遺言書で預金を相続させる書き方|解約・払戻し手続き

預金を誰に相続させるかを遺言書で指定しておくと、相続発生後の手続きをスムーズに進めやすくなります。ただし、預金口座の特定方法や財産目録の使い方、遺言執行者の指定、遺留分への配慮など、注意すべき点もあります。
この記事では、遺言書で預金の承継先を指定する書き方や例文、作成時の注意点などをわかりやすく解説します。
この記事の目次 [表示]
1.遺言書で預金を相続させるための書き方・例文
遺言書で預金を確実に相続させるためには、正確な書き方をするのが大切です。無効にならないための遺言書の書き方について、例文を含めて解説します。
1-1.銀行名・支店名・口座種別・口座番号を正確に書く
遺言書で預金を特定の相続人に相続させたいなら、口座を特定できるように相続させたい財産を正確に書くことが大切です。銀行名、支店名、口座の種別(普通預金か定期預金か)、口座番号を正確に記載しましょう。
ゆうちょ銀行の場合は支店名がないため「ゆうちょ銀行 通常貯金 記号○○○○○ 番号××××××××」と、記号と番号を正確に書きます。
もし、保有している預金をすべてひとりの相続人に相続させたいと考えていた場合でも、口座の情報は遺言書に書いたほうがよいでしょう。「保有するすべての預金を■■へ相続させる」のように記載すると、相続人が預金口座を洗い出す手間がかかるので避けたほうが無難です。
1-2.複数口座や定期預金がある場合も口座ごとに漏れなく指定する
同じ銀行に複数の口座を持っている場合は、どちらの口座を相続させたいのか特定できるように口座ごとに漏れなく情報を書く必要があります。たとえば、同一銀行内に普通預金と定期預金の両方の口座がある場合、支店違いで複数の口座がある場合などは注意しましょう。
1-3.預金残高は変動するため金額の書き方に注意する
預金残高は変動するため、具体的な金額は書かないようにします。「○○銀行 △△支店 普通口座XXXXXXX の預金を長男○○・長女○○に半分ずつ相続させる」などと、相続させる金額は書かず割合で示すようにしましょう。
具体的な金額を書いてしまうと、書かれた金額から外れた金額に関しては遺言の効力が及ばないことがあります。
1-4.書き忘れた口座がある場合に備えて包括的な文言も入れる
記載漏れの口座がある場合、誰が相続するかを決めるために遺産分割協議が必要になります。このケースでは、遺産分割協議を省略でき相続の手続きがスムーズになるという、遺言書を作成するメリットが少なくなってしまいます。
これを防ぐために「遺言書に記載していない預金は■■に相続させる」などと、書き忘れた口座が見つかったときのために書いておくことをおすすめします。万が一記載漏れの口座が見つかったときも、遺産分割協議を不要にできるからです。
また、銀行に預けていない現金(いわゆるタンス預金)も相続税申告や遺産分割の対象となります。相続トラブルの原因にもなるため、タンス預金はなるべく避けて現金は銀行に預けたほうが安心です。
タンス預金のリスクについては「タンス預金はバレる!ペナルティと相続税対策にならない理由を解説」でご確認ください。
1-5.【そのまま使える例文】自筆証書遺言で預金を指定する書き方
遺言書で預金の承継先を指定する場合、遺言書本文に口座情報をそのまま記載する方法と、別紙の財産目録にまとめる方法があります。預金口座が少ない場合は本文に直接記載してもよいですが、預金口座が複数ある場合や、不動産・有価証券などほかの財産もあわせて整理したい場合は、財産目録を作成するとわかりやすくなります。

▲遺言書本文ひな形

▲財産目録ひな形
また、自筆証書遺言では遺言書本文はすべて遺言者の自筆で書く必要がありますが、財産目録はパソコンで作成したり通帳のコピーなどを添付したりすることが可能です。手書きする負担を軽減したい場合や、預金口座が複数あるなど財産情報が細かい場合は、財産目録を作成するとよいでしょう。
財産目録を添付する場合は各ページに署名・押印が必要となります。両面に記載がある場合は、両面に署名・押印しなければなりません。
以下では、自筆証書遺言で預金を指定する場合の例文を紹介します。実際に遺言書を作成する際は、財産の内容や家族関係に応じて適切な書き方が異なるため、不安がある場合は専門家に確認しましょう。
1-5-1.遺言書本文で預金を指定する書き方
財産目録を添付せず、そのまま遺言書本文で預金を指定する場合の例文は以下のとおりです。
