認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除はどっちが得?違いは何?

日本国内に居住する個人が、認定住宅等を新築・取得した場合、以下の2つの控除の適用を検討されることと思います。
- 特別控除(認定住宅新築等特別税額控除)
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
上記2つの控除はそれぞれ控除率・上限控除額・控除年数が異なりますが、一体どっちが得なのでしょうか?
この記事では、認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除の基礎はもちろん、2つの控除の違いについてまとめました。
この記事の目次 [表示]
1.認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除はどっちが得?
認定住宅等を新築・取得する際には、「特別控除(認定住宅新築等特別税額控除)」や「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」を適用できますが、どっちが得になるのでしょうか?
この2つの制度の、最大控除額で比較をしてみましょう。

「特別控除」「住宅ローン控除」のどっちも適用できる場合は、「住宅ローン控除」の適用が有利となることが多いです。
ただし、以下のようなケースは、「特別控除」の方が有利になることもあります。
- 合計所得金額が将来的に2,000万円を超えることが見込まれる場合
- 金融機関等からの借入金が10年以内に返済されることが明白な場合
1-1.2つの控除は併用不可!選択ミスを防ぐために
特別控除と住宅ローン控除は併用できず、確定申告において選択した税額控除は、修正申告や更正の請求によって変更することもできません。
認定住宅等を新築・取得する際には、2つの控除の規定の違いを事前に把握することが重要です。
その上で、現状や将来的な状況を確認して予めシミュレーションし、最も有利な控除を選択できるよう比較・検討を行いましょう。
もし適用させる控除の選択で悩んだ場合には、専門家である税理士等に相談されることをおすすめします。
2.特別控除(認定住宅新築等特別税額控除)とは
特別控除(正式名称:認定住宅新築等特別税額控除)とは、以下に該当する認定住宅等を新築または取得(以下、新築等)して、令和7年12月31日までに居住の用に供した場合、一定の要件を満たせば、認定基準に適合するために必要となる標準的なかかり増し費用の10%に相当する金額を、原則としてその年分の所得税額から控除できる制度のことです(住民税は考慮されません)。

【出典:国土交通省「認定住宅等新築等特別税額控除(投資型減税)の概要」】
特別控除は、住宅ローンを組んでいなくても利用できる税額控除であることが特徴です。
特別控除について、詳しくは国税庁「認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」をあわせてご覧ください。
2-1.特別控除が適用される住宅等の区分
認定住宅新築等特別税額控除が適用される認定住宅等とは、以下のいずれかに該当する住宅等となります。
【認定長期優良住宅】
長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅に該当するものとして証明がされたもの
【認定低炭素住宅】
都市の低炭素化の促進に関する法律に規定する低炭素建築物に該当する家屋および同法の規定により低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当するものとして証明がされたもの
【特定エネルギー消費性能向上住宅】
認定住宅以外の家屋でエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅の用に供する家屋に該当するものとして証明がされたもの
特定エネルギー消費性能向上住宅とは、いわゆる「ZEH水準省エネ住宅」のことで、断熱等性能等級5以上および一次エネルギー消費量等級6以上の家屋であることが要件です。
2-2.特別控除の適用要件
認定住宅新築等特別税額控を適用させるには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

要件④の床面積の判断基準は、登記簿に表示されている床面積により判定することとなります。
なお、マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断します。
2-3.特別控除額の計算方法
認定住宅新築等特別税額控除の控除額は、認定住宅等の認定基準に適合するために必要となる、標準的なかかり増し費用の10%です。
令和4年1月1日から令和7年12月31日までに居住の用に供した場合、以下の計算方法で算出することとなります。

標準的なかかり増し費用の限度額は650万円ですので、税額控除限度額は65万円となります。
なお、認定住宅新築等特別税額控除は税額控除ですので、所得税額から控除額を直接差し引くことができます。
2-4.特別控除の控除年数
認定住宅新築等特別税額控除は、原則としてその年分の所得税額から控除することとなります。
控除しきれなかった場合は、余った控除額を翌年の所得税額から差し引くこともできます。
ただし、適用できるのは所得税だけであり、住民税から控除することはできません。
3.住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用して認定住宅等を新築・購入した場合、一定の要件を満たせば、入居時から最長13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が、所得税から控除できる制度のことです(所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税からも控除)。

