株式を相続したときの名義変更|必要書類・費用・期限を解説

亡くなった人が保有していた株式は、上場・非上場を問わず遺産相続の対象となります。遺言や遺産分割協議によって取得する人が決まったら、証券会社や株式の発行会社で名義変更手続きをします。
株式の名義変更をいつまでに終えるかは、法律で決められていません。しかし、名義を変えるまでは亡くなった人が株主のままとなり、「配当金や株主優待の受け取りに支障が出る」「株式を売却できない」といった事態が起こりかねないため、速やかに手続きすることをおすすめします。
この記事では、株式の名義変更の流れ、必要書類、かかる費用の目安、意識したい期限を、相続税専門の税理士が解説します。
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1.亡くなった人の株の名義変更手続きの流れ
株式の名義変更をする際は、まず遺言書が残されていないかを確認します。次に、株式を取得する人を決め、証券会社や発行会社へ名義変更を申請する流れです。具体的な手順は以下のとおりです。
〇株式の名義変更手続きの流れ
- 遺言書の有無を確認する
- 亡くなった人が保有していた株式を調べる
- 相続人を確定する
- 証券会社や発行会社から残高証明書を取り寄せる
- 遺産分割協議で株式を取得する相続人を決める
- 証券会社または発行会社へ名義変更を申請する
相続人が複数いる場合、亡くなった人の株式は、遺産分割が終わるまで原則として相続人全員が準共有となります。
準共有状態の株式について株主としての権利を行使するには、原則として、共同相続人のなかから権利を行使する人を1人定め、その氏名などを会社へ通知する必要があります(会社法第106条)。
※会社が同意した場合を除く
遺産分割協議などで株式を取得する相続人が決まると、準共有の状態は解消されます。取得した相続人が株式を単独で扱えるようにするためには、名義変更手続きが必要です。
1-1.遺言書の有無を確認する
まず、亡くなった人(被相続人)が遺言書を残していないかを探しましょう。
遺言書で「〇〇証券の株式を長男Aに相続させる」のように指定されている場合は、基本的にその指定された人物が株式を取得します。そのため、遺産分割協議をしなくても名義変更手続きができます。
遺言書の保管場所としては、自宅の仏壇や机の引き出し、金庫、銀行の貸金庫などが代表的です。心当たりのある場所を探してみましょう。
亡くなった人の自筆で作成されている「自筆証書遺言」が残されていた場合は、原則として開封する前に家庭裁判所の検認を受けます。
株式の名義変更を申請するときは、自筆証書遺言に裁判所が検認した際に発行される検認済証明書や検認調書の添付を求められることがあります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合、検認は不要です。
1-2.亡くなった人が保有していた株式を調べる
株式を相続する際は、亡くなった人がどの銘柄を何株持っていたのかを明らかにする必要があります。故人宛の郵便物や預金通帳をもとに、亡くなった人が保有していた株式を調べましょう。
故人の保有株式を確認できる郵便物としては、証券会社から届く取引残高報告書や配当金計算書、発行会社などが送る株主総会の招集通知などが挙げられます。
また、預金通帳に記載されている配当金の入金記録や、確定申告書の控えからも保有株式を確認できることがあります。
ただし、配当金を預金口座ではなく証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選んでいた場合は、預金通帳から保有株式の存在を把握するのは困難です。
ネット証券では取引残高報告書が電子交付され、書面が郵送されない場合もあります。故人のパソコンやスマートフォンに届いたメールも確認してみると、保有株式に関する手がかりが見つかるかもしれません。
亡くなった人がどの証券会社と取引していたのかが分からない場合は、証券保管振替機構へ「登録済加入者情報」の開示請求をするのも1つの方法です。
法定相続人とその代理人、一定の要件を満たす遺言執行者が請求でき、開示時点で振替株式等の口座が開設されている証券会社や信託銀行等を確認できます。
1-3.相続人を確定する
亡くなった人の保有株式が分かったら、次は誰が相続人になるのかを確定させます。
相続人の範囲は民法で定められており、配偶者は常に相続人です。
配偶者以外は、子、父母などの直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になります。先の順位に該当する人物がいる場合、あとの順位に該当する人は相続人にはなれません。

