生命保険に相続税はかかる?相続税対策に効果的な保険の加入方法まで徹底解説
何かあった時に家族にお金が入るようにと生命保険に加入されている方も多いと思います。
死亡時に受取人にお金が支給される生命保険は、受取人の固有の財産ではありますが、税法ではみなし相続財産となり相続税の課税対象となります。
その他にも、生命保険は相続と関係する部分がたくさんあります。
また、生命保険をうまく活用することで相続税を節税したり、相続人同士のトラブルを回避したりすることが可能です。
そこでこの記事では、生命保険への相続税の課税方法から節税できる加入方法まで、生命保険と相続税との関係性について網羅的にご説明したいと思います。
1.死亡時に受け取る死亡保険金と相続税
支給される保険金は契約の内容によって課税される税金の種類が異なります。相続税の課税対象となる保険金は、保険契約者(保険料を納める人)と被保険者が被相続人の場合です。

上記のような契約で支給される保険金は、受取人の固有の財産となりますが、被相続人が亡くなったことによって発生する金銭ということで、相続税法上はみなし相続財産となります。
死亡保険金の非課税枠
死亡保険金には非課税枠が設けられています。受け取った死亡保険金が非課税枠以内であれば相続税は発生しません。
非課税枠は「法定相続人の数×500万円」という算出式を基に計算され、法定相続人の人数によって金額が異なります。

ただし、この生命保険の非課税枠は相続人が保険金を受け取った場合のみ適用されます。保険金の受取人が、孫(代襲相続が発生していない場合)や内縁の妻や夫のように相続人でない人であった場合は、この非課税枠は適用されませんので注意が必要です。
非課税限度額計算上の法定相続人の数え方
死亡保険金の非課税限度額を求めるときの法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。
法定相続人が4人いて、そのうち1人が相続放棄したとしても、法定相続人は4人いることにして計算します。

また、法定相続人として数える養子の数には、次のような制限があります。
- ● 被相続人に実子がいる場合:法定相続人に含める養子は1人まで
- ● 被相続人に実子がいない場合:法定相続人に含める養子は2人まで

死亡保険金は相続放棄していても受取ることができる
死亡保険金は受取人の固有の財産となります。そのため、本来の相続財産とは分けて考えられます。そのため、相続を放棄していても受取ることが可能です。
しかし、相続税の課税対象であることは変わりませんので、受け取った死亡保険金に対して相続税を支払う必要があります。
相続放棄している場合には相続人ではない
先ほどご説明した通り、相続放棄をした場合でも「法定相続人」であることに変わりはないため、生命保険の非課税枠の計算式における「法定相続人の数」に変わりはありません。
一方で、相続放棄を選択すると、当該相続に関しては「相続人」ではなくなります。死亡保険金の非課税枠は相続人にしか適用されないため、相続放棄した人が死亡保険金を受け取った場合、死亡保険金の非課税枠の適用は出来ませんので注意が必要です。