【出典:国土交通省「住宅ローン減税の概要について(令和6年度税制改正後)」】
特別控除について、詳しくは国税庁「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」をご覧ください。
3-1.住宅ローン控除が適用される住宅等の区分
令和6年税制改正に伴い、令和6年以降に入居する新築住宅に住宅ローン控除を適用するためには、省エネ基準に適合していることが要件となります。
【認定長期優良住宅】
長期優良住宅の普及の促進に関する法律第11条第1項に規定する認定長期優良住宅に該当するものであることにつき証明がされたもの
【低炭素建築物】
都市の低炭素化の促進に関する法律第2条第3項に規定する低炭素建築物に該当することにつき証明がされたもの
【低炭素建築物とみなされる特定建築物】
都市の低炭素化の促進に関する法律第16条の規定により低炭素建築物とみなされる同法第12条に規定する認定集約都市開発事業により整備された特定建築物に該当することにつきその個人の申請に基づきその家屋の所在地の市町村長または特別区の区長により証明されたもの
【ZEH水準省エネ住宅】
エネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅の用に供する家屋として国土交通大臣が財務大臣と協議して定める基準に適合するものであることにつき証明がされたもの(断熱等性能等級に係る評価が等級5以上および一次エネルギー消費量等級に係る評価が等級6以上であるもの)
【省エネ基準適合住宅】
エネルギーの使用の合理化に資する住宅の用に供する家屋として国土交通大臣が財務大臣と協議して定める基準に適合するものであることにつき証明がされたもの(断熱等性能等級に係る評価が等級4以上および一次エネルギー消費量等級に係る評価が等級4以上であるもの)
詳しくは、「令和6年以降の住宅ローン控除は「省エネ基準の適合」が必須に」をご覧ください。
3-2.住宅ローン控除の適用要件
住宅ローン控除を適用させるには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

要件③の床面積の判断基準は、登記簿に表示されている床面積により判定することとなります。
なお、マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断します。
3-3.住宅ローン控除の控除額と計算方法
令和6年税制改正により、住宅ローン控除の「新築住宅・買取り再販住宅」に係る、借入限度額の見直しが行われました。
これに伴い、令和6年1月1日から令和7年12月31日までの入居である場合の、借入限度額は以下の通りとなります。

上記を基準として、住宅ローン控除の控除額を計算します。
例えば、認定住宅(認定長期優良住宅)の新築をして、令和7年中に入居をした場合、【年末残高等(上限4,500万円)×0.7%】で控除額を計算します。
なお、令和6年中の入居で「特例対象個人(子育て世帯や若者夫婦世帯)」に該当する場合は、借入限度額が令和5年入居分と同額となります。
詳細は「【令和6年度税制改正】住宅ローン控除(減税)の変更ポイント」をご覧ください。
3-4.住宅ローン控除の控除年数
認定住宅等を新築・取得し、令和6年1月1日から令和7年12月31日までに入居した場合、住宅ローン控除の控除年数は「入居した年から最長13年」です。
なお、中古住宅等は控除期間が10年となりますので、混同されないようご注意ください。
4.認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除の違い【一覧表】
「認定住宅新築等特別税額控除」と「住宅ローン控除」の違いについて、整理しておきましょう。

控除率のみを比較すると、住宅ローン控除の控除率は0.7%、特別控除の控除率は10%と、一見すると「特別控除」の方が有利に見えます。
しかし、控除年数を比較すると、住宅ローン控除の控除年数は13年、特別控除の控除年数は適用年分のみです。
冒頭でもご紹介しましたが、現状のみならず将来的な状況を確認して予めシミュレーションし、最も有利な控除を選択できるよう比較・検討を行いましょう。
5.確定申告をする際に提出を求められる必要書類
認定住宅新築等特別税額控除は、認定住宅等の新築・購入をして、自己の居住の用に供した年の翌年の2月16日~3月15日までに、確定申告をしなくてはなりません。
そして住宅ローン控除を適用させるためには、住宅購入・入居の翌年の2月16日~3月15日までに、確定申告をしなくてはなりません。
どちらの控除を選択する場合でも、確定申告時に必要書類の提出を求められますので、確認しておきましょう。
5-1.認定住宅新築等特別税額控除の必要書類
認定住宅新築等特別税額控除に係る必要書類は、以下の通りです。

この他、認定住宅等であることを証する、以下のいずれかの書類の提出も求められます。
<認定長期優良住宅の場合(以下両方)>
- 長期優良住宅建築等計画等の認定通知書【写し】
- 市区町村の住宅用家屋証明書【原本又は写し】
(建築士等の認定長期優良住宅建築証明書【原本】)
<低炭素住宅の場合(以下両方)>
- 低炭素建築物新築等計画の認定通知書【写し】
- 市区町村の住宅用家屋証明書【原本又は写し】
(建築士等の認定低炭素住宅建築証明書【原本】)
<低炭素住宅とみなされる特定建築物の場合>
- 市区町村の住宅用家屋証明書(特定建築物用)【原本】
<ZEH 水準省エネ住宅の場合>
- 建築士等の住宅省エネルギー性能証明書【原本】
(登録住宅性能評価機関の建設住宅性能評価書【写し】)
※断熱等性能等級に係る評価が等級5以上および一次エネルギー消費量等級に係る評価が等級6以上であるもの
なお、居住の用に供した日によって、証明書等の要件が異なります。
令和5年4月1日から令和7年12月31日の間に居住の用に供した場合は、家屋の取得の日前に証明のための家屋の調査が終了(または評価されたもの)となります。
5-2.住宅ローン控除の必要書類
住宅ローン控除に係る必要書類は、以下の通りです。