相続人を確定させる際は、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集めます。
戸籍が改製されている場合は改製原戸籍謄本を、婚姻や転籍などによって戸籍が変わっている場合は除籍謄本なども取得して、出生時までさかのぼって確認します。
あわせて、株式の名義変更手続きに必要な相続人の戸籍謄本や印鑑証明書も準備しましょう。誰の分が必要になるかは、遺言書の有無や提出先によって異なります。
1-4.証券会社や発行会社から残高証明書を取り寄せる
遺産分割の話し合いに入る前に、相続開始日(亡くなった日)時点の保有株式を確定させます。その内容を証明する書類が残高証明書です。
残高証明書は、亡くなった人が取引していた証券会社などへ請求すると取得できます。この残高証明書は、相続税の申告にも使用します。
株式分割や併合があった銘柄では、実際の株数が家族の把握していた数と異なる場合もあります。銘柄ごとの正確な株数は、残高証明書で確認しましょう。
相続人が残高証明書を請求する際に必要な書類の例は以下のとおりです。
- 亡くなった人の死亡を確認できる戸籍(除籍)謄本
- 請求人が相続人であることを確認できる戸籍謄本
- 請求者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
請求時の必要書類は、証券会社や株式の取得の仕方(遺言による遺贈・遺産分割)によって異なるため、請求前に問い合わせて確認しておきましょう。
故人が非上場株式を保有していた場合、保有株式数を確認するための証明書の発行方法や必要書類は発行会社によって異なります。
発行会社または株主名簿管理人(名簿の管理を代行する信託銀行など)に問い合わせて確認しましょう。
1-5.遺産分割協議で株式を取得する相続人を決める
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をして遺産の引き継ぎ方を決めます。株式の場合は「誰が」「どの株式を」「何株相続するか」を明確にします。
協議の前に、残高証明書で保有株式の内容を確認するなどして、亡くなった人の相続財産を把握しましょう。
一部の財産のみを先に分割することもできますが、財産の見落としや再協議を避けるためには、相続財産の全体を確定したあとに協議を進めるとよいでしょう。
協議で相続人全員が合意した内容は、遺産分割協議書にまとめるのが一般的です。名義変更の申請時には、相続人全員が署名して実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書の提出が必要になるケースもあります。
なお、名義変更を申請する際は、遺産分割協議書とは別に、証券会社所定の書式へ株式ごとの取得割合などを記載する場合もあります。
遺産分割協議書の書き方について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:【ひな型付】遺産分割協議書の書き方とは?基礎から応用まで詳しく解説
1-6.証券会社または発行会社へ名義変更を申請する
株式を取得する相続人が決まったら、所定の書類を提出して名義変更を申請します。申請先は以下のとおりです。
- 上場株式:亡くなった人の口座がある証券会社
- 非上場株式:株式の発行会社・信託銀行などの株主名簿管理人
手続き方法や提出書類の種類・様式は、証券会社や発行会社ごとに異なるため、申請前に問い合わせて確認しましょう。
2.上場株式の名義変更は証券会社で手続きする
上場株式を相続したときは、亡くなった人の証券口座から相続人名義の口座へ移す形で名義が変わります。以下では、口座の種類ごとに名義変更手続きの仕方を解説します。
2-1.相続人名義の証券口座へ株式を移管して名義を変更する
上場株式が亡くなった人の証券口座で管理されている場合は、株式を発行した会社ではなく、その証券会社へ連絡して相続手続きを進めます。
まず相続が発生したことを伝え、「相続手続依頼書」など証券会社所定の書類を確認・取得しましょう。
取り寄せた書類に記入し、戸籍謄本などの必要書類とあわせて提出すると、亡くなった人の口座にある株式が相続人名義の口座へ移されます。株主名簿の名義書換も、通常は証券会社が代行します。
名義変更手続きをする証券会社に相続人の口座がない場合、通常はその証券会社で口座を新規開設します。
提出書類に不備がなければ、名義変更はおおむね2~4週間程度で完了します。新規の口座開設が必要な場合や、書類の不備で差し戻しがあった場合は、1ヶ月以上かかることも少なくありません。
2-2.亡くなった人の口座から相続人の口座へ移すのが基本