第1条 遺言者は、遺言者名義の下記預金を、長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
金融機関名 〇〇銀行
支店名 〇〇支店
預金種別 普通預金
口座番号 1234567
以上
令和〇年〇月〇日
遺言者 〇〇〇〇 印
1-5-2.財産目録を添付して預金を指定する書き方
財産目録に情報をまとめる場合、遺言書本文と財産目録の書き方は以下のとおりです。
【遺言書】
第1条 遺言者は、別紙財産目録1記載の預金を、長女〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
第2条 遺言者は、別紙財産目録2および別紙財産目録3記載の預金を、長男〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
令和〇年〇月〇日
遺言者 〇〇〇〇 印
【財産目録】
別紙財産目録
1 預金
金融機関名 〇〇銀行
支店名 〇〇支店
預金種別 普通預金
口座番号 1234567
2 預金
金融機関名 △△信用金庫
支店名 △△支店
預金種別 定期預金
口座番号 7654321
3 預金
金融機関名 □□銀行
支店名 □□支店
預金種別 普通預金
口座番号 9876543
令和〇年〇月〇日
遺言者 〇〇〇〇 印
1-6.遺言書作成時に遺言執行者を指定すると解約・払戻しを進めやすくなる
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を法的に執行する人です。相続した遺産の名義変更や相続登記、相続人間の調整などを担当します。
遺言書作成時に遺言者が遺言執行者を指定し、申立てをおこなうのが一般的です。遺言執行者になるための資格などはなく、破産者でない成年であれば親族や友人など誰でも指定することができます。
2.遺言書の種類によって相続の手間は変わる
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。作成する遺言書の種類によって預金の払戻し手続きは変わるため、家族に残す遺言書をどの種類にすべきかを考えることも重要です。
2-1.「公正証書遺言」や法務局保管の「自筆証書遺言」は検認不要で手続きがスムーズ
公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言は、遺言書の検認をせずに預金の払戻し手続きが可能です。検認とは遺言書に偽造や変造がないことを確認する手続きで、家庭裁判所でおこないます。検認が不要だと相続開始から払戻しまでの期間が短くて済む場合が多く、残された家族がスムーズに手続きができるというメリットがあります。
ただし、遺言書に書かれている内容が不明確な場合には、確認に時間がかかることもあります。
公正証書遺言は法的に無効になる可能性が低く、遺言者の意思を実現しやすい遺言書です。作成方法や費用については「公正証書遺言とは?法的効力・作成方法・費用・必要書類を解説」をご確認ください。
2-2.自宅などで保管されていた「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は検認が必要
自筆証書遺言は、自分ひとりで遺言書を作成できるため原則的には費用もかけずに気軽に残せます。秘密証書遺言も他者に内容を知らせることなく作成でき、存在のみを公証役場で認めてもらう遺言書です。
秘密証書遺言については「秘密証書遺言の作成方法・保管場所は?メリット・デメリットも解説」で詳しく解説しています。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言は家庭裁判所による検認が必要です。遺言書を発見したら開封せずに家庭裁判所に申立てをして、検認手続きをしなければなりません。検認は通常数週間~1カ月程度かかりますが、裁判所の混雑状況によってはもっと時間が必要になることもあります。また、銀行での解約や払戻しの手続きには検認が完了したあとに受領する「検認済み証明書」を求められるのが一般的です。
遺言書の検認の流れについては「遺言書の検認とは?手続きの流れや必要書類・費用・期間を税理士が解説」をご確認ください。
3.遺言書で預金を指定するメリットと注意点
遺言書で預金の承継先を指定しておくと、相続発生後に誰が預金を取得するのかが明確になり、手続きを進めやすくなるというメリットがあります。一方で、書き方が不十分だったり、相続人への配慮が欠けていたりすると、かえってトラブルにつながる可能性もあります。
