遺産分割協議書とは?書き方・必要書類・提出先を解説【ひな形あり】
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で法定相続人全員が合意した内容をまとめた書類のことです。
遺産分割協議書は様々な相続手続きで提出を求めれるため、作成が必要なケースがほとんどですが、中には不要なケースもあります。
また、遺産分割協議書は定められた様式はないものの、一定のルールに沿った書き方をしないと、相続手続きがスムーズに進まないこともありますので注意が必要です。
この記事では、遺産分割協議書のひな形を元に、不動産や預貯金などの書き方をまとめました。
遺産分割協議書が必要となる相続手続き別で、作成期限や提出先などもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次 [表示]
1.遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で法定相続人全員が合意した内容をまとめた書類のことです。
被相続人(亡くなった人)が遺言書を遺していなかった場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が・何を・どれだけ相続するのか」を決めなければなりません。
そして遺産分割協議によって法定相続人が合意したことを証明するために、原則として遺産分割協議書を作成することとなります。
1-1.法的に遺産分割協議の作成義務はない
法律において、遺産分割協議書を作成する義務はありません。
民法第900条では法定相続分が定められており、誰がどの割合で遺産を相続するのかの目安は決められています。
しかし、遺産分割協議を行えば、法定相続分とは異なる遺産分割ができます。
実務においては、遺産分割協議を行った場合は、原則として遺産分割協議書を作成する…ということは覚えておきましょう。
1-2.相続トラブルのリスクを減らすことができる
遺産分割協議書を作成すれば、法定相続人間の相続トラブルの発生リスクを減らすことができます。
例えば、遺産分割協議で相続人全員が合意したものの、遺産分割協議書を作成せず、口約束のみしたとしましょう。
この場合、将来的に「言った・言わない」「そんな話は聞いていない」「よく考えたら納得できない」ともめる可能性は否定できません。
遺産分割協議書を作成すれば、法定相続人全員が合意したことを証明できる上に、法定相続人全員の合意がないと内容の変更ができないため、このような相続トラブルは発生しません。
1-3.相続手続きで提出を求められる
遺産分割協議書は法的な作成義務はないものの、様々な相続手続きで提出を求められます。
- 相続税の申告
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 自動車の名義変更
- 預貯金の名義変更・解約払戻し
- 株式の名義変更・解約払戻し
ただし上記の相続手続きで、遺産分割協議書を必ず提出するとは限りません。
次章で遺産分割協議書が必要か不要かを解説しますので、確認しておきましょう。
2.遺産分割協議書は必要か?不要か?
実務においては、相続が発生したら遺産分割協議書の作成が必要なケースがほとんどです。
では具体的に、どのようなケースで遺産分割協議書の作成が必要なのでしょうか?確認していきましょう。
「遺産分割協議書は必要?不要?必要な場合の作成手順も解説」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
2-1.遺産分割協議を行った場合
遺産分割協議書が必要となる1つ目のケースは、2人以上の法定相続人間で、遺産分割協議を行った場合です。
遺言書の通りに遺産分割する、法定相続人が1人、法定相続分で分割する場合は、遺産分割協議書の作成は不要です。
なお、遺産分割協議を行うのは、遺言書なしのケースだけではありません。
遺言書があったとしても、法定相続人全員の合意の元で遺産分割協議をすることとなった場合も、遺産分割協議書の作成が必要となります。
また、遺言書に財産の記載がなく、取得割合のみが記載されていた場合も、遺産分割協議書の作成が必要となります。
2-2.遺産に不動産が含まれる場合
遺産分割協議書が必要となる2つ目のケースは、遺産に不動産(土地・建物)が含まれる場合です。
相続によって不動産を取得した場合、法務局で相続登記をする必要があります。
この相続登記の際に、遺言書なしでなおかつ法定相続分と異なる分割方法をする場合は、遺産分割協議書の提出を求められます。
相続登記と遺産分割協議書の関係について、詳しくは「相続登記で遺産分割協議書は必要?作成方法/サンプル/注意点も徹底紹介」をご覧ください。
2-3.遺産に査定額100万円超の自動車が含まれる場合
遺産分割協議書が必要となる3つ目のケースは、遺産に査定額100万円超の自動車が含まれる場合です。
これは相続によって査定額100万円超の自動車を取得した場合、運輸局で自動車の名義変更をしないと、売却や廃車手続きができないためです。
この自動車の名義変更を行う際に、遺言書なしでなおかつ法定相続分と異なる分割方法をする場合は、遺産分割協議書の提出が必要となります。
なお、査定額100万円以下であれば、簡単な形式の「遺産分割協議申立書」で名義変更が可能です。
自動車の相続について、詳しくは「自動車を相続したら名義変更が必要?手続き方法や注意点とは?」をご覧ください。
2-4.相続税申告が必要な場合
遺産分割協議書が必要となる4つ目のケースは、相続税の申告義務がある場合です。
相続税が課税されるのは基礎控除額を超えたケースのみですが、各種控除や特例を適用する際に、遺産分割協議書の提出を求められることが多いです。
特に「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」や「小規模宅地等の特例」を適用する場合は、遺産分割協議書の提出が必要となります。
3.遺産分割協議書は自分で作成する?専門家に頼む?
