遺産分割協議書、自分で作成する方法とは?ひな型や文例集

遺産分割協議で合意した内容を書面化した「遺産分割協議書」は、相続の手続きの場面で利用され相続人同士のトラブル防止につながる事例もあります。
弁護士などの専門家に遺産分割協議書の作成を依頼すると費用がかかるため「自分で作成したい」という相続人は少なくありません。自分で作成することはできますが、相続のルールや作成方法をおさえておく必要があります。
本記事では遺産分割協議書の作成について、遺産分割の流れ、遺産分割協議書を自分で作成する手順、注意点を解説していきます。
遺産分割協議書のひな形や文例集もありますので、少しでもご興味のある方はぜひご覧ください。
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1.遺産分割協議書は自分で作成できる?まずは遺産分割の流れをおさえておこう
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で被相続人(亡くなった方)の遺産の相続人や分割割合・方法などを相続人全員で話し合い、合意した内容を書面化したものです。
遺産分割協議書を作成しなければならないという決まりはありませんが、預金の名義変更など相続の手続きで利用する場面は多いです。
そして遺産分割協議書を作成しないと、相続人同士で「合意した・していない」とトラブルが起こる可能性があります。
遺産分割協議書に定められたフォーマットはありませんが、相続人全員の合意に基づいて作成する必要があります。
作成日を記載する・被相続人の氏名と遺産・相続人全員が署名・捺印するなどルールをおさえることで、自分で作成することは可能です。
1-1.知っておきたい相続と遺産分割の流れ
相続は被相続人が亡くなったことで自動的に開始となります。
遺言書の有無を確認し、遺言書が自宅や貸し金庫などで見つかった場合は家庭裁判所で「検認(遺言書の変造・偽造を防止するための手続き)」をします。
遺言書が法務局または公証役場で見つかった場合は検認が不要です。
相続放棄・限定承認を選んだ方は相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申請します。
限定承認とは被相続人のプラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き継ぐことで、相続放棄は被相続人の権利・遺産を全て放棄します。
葬儀・お墓などの手配と並行し、遺産分割も進めていきます。
遺言書がある場合には、基本的に遺言書どおりに相続を実行します。
遺言書がない時には相続人全員で遺産分割協議を行い、全員が合意した際には協議が成立します。全員が合意できなかった時は調停や審判へ移行します。
協議が成立した場合、遺産分割協議書を作成し遺産を分割します。
遺産分割では法定相続人の「遺留分」を侵害しないよう気をつけましょう。遺留分は一定の法定相続人に定められた最低限の取り分です。
遺産分割協議で本人も含め相続人全員が合意している場合などでは、遺留分を意識せずに遺産分割が行われることもあります。
相続税は、被相続人の遺産総額から債務と葬式費用を差し引いた金額が基礎控除を超える場合に原則として納める義務が生じます。
「遺産に係る基礎控除額」 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数※)
相続開始の翌日から10ヶ月以内に計算・申告・納付します。
2.遺産分割協議書を自分で作成するまでの流れ
遺産分割協議は①遺言書がない、②遺言書はあるが異なる遺産分割をしたいという2つのケースで行われます。②の遺言と異なる遺産分割をする際には、以下の記事をご参照ください。
遺言と異なる遺産分割をするときの遺産分割協議書・登記・相続税はどうなるか
今回は①のケースでの遺産分割協議書作成までの流れを見ていきましょう。

2-1.法定相続人を確定する
民法で定められた「法定相続人」を調査・確定します。
法定相続人には、被相続人の配偶者や子ども(孫)・父母(祖父母)・兄弟姉妹(甥・姪)が該当する可能性があります。
遺産の取り分(法定相続分)も定められていますが、遺産分割で合意ができなかった場合のもので、必ずしも法定相続分通りに遺産分割をしなければならない訳ではありません。
被相続人に他の法定相続人が知らない親戚がいる可能性もあります。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せ、調査するケースもあります。
2-2.被相続人の遺産全てを調査・確定する
被相続人がエンディングノートを遺した際には、エンディングノートを参考に遺産を調査しましょう。
エンディングノートが無い場合には、遺品を整理し預金通帳・固定資産税課税明細書・貸し金庫・被相続人宛ての郵便物やダイレクトメール・年賀状などを元に金融機関や不動産会社・生命保険会社などとの取引の有無を確認します。
ネット銀行の預貯金やネット証券会社の有価証券、暗号資産などのデジタル遺産も相続財産に含まれます。
デジタル遺産は見落としやすいため、被相続人のパソコンやスマートフォンを調査しておきましょう。
預貯金・有価証券を始め、不動産・自動車・貴金属・骨とう品なども相続財産に含まれます。
ローン・借金がある場合には金融機関・消費者金融など借り入れ先に連絡を取り、債務額を確定します。
債務額が分からない時には、取得した遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き継ぐ「限定承認」を検討しましょう。プラスの遺産額よりマイナスの遺産額が多い場合には相続放棄をすることで債務・借金の放棄が可能です。
ただし、限定承認・相続放棄は基本的に取り消しができないため慎重に判断しましょう。
遺産が全て把握できたらリストアップし、目録を作成します。
2-3.法定相続人全員で遺産分割協議をする
法定相続人全員で遺産分割協議をします。一人でも欠けていると無効で、未成年者や判断能力が乏しい方(認知症・知的障害など)は後見人を付ける必要があります。
相続財産の目録を参考に、どの遺産をだれがどの位相続するか話し合います。
現物資産(不動産・自動車・貴金属など形のある資産)や株・投資信託などの金融資産の分割方法は現物分割・代償分割・換価分割・共有分割があります。
分割方法 | 概要 |
---|---|
現物分割 | 資産を現物のまま分割する |
代償分割 | 相続人のうち1人が代表して相続し、他の相続人には代償金または相応の財産を譲る |
換価分割 | 資産を売却した代金を分ける |
共有分割 | 各相続人の持ち分割合決めて共有名義にする |
2-4.遺産分割協議書を作成する
法定相続人全員で合意ができたら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議のひな型や文例集、具体的な作成方法を見ていきましょう。
3.遺産分割協議書の作成方法:ひな型・文例集付き
遺産分割協議書のひな型を基に、具体的な作成方法をお伝えしていきます。