法定相続人についての詳細は下記をご確認ください。 |
2.みなし相続財産と本来の相続財産について
さて、死亡保険金はみなし相続財産というご説明をしましたが、みなし相続財産と本来の相続財産の違いについても簡単にご説明します。
本来の相続財産は、被相続人が保有していた財産を示します。被相続人の現預貯金、不動産や不動産に関する権利、有価証券、自動車や家財などの動産などをプラスの財産、負債や未払いの税金などをマイナスの財産を言います。
一方、みなし相続財産は、被相続人が保有していた財産ではありませんが、被相続人が亡くなったことにより相続人が受取ることになる財産を言います。みなし相続財産として扱われるものは、死亡保険金の他に死亡退職金があります。
また、保険契約には保険金と付随して支払われることのある金銭があります。死亡保険金と一緒に支払われる金銭の中には、死亡保険金と同様の扱いになるものとならないものがあります。
まとめると下記の表のようになります。各項目については以降で詳しく説明します。
死亡保険金の非課税限度額の適用対象になるもの |
● 剰余金(配当金) ● 前納保険料 |
死亡保険金の非課税限度額の適用対象にならないもの |
● 入院給付金 ● 生存保険金・特約還付金 ● 遅延利息 |
みなし相続財産のついての詳細は下記をご確認ください。 |
保険金に関するもので死亡保険金とみなされるもの
死亡保険金と一緒に支給される金銭の中で、死亡保険金と同様の扱いとなるものがあります。死亡保険金と同様の扱いになるものに関しては、死亡保険の非課税枠が適用されます。
下記の2つ以外に、共済契約による割戻金も死亡保険金と同様の扱いとなります。
剰余金(配当金)
剰余金とは配当金の元になるお金を言います。生命保険の保険料の計算は予定死亡率・予定利率・予定事業費率の3つの比率から算出します。あくまでも予定率であるため、必ずその通りに行くというわけではありません。
保険会社は年度末に予定と実績の差を確認し、予定と実際の乖離に対して配当金を契約者に支払います。
前納保険料
前納保険料とは保険契約期間の保険料を先に保険会社に預入し、保険会社が預かったお金から月毎や年毎に保険料を引き落とします。保険契約期間中に被相続人が死亡した場合には、死亡保険金と一緒に残りの期間の保険料が払い戻されます。
剰余金等を受け取った場合の評価方法

上記で算出された金額から死亡保険金の非課税枠を引いた金額が相続税の課税対象価額となります。
保険金に関するもので本来の相続財産に含まれるもの
剰余金や前納保険料はみなし相続財産となりますが、死亡保険金に関係するものの中には本来の相続財産に含まれるものがあります。
本来の相続財産に含まれるものは死亡保険金とはみなされないため、死亡保険金の非課税枠は適用されません。
生存保険金
年金型の保険など、契約者が生きているうちに支払われる保険金となります。
死亡後に支払われるケースとしては、未収金として支払いが死亡後になった場合となります。このようなケースは本来の相続財産となるため、死亡保険金としての扱いにはなりません。
特約還付金
積立型の保険の場合には、被保険者の死亡時に死亡保険金と一緒に還付金が支払われます。この還付金も本来の相続財産となります。
入院給付金
入院給付金や通院・診断給付金は被相続人が受取人となっている場合には、本来の相続財産に含まれます。
配偶者や子が受取人となる契約の場合には、相続財産にもみなし相続財産にも含まれません。また、給付金を受取る人が被保険者と生計を一にしていた場合には所得税も非課税となります。
遅延利息
保険金の支払いが遅れた場合には、遅延利息が支払われることがあります。これは受取人の所得であり相続税の対象ではないため、死亡保険金の非課税限度額の適用対象にはなりません。
3.保険契約の契約者貸付の扱い
契約者貸付は、解約返戻金の一部を保険会社から借りるという制度です。保険会社から借入をしている形となります。
契約者貸付は保険契約の解約を行う必要がなく、低金利で解約返戻金以下の金額までであれば返済方法も自由に設定することができます。
しかし、契約者貸付を行っている間に保険金や給付金の支払いが行われることになると、貸付分を引かれることがあり、実際の保険金額や給付金額よりも低い金額が支払われることとなります。
また、解約返戻金の範囲を超えてしまった場合には保険契約の失効や解除に繋がる恐れがあります。契約者貸付は、保険会社からの借入となりますが、相続税の債務控除の対象となるのでしょうか?
契約者貸付が債務控除となるケース
契約者貸付が債務控除として扱われるケースは被相続人が保険契約者で、被保険者が第三者の場合です。

このケースでは、被相続人が亡くなったわけではないので保険金が支払われません。
保険料は被相続人が支払っていたものであるため、保険契約は本来の相続財産となります。保険契約者である被相続人が契約者貸付を利用していた場合には、利用した契約者貸付は債務となり相続税の債務控除の対象となります。
生命保険の権利に関する内容は下記に詳しく記載しています。 |
契約者貸付が債務控除とならないケース
被相続人が被保険者である場合、契約者貸付の扱いは保険契約の内容によって以下のように判断されます。
課税される税金の種類は異なりますが、課税対象となる価額の算出方法は原則としてすべて同様です。
① 相続税となるケース