遺産分割協議書はご自分で作成もできますし、専門家に依頼することもできます。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家は、税理士・司法書士・行政書士・弁護士などの士業です。
遺産分割協議書の作成をどの専門家に依頼をすれば良いのかは、以下のチャートを元に判断してください。
この章では、遺産分割協議書を自分で作成する場合と、専門家に依頼する場合、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。
3-1.自分で作成するメリット・デメリット
遺産分割協議書を自分で作成するメリットは、費用がかからないという点です。
以下のようなケースであれば作成は難しくありませんので、次章からご紹介する内容を見ていただければ、すぐに作成していただけます。
- 遺産の内容が現金や預貯金のみ
- 法定相続人の関係性がとても良い
- 法定相続人の人数が少ない
逆に、遺産分割協議書をご自分で作成するデメリットは、手間や時間がかかるという点です。
また自分で作成した遺産分割協議書に不備があった場合、各種相続手続きがスムーズに進まず、結局専門家に依頼することとなり、二度手間になることもあります。
ご自分で作成される方は、「遺産分割協議書、自分で作成する方法とは?ひな型や文例集」も参考にしてください。
3-2.専門家に作成を依頼するメリット・デメリット
遺産分割協議書の作成を専門家にするメリットは、手間や時間がかからないという点です。
専門家に依頼すれば不備もありませんし、遺産分割協議書の作成に係る必要書類を収集してくれるのも大きなメリットと言えます(代行収集は別途料金が発生)。
遺産分割協議書を専門家に依頼するデメリットは、費用がかかるという点です。
しかし専門家に依頼する場合は、遺産分割協議書の作成のみならず、相続登記・相続税申告・遺産分割の仲介など、他の相続手続きなども依頼するはずです。
専門家によっては、依頼する相続手続きの費用の中に、遺産分割協議書の作成費用が含まれていることもあるため、大きなデメリットにはなりません。
「遺産分割協議書を作成できる人は? 専門家のメリット、デメリットや自分で作成する場合のポイントを解説」を参考にしてください。
3-3.専門家に依頼する場合の費用はどのくらいかかるの?
