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5000万円の遺産にかかる相続税はいくら?税額の早見表や計算方法を解説

相続する遺産が多ければ多いほど、基本的に相続税の負担は重くなっていきます。では、5,000万円の遺産を相続する場合、相続税はいくらかかるのでしょうか。

相続財産が同じ5,000万円であっても、相続する人や遺産の分け方などで相続税額は変わります。また、税額控除や特例の適用によって相続税の負担が軽減されることもあるため、税額がいくらとは一概にはいえません。

そこで今回は、5,000万円の遺産を相続するときにかかる相続税や税負担を軽減できる制度などを、相続税専門の税理士が解説します。

この記事の目次 [表示]

1.5,000万円の相続税はいくら?早見表でおおよその金額を確認

早速ですが、5,000万円以上の遺産を相続するとどれほどの相続税がかかるのかを、早見表で確認してみましょう。相続税額の早見表は、相続人が「配偶者と子供」と「子供のみ」という2つのパターンで作成しました。

1-1.配偶者と子が相続人の場合

早見表の1つ目は、以下のルールで計算しています。

    • 相続人は配偶者と子供
    • 法定相続分「配偶者1/2」「子供1/2」で分割したと仮定
    • 「配偶者の税額軽減」を適用した場合の相続税の総額
    • 「障害者控除」や「未成年者控除」などの税額控除は考慮せず

配偶者の税額軽減は、配偶者が相続人である場合、最低でも1億6,000万円までの遺産に相続税がかからなくなるという制度です。

また、相続人が障害者であれば「障害者控除」、未成年であれば「未成年者控除」を適用することで相続税の負担を軽減できますが、本シミュレーションでは考慮しません。 

以上の点を踏まえて相続税をシミュレーションすると、結果は以下の通りとなります。

配偶者と子が相続人の場合
遺産総額配偶者配偶者配偶者配偶者
子供1子供2子供3子供4
5,000万円40万円10万円00
6,000万円90万円60万円30万円0
7,000万円160万円113万円80万円50万円
8,000万円235万円175万円138万円100万円
9,000万円310万円240万円200万円163万円
1億円385万円315万円262万円225万円
1.5億円920万円747万円665万円587万円
2億円1,670万円1,350万円1,217万円1,125万円
2.5億円2,460万円1,985万円1,800万円1,687万円
3億円3,460万円2,860万円2,540万円2,350万円
5億円7,605万円6,555万円5,962万円5,500万円
10億円19,750万円17,810万円16,635万円15,650万円
20億円46,645万円43,440万円41,182万円39,500万円
30億円74,145万円7380万円67,432万円65,175万円
50億円129,145万円125,380万円121,615万円117,850万円

相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算される基礎控除額があります。相続した遺産のうち、基礎控除額に相当する部分には相続税がかかりません。法定相続人である子供の数が多いほど基礎控除額は増えていくため、相続税額は少なくなっていきます。

1-2.子だけが相続人の場合

続いて、相続人が子供のみの場合の早見表を見ていきましょう。

  • 相続人は子供のみ
  • 法定相続分で分割したと仮定
  • 障害者控除や未成年者控除などの税額控除は考慮せず
  • 第3順位の法定相続人(兄弟姉妹)における相続税の2割加算は考慮せず
 
遺産総額子だけが相続人の場合
子供1子供2子供3子供4
5,000万円160万円80万円20万円0
6,000万円310万円180万円120万円60万円
7,000万円480万円320万円220万円160万円
8,000万円680万円470万円330万円260万円
9,000万円920万円620万円480万円360万円
1億円1,220万円770万円630万円490万円
1.5億円2,860万円1,840万円1,440万円1,240万円
2億円4,860万円3,340万円2,460万円2,120万円
2.5億円6,930万円4,920万円3,960万円3,120万円
3億円9,180万円6,920万円5,460万円4,580万円
5億円19,000万円15,210万円12,980万円11,040万円
10億円45,820万円39,500万円35,000万円31,770万円
20億円10820万円93,290万円85,760万円8500万円
30億円155,820万円148,290万円14760万円133,230万円
50億円265,820万円258,290万円25759万円243,230万円

