相続でもめるケースとは?起こりやすいトラブルを紹介

相続の発生時には、どんな家庭でももめごとに発展する可能性があります。具体的にどのようなトラブルが考えられるのでしょうか?もめやすいケースを具体的に見てみましょう。相続問題に関する基本的な知識や、トラブルが発生する原因も解説します。
この記事の目次
1.「争族(争続)」とは

被相続人が残した遺産を相続人で分けるとき、どのような割合で分けるかまとまらないことがあります。この状態が『争族(争続)』です。まるでドラマのような話ですが、実はどの家庭でも起きる可能性のある問題なのです。
1-1.主に遺産の分け方を相続人間でもめること
遺産の分け方でもめるのが争族(争続)です。これまで仲良くすごしていた親族同士でも、遺産相続をきっかけに険悪な仲になるケースがあります。
また被相続人に子どもがいなければ、顔と名前くらいしか知らない親族と話し合わなければいけないケースもあります。日頃関わることのなかった親族との間に、遺産分割が原因で禍根が残るかもしれません。
1-2.どの家族にも起きる可能性がある
「相続でもめるのはお金持ちだから自分には関係ない」と思っているかもしれません。しかし最高裁判所家庭局によると、遺産分割事件で扱う財産額は、1,000万円以下が『29.1%』、5,000万円以下が『44.0%』で合計73.1%です。
この数字を見ると、相続問題で裁判に発展しているケースの7割以上が、ごく普通の家庭だと分かります。相続が発生すると、どの家庭にも起こり得る問題だと認識しましょう。
1-3.遺産分割において知っておきたい法定相続分
被相続人が遺言書を残していれば、基本的には遺言書の内容に沿った遺産分割を実施します。しかし中には遺言書を残していない被相続人もいるでしょう。そのようなケースでは、原則として以下の『法定相続分』で分割します。
相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者・子ども | 配偶者1/2・子ども1/2 |
配偶者・父母や祖父母 | 配偶者2/3・父母や祖父母1/3 |
配偶者・兄弟姉妹 | 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4 |
子ども・父母や祖父母・兄弟姉妹が複数人いるときは、法定相続分を等分します。例えば4,000万円の遺産を配偶者と子ども2人で分割する場合には、配偶者2,000万円・子どもは1人1,000万円ずつです。
2.争族が起きる原因

争族が起こる原因はさまざまです。中でも遺言書がないのは、代表的な争族の原因といえます。ほかにも相続人同士がもともと不仲だった場合や、被相続人と生前贈与や相続の口約束をしていたといったケースももめやすいでしょう。
2-1.遺言書がない
被相続人が生きて判断能力がある状態のうちに作成できるのが遺言書です。被相続人が自らの資産の処分方法について意思表示する書類のため、遺言書があれば基本的にその内容に従います。
そのため遺言書があれば、相続人間で余計な争いが起こりにくいでしょう。財産の金額にかかわらず、遺言書があるとスムーズな遺産分割につながりやすくなります。
ただし遺言書があるからといって、必ず従わなければいけないわけではありません。遺産分割協議を実施し相続人全員の合意があれば、法定相続分やその他の分割方法も可能です。
2-1-1.遺言書があってももめることはある
遺言書があっても相続トラブルが発生するケースはあります。例えば、法定相続人に認められている最低限の相続分である『遺留分』が侵害されていると訴える相続人が現れるかもしれません。
被相続人が十分に注意して作成していたとしても、遺留分を算定するときに用いる遺産額が違うのではないか?と異議を唱えられてしまう可能性もあります。
また遺言書の作成時点における、被相続人の意思能力を問われる可能性もあります。十分な意思能力がなければ遺言書は無効だからです。
認知症になると遺言書は作成できない?公正証書遺言でも無効になる?
2-2.相続人同士の関係によるもの
相続が発生すると、まずは相続人調査を実施します。被相続人の誕生から死亡までの戸籍謄本を集め、相続人を特定する調査です。この過程で被相続人の離婚歴や不倫が発覚するケースは少なくありません。
すると相続人の中に、前妻の子どもや愛人の子どもが含まれます。被相続人と血のつながりがある相手だとしても、初めて会う相手であればほぼ他人です。
立場の違いから意見が合わず、話し合いがまとまらない可能性があります。また付き合いのある親族だとしても、不仲の相手もいるでしょう。そのような関係もトラブルにつながりやすいはずです。
相続人同士の関係性によって、遺産分割が滞る恐れがあります。
2-3.口約束があった
『口約束』を理由に、遺産分割の割合でもめるケースもあります。生前贈与の口約束をしていたのに、実行前に被相続人が亡くなることもあるでしょう。このような場合には、生前贈与分の請求はできません。
生前贈与自体は口約束でも成立しますが、成立した契約を他の相続人に証明できないからです。権利を主張できるのは、契約書を作成している場合に限られます。
口頭で遺言を聞いており、それに従って分割してほしいと主張する相続人もいるかもしれません。しかし遺言は正しい形式にのっとって作成されていなければ無効です。そのため、口約束による遺言は成立しません。
3.均等に分けにくい「不動産」がある場合

