地等とは?適用要件・小規模宅地等の特例の対象と添付書類を解説」をご覧ください。

2-2.特定事業用宅地等(事業をしていた土地)

特定事業用宅地等とは以下のいずれかに該当する宅地等のことで、限度面積400㎡/減額割合80%を適用することが可能です

  • 被相続人が事業をしていた宅地等
  • 被相続人と生計を一にしていた親族が事業をしていた宅地等

ここでいう「事業」とは、後述する貸付事業に該当しない事業のことを指します。

例えば、被相続人が個人事業をしていた店舗の宅地等や、自営業者として利用していた工場や事務所の宅地等が該当します。

詳しくは、「事業用の宅地は小規模宅地等の特例は適用できる?自宅の宅地と併用可能??」をご覧ください。

2-3.特定同族会社事業用宅地等(同族会社の事業のための土地)

特定同族会社事業用宅地等とは以下のような宅地等のことで、限度面積400㎡/減額割合80%を適用することが可能です

  • 一定の法人の事業(貸付事業を除く)のために用いられていた宅地等

一定の法人とは、被相続人や被相続人の親族により支配されている(50%超所有)法人を言います。

詳しくは、「特定事業用宅地とは」をご覧ください。

2-4.貸付事業用宅地等(貸付事業をしていた土地)

貸付事業用宅地等とは以下のいずれかに該当する宅地等のことで、限度面積200㎡/減額割合50%を適用することが可能です

  • 被相続人が貸付事業をしていた宅地等
  • 被相続人と生計を一にしていた親族が貸付事業をしていた宅地等

なお、貸付事業とは、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業および準事業などが該当します。

詳しくは、「貸付事業用宅地等とは?小規模宅地等の特例を適用するための生前対策・注意点」をご覧ください。

3.小規模宅地等の特例の適用要件

小規模宅地等の特例の適用要件は、宅地等の利用区分によって異なります

ただし、どの利用区分の宅地等であっても、以下の2つの要件は必ず満たさなくてはなりません。

大前提となる要件

  • 被相続人等の事業又は居住の用に供されていた宅地等である
  • その宅地等が建物又は構築物の敷地である

この2つの要件を満たした上で、宅地等の利用区分によって設けられている非常に複雑な要件を、すべて満たす必要があります。

3-1.特定居住用宅地等の適用要件

小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等の適用要件は、「誰が住んでいた宅地等なのか」で異なります。

特に適用されることが多い利用区分ですので、しっかりと適用要件を確認しましょう。

3-1-1.被相続人が住んでいた宅地等の場合

被相続人が自宅として住んでいた宅地等は、誰が取得者になるのかで満たすべき要件が異なります

取得者要件
配偶者特になし
同居していた親族(居住要件)相続税の申告期限までその家屋に居住している
(保有要件)相続税の申告期限まで宅地等を所有している
別居していた親族

※いわゆる「家なき子」特例

  • 取得者は日本国籍を有している
  • 被相続人に配偶者や同居親族がいない
  • 取得者は相続開始前3年以内に持ち家(※)に住んでいない
  • 取得者は相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない
  • 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する

※自己・自己の配偶者・3親等以内の親族・特別の関係がある法人の持ち家

同居していた親族が取得する場合は、「居住要件」と「保有要件」を満たせれば良いこととなりますが、最も適用要件が複雑なのは「別居していた親族」が取得する場合です(同居していた親族の定義については後述します)。

このケースに該当する場合は、「家なき子特例」と呼ばれる要件を満たさなくてはならず、税制改正によって令和2年4月以降は満たすべき要件が増えています。

詳しくは、「『家なき子特例』は親と同居しなくても小規模宅地等の特例が使える制度」をご覧ください。

3-1-2.生計を一にしていた親族が住んでいた宅地等の場合

被相続人と生計を一にしていた親族(高齢の両親や大学生の子など)が住んでいた宅地等についても、誰が取得者になるのかで満たすべき要件が異なります。

取得者要件
配偶者特になし
生計一親族(居住要件)相続税の申告期限までその家屋に居住している
(保有要件)相続税の申告期限まで宅地等を所有している

被相続人の配偶者が取得者であれば、特に満たすべき要件はありません。

生計一親族が取得する場合は、「居住要件」と「保有要件」を満たせれば良いこととなります。

3-2.特定事業用宅地等の適用要件

小規模宅地等の特例の特定事業用宅地等の適用要件は、「誰が事業を行っていた宅地等なのか」で満たすべき要件が異なります

▼被相続人が事業をしていた宅地等

事業継承要件その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぐこと
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有すること