相続人に配偶者が含まれるケースと比較して、全体的に相続税額が高くなっています。これは、相続人が子供のみであると、配偶者の税額軽減が適用されないためです。

一方で、相続人の数が増えるほど、税負担が軽減される点は同様です。

2.相続の基本的なルール:法定相続人・相続分・相続財産の範囲

法定相続人とは民法で定められた相続人で、法定相続分は相続財産分割の目安として国税庁のホームページで公表されています。

法定相続人・相続分、遺族の最低限の取り分である遺留分を把握しておきましょう。

相続の順位被相続人との関係
常に相続人となる配偶者
第1順位子供
亡くなっているときは孫
第2順位
第1順位の人がいないときに相続人となる
父母
亡くなっているときは祖父母
第3順位
第1順位・第2順位の人がいないときに相続人となる
兄弟姉妹 亡くなっているときは甥・姪

内縁関係の人は相続人に含まれず、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます。

民法で定める法定相続人の相続財産分割の割合を「法定相続分」と呼びます。

遺留分は遺族の最低限の取り分を指し、基本的に法定相続分の1/2で計算します。

配偶者・子供や父母などには遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続人の構成法定相続分
()内は遺留分
配偶者のみ又は子供のみ全部
(1/2)
配偶者と子供1人配偶者1/2 子供1/2
(配偶者1/4 子供1/4)
配偶者と子供2人配偶者1/2 子供1/4 子供1/4
(配偶者1/4 子供1/8 子供1/8)
配偶者と父母配偶者2/3 父1/6 母1/6
※父母どちらかの場合には1/3
(配偶者1/3 父1/12 母1/12)
配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
(配偶者3/8 兄弟姉妹1/8)
子供2人子供1/2 子供1/2
(子供1/4 子供1/4)
父母のみ父1/2 母1/2
(父1/4 母1/4)
兄弟姉妹のみ2人以上の場合は人数分で等分

配偶者と子供又は父母・兄弟姉妹という組み合わせで、子供・父母・兄弟が複数いる場合には等分します。

法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかった際の取り分であり、必ずしも法定相続分で遺産分割をするというわけではありません。

ただし、遺留分は被相続人が亡くなった後の遺族の生活を保障するという意味合いがあり遺留分を侵害された人は遺留分侵害額請求調停を申し立てることが可能です。

遺言書が残っている場合でも、遺留分を侵害しているときには法定相続人・相続人の意向を確認しておきましょう。

参考:遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?備える方法・計算方法・時効・手続きの流れを紹介|税理士法人チェスター

2-1.相続税の課税対象になる財産(プラスの財産とマイナスの財産)

相続財産には、土地・家屋・借地権・株式・預貯金・現金・貴金属・宝石・書画・骨とう・自動車・立木・金銭債権などがあり、財産に加え権利も対象となります。

また、借入金やローン、家賃・地代・医療費・の未払金、所得税・住民税・固定資産税の未払金などの債務も相続税の課税対象です。

相続税を計算するときは、プラスの遺産総額から債務や葬式費用を控除します。

参考:財産を相続したとき|国税庁

2-2.課税対象にならない財産の例

一方で、以下の財産は相続税の課税対象になりません。

① 皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
② 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
③ 一定の公益事業を行う者が取得した公益事業用財産
④ 条例による心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
⑤ 相続人が取得した生命保険金等のうち一定の金額
⑥ 相続人が取得した退職手当金等のうち一定の金額
⑦ 相続税の申告書の提出期限までに国・地方公共団体・特定の公益法人又は認定特定非営利活動法人に贈与(寄附)した財産