遺産分割協議書の作成のみを行政書士に依頼する場合、費用相場は3~5万円です。
相続税申告を税理士に依頼した場合、費用相場は遺産総額の0.5~1.0%ですが、遺産分割協議書の作成費用が含まれるケースが多いです。
このように、遺産分割協議書の作成費用は、どのような相続手続きを、どの専門家に依頼するのかで大きく異なります。
詳しくは「遺産分割協議書の作成費用は誰に頼むかで決まる-自分で作る場合の文例つき」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
4.遺産分割協議書の作成の流れ【自分で作成する場合】
遺産分割協議書を自分で作成する前に、まずは作成の流れを知っておきましょう。
4-1.法定相続人を確定させる
遺産分割協議書は法定相続人全員の合意が必要ですので、まずは法定相続人を確定します。
民法において法定相続人には順位が定められており、前の順位の人が法定相続人になれば、次の順位の人は法定相続人にはなりません(配偶者は常に法定相続人)。
法定相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍謄本)を取り寄せる必要があります。
被相続人の戸籍謄本の取得には時間がかかることもありますので、なるべく早い段階で取り寄せましょう。
詳しくは「相続手続きに必要な戸籍謄本の種類と取得方法を徹底解説!どのような時に必要で有効期限はある?」や「戸籍調査で相続人を確定させる方法・手順をご紹介!」で解説しておりますのご覧ください。
4-2.被相続人の財産を調査・確定させる
次に、遺産分割協議の対象となる、被相続人の財産を調査・確定させます。
被相続人の財産は、プラスの財産(不動産・預貯金・有価証券など)だけではなく、マイナスの財産(借金や未払金)も含まれます。
なお、被相続人が加入していた生命保険については、受取人の固有の財産となりますので、遺産分割協議の対象にはなりません(みなし相続財産として課税対象にはなります)。
相続財産の調査のやり方について詳しくは「相続が発生したら遺産の調査をしましょう!!」をご覧ください。
4-3.必要書類を収集する
遺産分割協議書に記載する相続財産の、相続税評価額を計算しなくてはならないため、被相続人の財産に係る必要書類を収集する必要があります。
例えば、不動産であれば固定資産税納税通知書や登記簿謄本などが必要になりますし、銀行預金であれば相続開始日の残高証明書が必要となります。
また、遺産分割協議書には実印を押す必要があるため、法定相続人全員の印鑑証明書も取得しなければなりません。
必要書類の集め方については「相続に必要な書類を1週間で集めよう!書類一覧や提出先をご紹介」をご覧ください。
4-4.遺産分割協議を行う
法定相続人と被相続人の財産が確定し、財産評価額の計算ができたら、法定相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は全員が一カ所に集まる必要はなく、電話やメールで話し合って決めても構いません。
なお、遺産分割協議がまとまらない場合は、弁護士に依頼して仲介に入ってもらい、それでも合意できない場合は遺産分割調停にて解決をします。
遺産分割調停について、詳しくは「遺産分割調停をする方法。必要書類や費用、期間、流れを解説」をご覧ください。
4-5.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書を作成して合意した内容をまとめます。
5.遺産分割協議書の書き方!ひな形・文例付き
遺産分割協議書の書き方やひな形については、国税庁「遺産分割協議書の記載例」や法務局「遺産分割協議書の例」でも紹介されています。
しかし、国税庁の見本は縦書きで見づらいですし、法務局の見本は不動産に係る内容しか紹介されていません。
この章では、税理士法人チェスターが実際に使用しているひな形に沿って、遺産分割協議書の具体的な書き方や文例をご紹介します。
>>チェスターの「遺産分割協議書」のひな形をダウンロード(Word)
遺産分割協議書の書き方について、詳しくは「遺産分割協議書の書き方とは?不動産の書き方・ひな形・必要書類・注意点・文例を紹介」でも解説しております。
5-1.遺産分割協議書のサンプル見本
5-2.遺産分割協議書に記載する内容
遺産分割協議書に記載する内容を、詳しく確認していきましょう。
5-2-1.被相続人の名前・死亡日・住所など
まずは書面のタイトルを「遺産分割協議書」とし、被相続人(亡くなった人)についての情報を文例のように記載します。
被相続人の情報では、被相続人の氏名と死亡日だけではなく、最後の住所・本籍・登記簿上の住所を記載すれば良いでしょう。