▼被相続人と生計を一にしていた親族が事業をしていた宅地等

事業継続要件相続税の申告期限までその宅地等の上で事業を営んでいること
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

基本的には、相続税の申告期限まで、取得者がその事業を継続して土地を保有していれば、要件を満たすこととなります。

なお、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された場合は、一定規模以上の事業であることなどの要件を満たす必要があります。

3-3.特定同族会社事業用宅地等の適用要件

小規模宅地等の特例の特定同族会社事業用宅地等の適用要件は、以下の通りです。

賃貸借要件その法人に対して相当な対価でその宅地又は建物を賃貸していること
法人役員要件その宅地等を取得した親族が申告期限においてその法人の役員であること
保有継続要件その宅地等を申告期限まで有すること

特定同族会社事業用宅地等の場合、一定の法人であることや、賃料が発生しているなどの要件が加わります。

3-4.貸付事業用宅地等の適用要件

小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等の適用要件は、「誰が貸付事業を行っていたのか」で満たすべき要件が異なります。

▼被相続人が貸付事業をしていた宅地等

事業継承要件その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぐこと
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有すること

▼被相続人と生計を一にしていた親族が貸付事業をしていた宅地等

事業継承要件相続税の申告期限までその宅地等の上で貸付事業を営んでいること
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有すること

基本的には、相続税の申告期限まで、取得者がその事業を継続して土地を保有していれば、要件を満たすこととなります。

なお、相続開始前3年以内に貸付事業をした宅地については、他の賃貸物件と併せて事業的規模(いわゆる5棟10室基準)でない限り、貸付事業用宅地等から除外され、小規模宅地等の特例の適用を受けることができません。

4.特定居住用宅地等の「同居していた親族」の定義

小規模宅地等の特例の中で最も適用要件が複雑なのは、被相続人が住んでいた宅地等に適用される特定居住用宅地等です。

特定居住用宅地等の適用要件は「誰が取得者なのか」で変わりますが、特に「同居していた親族」の定義が問題となりやすいです

同居していた親族とは?
構造上1つの建物で、被相続人と共に日常生活を送っていた親族のこと

例えば、一軒家で父親と同居していた長男が、父親名義の自宅を相続する…というようなケースが同居に該当します。

「週末のみ親が暮らす実家に帰って泊まり込みで面倒を見る」というようなケースは、1つの建物で日常生活を共に送っていたとは言えないため、同居とは言えません。

4-1.住民票が同じだけではNG!同居の実態が重要

相続税対策として、被相続人と住民票のみ同居の形式を取るケースが少なからずあります。

たしかに、住民票が同じであれば同居とみなされ、小規模宅地等の特例を適用できそうですが、重要なのは「同居の実態」です。

住民票上の住所は形式のみで、実際に同居していない状況であれば、「同居していた親族」という要件を満たすことはできません

バレないだろうと住民票だけを移しても、税務調査で水道光熱費や郵便物の送付先などをチェックされます。

税務署が「適用要件を満たしていない」と判定すれば、加算税や延滞税などのペナルティを課せられるリスクがありますのでご注意ください。

5.特定居住用宅地等を適用できる?ケース別の判定ポイント

小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等では、以下のようなケースに該当する場合「自分は適用できるの?」と疑問に思われる方が多いです。

この章では、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例が適用できるのか否か、ケース別で判定ポイントをご紹介します。

5-1.二世帯住宅で同居していた場合

二世帯住宅で同居していた場合、区分登記をしていなければ、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用できます