引用元:相続税法(基礎編)令和4年度版 34p引用|国税庁

⑤⑥に関しては、「みなし相続財産」と呼ばれています。

被相続人が亡くなったことによって生じる相続財産がみなし相続財産です。

税理士がわかりやすく解説!知っておきたい”みなし相続財産”の全て

死亡保険金と死亡退職金は「法定相続人の数×500万円」が非課税となります。

葬式費用に関しては、火葬・埋葬・納骨をするためにかかった費用、お通夜・告別式の費用、読経料など寺院へのお礼費用、遺体や遺骨の回送にかかった費用などが該当します。

参考:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|国税庁

初七日や法事などの費用、墓石や墓地の購入(賃貸)費用、香典返しは葬式費用に含まれません。

債務は被相続人が亡くなったときの債務で確実と認められるものが控除可能です。被相続人が生前に購入したお墓の代金で未払いの部分など非課税財産に関する債務は、相続財産から控除できません。

なお、相続時精算課税制度を選択しているかたは適用を受ける財産を相続財産に加える必要があります。

被相続人から相続開始3年以内に贈与財産を受け取っているかたも加算します。

参考:No.4126 相続財産から控除できる債務|国税庁

参考:相続税の債務控除の対象になる債務とは?葬式費用・注意点についても解説|税理士法人チェスター

2-3.負債が多い場合は限定承認や相続放棄を選択するのも方法

相続には①単純承認、②限定承認、③相続放棄の3つの選択肢があります。

限定承認は相続で得た財産の範囲内で被相続人の債務を受け継ぐ手続きで、被相続人(亡くなった人)の相続財産にローン・借金などの債務があり、債務の額が把握できない場合に利用されることが多いです。

相続放棄は被相続人の財産・権利を全て放棄します。限定承認・相続放棄を希望する際には相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。

手続きをしないと、自動的に相続を承認した(単純承認)とみなされます。まずは相続財産の額・債務などを調べ検討しましょう。

参考:「単純承認」「限定承認」「相続放棄」|税理士法人チェスター

参考:相続の放棄の申述|裁判所

3.相続財産5,000万円の相続税の計算方法をシミュレーション

相続財産の総額が5,000万円・相続人が配偶者と子供1人のケースで、相続税の計算シミュレーションを行ってみましょう。

遺言書:なし
相続人:配偶者と子供1人(成人)
相続財産額:5000万円
相続財産の内訳:預貯金3000万円、有価証券(評価額)2000万円
死亡保険金100万円
債務:なし
控除の対象となる葬式費用:200万円
非課税財産:死亡保険金のみ
相続開始3年前の贈与財産:配偶者なし、子供500万円
相続時精算課税制度:選択していない
相続財産分割協議で決定した実際の相続分の割合:配偶者1/2 子供1/2

相続税は、以下の4つのステップで計算していきます。

  • ステップ1:課税遺産総額を計算する
  • ステップ2:課税価格・相続税の総額の計算
  • ステップ3:各相続人の税額を計算
  • ステップ4:各相続人の納付税額を計算

参考:財産を相続したとき|国税庁

参考:相続税法(基礎編)令和4年度版|国税庁

3-1.ステップ1:課税遺産総額を計算する

まずは下記の手順で課税遺産総額を計算します。

課税遺産相続の総額

引用元:財産を相続したとき|国税庁

遺産額5,000万円のうち、死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税財産となりますので100万円全額を差し引きます。葬式費用200万円も控除できます。

5,000万円-100万円-200万円=4,700万円→③の「遺産額」

さらに相続開始3年前の贈与財産500万円を加えると、③「正味の遺産額」は5200万円です。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4200万円」

正味の相続財産額(5,200万円)が基礎控除額(4,200万円)を上回りますので、相続税がかかる可能性があります。

正味の相続財産額(5,200万円)から基礎控除額(4,200万円)を引いたものが④課税遺産総額(1,000万円)となります。

3-2.ステップ2:課税価格・相続税の総額の計算

課税価格の計算は、課税遺産総額を法定相続人が法定相続分どおりに取得したものと仮定し、相続税の税率を適用して各法定相続人別に計算します。

  • 配偶者(法定相続分1/2):500万円
  • 子供(法定相続分1/2):500万円

それぞれ相続税の税率を当てはめて計算します。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超~55%7,200万円