亡くなった人の証券口座の名義を相続人に書き換える形での引き継ぎは原則としてできません。故人の口座にある株式を、別途用意した相続人名義の口座へ移す必要があります。
被相続人名義の口座のまま、株式を直接売却して現金化することもできません。売却する場合も、相続人名義の証券口座へ株式を移したうえで、相続人自身が売却の注文を出すのが一般的です。
売却した代金を相続人間で分ける場合は、代表となる相続人の口座へいったん移してから売却する方法がよく用いられます。
また、移管する口座は故人が保有していたものと同一の種別に限られるケースが少なくありません。たとえば、「特定口座」の株式は特定口座へ、「一般口座」の株式は一般口座へ移します。
移管先の口座は、亡くなった人と同じ証券会社に開設するのが基本です。証券会社によっては、他社の口座への直接の移管に対応していないためです。
相続人が普段取引している証券会社の口座へそのまま移せるとは限らないため、手続きを始める前に、移管先にできる口座を確認しましょう。
2-3.信託銀行の特別口座にある株式は信託銀行で手続きする
亡くなった人が証券会社と取引していた形跡がない場合や、自宅に株券が残っている場合は、信託銀行等の「特別口座」で株式が管理されている可能性があります。
〇特別口座とは
- 株券電子化(平成21年(2009年)1月5日実施)までに証券会社を通じて証券保管振替機構へ預けられていなかった株式について、株主の権利を保全するために発行会社が信託銀行等へ開設した口座
手元に残った上場会社の株券は、株券電子化によりすでに無効となっています。ただし、株券が無効になっても株式に関する権利まで消滅するわけではありません。
電子化時に株主名簿に記載されていた株主については、原則としてその名義で開設された特別口座で株式が管理され、配当金の受領や議決権の行使などができます。
相続手続きの窓口は、その銘柄の特別口座を管理している信託銀行等の口座管理機関です。多くの信託銀行では、証券代行部などが手続きを担当しています。
申請書類は窓口へ持参するのではなく、郵送でやり取りするのが一般的です。
2-4.亡くなった人のNISA口座にある株式は相続人の課税口座へ移される
NISAは、株式や投資信託への投資で得られた売却益や配当・分配金などの運用益が原則として非課税になる制度です。専用の「NISA口座(非課税口座)」で購入した株式などが対象となります。
被相続人のNISA口座で保有されていた株式を相続人のNISA口座へ受け入れることはできません。その株式は、特定口座や一般口座といった課税口座で引き継ぐことになります。
また、NISA口座の名義人が亡くなったときは、「非課税口座開設者死亡届出書」の提出が必要です。名義人が亡くなったことを知ったら、できるだけ早くNISA口座のある金融機関へ提出しましょう。
亡くなった人のNISA口座にあった上場株式等は、亡くなった日に払い出されたものとして扱われます。非課税の適用も、亡くなった日で終わります。
課税口座へ移したあとに売却して利益が出た場合は、被相続人のNISAの非課税期間が残っていたとしても、課税の対象です。
このとき、利益の計算に用いる取得価額は、被相続人が実際に購入した金額ではなく、亡くなった日の最終価格などになります。
3.非上場株式の名義変更は発行会社へ請求する
亡くなった人が自身で会社を経営していた場合や、親族の会社・勤務先の株式を持っていた場合は、非上場株式を相続することがあります。
通常、非上場株式は上場株式のように証券口座では管理されていません。名義を変更するためには、発行会社に対して株主名簿の名義書換を請求します。
なお、中小企業の株式は基本的に非上場です。名前の知られた大企業にも、上場していない会社があるため、故人が保有していた株式が上場か非上場かをよく確認しましょう。
3-1.発行会社に連絡して株主名簿の名義書換を請求する
まず、発行会社へ連絡し、株主が亡くなった事実を伝えます。連絡先は、発行会社の総務部や株式を担当する部署などです。
あわせて、名義書換の手続きをする方法や必要な書類、亡くなった人が保有していた株式数も問い合わせて確認しておきましょう。
その後、発行会社から案内された名義書換申請書に記入し、相続の内容を証明する書類を添えて提出します。
一般的には、戸籍謄本や遺産分割協議書などが必要ですが、必要書類や申請書の様式は発行会社ごとに異なるため、連絡の際に確認しておきましょう。
発行会社によっては、信託銀行などが「株主名簿管理人」として株主名簿の管理を代行している場合があります。その場合の請求先は株主名簿管理人です。どの信託銀行等が担当しているかは、発行会社に問い合わせるか、法務局で取得できる登記事項証明書で確認できます。
