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特別受益とは?対象となるケース・時効や計算方法・持ち戻し免除をわかりやすく解説

特別受益とは?対象となるケース・時効や計算方法・持ち戻し免除をわかりやすく解説

特別受益は、特定の相続人が被相続人(亡くなった人)から受けた利益(生前贈与や遺贈等)です

特別受益に該当する贈与が行われていた場合、その金額を遺産に足し戻して相続分を計算できます。これにより、特別受益を受けた相続人の取り分が減り、他の相続人の取り分が増えて、公平な遺産分割ができるようになります。

ただし、被相続人が特定の相続人に対して行った贈与のすべてが特別受益に該当するわけではありません。また、被相続人の意思表示がある場合は、特別受益を遺産に足し戻さずに相続分を計算することも可能です。

この記事では、特別受益の対象となるケースや対象にならないケース、特別受益を持ち戻した際の具体的相続分の計算方法などを相続税専門の税理士が解説します。

この記事の目次 [表示]

1.特別受益の基本的な意味と制度の目的

まずは特別受益の意味と定義、遺産に加算して計算し直す持ち戻しの仕組みをみていきましょう。

1-1.特別受益とは「特定の相続人が受けた特別な利益」のこと

特別受益(読み方:とくべつじゅえき)とは、被相続人から特定の相続人に対して生前贈与や遺贈(遺言で遺産を特定の人や団体に取得させること)などによって与えられた財産上の特別な利益のことです。

特別受益の法律上の根拠は、民法第903条1項で定められています。該当する条文は以下のとおりです。

特別受益とは

※出典:e-Gov法令検索(※下線部は筆者による)

上記条文にある共同相続人は、遺産を相続する相続人全員のことです。特別受益を受けた相続人は「特別受益者」と呼びます。

特別受益者となるのは、被相続人の配偶者や子供など、民法で定められる遺産を相続する権利を持った「法定相続人」に限られます。

1-2.相続人間の不公平をなくす「持ち戻し」の仕組み

特別受益が規定される主な趣旨は、相続人間での遺産分割の不公平を是正することです。

特別受益は、実質的には相続財産の一部であり、遺産の前渡しとしての性質があります。

そのため、特別受益の対象となる贈与財産は、相続財産に持ち戻しをした上で、各相続人の具体的な相続分を決めることとなります。これを「特別受益の持ち戻し」と呼びます

たとえば、法定相続人が長男、次男、三男の3人であり、長男だけが特別受益の対象となる生前贈与を受けていた場合、持ち戻しを考慮した相続分の考え方は以下のとおりです。

特別受益の対象となる生前贈与を受けていた場合の例

特別受益を受けた相続人の相続分は、持ち戻しをした後の法定相続分(民法で定められる各相続人の相続割合)から、持ち戻された特別受益の額を差し引いた(控除した)額となります。

これにより、特別受益者の相続分を少なくして、その他の相続人の相続分を多くすることができ、より公平な遺産分割ができるようになります。

2.特別受益の対象とみなされる3つの主なケース

被相続人から相続人に渡された財産は、どのような内容でも特別受益の対象となって、相続財産に持ち戻されるわけではありません。

民法第903条1項では、特別受益の対象となる贈与の種類について、以下のように規定されています。

特別受益の対象なる財産の原則

具体的にどのような場合が該当するのかを確認していきましょう。

2-1.相続人に対する「生前贈与」

亡くなった人から特定の相続人に対して生前に無償で贈与された財産があった場合、その生前贈与は特別受益に該当する可能性があります。特別受益に該当する生前贈与は、被相続人から相続人に行われた、以下のような「扶養の範囲」を超える多額の贈与を指します。

  • 婚姻・養子縁組のための贈与:結婚持参金、養子縁組に際しての持参金などの贈与
  • 生計の資本のための贈与:住宅の購入資金や大学の進学資金などの贈与

単なる生活費の援助などは扶養の範囲となるため、特別受益には該当しません。

生前贈与が扶養の範囲内とみなされるか、それとも特別受益に該当するのかは、家庭の年収や生活水準、他の相続人との格差の有無などで変わります。

以降では、特別受益に該当する可能性がある生前贈与について詳しく解説します。

生前贈与について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:生前贈与とは?相続との違い・メリット・デメリット・注意点・非課税枠を解説