相続税となるケースは保険契約者と被保険者が被相続人である場合です。相続人以外の第三者が受取人となる場合にも相続税が課税されます。孫(代襲相続が発生していない場合)や内縁の妻(夫)のように、相続人以外の人が受取人となった場合には、死亡保険の非課税枠は適用されません。また、相続税の2割加算の対象となります。
上記の契約形態で、満期保険金を受け取った場合、被保険者は亡くなっていませんので受取人は相続税ではなく、贈与税と所得税が課税されます。この際も、課税価格は満期保険料から契約者貸付を差し引いて支給された金額となります。
② 贈与税となるケース

③ 所得税となるケース

4.法人契約の生命保険の扱い
会社が保険契約者となり保険料を負担して、従業員を被保険者としているというケースがあります。
相続税や贈与税の概念は個人間での財産の無償移転が前提となります。法人と個人での概念がないため、法人契約の生命保険は保険契約者を従業員として考えることになります。
課税される税金の種類は個人間での保険契約と同様です。
保険金の受取人に課税されるケース

従業員が保険契約者(保険料負担者)として考えられるため、被保険者が本人か家族か、受取人が本人か家族かによって課税される税金の種類が変わります。
先にご説明したように、被保険者が従業員、受取人が配偶者の場合には相続税、被保険者が配偶者、受取人が子の場合には贈与税、被保険者が配偶者、受取人が本人の場合には所得税が課税されます。
なお、弔慰金として受け取った場合は、報酬月額の6か月分(業務上の死亡の場合は36か月分)の金額までは非課税ですが、それを超える金額は死亡退職金として扱われます。
受取人が法人の場合
会社の役員など経営に関わる人の場合には、死亡保険金が会社に入る契約となる保険契約を行っている場合があります。このようなケースでは受け取った保険金は法人税の課税対象となります。
会社の税務会計では、受け取った保険金を益金に算入し、遺族に支払った死亡退職金や弔慰金は不当に高額でない限り損金に算入します。

5.生命保険を活用して相続税対策
すでにまとまった額の財産があれば、生命保険を活用した相続税対策をおすすめします。
死亡保険金は非課税枠を差し引いた金額に相続税が課税されます。一方、死亡保険金と同じ金額を現金で相続すれば、その全額に相続税が課税されます。
そのため、生命保険を活用すると現金で相続する場合に比べて相続税が少なくなります。
ここでは、夫婦2人と子供3人の5人家族のケースで、生命保険を活用した場合と現金を相続した場合の違いを確認します。
なお、相続税には基礎控除があり、課税対象になる財産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税は課税されません。
● 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

死亡保険金の非課税枠を利用した相続税対策
夫は生前に死亡保険金2,500万円の生命保険に加入し、自身で保険料を支払っていました。
その後、夫が死亡して、保険金受取人である妻に死亡保険金2,500万円が支払われました。亡くなった夫の財産を相続する法定相続人は、妻と子供3人の計4人です。
この場合、死亡保険金の非課税枠は4人×500万円=2,000万円となり、保険金のうち500万円が相続税の課税対象となります。