なお、非上場会社では現在も株券が発行されている場合があります。株券電子化で無効になったのは上場会社に限られるためです。
株券を発行している会社に名義書換を請求する際は、その株券の提示を求められることがあります。
非上場株式の評価方式について詳しくは以下で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:非上場株式の評価方式とは?相続手続きのメリット・注意点を一挙紹介
3-2.譲渡制限株式でも相続による取得に会社の承認は必要ない
非上場会社の株式は、ほとんどが「譲渡制限株式」です。
〇譲渡制限株式とは
- 譲渡による取得について、会社の承認を受けなければならないと定款で定められた株式。会社にとって好ましくない人が株主になることを防ぐことを目的に設けられるケースが多い
譲渡制限株式を譲渡(特定承継)によって取得する場合、発行会社の承認が必要です。
一方、相続による取得は一般承継にあたるため、発行会社の承認を受けていなくても、株主名簿の名義書換を請求できます。
ただし、定款に定めがある場合は、会社から株式を売り渡すよう請求されることがあります。これを「売渡請求」といい、請求できる期間は会社が相続の発生を知った日から1年以内です。
4.株式の相続による名義変更に必要な書類
名義変更に必要となる主な書類は以下のとおりです。
〇名義変更に必要な主な書類
| 区分 | 主な書類 |
|---|---|
| 基本的な必要書類 | 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本) ※法定相続情報一覧図の写しで代替できる場合が多い |
| 相続人全員の戸籍謄本 | |
| 相続人全員の印鑑証明書 ※発行後6ヶ月以内のものを指定されることが多い | |
| 証券会社・発行会社所定の相続手続書類(相続届、株式名義書換請求書、取引口座引き継ぎの念書、相続人全員の同意書など) | |
| 遺産分割協議で決めた場合 | 遺産分割協議書(相続人全員が署名し、実印を押印したもの) |
| 調停・審判で決めた場合 | 調停調書または審判書の謄本(審判の場合は審判確定証明書もあわせて必要) |
| 遺言書がある場合 | 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本(出生から死亡まで連続した戸籍謄本の代わりに、この書類で足りることもある) |
| 遺言書(公正証書遺言は正本または謄本) | |
| 検認済証明書または検認調書(自筆証書遺言の場合) 遺言書情報証明書(法務局の保管制度を利用していた場合) | |
| 株式を取得する受遺者の印鑑証明書(遺言執行者がいない場合) ※発行後6ヶ月以内のものを指定されることが多い | |
| 遺言執行者の印鑑証明書(遺言執行者がいる場合) | |
| 遺言執行者選任審判書(家庭裁判所が遺言執行者を選任した場合) | |
| 特別口座にある株式 | 信託銀行所定の口座振替申請書 |
| 非上場株式 | 発行会社または株主名簿管理人所定の株式名義書換請求書 株券(株券を発行している会社の場合) |
※上記は一例です。実際に必要となる書類や原本とコピーのどちらが必要かなどは提出先の証券会社や発行会社によって異なります。
印鑑証明書には「発行後6ヶ月以内」といった有効期限が設けられているのが一般的です。なかには発行後3ヶ月以内と定める証券会社もあるため、提出先の指定を確認してから用意しましょう。
このほか、住民票や戸籍の附票が必要な提出先もあります。
なお、出生から死亡までの戸籍謄本は、令和6年(2024年)3月1日に始まった「広域交付制度」の対象です。
故人の配偶者や子など広域交付を請求できる人は、住所地や勤務先などがある市区町村の窓口でまとめて故人の戸籍謄本を請求できます。
ただし、コンピュータ化されていない古い戸籍謄本や除籍謄本は対象外であるため、これらは本籍地があった市区町村へ個別に請求しましょう。
残高証明書の請求時に戸籍謄本や印鑑証明書を提出した場合、同じ証券会社で名義変更手続きをする際に、改めて用意する必要はないケースがほとんどです。
また、戸籍謄本の代わりに「法定相続情報一覧図」の写しで手続きができる証券会社も多くあります。
〇法定相続情報一覧図とは
- 被相続人と相続人の関係を1枚の図にまとめ、法務局の確認を経て写しの交付を受けられる書類
一覧図の写しの交付に手数料はかかりません。
証券会社ごとの連絡先や手続きの進め方、法定相続情報一覧図の作成から交付までの手順について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:株式相続の必要書類ガイド|証券会社別の手続きも解説