2-1-1.婚姻の際に受け取った持参金や支度金など

結婚の際に多額の持参金や支度金などを受け取った場合、それらは家を離れる人に対する財産分与と考えられ、「遺産の前渡し」と捉えることができるため、特別受益の対象になる可能性があります

ただし、少額であれば特別受益と認められない場合もあります。

また、結婚式や結納に係る費用を亡くなった親が出していたとしても、基本的には特別受益の対象にはなりません。

2-1-2.養子縁組の際に受け取った持参金・支度金

養子縁組に際しての持参金や支度金などを受け取った場合、特別受益とみなされる可能性があります

結婚持参金等の贈与と同様に、遺産の前渡しと捉えることができるためです。

ただしこちらについても、金額が少額であれば特別受益に該当しない場合があります。

2-1-3.住宅取得資金や学費など「生計の資本」としての贈与

生計の資本とは、独立した生計を立てるための基盤となる資金や資産の贈与です。特別受益の対象となる可能性がある生計の資本の贈与には、以下のようなものがあります

  • 大学や大学院などに進学するための学費の援助
  • 居住用不動産またはその取得費用の援助
  • 事業用資産や開業資金の援助 など

特別受益の対象となる可能性があるのは、特定の相続人に対して上記の資金援助が行われており、相続人間で不公平が生じているようなケースです。

たとえば、特定の相続人にのみ著しく高額な留学費用や医学部に進学するための資金を援助していた場合は、特別受益として持ち戻しの対象となる可能性があります。

一方、家庭の状況によっては医学部の進学費用なども「一般的な扶養義務の範囲内」と判断され、特別受益の対象とならないこともあり得ます。

実際に、平成10年9月11日の京都地方裁判所の判例では、医師の子の医学部学費は特別受益に該当しないとの判決が下されています。

2-2.遺言によって財産を譲り受ける「遺贈」

被相続人から特定の相続人に行われた「遺贈」も特別受益の対象となる可能性があります。遺贈とは、被相続人が残した遺言書で指定することにより、特定の人や団体に財産を無償で譲ることです。

たとえば、「長男のみに不動産を遺贈した」「長女だけに預貯金の全額を遺贈した」などのケースは特別受益となる可能性があります。

通常、遺贈があったとみなされるのは、遺言書に「土地を○○に遺贈する」などと書かれている場合です。「土地を○○に相続させる」と書かれていれば遺産分割方法の指定だと解されます。

しかし、遺言の文言では「相続させる」となっていたとしても、特別受益として持ち戻し計算をするべきだという裁判所の判断が出されています(広島高裁岡山支部平成17年4月11日決定など)。

相続の具体的な内容や事情によっては、遺言書に「相続させる」と書かれていても、特別受益の対象になる場合がありますのでご注意ください。

遺贈について、詳しくは以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺贈とは?相続との違いや注意点、包括遺贈と特定遺贈について解説

2-3.死亡を条件として生前に契約する「死因贈与」

死因贈与とは、贈与者(財産を贈与する人)が生前に受贈者(財産を受け取る人)と死因贈与契約を締結しており、被相続人の死亡を起因として履行される贈与のことを指します

死因贈与は遺言による遺贈とは異なり、贈与者と受贈者の双方の合意がなされていることが特徴です。

受贈者が相続人である死因贈与は、贈与された金額によっては特別受益に該当する可能性があります。

死因贈与について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:死因贈与とは?遺贈との違いやメリット・デメリット、契約手続きの方法を解説

3.特別受益の対象になりにくい・該当しないケース

被相続人からの生前贈与や遺贈、死因贈与であっても、贈与の目的や贈与された金額などによっては特別受益の対象外となることがあります。たとえば、以下のようなケースです。

    • 相続人以外の人への贈与や遺贈である
    • 特別受益の持ち戻し免除の意思の明示がある
    • おしどり贈与を適用した夫婦間の贈与である
    • 死亡保険金や死亡退職金を受け取った