ここでは、遺言書で預金を指定するメリットと、作成時に注意したいポイントを解説します。
3-1.遺言書で指定すれば遺産分割協議を省略できる場合がある
遺言書で預金の承継先を指定しておくと、相続発生後に遺産分割協議を省略できる場合があります。遺産分割協議とは、遺言書がない場合などに相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。
遺産分割協議を成立させるには相続人全員の合意が必要ですが、相続人のなかに連絡が取れない人や認知症の人がいる場合、話し合いがスムーズに進まないことがあります。
一方、遺言書で預金の承継先が明確に指定されていれば、原則として遺言書の内容に沿って手続きを進められます。相続人全員で協議する負担を減らし、預金の相続手続きを進めやすくできる点は、遺言書を作成する大きなメリットです。
ただし、遺言書の内容があいまいで預金を特定できない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合などは、遺産分割協議が必要になることもあります。預金を指定する際は、金融機関名や支店名、預金種別、口座番号などを記載し、どの預金を誰に承継させるのかを明確にしておきましょう。
相続人のなかに認知症の方がいる場合は、通常よりも遺産分割の手続きが難しくなることがあります。詳しくは「【相続と認知症】認知症の相続人がいる場合の遺産分割・相続税申告」をご覧ください。
3-2.遺言書で指定できるのは遺言者の財産にあたる預金
遺言書で承継先を指定できるのは、原則として遺言者自身の財産にあたる預金です。遺言者以外の人が所有する預金について、遺言書で承継先を指定することはできません。
ただし、口座名義が配偶者や子どもであっても、実際には遺言者が資金を出し、管理していた場合は「名義預金」として遺言者の相続財産に含まれることがあります。たとえば、家族名義の口座に遺言者の収入や資金を入れ、通帳や印鑑も遺言者が管理していたようなケースです。

名義預金にあたるかどうかは、資金の出どころや管理状況などを踏まえて判断されます。金融機関での払い戻し手続きが複雑になったり、相続人間でトラブルになったりする可能性もあるため、遺言書を作成する前に、どの預金が誰の財産にあたるのかを整理しておくことが大切です。
名義預金について詳しくは「名義預金とは│条件や相続税が課税されない方法、時効も解説」をご確認ください。
3-3.遺留分や口座情報の変更に注意する
遺言書による預金の指定で気を付けたいのは、遺留分と口座情報の変更です。
遺留分とは、一定の相続人に認められている最低限度の遺産の取り分のことです。たとえば、「すべての財産を○○に相続させる」といった内容の遺言書を作成しても、一定の相続人が遺留分を主張すれば遺言書よりも優先されます。
このため、相続トラブルを避けたい場合は、遺言書を作成する時点で遺留分を考慮する必要があります。
遺留分の仕組みや取得できる割合については「遺留分とは?仕組みから計算・請求方法までわかりやすく解説」をご参照ください。
また、遺言書作成後に口座を解約・変更すると、遺言書に記載した口座情報と実際の財産が合わなくなることがあります。口座の解約や変更をした場合は、遺言書を加筆・修正する必要があります。
自筆証書遺言の作成方法や正しい加筆・修正の方法については「自筆証書遺言はパソコンで作成できる!作成方法および財産目録のひな形付き」をご確認ください。
3-4.預金と不動産を分けて相続させる場合は納税資金に注意する
「預金を長女に、不動産を長男に」のように、預金と不動産を別の相続人に相続させる場合には、相続税の納税資金に配慮が必要です。
相続税の申告・納付の期限は、相続を知った日の翌日から10カ月以内です。相続税は現金での一括払いが原則となっているため、不動産や事業用資産など、すぐに現金化しにくい財産を多く相続した人は、納税資金を準備できない可能性があります。期限内に納付できない場合は延滞税などが課されることもあるため、注意が必要です。
遺言書で預金の承継先を指定する際は、各相続人が相続税を納めるための資金を確保できるかどうかも考慮しておきましょう。
相続税の納税資金を準備する方法については「【相続税の納税資金対策】納税資金準備の方法をプロが解説」を参考にしてください。
4.「相続させる」と「遺贈する」で預金の扱いはどう変わる?