つまり、玄関が2つある完全分離型の二世帯住宅であっても、区分登記されていなければ、適用できるということです。

逆に、内部で行き来できるタイプの二世帯住宅であっても、「親の居住部分は親名義」「子の居住部分は子名義」のように、区分所有されている場合は同居とは見なされません。

詳しくは、「二世帯住宅で小規模宅地等の特例を使う方法【要厳密判定】」をご覧ください。

5-2.被相続人が老人ホームに入居していた場合

相続開始時に被相続人が老人ホームに入居していても、以下の要件を満たすことができれば、小規模宅地等の特例を適用できます

  • 被相続人が死亡直前に要介護(支援)認定を受けている
  • 入居していたのは老人福祉法等の要件を満たす老人ホームや介護医療院である
  • 老人ホーム入居後に被相続人等以外の居住の用に供していない

ここで注意が必要なのは、老人ホーム入居後に被相続人以外の居住の用に供していないという項目です。

老人ホーム入居前から同居していた親族がいれば、その親族が引き続き住んでいても問題はありません。

しかし、老人ホーム入居後に、生計を一にしていない相続人を無償で住まわせた場合、被相続人以外の居住の用に供していますので、特例を適用できなくなります

詳しくは、「被相続人が老人ホームに入居していたら小規模宅地等の特例は使えるのか?」をご覧ください。

5-3.建物が未登記・建築中の場合

被相続人が自宅を建築中に亡くなってしまった場合も、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります

ただし、実際には居住できなかった場合であっても、そこに住むための準備の状態などから判断して、自身の居住用として建てていることが明らかであった場合に限定されます。

同様に、建て替え中やリフォーム中で、一時的にその家に居住していなかった場合でも特例を適用できます。

詳しくは、「建築中・建替え中の家は小規模宅地等の特例は使えるのか?」をご覧ください。

5-4.相続人が単身赴任していた場合

被相続人と同居していたものの、相続開始当時に相続人が単身赴任をしている場合は、実際に住んでいる場所をもとに判断することとなります

例えば、相続人が独身で単身赴任となり、数ヶ月に1回の割合で被相続人の自宅に帰省していた場合、生活の本拠ではありませんので、同居していたとは認められません。

しかし、相続人の配偶者や子供などは被相続人と同居して、相続人だけが単身赴任している場合は、相続人の家屋には「全生活の中心がある」とみなされるため、小規模宅地等の特例を適用できます。

詳しくは、「住民票が被相続人の住居にある単身赴任中の相続人は小規模宅地等の特例を使える?」をご覧ください。

6.小規模宅地等の特例で土地の評価額はいくらになる?

小規模宅地等の特例の適用を受けた場合、宅地等の評価額の計算方法はどうなるのでしょうか。

シミュレーションモデルをもとに、具体的な計算例を挙げて考えてみましょう。

6-1.特定居住用宅地等のシミュレーション(評価額6,000万円・300㎡)

まずは、被相続人が住んでいた自宅の土地に係る、特定居住用宅地等でシミュレーションしてみましょう。

シミュレーションモデルの評価額が6,000万円、宅地等の面積が300㎡とした場合、特定居住用宅地等の上限面積330㎡以下ですので、すべての宅地部分について評価額を80%減額できます。

特定居住用宅地等のシミュレーション

相続税が課税される対象となるのは1,200万円となるため、評価額6,000万円と比較すると、大幅な評価額の減額に成功しています。

6-2.特定事業用宅地等のシミュレーション(評価額が8,000万円・500㎡)

次に、被相続人が事業を行っていた土地に係る、特定事業用宅地等でシミュレーションしてみましょう。

シミュレーションモデルの評価額が8,000万円・面積が500㎡とした場合、事業用宅地等の上限面積は400㎡ですので、500㎡の宅地のうち400㎡までしか適用を受けられません。