引用元:財産を相続したとき|国税庁

上記をもとに配偶者と子供の仮の相続税額を計算すると、結果は以下の通りです。

  • 配偶者:500万円×10%=50万円
  • 子供:500万円×10%=50万円
  • 合計:50万円+50万円=100万円

計算の結果、仮の相続税額は合計で100万円となりました。

3-3.ステップ3:各相続人の税額を計算

相続税の総額(100万円)を、各相続人(受遺者・相続時精算課税を適用した人も含む)が実際に取得した正味の遺産額の割合で按分します。

  • 配偶者:100万円×1/2=50万円
  • 子供:100万円×1/2=50万円

今回のシミュレーションでは、法定相続分と同じ割合で遺産を相続するため、各人の相続税額は仮の税額と同じです。

3-4.ステップ4:各相続人の納付税額を計算

最後に、税額控除を差し引いて実際に納める納税額を計算します。

このケースの場合、被相続人の配偶者は、配偶者の税額軽減を受けることで税額が0円となります。

一方の子供は成人しているため未成年者控除は適用できず、その他の税額控除も対象外であるため、相続税額は50万円です。

相続人の納付税額を計算

引用元:親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?|財務省

4.相続税の計算時に利用できる可能性がある控除・特例

相続税を計算する際に、適用できる控除や特例にはどのような種類があるのでしょうか。代表的な控除・特例は、以下の通りです。

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例
  • 未成年者控除(未成年者の税額控除)
  • 障害者控除(障害者の税額控除)

それぞれの制度内容を解説します。

4-1.配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が相続や遺贈によって取得した正味の遺産額が、以下のどちらか大きい金額まで相続税がかからなくなる制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

配偶者の税額軽減を適用できれば、配偶者が相続した遺産の正味の総額が少なくとも1億6,000万円を超えない限り相続税はかかりません。

相続税の申告期限までに分割されていない財産は、原則として税額軽減の対象外ですが、以下の2点を満たすと適用できます。

  • 相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する
  • 申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割する

配偶者の税額軽減について詳しくは、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:6億円が無税に!相続税の配偶者控除の条件・注意点・計算方法を解説

4-2.小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、亡くなった人が住んでいた土地や、事業を営んでいた土地などを相続したときに、相続税の負担を軽減できる制度です。要件を満たすと、一定の限度面積まで土地の評価額が最大80%減額されます。

特例の対象となる土地の種類や減額割合、減額される面積の上限は以下の通りです。

土地の種類対象となる土地減額割合限度面積
①特定居住用宅地等被相続人が住んでいた土地80%330㎡
②特定事業用宅地等被相続人が飲食店や事務所などをかまえていた土地80%400㎡
③貸付事業用宅地等被相続人がマンションやアパートなどの賃貸物件を建てていた土地50%200㎡

相続した土地が特定居住用宅地等に該当する場合、特例を適用できる相続人は主に「被相続人の配偶者」「被相続人と一緒に住んでいた親族」です。また、被相続人と別居していた親族も所定の要件を満たすと、小規模宅地等の特例を適用できます。

小規模宅地等の特例の制度内容や要件などは、下記記事をご覧ください。

参考:土地を相続するとき、必ずチェックすべき小規模宅地等の特例とは?

4-3.未成年者控除

未成年者控除(未成年の税額控除)は、相続人が相続開始の時点で18歳未満(2022年3月31日以前は20歳未満)の未成年であるときに適用される税額控除です。

未成年者控除を適用できると、未成年者の相続人が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が相続税額から控除されます。

たとえば、相続の時点で相続人が15歳である場合、相続税額から控除される金額は「(18歳−15歳)×10万円=30万円です。

控除額が相続税額より大きい場合、余りについては未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

未成年者控除の制度内容や要件などは、以下の記事で解説していますので、ご一読ください。

参考:相続で未成年者がいる場合に必要な特別代理人とは?相続税の未成年者控除についても解説

4-4.障害者控除

障害者控除(障害者の税額控除)は、相続開始の時点で障害者である相続人に適用される控除です。この制度を適用できると、障害者が85歳になるまでの年数1年につき10万円が相続税額から控除されます。また、相続人が特別障害者である場合、1年あたりの控除額は20万円となります。

