空き家の相続税はいくら?計算方法と特例を活用した節税対策を解説
亡くなった人の自宅が空き家になった場合は、空き家を相続することになります。今は親が健在でも、将来は遠方の実家が空き家になるかもしれないとお考えの方も多いでしょう。
空き家の相続では、相続手続きのほか相続税がどれぐらいかかるかといったことも心配の種になります。
この記事では、空き家の相続税に関する次のような事項について解説します。
- 空き家を相続した場合に相続税はかかるのか
- 相続税がかかる場合には税額はいくらになるのか
- 空き家の相続で何か節税対策はできるか
このほか、空き家を放置することのデメリットや、空き家の活用・処分方法などもご紹介します。
空き家の相続税でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.相続した空き家、実は相続税がかからないケースも
人が住んでいない空き家でも、相続した財産には相続税がかかります。ただし、相続税には基礎控除があり、相続税がかからないケースもあります。
はじめに、相続税の基礎控除について解説します。相続した空き家を含めて、遺産がどれくらいであれば相続税がかかるのかを確認しましょう。
1-1.相続税がかかるか判断する基礎控除の計算方法
相続税の基礎控除とは、相続税を計算するときに相続財産から控除できる金額のことです。
基礎控除の金額は相続人の数によって変わり、次の計算式で求められます。
この算式の「法定相続人の人数」の数え方には、次のような決まりがあります。
- 相続放棄をした人がいる場合は、その人が相続放棄をしていないことにして法定相続人を数え直します。
- 養子の数に制限があります。亡くなった人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで含めることができます。
法定相続人の数に応じた基礎控除額は、次の表のとおりです。

相続税の基礎控除に関して詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。
参考:相続税の基礎控除とは│いくらまで無税?免除の目安も解説
1-2.相続財産が基礎控除以下であれば相続税はかからない
相続した空き家のほか、その他の不動産、預貯金や株式等をすべて含めた遺産の総額が基礎控除の金額以下であれば、相続税はかかりません。基礎控除の金額を超える場合は、超える部分に相続税がかかります。
たとえば、空き家の価値が低く他に目立った遺産もなければ、相続税はかからないことが多いでしょう。一方、空き家の価値が低くても、他に価値が高い不動産がある場合や株式や預貯金が多いような場合では、相続税がかかる可能性は高いでしょう。
2.【重要】空き家の相続税評価額の計算方法
相続税がかかるかどうかを判断するためには、空き家をはじめとした遺産の価額を評価する必要があります。相続税の税額計算のための価額を「相続税評価額」といい、財産の種類ごとに評価の方法が定められています。
空き家については、土地と建物に分けて評価します。空き家だからといって特別な計算をするわけではなく、人が住んでいる家と同様の方法で評価します。
2-1.土地は「路線価方式」か「倍率方式」で評価
土地の相続税評価額は、その土地に接する道路に路線価があるかどうかで評価の方法が異なります。

路線価がある場合は、「路線価×面積」で計算します。
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できますが、土地の形状や接する道路の数などにより補正率をかける必要があります。詳しくは下記の記事で解説しているので参考にしてください。
参考:【相続税路線価とは】調べ方・計算方法をわかりやすく解説!