特定事業用宅地等のシミュレーション

相続税が課税される対象となるのは2,880万円となるため、評価額8,000万円と比較すると、大幅な評価額の減額に成功しています。

7.小規模宅地等の特例は異なる種類を併用できる

小規模宅地等の特例は、以下のようなパターンで併用することができます。

  • 特定居住用宅地等+特定事業用宅地等
  • 特定居住用宅地等+貸付事業用宅地等

ただし、どの宅地を優先させるかで、適用される限度面積の計算方法に違いがあります。

詳しくは、「小規模宅地等の特例を併用する場合の計算方法とパターン」でも解説しております。

7-1.特定居住用宅地等+特定事業用宅地等の併用

被相続人が個人事業を営んでおり、自宅と店舗を所有していたとします。

この場合、自宅の土地部分には特定居住用宅地等が適用できますし、店舗の土地部分には特定事業用宅地等を適用できます。

つまり、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を併用する場合は、それぞれの限度面積の合計に対して、特例を完全併用できます。

この併用パターンの場合、特定居住用宅地等330㎡+特定事業用宅地等400㎡=限度面積730㎡まで特例が適用されます。

7-2.特定居住用宅地等+貸付事業用宅地等の併用

被相続人が不動産貸付事業を営んでおり、自宅と貸付用不動産を所有していたとします。

この場合、自宅の土地部分には特定居住用宅地等が適用できますし、貸付事業用不動産の土地部分には貸付事業用宅地等を適用できます。

貸付事業用宅地等優先して、特定居住用宅地等を適用する場合は、特例を限定併用することとなります。

適用限度面積の計算方法が非常に複雑になりますので、必ず相続税に強い税理士に相談をしましょう。

8.小規模宅地等の特例を適用するためには期限内に相続税申告を

小規模宅地等の特例を適用するためには、定められた期限までに、相続税申告をしなくてはなりません。

以下は相続発生から相続税申告までの流れですので、参考にしてください。

相続発生から相続税申告までの流れ

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内(応当日)です。

この期限までに遺産の分割方法を決めた上で、小規模宅地等の特例の申請に係る必要書類を添付して、管轄の税務署に相続税の申告書を提出しなくてはなりません。

8-1.小規模宅地等の特例の適用に係る添付書類

小規模宅地等の特例を利用する場合には、相続税の申告書と共に、以下の添付書類を提出しなくてはなりません

小規模宅地等の特例の適用に係る添付書類

「家なき子特例」や「老人ホーム特例」などの適用を受ける場合には、戸籍の附票の写しその他所定の書類が添付書類として必要になります。

詳しくは、「小規模宅地等の特例の添付書類まとめ。申告書と一緒に提出するべき書類とは。」をご覧ください。

8-2.相続税の申告期限に間に合わない場合は未分割申告を

遺産分割協議がまとまらないからといって、相続税の申告期限が延長されることはありません。

そのため、法定相続分で分割したと仮定して、相続税の申告・納付をする「未分割申告」を行います

未分割申告

実際の分割方法が決まってから小規模宅地等の特例を適用した正しい税額を計算し、更正の請求をすることで納め過ぎた税額の還付を受けることとなります。

詳しくは、「【相続税の未分割申告】時効・デメリット・書き方などを解説!」をご覧ください。

9.小規模宅地等の特例を利用する際の注意点

小規模宅地等の特例を適用する際には、以下のような注意点がありますので、予め知っておきましょう。

  • 遺産分割協議がまとまらないと適用できない
  • 相続税が0円になっても期限内に相続税申告が必要
  • 相続税の申告期限までに土地を売却してはいけない
  • 相続時精算課税制度で取得した土地は特例の対象外

9-1.遺産分割協議がまとまらないと適用できない

小規模宅地等の特例は、遺産分割協議がまとまらないと適用できません

この理由は、誰が取得者になるのかで、小規模宅地等の特例の適用要件が異なるためです。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、遺言書がないケースにおいて、法定相続人全員で「誰が・何を・どれだけ・どのように相続するのか」を決める話し合いのことです。