例えば、相続の時点で障害者である相続人が60歳であった場合、相続税から控除できる金額は「(85歳−60歳)×10万円=250万円」です。相続人が特別障害者であれば、相続税額から「(85歳−60歳)×20万円=500万円」を控除できます。

引き切れなかった控除額については、未成年者控除と同様に、相続人の扶養義務者の相続税額から差し引くことが可能です。

障害者の税額控除の要件や注意点については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

参考:相続税の障害者控除とは?利用する要件や控除額計算方法をご紹介

5.相続税の計算でミスをしやすいポイント

相続税の計算や申告書の作成は、複雑な部分があります。相続税専門の税理士に依頼せず、相続人自身で税額を計算したり申告書を作成したりすると、さまざまなミスが起こりやすいです。

ここでは、相続税の計算で間違いやすいポイントを解説します。

5-1.「課税遺産総額×税率」で税額を求めようとする

相続税の税率は、各相続人が法定相続分にしたがって取得した仮の取得金額に乗じます。課税遺産総額に税率をかけても、相続税額は算出できません。

たとえば、課税遺産総額が5,000万円、法定相続人は、配偶者、長女、次女の3人であるとしましょう。

課税遺産総額5,000万円に税率をかけて税率を求めようとすると、結果は「5,000万円×20%−200万円=800万円」となってしまいます。

一方、実際に相続税を計算するときは、まず遺産を法定相続人で按分します。法定相続分は、配偶者1/2、長女1/4、次女1/4です。課税財産の5,000万円を法定相続分にしたがって分け、それらに税率をかけて仮の相続税額を算出すると、結果は以下の通りとなります。

 法定相続分に応じた取得分仮の相続税額
配偶者5,000万円×1/2=2,500万円2,500万円×15%−50万円=325万円
長女5,000万円×1/4=1,250万円1,250万円×15%−50万円=137.5万円
次女5,000万円×1/4=1,250万円1,250万円×15%−50万円=137.5万円
合計325万円+137.5万円+137.5万円=600万円

計算の結果、相続税の総額は合計600万円となり、課税遺産総額に税率をかけて計算するときよりも200万円少なくなりました。法定相続分の通りに遺産分割をする場合、算出された金額に税額控除や特例などを適用すると、納税額が求められます。

たとえば、配偶者は「配偶者の税額軽減」を適用することで、正味の遺産総額が最低1億6,000万円を超えない限り相続税がかかりません。よって、このケースで配偶者が納める相続税額は0円となります。

また、被相続人が遺言書を残していなかった場合、相続人同士で話し合って遺産の分け方を決めることができます。遺産の分け方を工夫することで、相続税の負担をさらに軽減することも可能です。

5-2.被相続人がなくなる前3年以内の贈与財産の申告に漏れがある

相続や遺贈などで財産を取得した人が、被相続人の亡くなる前3年以内に贈与された財産は相続税の課税対象となります。このルールを「生前贈与加算」といいます。

贈与税の基礎控除額である110万円以内で贈与された財産も、相続開始前の3年以内に遺産を取得した人に贈与されていたのであれば、生前贈与加算の対象です。

相続税を申告するときは、生前贈与加算の対象となる財産をすべて申告書に記入しなければなりません。生前贈与加算の対象であるにもかかわらず、年間110万円以下の贈与財産が申告書に記入されておらず不備となるケースがよくあります。

5-3.被相続人の孫や兄弟姉妹が相続したのに2割加算が適用されていない

被相続人の一親等の血族(直系卑属を含む)や配偶者以外の人が遺産を相続した場合は「2割加算」の対象となり、相続税額に2割の金額が加算されます。

2割加算の対象となるのは、被相続人の孫(代襲相続を除く)や兄弟姉妹、甥、姪などです。また、養子縁組をしている孫なども2割加算の対象となります。

2割加算が適用される場合、相続税を申告するときに相続税額の加算金額を記入しなければなりません。相続人が2割加算の対象にならないと考えて、加算金額の欄を記入しないのは誤りとなります。