現金は全額が相続税の対象になる
夫が生前に生命保険に加入していなかった場合は、死亡保険金の非課税枠を適用することはできません。
保険金を受け取る代わりに2,500万円の現金を相続した場合は、2,500万円全額が相続税の課税対象となります。
6.生命保険には相続税対策以外のメリットもある
生命保険には、相続税対策以外にもさまざまなメリットがあります。相続に必要な出費への対応や、相続争いを防ぐ目的でも生命保険を活用することができます。
死亡後のさまざまな出費に対応できる
家族が亡くなると、葬儀や墓地の手配のほか、医療費の支払いなど多額の出費が必要になります。
相続財産が不動産など換金しづらいものであれば、こういった出費にスムーズに対応することができません。
一方、亡くなった人の預金口座に十分な残高があったとしても安心はできません。
口座の名義人が死亡すると口座が凍結され、相続人全員の合意がない限り現金を引き出すことができないからです。
(参考)死んだら勝手に口座凍結?!相続で凍結されても困らないための【対策と解除法】
生命保険に加入しておくと、手続きから1週間程度で保険金を受け取ることができます。
生命保険の受取人に指定された人であれば、保険金の請求手続きは他の相続人の同意を得ないで単独で行うことができ、死亡後のさまざまな出費に対応することができます。
代償分割の代償金として利用できる
相続財産が不動産など分割できないものであれば、代償分割という方法で遺産分割をすることがあります。
代償分割は、法定相続分よりも多くの遺産を相続した人が、残りの相続人に現金などで差額分を支払うという方法です。代償金を支払う相続人は、相続する財産以外にまとまった額の現金を持っていなければなりません。
代償分割に備える目的でも生命保険を活用することができます。代償金を支払う相続人を死亡保険金の受取人に指定しておくことで、受け取った保険金を代償金として利用できます。
ここで注意が必要なのは、代償金をもらう相続人を死亡保険金の受取人にしないという点です。保険金を代償分割の代償金として利用したい場合は、代償金を支払う人を受取人にする必要があります。
保険金は受取人の固有の財産であり、相続財産には含まれません。代償金をもらうべき人に保険金が直接支払われると、遺産の代わりに代償金を受け取るという行為が成立しなくなってしまいます。

相続税の納税資金に充てることができる
相続税は被相続人の死亡から10か月以内に申告と納税を行う必要があります。また、納税は現金一括で行うことが原則です。
多額の現金を相続した場合や、相続人がもともと現金を十分に持っていた場合は、問題なく相続税を納めることができるでしょう。
しかし、不動産を相続した相続人が現金を十分に持っていない場合は、相続税を納めるために不動産を処分する必要に迫られます。
相続税の納税資金の準備にも生命保険を活用することができます。相続税の納税が難しいと見込まれる相続人を死亡保険金の受取人にしておくと、相続人は受け取った保険金を相続税の納税に充てることができます。

遺産相続のトラブルを防ぐことができる
通常、亡くなった人の財産は相続人どうしで分け合いますが、話し合いの過程でトラブルが起こることも少なくありません。生命保険を活用すれば、特定の人に確実に財産を与えることができます。
死亡保険金は契約上の受取人の固有財産であり、相続人どうしで分け合う対象にはなりません。そのため、受取人以外の相続人が、死亡保険金を分配するように要求することはできません。
また、相続争いを避ける目的で相続放棄をした場合でも、契約上の受取人であれば死亡保険金を受け取ることができます。
7.相続税対策では終身保険に加入する
生命保険は、保障が続く期間によって定期保険と終身保険に分けられます。
相続税対策として生命保険を活用する場合は、終身保険に加入しましょう。
定期保険は保障期間が定められている保険契約で、期間が満了すれば保障は終了します。相続税対策で定期保険に加入してしまうと、被保険者が死亡したときには契約が終了している可能性もあります。
終身保険は定期保険に比べて保険料が高いですが、保障は一生涯続きます。人はいつ亡くなるか予想ができないため、相続税対策には保障が一生涯続く終身保険が適しています。