全ての遺産が現金や預貯金であれば、相続人同士で簡単に分けられます。しかし実際の遺産には『不動産』といった分けにくい財産が含まれるものです。遺産分割の割合には合意できても、不動産をどのように分けるかでもめる可能性もあります。
3-1.不動産の共有は避けるのが基本
例えば残された財産が実家のみで均等に分けられないからといって、『共有』にするのは避けましょう。例えば3人の相続人で実家を共有すると、実家の売却や貸し出しをする際、相続人1人の意思で自由にできなくなってしまいます。
そのため相続した財産を有効活用できず、ただ税金や管理にかかる費用だけ払う事態になりかねません。誰がどのような割合でこの費用を支払うのかもめる可能性も考えられます。
さらに年月がたてば、実家を共有していた3人はいずれ死亡します。すると共有している実家の相続が発生し、相続人の子どもたちなどへそれぞれ引き継がれます。
3人に2人ずつ子どもがいれば、いとこ6人で祖父母の家を共有する状態です。これでは権利関係が複雑になり、ますます活用しにくくなってしまいます。
3-2.不動産の価値、分割方法に納得できない場合
同じ広さの不動産でも、価値は立地によって異なります。相続人の一方が都心の土地を、もう一方が地方の土地を引き継いだ場合、同じ広さでも価値はまったく違うでしょう。
都心の土地が1億円、地方の土地が1,000万円であれば、同じ広さの土地を引き継いでも、金額には9,000万円もの差が生じます。このままでは地方の土地を引き継いだ相続人は納得できないはずです。
不動産を公平に分けようとするあまり、複数存在する不動産の価額について意見が分かれ、争族に発展する可能性もあります。
4.遺産を均等に分けられない場合

被相続人に対し介護で貢献した相続人や、生前贈与を受けた相続人がいる場合、遺産を均等に分けられません。考慮しなければいけない金額が出てくれば、いくらが妥当なのかという点でもめるケースが出てくるはずです。
4-1.介護をしてきた相続人がいる
生前の被相続人に介護が必要な場合、同居し介護に専念していた相続人は、他の相続人に対し『寄与分』を請求できます。介護を担っていた相続人はより多くの寄与分を受け取りたいと考えるでしょう。
一方、他の相続人の中には、親と同居することで生活にかかる費用を節約できているはず、近くにいる人が介護をするのは当たり前、などと考える人もいます。
こうして意見がぶつかり合い、なかなか合意に至らないでしょう。
寄与分についての事例は以下の記事も参考にしてください。
4-2.生前贈与を受けた相続人がいる
被相続人から生前贈与を受けていると、その財産は『特別受益』として扱われます。特別受益として認められると、生前贈与された財産を相続財産と合算した上で、遺産を分割しなければいけません。
そのため、中には「生前贈与はなかった」と主張する相続人もいるでしょう。この場合、生前贈与があったと主張する相続人は、有効な証拠を提示する必要があります。
裁判所で遺産分割審判となったとしても、証拠がなければ特別受益が認められることはまずないでしょう。
5.相続人の1人が分け方を勝手に決めた場合