3-1.扶養義務の範囲内で行われる生活費・学費の援助

民法で定められる扶養義務の範囲内の援助は、特別受益に該当しません。扶養義務とは、自立した生活が難しい人に対して、その配偶者や父母、兄弟姉妹、子供などが経済的に援助する義務のことです。

たとえば、生活費や学費、医療費などの支払い額が扶養義務の範囲として相当な金額である場合、原則として特別受益による持ち戻しの対象外となります。

扶養の範囲に該当すると考えられる金額に具体的な基準があるわけではなく、家庭の収入や財産の規模などをもとに個別に判断されます。

3-2.法定相続人以外(孫や子の配偶者など)への贈与・遺贈

特別受益は、法定相続人に対して被相続人から与えられた利益に限定されるため、孫や子の配偶者、内縁の配偶者、友人などへの贈与は原則として対象外です。民法903条でも「共同相続人の中に贈与等を受けた者があるとき」と規定されています。

法定相続人に該当する人物は民法で厳格に定められています。法定相続人になれる人と優先順位については以下をご覧ください。

特別受益の対象にならないケース

ただし、相続人の配偶者や親族への贈与で、実質的に相続人が利益を受けているなどの特別な事情がある場合は、特別受益に該当することがあります。

代表的な例でいえば、孫への養育費の贈与は、実質的にはその親(つまり被相続人の子)への贈与とみなされる可能性があります。社会通念上の範囲から考えて著しく多額の養育費が贈与されていると、特別受益とみなされるかもしれません。

一方、孫への贈与であっても社会通念上の範囲内であれば特別受益には該当しません。実際に平成21年1月30日の東京家庭裁判所審判では、「孫への高校までの養育費は特別受益に該当しない」との判決が下されています。

3-3.生命保険金(死亡保険金)や死亡退職金の受け取り

死亡保険金と死亡退職金は受取人固有の財産であり、原則として特別受益の対象にはならず、法定相続人が話し合いをして遺産の承継方法を決める遺産分割協議からも除外されるとされています

被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となる生命保険契約があった場合、相続人(受取人)が受け取った死亡保険金は、民法上は相続人固有の財産です。

死亡を事由として被相続人の勤務先から支払われた死亡退職金も、受取人の固有の財産として取扱います。

死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合

ただし、被相続人が生前に全財産を使って生命保険に加入し、その生命保険金の受取人が共同相続人のうちの1人だけだった場合などは、他の相続人との間で著しい不公平が生じます。

このような極端な不公平が発生するケースでは、個別の事情に応じて、生命保険金が特別受益の対象となる可能性があります。

平成16年10月29日の最高裁判所第二小法廷の判例では、相続財産の大部分を保険料に充てて特定の相続人のみを受取人に指定した死亡保険金が特別受益に該当するとの判決が下されました(平成16(許)11)。

なお、死亡保険金や死亡退職金は特別受益や遺産分割協議の対象外ではあるものの、相続税の課税対象となる点には注意が必要です。この場合、一定の要件を満たすと「500万円×法定相続人数」の部分には相続税が課税されません。

死亡保険金や死亡退職金といったみなし相続財産について詳しくは、下記記事をご覧ください。

参考:【相続税】みなし相続財産とは?課税対象になる種類と非課税枠の計算方法

3-4.おしどり贈与(婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産贈与)

おしどり贈与は、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合に、一定の条件を満たすと適用できる制度の通称です。この制度を適用すると、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円(実質2,110万円)までの贈与に贈与税がかからなくなります。

民法改正にともない、令和元年7月1日以降に開始する相続においては、婚姻20年以上の夫婦間で自宅の権利を贈与した場合、特別受益を適用しない旨(持ち戻し免除)の意思を表示したものと「推定」されるようになりました。そのため、持ち戻しの対象にはなりません(民法第903条4項)。

ただし、婚姻20年以上の夫婦間の贈与であっても、他の相続人の遺留分を侵害している場合は、遺留分の算定に含めることとなります。

おしどり贈与の制度内容について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:おしどり贈与とは?特別受益になる?要件やメリット、注意点も解説