5-2-2.法定相続人が遺産分割に合意している旨
次に書面の前文として、法定相続人全員が遺産分割に合意している旨を記載します。
文例は上記の通りですが、遺産分割協議を行った日付や、法定相続人全員の氏名を記載すると良いでしょう。
5-2-3.相続財産の詳細
次に、被相続人の相続財産を誰がどれだけ取得するのかといった、相続財産の詳細について記載していきます。
相続財産の種類によって「書き方」や「書くべき情報」が異なりますので、ご注意ください。
A.不動産(土地・建物)
相続財産に不動産が含まれる場合、上記文例のように「土地(所在・地番・地目・地積)」と「建物(所在・家屋番号・種類・構造・床面積)」の詳細を記載します。
これらの詳細は、以下の登記簿謄本の赤枠部分をそのまま記載することとなります。
なお、マンションなど区分所有建物については、「一棟の建物」「専有部分の建物」「敷地権」に区分して詳細を記載します。
B.預貯金
相続財産に預貯金が含まれる場合、上記文例のように金融機関名・支店名・預金種別(普通/貯蓄/定期)・口座番号・口座名義を記載します。
なお、遺産分割協議書に、預貯金の残高(金額)を記載する必要はありません。
詳しくは「遺産分割協議書の預金記載例|分割後の払戻手続をスムーズに行うコツ」「遺産分割協議書は金額を書かない。財産目録を作成して相続人で確認」でも解説しておりますので、併せてご覧ください。
C.有価証券(株式など)
相続財産に有価証券(株式など)が含まれる場合、上記文例のように証券会社名・支店名・口座番号・口座名義・内訳(証券の種類・銘柄・数量)を記載します。
証券会社から取引報告書や残高証明書を取り寄せれば、内訳の詳細を知ることができます。
なお、非上場株式である場合は、発行会社に詳細を問い合わせることとなります。
D.自動車(査定額100万円以上)
相続財産に査定額100万円超の自動車が含まれる場合、上記文例のように自動車登録番号(ナンバー)と車体番号を記載します(車検証に情報あり)。
なお、査定額100万円以下の自動車は、遺産分割協議書に記載する必要はありません。
E.負債・債務
相続財産に負債・債務(借金や未払金)が含まれる場合、上記文例のように契約内容・債務残高・債権者(会社名など)を記載します。
遺産分割協議書への債務の書き方について、詳しくは「遺産分割協議書への記載方法」をご覧ください。
5-2-4.後日判明した財産の扱い
相続財産の詳細を全て記載したら、次に後日判明した財産の扱いについて記載します。
多くのケースでは文例のように「再度遺産分割協議を行う旨」を記載しますが、「○○が相続する」「法定相続分で分割する」と記載もできます。
5-2-5.何通作成して誰が保管するのか
次に、書面の後文として、遺産分割協議書を何通作成して誰が保管するかを記載します。
これにより、同じ内容の遺産分割協議書が、何通存在しているのかを証明できます。
5-2-6.作成日と相続人全員の名前・住所と実印の押印
さいごに、遺産分割協議書の作成日を記載し、法定相続人全員の住所と署名押印欄を作成します。
法定相続人の住所はパソコンでも良いですが、氏名は自筆で署名、実印を押印することが大切です。
6.遺産分割協議書の特殊なパターンの書き方
前章では遺、産分割協議書の基礎的な書き方をご紹介しました。
しかし、特別代理人(成年後見人)やいる場合、配偶者居住権を取得する場合、代償分割や換価分割する場合は、遺産分割協議書の書き方が通常とは異なりますのでご注意ください。
6-1.未成年者・障害者・認知症の人がいる場合
未成年者・障害者・認知症の人がいる場合、単独では法律行為ができないため、本人の代わりに特別代理人(成年後見人)が遺産分割協議に加わります。
そのため、遺産分割協議書の前文と署名押印欄には、法定相続人だけではなく、特別代理人の情報も書き加えなくてはなりません。
特別代理人や成年後見人がいる場合の、遺産分割協議書のひな形がございますので、ぜひご利用ください。
6-2.配偶者居住権を取得する場合
相続税法の改正により、配偶者が法定相続人になる場合は「配偶者居住権」を設定することができます。
被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得する場合、遺産分割協議書における不動産の詳細欄は、以下のように記載します。
配偶者居住権について、詳しくは「配偶者居住権とは?二次相続で相続税が節税できるって本当?」をご覧ください。
6-3.代償分割する場合
代償分割とは、法定相続人の誰かが特定の財産を取得することにより、他の法定相続人よりも多額の財産を取得することとなった場合に、代償金を他の法定相続人に支払って不足分を補填する分割方法のことです。