路線価がない場合は、「固定資産税評価額×倍率」で計算します。
倍率は地域ごとに指定されていて、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。土地の形状などによる補正は必要ありません。倍率による評価については、下記の記事も参考にしてください。
参考:倍率地域の土地の相続税評価方法│計算式・減額方法も解説
2-2.建物は「固定資産税評価額」と同額
建物の相続税評価額は、「固定資産税評価額」と同額です。固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書などで確認できます。

2-3.相続税の計算方法
空き家の相続税評価額がわかれば、その他の財産の評価額も合算して相続税を計算します。その他の財産の評価方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
相続税は次の方法で計算します。
- 遺産の総額から基礎控除額を引いて、「課税遺産総額」を求めます。
- 「課税遺産総額」を法定相続人が法定相続分で分けたと仮定して、「法定相続分に応ずる取得金額」を求めます。
- 各相続人の「法定相続分に応ずる取得金額」を下記の速算表に当てはめて、相続税額を求めます。
(各相続人の相続税額=法定相続分に応ずる取得金額×税率-控除額) - 相続人全員の相続税額を合計して、実際に遺産を相続した割合で割り振ります。必要に応じて加算や控除を適用します。
相続税の速算表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | ‐ |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」
なお、配偶者は、相続した財産の価額が1億6,000万円までまたは法定相続分までであれば、相続税はかかりません(配偶者の税額軽減)。
相続税の計算方法について詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。
参考:相続税の税率(割合)は10~55%【最新の税率表付】税額の計算方法も解説
3.空き家の節税対策で使える2つの特例
空き家を相続するときの節税対策としては、相続税で「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があるほか、相続した空き家を売却したときには譲渡所得税で「空き家特例」を適用できます。
条件は限られているものの、これら2つの特例は併用することもできます。詳しくは下記の記事をご覧ください。
参考:空き家特例(3,000万円特別控除)と小規模宅地等の特例は併用できる
3-1.小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、相続税の計算上、被相続人(亡くなった人)の自宅の土地や事業用地の評価額を最大80%減額できる制度です。
被相続人の自宅の土地(特定居住用宅地等)については、330㎡を上限に、評価額を80%減額することができます。
たとえば被相続人の自宅の土地(200㎡)の相続税評価額が5,000万円の場合、小規模宅地等の特例によって、その土地の相続税評価額は1,000万円になります(5,000万円-5,000万円×80%=1,000万円)。
なお、相続した空き家の土地に小規模宅地等の特例を適用する場合には、次の2点に注意が必要です。
- 被相続人が生前に住んでいた自宅ではなく、もともと空き家となっていた家屋の土地については、小規模宅地等の特例は適用できません。
- 被相続人の死亡によって空き家になった自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用できるのは、「配偶者が空き家を相続した場合」や「被相続人に配偶者や同居の親族がいないなど一定の要件を満たし、空き家を相続した人に持ち家がない場合」に限られます。
小規模宅地等の特例について詳しい解説は、下記の記事をご覧ください。
参考:【小規模宅地等の特例】相続税評価額を最大80%減額!適用要件・計算方法を解説
3-2.空き家特例(3,000万円特別控除)とは
所得税の空き家特例(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例)とは、相続した空き家を売却したときに、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる制度です。
この特例は、令和9年12月31日までに空き家を売却した場合に適用できる時限措置です。
空き家特例を適用するための要件は、主に以下のとおりです。
| 特例を適用できる人 | 被相続人が死亡して空き家になった家屋およびその敷地を、相続または遺贈により取得した人。 |
|---|---|
| 特例の対象になる空き家・敷地 | 以下の要件のすべてにあてはまる家屋およびその敷地(敷地の上にある権利も含む)。
|
| その他の適用要件 |
|
なお、令和6年1月1日以降に譲渡を行い、空き家を相続した相続人が3人以上の場合は、各相続人の控除額は2,000万円までとなります。
空き家特例の詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
参考:空き家特例(3,000万円特別控除)と小規模宅地等の特例は併用できる
4.空き家を放置する3つのリスクとデメリット
相続した空き家を放置することには、さまざまなリスクやデメリットがあります。固定資産税の負担や家の手入れなど維持管理のコストがかかり、管理が行き届かなければ近隣トラブルを引き起こす場合もあります。
ここで、空き家を放置することのリスクとデメリットを理解しておきましょう。下記の記事もあわせてご覧ください。
参考:空き家を相続する場合は早めの売却がおすすめ!手続きや税金も解説