3-5.被相続人による「持ち戻し免除」の意思表示があった場合

被相続人が「贈与した財産は特別受益として相続財産に加算しなくても良いですよ」という意思表示をしていれば、その贈与された財産は特別受益の対象になりません

これを「特別受益の持ち戻し免除」といいます。持ち戻し免除の意思表示をすることで、本来であれば特別受益の対象となる財産を、相続財産に持ち戻す対象から除外することが可能です(民法第903条3項)。

特別受益の持ち戻しの免除

特別受益の持ち戻し免除について、意思表示の形式は定められていません。遺言書や贈与契約書に記載しても良いですし、口頭や状況証拠でも構いません。

もっとも、口頭で特別受益の持ち戻しの意思表示をすると、相続人間で言った言わないのトラブルに発展する可能性があります。

相続開始後のトラブルを回避するためにも、できるだけ遺言書に記載するなどの形で、被相続人が意思を明示しておくことが望ましいでしょう(詳細は後述します)。

4.特別受益の主張期限・時効に関する重要なルール

特別受益の持ち戻し自体には時効が設けられていません。ただし、令和5年4月施行の改正民法により、相続開始から10年が経過した後は、原則として特別受益を主張できなくなりました。

以下では、時効と主張期限の2つのルールを分けて解説します。

4-1.特別受益の持ち戻し自体には時効が存在しない

特別受益の相続財産への持ち戻しには時効がないため、30年前や50年前の生前贈与でも対象となりえます

特別受益の相続財産への持ち戻しに時効はない

たとえば、被相続人が亡くなる30年前に住宅取得資金が相続人となる人物に贈与されていた場合、贈与契約書や通帳の記録などでその事実を証明できれば、特別受益として主張できる可能性があります。

ただし、特別受益の立証責任は、特別受益者以外の相続人にあります。

被相続人が亡くなる何十年も前に行われた生前贈与は、贈与契約書が残っていないことも少なくありません。また、金融機関には基本的に過去10年分程度の通帳記録しか照会できないため、実際には何十年も前に行われた生前贈与の立証は困難です。

4-2.【注意】民法改正により主張期限は相続開始から「10年」に

民法改正により令和5年4月1日からは、相続開始(通常は被相続人が死亡した日)から10年を経過すると遺産分割協議において特別受益を主張できなくなりました

被相続人への貢献に応じて相続分を増やせる制度である「寄与分」についても、10年の期限が経過した後は原則として主張できません。特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を望む場合は、相続が開始された日から10年以内に求める必要があります。

10年の期限が経過した後は、法定相続分または指定相続分(遺言書により指定された相続分)で遺産を分割することになりますが、相続人の合意があればそれらとは異なる割合にすることも可能です。

また、相続開始から10年が経過する日までに、遺産分割調停が申立てられれば、10年を超えた後も特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を主張することができます。

相続開始後から10年が経過した後の遺産未分割に関する規定について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:相続開始から10年経過後の遺産未分割の取扱い~民法改正による見直しが施行~

5.特別受益がある場合の遺産分割における計算方法

特別受益を考慮して遺産分割をする場合、相続財産の総額に特別受益を加算したみなし相続財産を基準に、各相続人の取り分を算出します。以下では、特別受益を持ち戻して遺産分割をする場合の基本的な計算式について、シミュレーションとあわせてご紹介します。

5-1.みなし相続財産と各相続分の算出に用いる基本式

特別受益の持ち戻しがある場合、各相続人の具体的相続分は以下のように計算します。

特別受益がある場合の具体的相続分の計算方法

(注)ここでいうみなし相続財産は、相続税法上のみなし相続財産とは異なります(以下同様)。

具体的な相続分は基本的に法定相続分をもとに計算しますが、遺言により共同相続人の相続分が定められている場合は、その相続分(指定相続分)をもとに計算します。

5-2.特別受益を持ち戻した場合の具体的な計算シミュレーション

特別受益がある場合の具体的相続分を、以下のシミュレーションモデルをもとに計算してみましょう。

特別受益の持ち戻しの計算例

このシミュレーションモデルの具体的相続分は、長男1,000万円・次男2,000万円・三男3,000万円となります。

6.特別受益を考慮する際に知っておくべき4つのポイント

特別受益を考える際には、いくつか知っておきたい注意点があります。確認しておきましょう。

6-1.特別受益に該当するかどうかは個別の事情で判断が分かれる

被相続人から受けた生前贈与や遺贈が、特別受益として相続財産への持ち戻しの対象となるかどうかは、亡くなった方の保有資産や経済状況、社会的地位、贈与された金額などをもとに総合的に判断されます。