参考:法定相続情報証明制度は必要?利用手順・費用・デメリットも解説
5.株式の相続による名義変更にかかる費用
株式の名義変更をする際、証券会社や発行会社へ直接支払う手数料は原則かかりません。一方、必要書類を取得するための実費はかかります。
項目ごとの金額の目安と支払先は、以下のとおりです。
〇株式の名義変更にかかる費用の目安
| 項目 | 金額 | 支払先 |
|---|---|---|
| 名義変更の手数料 | 原則かからない | - |
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 1通450円 | 市区町村の窓口 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 1通750円 | 市区町村の窓口 |
| 住民票の写し・印鑑証明書 | 1通あたり300円程度 | 市区町村の窓口 |
| 残高証明書の発行手数料 | 1通あたり1,100円程度(無料の証券会社もある) | 証券会社 |
| 保有株式の調査(登録済加入者情報の開示請求) | 1件7,700円/法定相続情報一覧図のコピーを提出する場合は1件6,050円 | 証券保管振替機構 |
| 他の証券会社へ移す場合の移管手数料 | 1銘柄あたり1,100円~(無料の証券会社もある) | 移管元の証券会社 |
※証券会社と証券保管振替機構へ支払う金額は税込です。
※残高証明書の発行手数料や他の証券会社へ移す場合の移管手数料は手続き先によって異なります。
※非上場株式の場合、発行会社によっては名義変更の際に名義書換手数料がかかることがあります。
以下では、相続時の名義変更をする際にかかる主な費用を解説します。
5-1.名義変更そのものの手数料は原則かからない
相続した株式を相続人名義の口座へ移したり発行会社で名義書換手続きをしたりする際に、証券会社へ支払う手数料は基本的に不要です。
不動産の場合、所有権移転登記をする際に登録免許税がかかりますが、株式であればこうした税金はかかりません。
一方、非上場会社では株主名簿の書換手数料や郵送費がかかる場合があります。費用の有無や金額は発行会社ごとに異なるため、名義変更の請求をする際に確認しておきましょう。
ほかにも、別の証券会社へ株式を移す場合の移管手数料や残高証明書の発行手数料がかかることもあります。相続に関する取得であれば無料になるなど、証券会社によって金額や取り扱いが異なるため、こちらもよく確認することが重要です。
また、司法書士や税理士などの専門家へ手続きを依頼する場合は、専門家報酬が別途必要です。
名義変更の手続きは相続人自身でもできますが、書類の収集や金融機関とのやり取りに手間や時間がかかりやすいため、報酬を支払って専門家に任せるのも1つの方法です。
5-2.戸籍謄本など公的書類の取得に実費がかかる
戸籍関係の書類を交付してもらう際は基本的に手数料がかかります。交付手数料は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本が1通750円であり、原則として全国共通です。
一方、住民票の写しと印鑑登録証明書の手数料は市区町村の条例で定められ、自治体ごとに異なります。
窓口での交付手数料は1通300円の自治体が多いですが、熊本市や札幌市など400円と定めるところもあります。
マイナンバーカードを持っている場合、自治体によっては住民票の写しと印鑑証明書をコンビニでも取得可能です。コンビニ交付の手数料を窓口より50~100円安く設定している自治体が多いようです。
被相続人が結婚や転籍(本籍地の変更)などで新しい戸籍へ移った回数が多いほど、取得する書類の数は増えるため、取得費用も高くなっていきます。
取得する書類が多い場合、実費の合計は数千~1万円程度になることも珍しくありません。
5-3.保有株式の調査を依頼すると開示請求の費用がかかる
口座の開設先が分からず証券保管振替機構へ開示請求する場合は、1件ごとに費用が必要です。
開示請求の費用は令和8年(2026年)10月1日に改定され、基本は1件7,700円(税込)、法定相続情報一覧図のコピーを提出する場合は1件6,050円(税込)となります。
※令和8年(2026年)9月30日以前に請求する場合は、相続人からの請求が1件6,050円(税込)、法定相続情報一覧図のコピーを提出する場合は1件4,950円(税込)です。
なお、開示請求では、請求した時点で口座が開設されている証券会社や信託銀行の一覧が分かります。銘柄や株数までは分からないため、判明した開設先へ残高証明書を別途請求しましょう。
6.株式の相続による名義変更に期限はある?