遺言書で預金の承継先を指定するとき「相続させる」と「遺贈する」のように使う言葉を使い分けることがあります。言葉の違いと預金の扱いについて解説します。

4-1.相続人に預金を残すなら「相続させる」が基本
相続とは「人が死亡した場合に、その者と一定の親族関係にある者が財産上の権利・義務を承継すること」を指す言葉です。
つまり、相続人に財産を承継することが「相続」なので、相続人に預金を残したいなら「○○に相続させる」と遺言書に書きます。
4-2.相続人以外に預金を渡すなら「遺贈する」と書く
遺贈とは「遺言によって、財産を他人に贈与すること」です。この場合の他人とは、相続人以外の親族、内縁の配偶者、知人、団体などを指します。これらの人や団体は法定相続人ではないため、遺言書がなければ原則として預金を受け取ることはできません。
したがって、相続人以外に預金を渡したいなら「○○に遺贈する」と遺言書に書きます。
遺贈は相続とは異なり、注意しなければならない点があります。詳しくは「遺贈とは?相続との違いや注意点、包括遺贈と特定遺贈について解説」でご確認ください。
4-3.受遺者がいる場合は遺言執行者の指定が重要になる
遺贈によって相続人以外の受遺者が預金を受け取る場合、相続人とのやり取りや金融機関手続きが複雑になりやすいため、遺言執行者を指定しておくと安心です。遺言執行者がいることで、預金の解約・払戻しなど遺言内容を実現する手続きを進めやすくなり、手続き停滞や相続人とのトラブルを防ぎやすくなります。
遺言執行者の選び方や対応すべき業務については「遺言執行者とは│資格は必要?権限や義務・報酬まで解説」をご確認ください。
5.遺言書で預金を指定された人が確認したい4つのポイント
故人の遺言書が見つかり、自身が預金を相続した、もしくは遺贈を受けたときにやるべきことを解説します。預金の承継先に指定されたとき、まず確認すべき4つのポイントをご紹介します。
5-1.遺言書の種類と検認の要否を確認する
故人が残した遺言書の種類を特定し、検認が必要かどうかを確認しましょう。検認が必要な遺言書だった場合、開封せずに家庭裁判所に持参して、検認申立ての手続きをします。
詳しくは「2.遺言書の種類によって相続の手間は変わる」をご確認ください。
5-2.遺言執行者がいるか確認する
遺言執行者がいるかどうかも確認すべきポイントです。遺言執行者がいれば、銀行での相続手続きはすべて任せることができます。とくに遺贈を受けたときは受遺者は法定相続人ではないため、遺言執行者がいなければ、相続の手続きが難しくなります。
詳しくは「4-3.受遺者がいる場合は遺言執行者の指定が重要になる」をご確認ください。
5-3.預金の解約・払戻し手続きに必要な書類や流れを金融機関に確認する
自分で預金の相続手続きをおこなう場合は、金融機関に問い合わせて必要書類を確認しましょう。相続・遺贈の状況や金融機関によって必要な書類は異なるので、まずは相続の手続きをしたい旨を銀行の担当者に伝えます。
預貯金の相続の流れは「【預貯金の相続に必要な手続き】必要書類や期限、リスクを解説」でご確認ください。
5-4.葬儀代など急ぎの支払いに使いたい場合は仮払い制度も確認する
遺言書の種類や書類の準備状況によって異なりますが、相続から預金払戻しまで時間がかかることがあります。葬儀代や未払い医療費などに相続した預金を使いたい場合に、払戻し手続きが支払い期限に間に合わない可能性があります。
こういったケースで検討したいのが「相続預金の払戻し制度」です。故人の口座は金融機関が死亡の事実を把握すると入出金が停止されますが、一定の要件を満たせば、遺産分割前でも相続預金の一部について払戻しを受けられることがあります。
家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で手続きする場合、各相続人は単独で払戻しを請求できます。払戻しできる金額は口座ごと、定期預金の場合は明細ごとに「相続開始時の預金額×法定相続分×3分の1」で計算します。ただし、同一金融機関からの払戻しは、複数の支店に預金がある場合も含めて150万円が上限です。
急ぎの支払いに相続預金を使いたい場合は、必要書類や利用できる金額を金融機関に確認しておきましょう。
詳しくは「故人の口座から預金は引き出せる?凍結後の手続き・仮払い制度を解説」をご確認ください。
6.遺言書で預金を相続させるなら書き方と払戻し手続きを確認しよう
遺言書で預金の承継先を指定しておくと、相続人同士で遺産分割協議をする負担を減らし、預金の払戻し手続きを進めやすくなる場合があります。ただし、金融機関名や支店名、預金種別、口座番号などが不明確だと、手続きに時間がかかったり、相続人間のトラブルにつながったりする可能性があります。
また、自筆証書遺言を作成する場合は方式の不備に注意が必要です。財産目録を添付する場合の署名・押印、遺言執行者の指定、遺留分や納税資金への配慮も確認しておきましょう。預金を確実に希望する人へ承継させたい場合は、専門家に相談しながら遺言書を作成することをおすすめします。
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