たとえば、特別受益に該当する生前贈与が300万円あったとしましょう。

この場合、贈与者(被相続人)の年収が1億円で相続財産が10億円のケースよりも、贈与者の年収が500万円、相続財産が1,000万円のケースのほうが、300万円の生前贈与が特別受益と認められやすくなります。

もっとも、特別受益に該当するかどうかは「他の相続人との公平を害しているかどうか」が重要な判断軸となります。先の事例でいえば、各相続人に対して平等に300万円の生前贈与が行われていたのであれば、特別受益には該当しないでしょう。

いくらまでなら特別受益に当たらないという一律の基準は存在しないため、判断に迷った時点で弁護士や税理士など遺産分割の専門家に相談することをおすすめします

6-2.特別受益の額が本来の相続分を超過しても超過分を返還する義務はない

特別受益の持ち戻しをした後の相続分が特別受益の額を下回っていると、マイナスが生じることになります。しかし、このような場合、特別受益を受けた相続人が他の相続人に財産を渡す必要はありません

たとえば、遺産が3,000万円で相続人が長男・長女の2人のケースで考えてみましょう。各相続人の法定相続分は2分の1ずつです。

このケースにおいて、長男だけが生前に4,000万円の贈与を受けていた場合、みなし相続財産や各相続人の取得分は次のとおりとなります。

  • みなし相続財産:3,000万円+4,000万円=7,000万円
  • 特別受益を持ち戻したあとの相続分:
    • 長男:7,000万円×1/2=3,500万円
    • 長女:7,000万円×1/2=3,500万円
  • 特別受益を控除したあとの長男の相続分:3,500万円−4,000万円=−500万円

この場合、特別受益を考慮した長男の相続分はマイナス500万円となりますが、この金額に相当する財産を長女に渡す必要はありません。

ただし、他の相続人が遺留分を侵害されているのであれば、遺留分侵害額請求という方法で、自己の遺留分を取り戻すことは可能です(後述します)。

6-3.遺産分割が完了した後に特別受益が発覚した場合はやり直しができる

特別受益にあたる生前贈与の事実が意図的に隠されていた場合には、状況によっては詐欺や錯誤を理由に遺産分割協議の取り消しが認められる可能性があります

  • 詐欺:相手方が故意にうそをついたり事実を隠したりして、誤った判断をさせる行為
  • 錯誤:重要な事実について誤解したまま意思表示をしてしまうこと

詐欺や錯誤を理由に協議の取り消しを求めるときは、基本的に客観的な証拠をもとに取消に相当する事由があったことを立証する必要があります。

また、協議の取り消しには期限があり、原則として「詐欺や錯誤の事実を知ったときから5年以内」または「遺産分割協議のときから20年以内」にやり直しを求めなくてはなりません。

時間が経つほど証拠の確保や立証も難しくなるため、遺産分割協議が終わった後に特別受益に該当する生前贈与の事実が発覚したときは、早めに専門家へ相談して適切な対応を検討しましょう。

6-4.特別受益と特定の相続人の貢献(寄与分)は同時に主張可能

遺産分割においては、特別受益と寄与分は同時に適用されることとなります。寄与分とは、被相続人の財産形成などに特別に寄与した相続人は、相続分をプラスすることが可能な規定のことです。

よく、特別受益を受けていた人が、「この贈与は自分が父(被相続人)の事業を長年手伝っていたことに対する見返りである」とか「母(被相続人)の介護を10年もしてきたのだから、生前贈与を受けて当然だ」といった主張をすることがあります。