株式の名義変更そのものに、法律で定められた期限はありません。一方、相続に関する手続きのなかには期限が決まっているものもあります。
株式を相続した場合に意識したい期限は、以下のとおりです。
〇株式の相続で意識したい期限
- 相続放棄:自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
- 準確定申告:相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内
- 相続税の申告・納付:被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10ヶ月以内
以下では各手続きの内容と期日について詳しく解説します。
6-1.名義変更そのものに法定の期限はない
株式の相続による名義変更手続きには、一律の法定期限はありません。ただし、長期間放置すると一定の要件のもとで発行会社に株式が売却されるなどのリスクがあるため、早めに手続きを進めましょう。
また、株式自体は相続開始時に相続人へ承継されますが、名義変更手続きをしなければ、株主名簿や証券口座上は被相続人の名義のままです。
その結果、議決権の行使や配当金・株主優待の受け取りに支障が生じたり、相続手続きが完了するまで株式を売却できなかったりすることがあります。
6-2.相続放棄をするなら「3ヶ月以内」
「被相続人が多額の借金を抱えており未返済である」などの場合は、相続放棄をする方法もあります。相続放棄は、株式や預貯金などのプラスの財産と借入金などのマイナスの財産を、いっさい相続しない選択をする手続きです。
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です。

申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。相続人の住所地にある家庭裁判所ではない点に注意しましょう。
非上場株式を含む相続財産の調査に時間がかかり、3ヶ月以内に相続を承認するか放棄するか判断できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます。
相続放棄について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:相続放棄とは?期限・手続きの流れ・費用をわかりやすく解説
6-3.準確定申告は「4ヶ月以内」
亡くなった人に確定申告をする義務があった場合、相続人は「準確定申告」をする必要があります。

〇準確定申告とは
- 年の中途で亡くなった人について、その年の1月1日から死亡した日までの所得を相続人が代わりに申告する手続き
亡くなった年に株式の売却益(譲渡所得)があり、確定申告が必要な場合は、準確定申告の対象です。配当所得については、確定申告不要制度を選択できる場合があるため、配当の種類や保有する株式の割合などを確認して申告が必要かどうかを判断しましょう。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から4ヶ月以内です。この日までに、申告とあわせ必要に応じて納税も済ませなければなりません。
期限内に申告と納税を済ませなかった場合は、加算税や延滞税が相続人に課されることがあります。
相続人が複数いる場合は、全員が連署して申告書1通を提出するのが原則です。ただし、各相続人がほかの相続人の氏名を付記して、それぞれ別々に申告書を提出することもできます。
この場合、申告書を提出した相続人は、ほかの相続人に申告内容を通知する必要があります。
準確定申告の進め方について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
参考:準確定申告とは?必要かどうかの判断・期限・申告書の書き方を解説
6-4.相続税の申告・納付は「10ヶ月以内」
株式を含む遺産の総額が「基礎控除額」を上回る場合は、相続税の申告と納税が必要です。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
たとえば、法定相続人が2人の場合の基礎控除額は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。株式や預貯金など正味の遺産総額が5,000万円であれば、基礎控除額を上回るため申告が必要になります。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。納税の期限も同じ日です。

遺産分割協議が終わっていない場合でも、期限は延長されません。期限までに申告・納付をしなかった場合は、加算税や延滞税がかかることがあります。
7.株式の名義変更をしないとどうなる?