上記のサンプルは、以下からダウンロードが可能です。
遺産分割協議書には、被相続人の氏名・最後の住所と法定相続人の氏名と被相続人との続柄を記載します。
遺産の種類別に相続人を記載します。第三者から見て明確かつ具体的に記載することが重要です。

協議書を作成した後に見つかった遺産の取り扱いも、後のトラブルを防ぐために明記しておきましょう。最後に法定相続人全員の住所・氏名(できれば署名)を記し、実印を押します。
相続の手続きでは相続人全員の印鑑証明書が必要となる場合がありますので、必ず実印を用いましょう。
続いて財産の種類別の詳細を解説していきます。
3-1.不動産(戸建て)
戸建て物件は土地と建物に分け、登記簿謄本の記載事項を見ながら書きます。

所在地を管轄する法務局(または「登記・供託オンライン申請システム」)で登記簿謄本を取得し、赤字部分の情報を転記しましょう。


3-2.不動産(マンション・アパート)
遺産にマンションやアパートがある場合、以下の登記簿謄本の赤字部分の情報を転記します。


3-3.不動産を換価分割する場合
不動産を売却し、売却した代金を分割する際の文例です。
第○項 以下の不動産は換価分割を行うものとする。相続人・相続花子と相続太郎がそれぞれ2分の1の持ち分割合で取得する。
(不動産の表示)
第×項 相続花子と相続太郎は共同で○項の不動産を売却し、売却代金から売却にかかる費用全てを差し引いた額をそれぞれの持ち分割合で取得する。
相続人全員が希望する売却代金がある際には売却代金「○万円~×万円で売却し」という文言を加えます。
3-4.預貯金・有価証券
預貯金は「金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号・口座名義」を書きます。
株式・投資信託などの有価証券は「証券会社の名前・支店名・口座番号・口座名義・内訳(証券の種類・銘柄・数量)・評価額」を記載します。
有価証券の評価方法は金融資産の種類によって異なります。
3-5.借金・債務
負債・借金は、契約内容・債務の残高・債権者(会社名)を書きます。
4.遺産分割協議書作成における注意点
遺産分割協議書を自分で作成する際には、以下の3点に注意しましょう。
4-1.後見人がいる場合は「特別代理人」として記載する
未成年者・判断能力が乏しい方がいる際には家庭裁判所が選任した「特別代理人(成年後見人)」が代わりに遺産分割協議に参加します。
特別代理人が遺産分割協議に参加した場合、遺産分割協議書の冒頭と最後の署名・押印欄で法定相続人の氏名の後に、「特別代理人でいること」を明記した上で、特別代理人が署名捺印を行います。
特別代理人がいる場合の遺産分割協議書のひな形は、以下からダウンロードできます。
4-2.遺産分割協議書が2枚以上になる時は製本と割印を
遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、ホッチキスで留め製本テープで包みます。

表紙もしくは裏表紙のどちらかに、製本テープと本紙にまたがるように相続人全員が実印を割印で押します。
4-3.公正証書は証拠力が高く「強制執行認諾文言」が入れられる
遺産分割協議書を公証役場で公正証書として作成することも可能です。
公正証書は公的文書ですのでいざという時の証拠力が高いというメリットがあります。
また借金を相続するケースなどでは「強制執行認諾文言」を入れることができます。
公正証書に金銭の支払いを合意している・債務者が金銭の支払いをしない場面で強制執行に服する旨が記載されている際には、裁判所の手続きを経ることなく、強制執行の手続きが可能です。
参考:Q1. 公正証書とは、どのようなものですか?|日本公証人連合会
4-4.遺産分割協議書の作成では税理士に相談する場面もある
遺産分割協議書は自分で作成できますが、相続税に関することは税理士に相談することをおすすめします。また、相続の手続きで不明な点がある場合は行政書士・司法書士に相談しましょう。「税理士法人チェスター」は、相続税申告実績年間2,200件以上を誇る、相続税専門の税理士事務所です。
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