このような特別な貢献があったとしても、特別受益の持ち戻し自体には影響を与えませんが、寄与分を主張することは可能となります

なお、寄与分についても、令和5年の民法改正により、相続開始から10年以内でなければ原則として主張できなくなりました。

寄与分について、詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:相続の寄与分とは?認められるための5つの条件と証拠書類・計算方法を解説

7.ほかの相続人の特別受益を主張するための手順と流れ

「兄は住宅購入費用を父に出してもらったはずだ」「姉は結婚費用を母に出してもらっていたと思う」などと疑うだけでは、いくら特別受益があるのかを知ることができず、具体的相続分の計算ができません。

また、証拠がないまま特別受益を主張しても、特別受益者が否定すれば遺産分割協議もないでしょう。 

特別受益は主張する相続人側に立証責任があるため、客観的な証拠を確保できるかどうかがポイントとなります。特別受益を考慮した遺産分割を主張する場合は、以下3つのステップに沿って進めていきましょう。

  1. 特別受益を客観的に証明できる証拠(通帳や登記簿など)を収集する
  2. 遺産分割協議の場で特別受益の持ち戻しを提案・主張する
  3. 当事者間の話し合いで解決しない場合は遺産分割調停・審判へ進む

この章では、特別受益を主張する流れについて解説します。

7-1.特別受益を客観的に証明できる証拠(通帳や登記簿など)を収集する

特別受益を主張する場合は、客観的に生前贈与の事実があったことを証明できる証拠になりそうなものを集めましょう。

被相続人の日記・手帳・手紙、メモなどだけでは、基本的に特別受益に該当する贈与があった事実を証明することは困難です。調停や審判で主張することも想定し、以下のような客観的に贈与が行われていた事実があったことを裏付ける証拠になりそうなものを集めましょう

  • 預貯金口座の通帳のコピー
  • 預貯金口座の残高証明
  • 不動産の登記簿謄本
  • 贈与契約書
  • 売買契約書
  • 贈与税の申告書、確定申告書の控え など

金銭の贈与であれば、お金の動きを確認するためにも預貯金口座を調べましょう。

不動産が生前贈与されている可能性がある場合は、登記簿謄本等を取り寄せることで、どの段階で贈与があったのかを知る手がかりとなります。

遺産分割協議が揉める理由や分割方法、遺産分割協議書の書き方などについて詳しくは以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺産分割でもめないために【遺産分割協議とは?】

7-2.遺産分割協議の場で特別受益の持ち戻しを提案・主張する

証拠がそろったら、遺産分割協議で特別受益を受けたと思われる相続人に対して「特別受益に該当する贈与がありましたよね」と確認をして持ち戻しを提案します。協議の場で特別受益の事実と贈与の金額を示し、持ち戻しを反映した分割案を提示する流れです。

そこで特別受益者が、それを認めて持ち戻しに応じれば、特別受益を相続財産に持ち戻して、相続分を決めることとなります。

遺産分割協議

この時点で特別受益を受けたとされる相続人が特別受益を認めない場合は、弁護士に遺産分割協議の交渉を依頼しましょう。第三者を交えた話し合いでも、相手方が事実を認めない、または金額に同意しない場合は、次の遺産分割調停の手続きへ移行します。

なお、特別受益額が多額で持ち戻しをすると相続分が0になる場合、遺産相続は不要であることを示した「特別受益証明書」が必要になることがあります。

特別受益証明書について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:【記載例あり】特別受益証明書とは?注意点や相続放棄との違いも解説!

7-3.当事者間の話し合いで解決しない場合は遺産分割調停・審判へ進む

特別受益者が、「そんな贈与は受けていない」あるいは「たしかに贈与は受けたが、持ち戻しの免除の意思表示があった」などと主張し、遺産分割協議がまとまらない場合があります

このような場合は、管轄の家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てましょう。遺産分割調停では、裁判所の調停委員を介した話し合いにより、合意形成を図ります。