代償分割をする場合、遺産分割協議書には「誰が・何を取得する代償として、誰に代償金をいくら支払うのか」を記載しなくてはなりません。
代償分割を行う場合の、遺産分割協議書のひな形がございますので、ぜひご利用ください。
6-4.換価分割する場合
換価分割とは、相続財産を売却等して換価した後に、法定相続人同士で分割する方法のことです。換価分割は、不動産が相続財産の大部分を占める場合に利用されます。
しかし、被相続人名義の相続財産は売却できないため、一旦法定相続人に名義変更をした上で、売却をする必要があります。
そのため、換価分割する場合は、遺産分割協議書には「換価目的である旨」と「売却代金の分割率」などを記載しなくてはなりません。
換価分割における遺産分割協議書の書き方について、詳しくは「換価分割とは?遺産分割協議書の書き方や譲渡所得税等の税務」をご覧ください
6-5.法定相続人の誰かが海外在住の場合
遺産分割協議書には、法定相続人全員の住所を記載したり、実印を押印したりする必要があります。これは、法定相続人の誰かが、海外在住者である場合でも同様です。
しかし、海外には住民票や印鑑証明書という制度はありませんので、日本国内に住所を持たない法定相続人は、印鑑証明書や住民票が取得できません。
そのため、法定相続人の誰かが海外居住者である場合は、準備すべき必要書類が通常とは異なります。
- 署名証明書(サイン証明書)…印鑑証明書の代わりになる
- 在留証明書…住民票の代わりになる
署名証明書や在留証明書は、現地の日本領事館で取得できます(署名証明書は日本の公証役場で取得可能)。
詳しくは「相続人が海外にいる場合の相続手続きについて」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
7.遺産分割協議書を作成する時のポイントと注意点
遺産分割協議書を作成する時の、ポイントと注意点についてまとめました。
7-1.手書き・パソコンどちらも可
遺産分割協議書は、手書き・パソコン、どちらで作成しても構いません。
この理由は、遺産分割協議書に記載すべき内容に一定のルールはあるものの、書き方や様式は法律で定められていないためです。
実務においては、パソコンを使って遺産分割協議書を複数作成し、法定相続人の署名部分のみ手書きするのが一般的です。
7-2.遺産は漏れがないよう正確に記載する
遺産分割協議書に記入する遺産は、漏れがないよう正確に記載しましょう。
この理由は、記載漏れや不備があると相続手続きがスムーズに進まなくなりますし、再度遺産分割協議書を作り直す必要があるかもしれないためです。
不動産は登記簿謄本に記載されている通りに詳細を記載し、預貯金などは口座番号の記入ミスをしないよう留意しましょう。
7-3.法定相続人全員分を作成・保管
遺産分割協議書は、原則として法定相続人全員分を作成して、各自1通ずつ保管するのがおすすめです。
遺産分割協議書を1通作成するだけでも法的に問題はありませんが、無用なトラブルを回避することができますし、相続手続きも各法定相続人ができるためスムーズです。
なお、法定相続人全員分の遺産分割協議書を作成する場合は、添付書類である印鑑証明書も同じ枚数が必要となります。
7-4.法定相続人の実印を使用する
遺産分割協議書の法定相続人の欄の押印は、印鑑証明書を取得した実印を使用してください。
この理由は、遺産分割協議書には、印鑑証明書を添付する必要があるためです。
異なる印鑑を使用した場合、遺産分割協議書が無効になる可能性もあります。
7-5.契印を押す(枚数が2ページ以上の場合)
遺産分割協議書の枚数が2ページ以上になる場合は、契印を押しましょう。
契印とは、2枚以上の契約書が1つの連続した文章であることを証明するために、印鑑をページにまたがって押すことです。
遺産分割協議書をホッチキスで止めた場合は、上記のように「全ぺージ」で契印が必要です。
しかし、製本テープを使用した場合は、表紙と裏表紙の製本テープにまたがって契印を押すだけでOKです。
契印について、詳しくは「遺産分割協議書の捨印や訂正印の押し方|解説図でひと目で確認」をご覧ください
7-6.割印を押す(2通以上の場合)
遺産分割協議書が2通以上になる場合は、割印を押しましょう。
割印とは、複数の契約書の内容が同じであることを証明するために、同じ内容の書類をずらした上に実印を押すことです。
割印について、詳しくは「遺産分割協議書が2通以上ならなるべく割印を。契印はさらに重要」をご覧ください。
8.遺産分割協議書の作成期限は?いつまでに必要?提出先は?