終身保険に加入する場合は、保険料の払込方法にも注意が必要です。
保険料を少しずつ支払う契約にしていると、加入から短期間で死亡した場合に、相続税の課税対象になる資産が膨れ上がる可能性があります。死亡保険金に加えて手元の資産も課税対象になってしまうためです。
一方、保険料を一括で支払う一時払いの契約にしておくと、手元の資産を生命保険に置き換える形になるため、相続税の対象になる資産が増える心配はありません。
一時払い終身保険は、保険料を一括で支払うことで保険料の総額が安くなるほか、高齢でも加入できるといった特徴があります。また、一時払い終身保険の場合、保険会社は既に保険料を払い込まれており月払いの商品よりも資金の安定性が高くなるため、解約返戻率が契約後5年といった早い段階でピークを迎える点も大きな特徴です。
ただし、一時的にまとまった金額が必要となる点がデメリットとなる他、近年の低金利政策の影響で一時払終身保険の販売を休止している保険会社もあるので注意が必要です。
なお、相続税対策をしたいけれど高齢のため保険加入を諦める方も多いようですが、保険料は高額になるものの90歳まで無審査で入れる保険なども存在します。相続財産に現預金が多い方は高齢であっても諦めずに加入を検討することで相続人の税負担を減らすことができるでしょう。
8.契約形態によって税の種類や節税効果が異なる
生命保険に加入するときは、保険の契約者、保険の対象になる被保険者、死亡保険金の受取人の三者の関係によってさまざまな契約形態があります。
相続税対策として生命保険に加入するときは、どのような契約形態にするかよく考えなければなりません。契約形態によっては、死亡保険金に相続税ではなく贈与税や所得税が課税され、相続税対策として機能しない場合があるからです。
この章では、相続税対策として生命保険に加入するときの契約形態の考え方をお伝えします。
死亡保険金に相続税が課税されるとは限らない
ここまで、死亡保険金には相続税が課税されるとお伝えしてきました。しかし、保険の契約者(保険料支払者)、被保険者、受取人の三者の関係によっては、相続税以外の税金が課税されることがあります。

契約者=被保険者の場合
契約者(保険料支払者)と被保険者が同一で、受取人が別の人である場合は、死亡保険金は相続税の課税対象になります。
たとえば、夫が自身を被保険者にした保険に加入して、妻が保険金を受け取る場合があてはまります。死亡した被相続人が保険料を支払っていたため、保険金は被相続人から相続したものと考えます。
契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合
契約者(保険料支払者)、被保険者、受取人がすべて異なる場合は、死亡保険金は贈与税の課税対象になります。
たとえば、妻が夫を被保険者にした保険に加入して、子が保険金を受け取る場合があてはまります。保険金は契約者から受取人に贈与されたものと考えます。
契約者=受取人の場合
契約者(保険料支払者)と受取人が同一で、被保険者が別の人である場合は、死亡保険金は所得税の課税対象になります。
たとえば、妻が夫を被保険者にした保険に加入して、自ら保険金を受け取る場合があてはまります。受取人自身が契約者として保険料を支払っていたため、保険金は自分で運用して得たものと考えます。

誰が保険料を支払っているかに着目
相続税対策として生命保険に加入するときは、誰が契約者となるかより、誰が保険料を負担するかに注意しなければなりません。死亡保険金にかかる税金の種類は、あくまでも誰が保険料を支払っているかが基準になります。
通常は契約者が保険料を支払いますが、契約者と保険料支払者が異なる人になる場合もあるため、注意が必要です。
死亡保険金の受取人は誰にすればよいか
相続税対策として生命保険に加入するときは、死亡保険金の受取人を誰にするかによって節税効果が変わります。節税をしたいのか納税資金の準備をしたいのか、どちらを優先したいかをよく考えることが大切です。
相続税を最大限節税したいなら配偶者を受取人に
死亡保険金の受取人を配偶者にしておくと、相続税を最大限節税することができます。
配偶者には相続税の税額軽減があり、相続した財産が1億6,000万円までであれば相続税はかかりません。1億6,000万円を超えても、法定相続分(※)までであれば相続税はかかりません。
(※)配偶者の法定相続分
子と相続する場合 | 1/2 |
---|---|
両親と相続する場合 | 2/3 |
兄弟姉妹と相続する場合 | 3/4 |
なお、相続税を節税できるからといって、配偶者に多額の遺産や保険金を継がせることには注意が必要です。次に配偶者が死亡したときは、配偶者が得た多額の財産に相続税がかかることになり、税負担が高くなる可能性があるからです。
(参考)相続税の配偶者控除の計算方法は、1億6000万円が基準!?
納税資金を準備するなら配偶者以外を受取人に
先ほどお伝えしたように、配偶者が相続税を負担することはほとんどありません。
したがって、相続税の納税資金を準備するために生命保険に加入する場合には、受取人を配偶者以外の相続人にしておく必要があります。
複数の相続人の納税資金を準備したい場合は、割合を定めて複数の人を受取人に指定することもできます。
受取人が複数いる場合は、そのうちの一名が代表して保険金の請求手続きをします。請求には受取人全員の署名捺印が必要ですが、保険金は一括で代表者のもとに支払われます。保険金を受け取った代表者は、他の受取人に分配しなければなりません。
以前に加入した保険は受取人を再確認
以前に加入した生命保険を相続税対策に活用するときは、死亡保険金の受取人が誰になっているかを再度確認するようにしましょう。
若いときに加入した生命保険であれば、死亡保険金の受取人を親にしているケースも多いでしょう。
配偶者や子がいる場合、法定相続人ではない親が死亡保険金を受け取ることになってしまい、非課税枠の適用ができず相続税対策の効果がなくなってしまいます。
死亡保険金の受取人を変更するには
死亡保険金の受取人は、被保険者が死亡するまでであれば変更することができます。
変更前の受取人の同意は不要ですが、契約者と被保険者が異なる場合は被保険者の同意が必要です。