株式の名義変更をしていないと、以下のような不利益が生じる可能性があります。
〇名義変更をしない場合に生じる不利益
- 配当金や株主優待の受け取りに支障が出る
- 株式を売却して現金に換えられない
- 次の相続が起きて相続人が増え、遺産分割協議の合意が難しくなる
上記のような事態を避けるためにも、株式を相続したときは速やかに名義変更手続きを済ませることが大切です。
7-1.配当金や株主優待の受け取りに支障が出るおそれがある
配当金の支払先は、基準日(受け取る権利を確定する日)時点の株主名簿で決まる仕組みです。名義を書き換えていない場合、配当金は被相続人あてに支払われます。
また、配当金計算書などの配当金に関する書類や郵送される株主優待の案内も、原則として株主名簿に記載されている住所へ送られます。名義変更をしていないと相続人の手元に届かない可能性があります。
こうした書類が相続人の手元に届かないと、配当金の受取手続きの遅れや、株主優待の申込期限や有効期限の超過をまねきかねません。
なお、被相続人あてに支払われた未受領の配当金は、所定の相続手続きを経て相続人が受け取れます。
7-2.株式を売却して現金に換えられない
名義変更を終えるまで、相続人は原則として株式を売却できません。上場株式は、相続人名義の口座へ株式を移したうえで売却の注文を出す流れとなります。
非上場株式を売却するためには、相続人への名義書換に加え、譲渡制限株式の場合は発行会社の承認などが必要です。具体的な手続きは、発行会社に確認しましょう。
また、遺産分割協議をしないまま放置しているあいだ、株式は相続人全員で共有(準共有)している状態です。共有状態のままでは、1人の相続人の判断で自由に売却することはできません。
相続した株式が値下がりしてきたために手放したいと考えても、名義変更や遺産分割を終えるまでは売却できず、損失が拡大してしまうおそれがあります。
株式を売却して納税資金に充てる予定がある場合、名義変更の手続きが遅れると申告期限までに現金化が間に合わないかもしれません。
故人が保有していた株式をできるだけ早く売却したい場合や、換価分割(売却した代金を相続人で分ける方法)をする場合は、速やかに名義変更の手続きを済ませましょう。
7-3.次の相続が起きると手続きがさらに難しくなる
名義変更をしないうちに相続人の1人が亡くなった場合、その人についての新たな相続(数次相続)が始まります。株式を引き継ぐ権利は次の相続人へ移り、遺産分割協議に加わる人数が増えます。
たとえば、亡くなった相続人に配偶者や子どもがいる場合は、その全員が相続人の立場を引き継ぎ、新たに協議へ加わることになります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。人数が増えるほど連絡先の把握や日程の調整に手間がかかりやすくなります。
また、面識のない親族と話し合いが必要になり、全員の合意を得ることが難しくなるかもしれません。
相続が何度も繰り返されると、協議の当事者はさらに増えていきます。そうなると、全員の意見を一致させることは難しくなり、名義変更が長期間進まない事態にもなりかねません。
このような事態を避けるためにも、相続が開始されたら速やかに法定相続人を確定させて遺産分割協議をし、株式を取得する人を決めることが大切です。
8.株式を相続して名義変更したときにかかる税金
相続した株式の名義変更手続き自体に税金はかかりませんが、相続税がかかる場合があります。
以下では、相続税が課される条件や株式の相続税評価額の求め方、売却したときの税金を解説します。
8-1.遺産の総額が基礎控除額を超える場合に相続税がかかる
相続税の申告義務が生じるのは、正味の遺産総額が、基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合です。

正味の遺産総額は、株式や預貯金、不動産などの財産から、非課税財産や債務、葬式費用などを差し引き、一定の生前贈与などを加えて計算します。
差し引ける債務は、亡くなった方が残した借入金や未払いの医療費、未納の税金などです。
基礎控除額を計算する際の法定相続人には、相続を放棄した人も含めて数えます。ただし、被相続人の養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか含められない点に注意しましょう。
基礎控除額を超えた場合の相続税額の計算方法は、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:相続税の計算方法を解説!具体例・シミュレーションソフト付き!
8-2.株式の相続税評価額は上場株式と非上場株式で求め方が異なる
株式の相続税評価額は、上場株式と非上場株式で求め方が異なります。
上場株式は、原則として課税時期(被相続人が亡くなった日)の最終価格(終値)で評価します。
ただし、課税時期に株価が一時的に高騰していた場合、終値だけで評価すると税負担が実態より重くなりかねません。
そこで、例外として、以下の4種類の価額のうち最も低いものを相続税評価額とすることが認められています。
〇上場株式の評価に用いる4種類の価額
- 課税時期の最終価格
- 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
- 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
- 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
1株あたりの価額に保有株数を掛けた金額が、その銘柄の相続税評価額です。
一方、非上場株式には終値のような株価がありません。株式を取得した人の立場や発行会社の規模、資産構成・営業状態に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式、またはこれらの併用方式などで評価します。
株式の相続税評価について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:上場株式の相続税評価パーフェクトガイド
参考:非上場株式(取引相場のない株式)の相続税評価のすべて
8-3.相続した株式を売却したときは譲渡所得税がかかることも
相続した株式を売却して利益が出た場合、その売却益は譲渡所得として「譲渡所得税」(所得税・住民税・復興特別所得税)の課税対象となります。
課税対象となる譲渡所得は「譲渡所得=売却金額−(取得費+委託手数料など)」で計算します。
取得費は、亡くなった人がその株式を取得したときの金額(購入代金や購入手数料)です。分からない場合は、売却金額の5%相当額とすることも認められています。
通常の株式の売却益に対する税率は、保有期間にかかわらず20.315%です。内訳は、所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%です。
また、相続税が課税された株式を一定の期間内に売却した場合は、特例により納めた相続税の一部を取得費に加算し、譲渡所得税の負担を抑えられることがあります。

この「取得費加算の特例」の期限は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続開始から3年10ヶ月が目安となります。
譲渡所得税の計算方法や取得費加算の特例について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
参考:相続した株の売却時には税金が発生-具体的な税額シミュレーション付き
参考:取得費加算の特例とは?要件や計算方法、併用可能な特例を税理士が解説
9.株式の相続と名義変更に関するよくある質問
最後に、株式の相続手続きについていただくことの多い疑問に回答します。
9-1.生前に株式の名義を子どもへ変更することはできますか?