遺産分割協議書の作成期限は法律で定められていませんので、遺産分割協議が成立次第、随時作成していくこととなります。
しかし、遺産分割協議書は各種相続手続きで必要となり、これらの相続手続きには期限が定められています。
つまり、相続財産の内容を元に、必要な相続手続きの期限を知った上で、遺産分割協議書を作成しておく必要があるのです。
手続き期限 | 提出先 | |
---|---|---|
相続税の申告 | 死亡日から10ヶ月以内 | 税務署 |
不動産の相続登記 | 取得を知った日から3年以内※ | 法務局 |
預貯金の相続手続き | なし | 金融機関 |
有価証券の相続手続き | なし | 証券会社 |
自動車の相続手続き | 所有者となってから15日以内 | 運輸局 |
この章では、遺産分割協議書が必要となる相続手続きや提出先、それぞれの期限についてご紹介します。
8-1.相続税の申告
相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」ですので、これまでに遺産分割協議書を作成しましょう。
なお、相続税の申告書や遺産分割協議書を提出するのは、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。
相続税の申告期限について、詳しくは「遺産分割協議は相続税申告期限までに!手続き期限リストで漏れを防ぐ」をご覧ください。
8-2.不動産の名義変更(相続登記)
相続等で取得した不動産の相続登記(名義変更)は、令和6年4月1日から義務化されます。
この相続登記の義務化に伴い、不動産を相続した法定相続人は、「不動産の所有権の取得を知った日から3年以内」に、相続登記の手続きを完了しなくてはなりません。
そのため、遺産分割協議書は、相続登記の期限までに作成しておかなくてはなりません。
なお、相続登記の必要書類や遺産分割協議書を提出するのは、該当不動産の所在地を管轄する法務局です。
相続登記の期限について、詳しくは「相続登記(不動産の名義変更)の期限とは?登記しないと6つのデメリットがある!?」や「相続登記・住所等の変更登記が義務化へ~不動産登記法の改正~」をご覧ください。
8-3.預貯金の名義変更・解約払戻し
相続等で取得した預貯金の名義変更・解約払戻しは、特に期限が定められていません。
相続税の申告義務や相続登記義務がある方は、これらの手続き期限までに遺産分割協議書を作成すれば良いでしょう。
預貯金の相続手続きについて、詳しくは「銀行の相続手続にかかる日数について-手続期間を短縮する方法も紹介」をご覧ください。
8-4.有価証券(株式)の名義変更
相続等で取得した有価証券(株式)の名義変更手続きは、特に期限が定められていません。
相続税の申告義務や相続登記義務がある方は、これらの手続き期限までに遺産分割協議書を作成すれば良いでしょう。
しかし、有価証券は日々価額が変動しますので、なるべく早く遺産分割協議書を作成し、相続手続きするよう心がけましょう。
株式と相続の関係について、詳しくは「株式を相続する場合のポイントや相続税評価の方法を税理士が解説」をご覧ください。
8-5.自動車の名義変更(移転登録の変更)
相続等で取得した自動車の名義変更(移転登録の変更)手続きは、新所有者となってから15日以内に、新所有者の住所を管轄する運輸局(または自動車監査登録事務所)に申請する必要があります(道路運送車両法第13条)。
自動車の名義変更をしなくても実害はありませんが、そのまま放置していては売却や廃車ができません。また、名義変更をしなければ車検を受けることもできませんし、事故が起きた時に十分な補償を受けられない可能性もあります。
相続等で自動車を取得した場合は、なるべく早い段階で名義変更をする必要があります。
自動車と相続について、詳しくは「自動車を相続したら名義変更が必要?手続き方法や注意点とは?」をご覧ください。
9.遺産分割協議書に添付する必要書類
遺産分割協議書は各種相続手続きで提出しますが、添付しなければならない必要書類がいくつかあります。
9-1.印鑑証明書
遺産分割協議書に添付する1つ目の必要書類は、印鑑証明書です。
これは遺産分割協議書に押印した実印が本物であることを証明するためのですので、法定相続人全員分の印鑑証明書が必要です。