9.生前贈与に生命保険を活用する方法
相続税対策では、将来相続税の課税対象になる財産を減らすため、子や孫への生前贈与が行われることがあります。
この章では、生前贈与に生命保険を活用する方法を2つご紹介します。
生命保険の保険料を贈与する方法
生前贈与をすると、贈与を受けた受贈者が無駄遣いをすることも考えられます。生命保険を活用すると、生前贈与をしながら無駄遣いを防ぐことができます。
下の図のケースのように、被保険者を親として、保険金の受取人を子に指定した生命保険に加入します。
保険契約者(保険料支払者)は親ではなく子にして、子が支払う保険料は親から贈与を受けることにします。贈与を受ける金額が年間110万円以下であれば贈与税はかかりません。
贈与された金額をすべて保険料の支払いに充てるようにすれば、親が死亡するまでお金を使うことができず、無駄遣いを防ぐことができます。

この生前贈与の方法には、税制上のメリットもあります。
契約者(保険料支払者)と受取人が同じであるため、死亡保険金は一時所得として所得税の課税対象になります。一時所得は税額計算上2分の1になるため、実質的な税負担の割合は少なくなります。
【保険料を贈与するときの注意点】
生命保険の保険料に充てるために生前贈与をする場合は、次のような点に注意しましょう。
- ● 贈与をするたびに贈与契約書を作成する
- ● 通帳・印鑑の管理や保険料の払い込みは受贈者が行う
贈与契約書は贈与をしたことの客観的な証明となります。面倒でも贈与をするたびに契約書を作成しましょう。一度の契約で複数回の贈与を約束すると、合計額が一括で贈与されたとして贈与税が課税されることがあります。
(参考)【保存版】贈与契約書の書き方、様式や注意点を記載例付きで解説
子供に手続きさせるのは心もとないといった理由で、贈与者が受贈者名義の預金の管理や保険料の払い込みをしていれば、生前贈与したとは認められません。通帳・印鑑の管理や保険料の払い込みは受贈者が行うようにしましょう。
贈与した人が預金を管理していると、名義が誰のものであっても自身の財産とみなされ、死亡時に相続財産として扱われます。
生存給付金がある保険を活用する方法
生命保険の中には、生存給付金が支給されるものもあります。生存給付金の受取人を子や孫に指定すれば生前贈与ができます。
通常、贈与を行うときは贈与契約書を作成する必要がありますが、保険商品によっては生存給付金の支払通知書が贈与契約書の代わりになるものもあります。こういった商品を活用すれば、よりスムーズに生前贈与をすることができます。
10.まとめ
ここまで、生命保険と相続税の関係や、相続税対策として生命保険に加入するときに知っておきたいポイントをご紹介しました。
保険料支払者と被保険者が同じであれば、生命保険の死亡保険金は相続税の課税対象になります。死亡保険金には一定の非課税限度額があるため、相続税の節税に役立てることができます。このほか、納税資金の準備や、相続争いを防ぐ目的でも活用することができます。
しかし、保険の種類や契約形態を間違えると効果的な対策にはなりません。相続税対策で生命保険に加入するときは、まず、相続税に詳しい税理士に相談しましょう。
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2020年07月
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2018年08月
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