生前でも、株式の名義を子どもへ変更することは可能です。ただし、株式を無償で子どもへ移す場合は原則として贈与にあたり、子どもに贈与税がかかる可能性があります。
通常、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた部分に贈与税が課されます。
そこで、「相続時精算課税制度」を利用するのも1つの方法です。これは、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫が財産を受け取る場合に選択できる制度です。
この制度では、累計2,500万円の特別控除額の範囲内であれば、複数回に分けて贈与を受けても贈与税がかかりません。贈与された財産は、贈与した人が亡くなったときに相続税の課税価格へ加算されます。
年110万円の基礎控除もあり、基礎控除の範囲内で受けた贈与分は、相続税の課税価格へ加算されません。
株式の贈与について詳しくは以下で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:【株式の贈与】評価方法や贈与税の計算、手続きを税理士が解説
9-2.名義変更が終わるまでに支払われた配当金は誰のものになりますか?
配当金は、基準日の時点で株主名簿に記載されている株主へ支払われます。基準日までに名義変更が終わっていない場合、配当金の案内は亡くなった人あてに届きます。
相続開始後に生じた配当金を受け取る権利は金銭債権にあたり、遺産分割を経なくても各相続人が相続分に応じて取得するのが原則です。
ただし、相続人全員が合意した場合は、配当金を遺産分割の対象に含め、株式を取得する相続人が受け取ると定めることもできます。
配当金を実際に受け取るには、証券会社や発行会社、株主名簿管理人である信託銀行などで相続手続きを行う必要があります。
9-3.単元未満株や端株も名義変更が必要ですか?
単元未満株式も相続財産に含まれるため、単元株と同じく名義変更が必要です。
なお、かつての端株の制度は、会社法が施行された平成18年(2006年)5月1日に廃止され、現在は単元未満株式に統合されています。
9-4.名義変更の手続きは専門家に任せられますか?
株式の名義変更を含む相続手続きは、司法書士・行政書士・弁護士へ依頼することも可能です。
亡くなった人の証券口座がどこにあるか分からない場合や、非上場株式が遺産に含まれる場合、相続人の人数が多く戸籍の収集や手続きに時間がかかる場合は、専門家に依頼するのもよいでしょう。
税理士に株式の名義変更を依頼するのも1つの方法です。税理士であれば株式の相続税評価や相続税申告手続きもまとめて依頼できるため、相続に関する手続きをよりスムーズに終えることが可能です。
10.株式の相続手続きと相続税は相続税専門の税理士に相談を
株式の名義変更は、上場と非上場で申請先や手続き方法が異なります。また、必要書類は多岐にわたり、株式の取得の仕方や遺言書の有無、手続き先などで変わるため、事前によく確認することが大切です。
株式の名義変更に期限はないものの、相続税の申告・納付は相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内に行わなければなりません。スムーズに手続きを進めるためにも、株式を相続したときは相続税に精通した税理士に相談することをおすすめします。
税理士法人チェスターは、相続税申告を専門とする税理士法人であり、令和7年度(2025年度)の申告実績は3,076件にのぼります。取得する人の立場や会社の規模によって評価方式が分かれる非上場株式の評価についても、数多く対応してきました。
グループ内には司法書士・弁護士・行政書士が在籍しており、遺産分割協議書の作成や証券会社・発行会社への名義変更の請求も、あわせてご依頼いただけます。株式の相続や名義変更でお困りの方は、税理士法人チェスターへお問い合わせください。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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