特定の相続人が勝手に遺産の分け方を決めるケースもあります。かつては『長男』だからという理由で認められた財産の独占も、現在の法律では認められません。遺産を自分の思い通りにしようとする相続人には、どのように対処すればよいのでしょうか?
5-1.財産を独占したい人がいる
戦前の法律では、長男が全ての財産を引き継げました。この法律は撤廃され、現在は相続人が平等に遺産を分割します。しかし古い考え方のまま、全ての財産を長男が1人で相続すべきだと主張する人がいるのも事実です。
地域によっても遺産の独占の起こりやすさは異なります。古くからのやり方を重視する地域ほど、長男が財産を独占しようとする傾向が高いでしょう。
5-2.偏った遺言書を書かせた疑いがある
遺言書は、被相続人が自分の意思で作成したものでなければいけません。そのため相続人が誘導して書かせたものは無効です。もちろん書き換えや偽造された遺言書も同様です。
例えば特定の相続人が自分に有利な内容の遺言書になるよう、被相続人が書いた内容を書き換えていたら、その分割の仕方は認められません。遺言書の変造が行われたと裁判で証明すれば、遺言は無効と判断されます。
5-3.遺産隠しの可能性がある
財産の管理を任されている相続人が『資産隠し』をしているケースでは、他の相続人が隠されている相続財産を探す必要があります。特に現金や預貯金は隠されると見つけるのが難しいため、注意深く探さなければいけません。
預貯金が少ないと考えるなら、金融機関に対して『口座取引履歴の開示請求』を実施しましょう。被相続人が亡くなる直前に多額の現金を引き出した記録があれば、どこかに隠されている可能性が濃厚です。
また被相続人から財産の管理を任されていた相続人が、相続財産を使い込んでしまうことも起こり得ます。この場合は不当利得や不法行為を理由に、相続財産の回復の請求が可能です。
財産調査については以下の記事も参考にしてください。
5-4.独占があったときは遺留分侵害額の請求
特定の相続人が遺産を独占すると、他の相続人は最低限受け取れるはずの遺留分さえ受け取れません。このようなときに実施するのが『遺留分侵害額の請求』です。
遺産を独占している相続人に対して行い、侵害額相当の支払いを求めます。まずは直接遺産を独占している相続人と話し合いましょう。
話し合っても合意できない場合や、そもそも話し合いができない場合は、家庭裁判所の調停手続きの利用も可能です。
遺留分侵害額請求については以下記事で詳しく解説しています。
遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?計算方法・時効・手続きの流れ
6.相続でもめた場合は弁護士に相談

相続問題はどの家庭でも起こり得ます。当事者だけではつい感情的になってしまい、冷静な話し合いができないものです。スムーズな遺産分割を目指すなら、弁護士に相談するとよいでしょう。
6-1.弁護士は交渉代理などができる
弁護士に依頼すれば『交渉代理』をしてもらえます。相続人同士でじかに話し合うのではなく、弁護士を通して考えを伝えるイメージです。第三者である弁護士が間に入ることで、お互い冷静に話し合いを進められます。
また「裁判実務ではその理屈はまず通りません」というように弁護士から説明されると、相続人同士の話し合いの場で納得してもらえる可能性が高まります。
話し合いができないほど険悪な状況であれば、遺産分割調停を申し立て裁判所での手続きに移るのも有効な方法です。できるだけ冷静に話し合うためにも、弁護士に依頼するとよいでしょう。
6-2.報酬の目安
交渉代理を弁護士に依頼すると、さまざまな報酬がかかります。『相談料』は無料の弁護士事務所もありますが、必要な場合は30分5,000円が目安です。
『着手金』として20~30万円も必要です。遺産総額や内容の複雑さによって金額は変動します。出張が発生したなら『日当』として1日につき5万円必要です。
加えて『報酬金』も見ていきましょう。下記のように経済的利益に料率をかけて計算します。ただしこの料率は一例です。弁護士事務所ごとに設定が異なるので確認しましょう。
経済的利益 | 報酬金 |
---|---|
300万円以下 | 16% |
300万円超3,000万円以下 | 10%+18万円 |
3,000万円超3億円以下 | 6%+138万円 |
3億円超 | 4%+738万円 |
7.争族を避ける方法を考えよう

相続人同士の話し合いがうまくいかず、遺産の分割方法が決まらない状態を争族(争続)といいます。さまざまな原因が考えられますが、代表的なのは遺言書がないことや、相続人同士の関係性、口約束などです。
当事者のみでは冷静な話し合いができないなら、弁護士に依頼しましょう。交渉代理として間に入ってもらうことで、スムーズな話し合いができるかもしれません。
弁護士への相談を検討される場合は相続専門の弁護士事務所を選ぶことをおすすめします。
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また遺産分割の手続きや名義変更が終わったら、相続税の申告も行いましょう。疑問点があるなら、実績豊富な『税理士法人チェスター』へ相談するのがおすすめです。
『争族トラブル』については以下もご覧ください。
相続が争族に。遺産相続のトラブル原因を知ることで争族を回避しよう! – 相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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相続手続きはとにかくやることが多く、自分の足で動くことも多いものです。
例えば、必要な書類収集・口座解約は行政書士、相続税申告は税理士、相続登記は司法書士、争族関係は法律事務所、不動産売却は不動産業へ…。
相続に関する様々な手続きにおいてプロの力を必要とされる方はそれぞれの専門家を探してこれだけの対応をしなければなりません。
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