この他、認定住宅等であることを証する、以下のいずれかの書類の提出も求められます。
<認定長期優良住宅の場合(以下両方)>
- 長期優良住宅建築等計画等の認定通知書【写し】
- 市区町村の住宅用家屋証明書【原本又は写し】
(建築士等の認定長期優良住宅建築証明書【原本】)
<低炭素住宅の場合(以下両方)>
- 低炭素建築物新築等計画の認定通知書【写し】
- 市区町村の住宅用家屋証明書【原本又は写し】
(建築士等の認定低炭素住宅建築証明書【原本】)
<低炭素住宅とみなされる特定建築物の場合>
- 市区町村の住宅用家屋証明書(特定建築物用)【原本】
<ZEH 水準省エネ住宅の場合>
- 建築士等の住宅省エネルギー性能証明書【原本】
(登録住宅性能評価機関の建設住宅性能評価書【写し】)
※断熱等性能等級に係る評価が等級5以上および一次エネルギー消費量等級に係る評価が等級6以上であるもの
<省エネ基準適合住宅>
- 建築士等の住宅省エネルギー性能証明書【原本】
(登録住宅性能評価機関の建設住宅性能評価書【写し】)
※断熱等性能等級に係る評価が等級4以上および一次エネルギー消費量等級に係る評価が等級4以上であるもの
6.認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除の選択を間違えた事例
認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除の選択ミスによって、所得税を過大納付してしまった事例がありますのでご紹介します。
なお、本事例は平成30年当時の、控除額や控除年数を元に解説をします。
6-1.事例の概要
Aさんは、建築業者から勧められた税務面での優遇がある認定長期優良住宅を建築し、銀行からの借入金によって平成30年4月に居住用住宅を取得しました。
Aさんは認定長期優良住宅を新築した場合に適用できる、「認定住宅新築等特別税額控除」と「住宅ローン控除」の比較・検討を行いました。
その結果、「住宅ローン控除」の適用控除率が1%(現在は0.7%)で、「認定住宅新築等特別税額控除」の適用控除率は10%であることから、控除率の高い「認定住宅新築等特別税額控除を適用した方が有利」と考えました。
そして平成31年3月、必要な資料等を入手し、確定申告に係る書類を作成して申告を行いました。
令和元年5月、税務署から資料不足を指摘されて各種特例を再確認したところ、「住宅ローン控除」を適用した方が有利であったことに気付きました。
「認定住宅新築等特別税額控除(適用控除率10%)」は適用年分のみの控除にも関わらず、Aさんは「認定住宅新築等特別税額控除も10年間控除可能」と誤認していたのです。
6-2.事例のポイント
Aさんは「認定長期優良住宅」を新築していたため、「認定住宅新築等特別税額控除」と「住宅ローン控除」のどちらでも適用が可能でした。
しかし、特別控除の控除年数は「原則、適用年分のみ」で、住宅ローン控除は「10年間適用可能」となるため、本事例では「優良住宅ローン控除」を選択した方が有利となります。
Aさんは銀行からの借入金で居住用住宅を取得し、Aさんの合計所得は毎年1,500万円程度で、将来的に合計所得金額が3,000万円を超えることがないのも明らかであったため、優良住宅ローン控除の適用要件を満たしていました。
今回の事例は、Aさんが各種特例の規定を熟知している税理士に依頼をしていれば、住宅ローン控除適用時の選択ミスを防げたはずです。
7.まとめ
認定住宅新築等特別税額控除と住宅ローン控除は、住宅ローンの有無はもちろん、控除率や控除年数などに違いがあります。
どちらも適用できる場合は、住宅ローン控除の方がお得になることが多いですが、ケースによっては認定住宅新築等特別税額控除を選択した方良いこともあります。
まずは2つの控除の適用要件の違いを把握し、将来的な状況も踏まえて「どの特例なら適用できるのか」、また両方適用できる場合は「どちらの特例の適用が有利なのか」をシミュレーションし、最も有利な特例を適用することが大切です。
ご不明点がある方は、必ず専門家である税理士に相談をしましょう。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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