5-4.団体信用生命保険により返済が免除される住宅ローンを債務に含めてしまう

相続税の計算では、被相続人が残した借入金や未払金などを相続財産の価額から控除できます。ただし、被相続人が団体信用生命保険に加入していたのであれば、住宅ローンの残債は債務控除の対象になりません。

団体信用生命保険に加入していると、住宅ローンの契約者が亡くなったときに、保険金が支払われることで残債が0円となります。団体信用生命保険によって住宅ローンが完済されているにもかかわらず、相続が開始された時点の残債をプラスの相続財産から控除してしまうと、相続税の計算を誤ってしまいかねません。

相続税を計算するときは、被相続人の残したローンが団体信用生命保険で完済されるかどうかを、よく確認することが大切です。

6.相続税計算の注意点3つ

最後に、相続税の計算で注意すべき点を3つお伝えしていきます。

6-1.不動産の相続税評価額

不動産は相続税の計算時に基本的には時価で評価するものとされています。

実際には土地が路線価又は倍率方式(時価の約8割)、建物が固定資産税評価額(時価の約7割)で評価されます。

一定の事業用・居住用の宅地は「小規模宅地等の特例」により評価額からさらに50~80%減額されます。

上記のように不動産は税制上優遇されていることから、相続税対策として購入するかたは多いです。

しかし、2022年に節税のためにタワーマンションを購入し路線価方式で計算し相続税を0円と申請した結果、時価とかけ離れ税務署が鑑定額で再評価し追徴課税された事件がありました。

参考:No.4602 土地家屋の評価|国税庁

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

不動産と相続税に関しては、税金のプロである税理士に相談することをおすすめします。

相続税の相談は【税理士法人チェスター】

6-2.配偶者の税額軽減の落とし穴

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のうち多い金額で、多額の控除が可能です。

そのため配偶者控除を利用し配偶者に全て相続させ相続税を全額控除する事例があります。しかし相続した配偶者が亡くなった際の相続財産が膨らみ、相続税が多額になってしまうという落とし穴があります。

6-3.相続財産に加算される贈与が相続開始から7年以内に?

2022年12月16日に発表された税制改正大綱(税制改正のたたき台)では、相続財産に加算する被相続人から相続開始前に受けた贈与を「3年以内」から「7年以内」に改正すると発表されました。

参考:令和5年度税制改正大綱|自民党

これまで相続税の課税対象となる贈与財産は相続開始から3年以内でしたが、7年以内に延長される見込みです。ただし、まだ決定事項ではなく法案は4月に成立する予定です。

今後の動向を注視しながら、生前贈与を考えているかたは早めの贈与を検討しましょう。

7.相続税の計算シミュレーションソフトで計算しよう

5,000万円の遺産を相続したときの相続税を計算するためには、相続人となる人や利用できる税額控除・特例などを正確に把握していなければなりません。とはいえ、相続税は生涯を通じて何度も計算するものではないため、専門家でなければ正確に税額を算出するのは困難でしょう。

そこで、正確な相続税の額を知りたいかたは「相続税の計算シミュレーションソフト」を利用してみることをおすすめします。

相続税専門の税理士法人チェスターが運用を行っており、遺産総額や相続人の数・税理士報酬額などを入力するだけでシミュレーションが可能です。

「うちの場合は○○だけど、相続税はどうなるの?」というケース別の相談を希望するかたは、税理士法人チェスターにお問い合わせください。

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相続税申告は相続専門の実績あるチェスターで安心。

税理士法人チェスターは相続に関する業務のみに特化している専門事務所であり、創業からこれまで培ってきた知見やノウハウがずっと引き継がれているため、難解な案件や評価が難しい税務論点にもしっかり対応致します。

初回面談から申告完了まで担当スタッフがお客様専任として対応しているので、やり取りもスムーズ。申告書の質の高さを常に追求しているからこそ実現できる税務調査率が0.6%であることも強みの一つです。

相続税申告実績は年間2,300件超、税理士の数は73名とトップクラスの実績を誇るチェスターの相続税申告を実感してください。

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