なお、遺産分割協議書を複数作成した場合は、作成した数の印鑑証明書を準備しましょう。
例えば、法定相続人が3人で遺産分割協議書を3通作成した場合は、印鑑証明書が合計9枚(1人あたり3枚)準備する必要があります。
印鑑証明書について、詳しくは「相続登記に必要な印鑑証明書を解説!有効期限/その他の相続手続きでの必要性」をご覧ください。
9-2.被相続人や法定相続人の戸籍謄本
遺産分割協議書には、被相続人や法定相続人の情報が記載されています。
当事者間は法定相続人であることが分かっていても、相続手続きでは身分を証明しなくてはなりません。そのため、被相続人と法定相続人全員の戸籍謄本が必要となります。
ただ、被相続人の戸籍謄本だけでも枚数が多くなることが多く、さらに戸籍謄本で関係性を確認するのは大変です。
そのため、実務においては法務局に戸籍謄本を提出して「法定相続情報一覧図」を取得し、これを遺産分割協議書に添付します。
詳しくは「法定相続情報証明制度で相続手続きが簡単に!利用方法を徹底解説」や「法定相続情報証明制度のメリット・デメリットと利用方法を徹底解説」で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
9-3.住民票(不動産が含まれる場合)
遺産に不動産が含まれる場合は、相続登記を行いますが、この際に不動産を取得する人の本籍地が記入された住民票も必要となります。
相続登記と住民票の関係について、詳しくは「相続登記に必要な住民票を徹底解説!取得方法/その他の必要書類」をご覧ください。
10.遺産分割協議書を公正証書にしよう!そのメリットとは
法定相続人間の関係が良好でない場合は、遺産分割協議書を公正証書にされることをおすすめします。
公正証書とは、公正役場で公証人(法律の専門家)が作成する、公文書のことを指します。
遺産分割協議書を公正証書にしておけば、通常の合意書面よりも法律的な効力が強くなるため、様々なメリットがあります。
詳しくは「遺産分割協議書を公正証書で作成する方がよいケースとは」でも解説しておりますので、あわせてご覧ください。
10-1.相続手続きがスムーズになる
遺産分割協議書を公正証書にする1つ目のメリットは、相続手続きがスムーズになることです。
自分で作成した遺産分割協議書であれば、不備がある可能性は否定できません。
しかし、公証人が作成した遺産分割協議公正証書は、信頼性が高いため、相続登記や金融機関での手続きがよりスムーズになります。
10-2.争い・トラブルを防ぐことができる
遺産分割協議書を公正証書にする2つ目のメリットは、法定相続人間による争いやトラブルを防げることです。
遺産分割協議公正証書は、公証人が法定相続人全員の意思を確認して作成をします。
そのため、記載された内容に関して、後々「知らなかった」「自分は署名押印していない」などと争うリスクが低くなります。
10-3.紛失・破損の可能性が低い
遺産分割協議書を公正証書にする3つ目のメリットは、紛失・破損の可能税が低いことです。
遺産分割協議公正証書の原本は、公証役場で長期間保管されます。
そのため、仮に紛失・破損をしても、再発行が可能となります。
11.正しい遺産分割協議書を自分に合った方法で作成しよう
相続が発生した場合、遺産分割協議書の作成が必要になるケースがほとんどです。
遺産分割協議書には定められた様式はありませんが、一定の記載ルールを守らないと、スムーズに相続手続きができません。
相続財産が預貯金や現金のみであれば、遺産分割協議書はご自分で作成されると良いでしょう。
しかし、相続財産に名義変更が必要な財産(不動産など)が含まれる場合や、相続税申告が必要な場合は、司法書士や税理士に依頼されることをおすすめします。
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※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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相続手続きはとにかくやることが多く、自分の足で動くことも多いものです。
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