遺産分割調停

また、相続開始から10年という主張期限を経過する前に調停を申立てれば、期限を過ぎた場合でも特別受益や寄与分を考慮した遺産分割を主張できるようになります。

遺産分割調停でも話し合いがまとまらず、不成立になった場合には、自動的に「遺産分割審判」の手続が開始されます。

遺産分割審判は訴訟ではありませんが、両当事者から提示された証拠をもとに、裁判所が判断して遺産分割方法を決めます。審判の決定には法的な強制力があり、当事者は原則としてそれに従って遺産分割を進めなければなりません。

審判結果に不服があれば、2週間以内に「即時抗告」という手続きを取れば、上級審(高等裁判所)で審理が進められます。

遺産分割調停や審判については、下記記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺産分割調停とは?メリットや流れ、必要書類・費用を解説
参考:相続で揉めたら裁判?実際の事例・費用・訴訟までの流れを解説

8.特別受益と遺留分(最低限の取り分)の深い関係性

遺留分とは、遺留分権利者(兄弟姉妹以外の法定相続人)が、最低限相続できる遺産の割合のことです

生前贈与や遺贈が遺留分を侵害している場合は、遺留分権利者が遺留分侵害額請求をすることで、自己の遺留分相当額を取り戻すことができます。

遺留分の割合は、相続人の状況によって以下のように異なります。

特別受益と遺留分侵害額請求の関係

特別受益がある場合は、特別受益を持ち戻した後の「みなし相続財産」を基準に遺留分を計算できます。

遺留分侵害額請求については、下記記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺留分侵害額請求とは?手続き・時効・費用をわかりやすく解説

8-1.遺留分侵害額を計算する際の特別受益の取り扱い

遺留分を計算するときは、亡くなった時点の遺産だけでなく、生前に贈与された特別受益の金額も加えます。計算式は次のとおりです。

遺留分の基礎となる財産=亡くなった時点の遺産+一定期間内の贈与−借金などの債務

たとえば、相続財産が1,000万円、法定相続人が長男、次男、三男であり、長男に5,000万円の生前贈与が行われているとしましょう。まず、具体的相続分を計算すると、結果は以下の通りとなります。

特別受益がある場合の遺留分の計算方

次男と三男の具体的相続分は、本来であれば2,000万円ずつですが、相続財産は1,000万円ですので、半分の500万円ずつを相続します。

しかし、次男と三男は遺留分権利者であり、以下の遺留分を保有しています。

特別受益がある場合の遺留分の計算方法

次男と三男は遺留分が1,000万円ずつあるにもかかわらず、実際には500万円ずつしか相続していません。

そこで、差額の500万円ずつを、長男に対して請求できます。これが遺留分侵害額請求です。

8-2.持ち戻し免除の意思表示があっても遺留分の請求が優先される

被相続人が遺言書で「特別受益の持ち戻し免除」の意思表示をしていても、遺留分侵害額請求が優先されます。遺留分は法律で守られた最低限の権利であり、被相続人の意思よりも優先されるためです

先ほどのシミュレーションモデルをもとにすると、長男が生前贈与された5,000万円は相続分の計算には含めないので、各相続人の具体的相続分は「1,000万円×1/3=333.33万円」ずつとなります。

しかし、遺留分の計算においては、持ち戻しの意思表示があったとしても特別受益を含めなければなりません。

先ほどの遺留分計算をそのまま適用するため、次男と三男の遺留分は1,000万円になります。

そこで、次男と三男はそれぞれ、長男に対して「遺留分1,000万円−具体的相続分333.3万円=666.6万円」ずつの遺留分侵害額請求ができます。

8-3.遺留分算定の対象となる特別受益は「相続開始前の10年間」に限定される

特別受益の相続財産への持ち戻しには、原則として時効はありません。しかし、遺留分を計算する場合の特別受益の持ち戻しは、相続開始前10年以内のものに限ることとされています。

ここは誤解しやすいポイントなので注意をしてください。

9.特別受益をめぐる親族間のトラブルを未然に防ぐ生前対策

子供のためを思って行った生前贈与が、かえって相続トラブルの原因になってしまうケースは少なくありません。トラブルを防ぐためには、財産を渡す側が生前のうちに準備しておくことが大切です。