4-1.固定資産税が最大6倍になる可能性
空き家を放置しておくと、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
固定資産税・都市計画税には「住宅用地の特例」があり、住宅が建てられている土地については、次の表のとおり価額を減額してから税額を計算します。
| 住宅用地の区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) | 価額を1/6にして税額を計算 | 価額を1/3にして税額を計算 |
| 一般住宅用地 (200㎡を超える部分) | 価額を1/3にして税額を計算 | 価額を2/3にして税額を計算 |
ただし、管理が行き届かず周辺の生活環境に悪影響を及ぼすとして市区町村から「特定空家等」に指定されると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税・都市計画税が高くなります。
4-2.維持管理のコストと手間がかかる
空き家には、維持管理のコストと手間がかかります。住んでいない家であっても、固定資産税や都市計画税は毎年納めなければなりません。定期的に室内の清掃や庭の手入れなどをする必要もあります。
空き家の維持管理は、近くの親族に頼むほか空き家管理サービスを利用することもできますが、謝礼や利用料などが負担になります。遠方の実家を相続する場合は特に注意が必要です。
4-3.近隣トラブルのリスク
相続した空き家を放置すると、害虫や害獣がすみついたり倒壊のリスクが高まったりなど、さまざまな近隣トラブルの原因となります。
空き家を放置したことで近隣住民に被害が生じるような事件・事故が起きた場合は、所有者が賠償責任を問われる可能性があります。このような近隣トラブルを避けるためにも、空き家は適切に管理しなければなりません。
5.相続した空き家の活用・処分方法4選
空き家はそのまま放置するのではなく、できるだけ早く活用または処分することをおすすめします。ここでは、相続した空き家の活用・処分方法をご紹介します。
5-1.売却して現金化する
空き家に一定の資産価値がある場合は、売却することを検討しましょう。空き家を売却すれば現金を得られるほか、空き家を管理する手間から解放されます。相続税がかかる場合には、納税資金を補うこともできます。
空き家を売却して生じた利益には譲渡所得税がかかりますが、被相続人が亡くなってから3年後の年末までに売却すれば所得税の空き家特例を適用できます(「3-2.空き家特例(3,000万円特別控除)とは」参照)。そのため、なるべく早く売却することをおすすめします。
5-2.賃貸に出して収益を得る
空き家を保有したまま、賃貸に出して収益を得ることもできます。
ただし、賃貸に出すためにはリフォームやハウスクリーニングなどの初期費用がかかることや、入居者が見つからなければ収益を得られないことには注意が必要です。
5-3.解体して更地にする
空き家に資産価値がない場合は、建物を解体して更地にすることを検討しましょう。
建物の解体には費用がかかるうえ、解体すると固定資産税が高くなってしまいます。しかし、空き家が「特定空家等」に指定されると、市区町村から行政指導を受け、従わない場合は最大50万円の過料を課されることがあります。
建物を解体して更地にすると、建物がある土地よりも買い手がつきやすい傾向があります。
また、更地にすると、土地を国に納めることもできます。「相続土地国庫帰属制度」は、相続した土地を手放して国に納める制度です。詳しくは下記の記事をご覧ください。
5-4.相続放棄を検討する
空き家の売却や賃貸、解体のいずれの方法も取ることが難しい場合には、相続人が全員相続放棄することも選択肢になります。
しかし、相続放棄をすると、預貯金をはじめとした他の財産を相続できなくなります。空き家を手放すメリットと相続放棄によって失う財産を比較したうえで判断することをおすすめします。
また、相続放棄をしても、空き家の管理責任は残る可能性があります。詳しくは下記の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
参考:空き家を相続放棄する注意点!管理義務・費用・手続きも解説
6.空き家の相続税は税理士への相談がおすすめ
空き家の相続税がいくらになるのか、事前に税額を抑える方法はないかといったことは、相続税に強い税理士にご相談ください。
相続税に強い税理士であれば、節税効果の高い特例の適用を判断できるほか、個人では何かと面倒な申告手続きを任せることもできます。
6-1.節税効果の高い特例の適用を判断できる
相続した空き家については、相続時に相続税の小規模宅地等の特例を適用できるケースがあり、相続した後に売却するのであれば、空き家特例の適用で所得税を軽減することができます。
これらの特例の適用にはさまざまな要件があり、専門知識がなければ判断は困難です。相続税に強い税理士に依頼すれば、特例を適用できるかどうかを適切に判断できます。
6-2.面倒な相続税の申告手続きを任せられる
相続税の申告では、不動産の価額を自ら評価しなければならないほか、税額の計算や申告書の記入も簡単にはできません。
誤って税額を少なく申告してしまうと、後日追徴課税が行われ税金を余分に払うことになります。反対に多く申告してしまうと、自分で気づいて更正の請求を行わない限りは払い戻してもらえません。
税理士に相談すると、相続税の申告手続きを任せられ、過不足なく相続税を納めることができます。
6-3.税理士法人チェスターにご相談ください
相続税専門の税理士法人チェスターは、相続税の申告件数が年間3,000件以上あり、業界トップクラスの実績を誇ります。グループには相続専門のさまざまな士業事務所や不動産会社があるため、相続税の申告にとどまらず相続に関するあらゆる手続きに対応することができます。
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