全員が合意した内容を遺産分割協議書にまとめますが、相続税申告の際に提出を求められますので、必ず作成しましょう。

詳しくは、「遺産分割の進め方を解説。書面に残すときに気を付ける点を把握しよう」をご覧ください。

9-2.相続税が0円になっても期限内に相続税申告が必要

小規模宅地等の特例を適用したことで、相続税額が0円になった場合でも、期限までに相続税の申告書を提出しなくてはなりません

この理由は、税務署は「特例を適用して相続税が0円になった」のか「相続税の無申告なのか」が判定できないためです。

相続税の申告

小規模宅地等の特例を適用する場合は、相続税額の有無を問わず、必ず相続税の申告を行いましょう。

詳しくは、「相続税なしでも申告が必要!?特例適用時の申告要否についてプロが解説」をご覧ください。

9-3.相続税の申告期限までに土地を売却してはいけない

小規模宅地等の特例を適用する宅地等の売却は、相続税の申告期限が過ぎるまで待ちましょう

この理由は、小規模宅地等の特例には、相続税の申告期限までその宅地等を保有していることという、保有要件が設けられているためです。

保有要件を満たさなくても良いのは、被相続人等の自宅を配偶者が取得した場合に限定されます。

納税資金の捻出のためであっても、申告期限を迎える前に売却すると、小規模宅地等の特例の適用要件を満たすことができなくなりますのでご注意ください。

10.小規模宅地等の特例を適用する宅地等についてよくある質問

小規模宅地等の特例の適用する宅地等について、よくある質問をまとめましたので参考にしてください。

10-1.マンションの敷地権にも適用できる?

小規模宅地等の特例は、マンションの敷地権(建物の敷地部分に対する権利)についても適用できます

被相続人が自宅として利用していれば特定居住用宅地等として、賃貸マンションとして所有していた場合は貸付事業用宅地等として取扱います。

なお、令和6年1月以降は、マンションの相続税評価額の算出には、一定の補正(区分所有補正)を行わなくてはなりません。

従来よりも相続税評価額の計算方法が複雑になっているため、必ず専門家である税理士に相談をしましょう。

10-2.共有名義の土地にも適用できる?

小規模宅地等の特例は、共有名義の土地にも適用できます

ただし、いつから共有状態なのか、誰が誰と共有状態なのか、共有なのは建物か土地なのかによって、取り扱いが大きく左右されるため注意が必要です。

小規模宅地等の特例の適用判定が非常に難しくなりますので、必ず相続税に強い税理士に相談をしましょう。

詳しくは、「【パターン別】共有の小規模宅地等の特例解説」をご覧ください。

10-3.相続時精算課税制度で取得した土地にも適用できる?

小規模宅地等の特例は、相続時精算課税制度を適用して生前贈与された土地には適用できません

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の直系尊属(父母や祖父母)が、18歳以上の直系卑属(子や孫)に贈与をした際に選択できる、贈与税の課税方式のことです。

特別控除(累計2,500万円)の範囲内であれば贈与税が非課税になるものの、贈与者の相続財産に持ち戻して相続税が課税されます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税を適用して非課税になった贈与財産は、相続税の課税対象ではあるものの、あくまで贈与は成立しているため、土地の所有者は受贈者(財産をもらった人)になっています。

そのため、相続時精算課税を適用した土地等については、相続税に係る小規模宅地等の特例を適用することはできません。

詳しくは、「安易な生前贈与は要注意!小規模宅地等の特例が使えず損をすることも」をご覧ください。

11.小規模宅地等の特例を適用した相続税申告は税理士に相談を

小規模宅地等の特例を適用すれば、土地の相続税評価額を最大80%減額できます。

相続税の節税効果が非常に大きい反面、適用要件が非常に複雑であり、評価額の計算方法の難易度も上がります。

仮に小規模宅地等の特例を適用したことで、相続税なしになった場合でも、相続税の申告書に必要書類を添付して、期限までに管轄の税務署に提出しなくてはなりません。

小規模宅地等の特例の適用要件を満たすのか、また適用した場合の具体的な相続税額はいくらになるのかは、必ず相続税に強い税理士に相談をしましょう。

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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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