ここでは、次の3つの対策方法について解説します。

  • 生前贈与や遺贈を行う理由を日頃から家族に伝えておく
  • 遺言書を作成し、各相続人の取り分を明確にしておく
  • 遺言書や贈与契約書に「持ち戻し免除」の旨をはっきりと記載する

9-1.特定の家族へ生前贈与や遺贈を行う理由を日頃から共有しておく

特別受益によるトラブルを防ぐためには、生前贈与の事実や理由を家族に伝えておくことが大切です。

生前から財産について家族としっかり話し合っておけば、相続が起きたときに「自分だけ知らなかった」などと相続人から不満が生じることを防ぎやすくなります

たとえば「家業を継ぐ長男に事業資金を渡した」「介護を引き受けてくれた長女に住居を贈った」など、贈与の背景まで含めて共有しておくと、ほかの家族も納得しやすくなるでしょう。

口頭で話し合うだけでなく、エンディングノートに記録しておくのも1つの方法です。ただし、エンディングノートには法的な効力がないため、遺産の承継方法を指定したいときは遺言書との併用をおすすめします。

9-2.遺言書を作成し、各相続人の遺産分割割合を明確に指定する

遺言書で遺産の分割割合を指定することも特別受益によるトラブルを防ぐ方法の1つです。

そもそも特別受益によるトラブルが発生するのは、特定の相続人に生前贈与が行われたことにより、相続人間での遺産分割に不公平が生じる場合です。

遺言書には、誰にどの財産を渡すかだけでなく「生前贈与として住宅資金を渡している」「その分も踏まえてこの分け方にした」などの事情を書き残せます。遺言書が作成されていると、相続人が贈与の有無や被相続人の考えなどを把握しやすくなるため、遺産相続時のトラブルが生じにくくなります

また、遺言書がある場合には遺産分割協議をする必要がなく、原則として指定された内容にしたがって遺産が承継されるため、そもそも特別受益に関するトラブルも起こりにくくなります。

ただし、遺言書よりも遺留分が優先される点には注意が必要です。各相続人の遺留分に配慮した上で、公平な内容の遺言書を作成するよう心がけましょう。

遺言書の書き方については、下記記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

参考:遺言書の書き方決定版!プロ直伝の文例・ルールと配慮すべきポイント

9-3.遺言書や贈与契約書に「持ち戻し免除」の旨をはっきりと記載する

特定の家族への贈与を遺産に加算させたくない場合は、遺言書や贈与契約書に特別受益の持ち戻し免除の意思表示を明確に記載しておきましょう。

持ち戻し免除の意思表示は口頭でもできます。しかし口頭で「あの贈与は持ち戻さなくてよい」と伝えていただけでは、あとから「そんな話は聞いていない」と争いになりかねません。

故人が生前に口頭で伝えていた場合や状況証拠がある場合は、「黙示の意思表示」により、特別受益の持ち戻し免除が認められることもあります。

しかし、「黙示の意思表示」の場合、特別受益を受けた人が、「父(被相続人)は、持ち戻し免除の意志を表示していた」と主張しても、他の相続人がそれを認めないことは十分考えられます。

相続人の間でのトラブルを防ぐためにも、特別受益の持ち戻し免除を希望する場合は遺言書や贈与契約書にその意思を明記しましょう。

10.特別受益の有無や遺産分割で揉めないためには専門家にご相談を

被相続人が生前贈与や遺贈、死因贈与を行っている場合、特別受益の持ち戻しや遺産の承継方法をめぐり、相続人間でトラブルが生じる可能性があります。

また、「特別受益に該当するのか」「持ち戻し免除の意思表示があったのか」「ほかの相続人の遺留分を侵害していないか」なども確認し、状況に応じた方法で対処しなければなりません。

トラブルの対処や公平な遺産分割などには専門的な知識が求められるため、特別受益に該当する贈与がある場合は、相続税の専門家に相談することをおすすめします。

特別受益に係るお悩みは、相続業務に特化したチェスターグループにご相談ください。

すでに相続が発生していて、特別受益の主張をしたい方や遺留分侵害額請求をお考えの方であれば、相続トラブルを専門とするチェスターグループの法律事務所が担当させていただきます。

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