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兄弟で遺産相続する時によくあるトラブルの原因とは?注意点・対処法も解説

兄弟の相続争いの原因と回避策

仲の良かった兄弟でも、遺産相続でトラブルが起こると関係が悪化し、絶縁状態になることがあります。

この記事では、兄弟で遺産相続をするときのトラブルの原因について解説し、相続争いを避けるための対処法をご紹介します。あわせて、亡くなった兄弟の遺産を相続するときの注意点もご紹介します。

兄弟どうしのトラブルが心配になっている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

この記事の目次 [非表示]

1.相続争いを避けるには法定相続人と法定相続分を確認

はじめに、法律上どういった順番で相続人が決まり、相続分(遺産を相続できる割合)がどの程度になるかを確認します。

1-1.法定相続人になれる順番

相続人になれる人は、民法で次のように定められています。

<法定相続人の範囲>
常に相続人配偶者
第一順位の相続人
(子が先に死亡しているときは孫)
第二順位の相続人父母
(両親が先に死亡しているときは祖父母)
第三順位の相続人兄弟姉妹
(兄弟姉妹が先に死亡しているときは甥・姪)

亡くなった被相続人の配偶者は常に相続人になります。このほか、被相続人に子がいるか両親が健在であれば優先して相続人になります。

したがって、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースは比較的少ないでしょう。

1-2.法定相続分(相続割合)

相続人ごとの財産の相続分(遺産を相続できる割合)は、次のとおり定められています。

同じ順位の相続人が2人以上いるときは、相続割合を人数に応じて等しく分けます。

下記の記事では、家族構成のケースに応じた法定相続分を解説しています。あわせてご覧ください。
法定相続分は相続人の家族構成でこんなに変わる!【ケース別で解説】

1-3.兄弟で遺産相続するケースとは?

兄弟で遺産相続をするケースは、次の二つです。

  • 亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース
  • 亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース

先ほど法定相続人の順番のところでもお伝えしたように、「亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース」は比較的少ないかもしれません。

一方、「亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース」は多いでしょう。

このケースでは、残されたもう一方の親と遺産を分け合う場合のほか、両親がともに亡くなって兄弟だけで遺産を分け合う場合があります。

2.遺産相続で兄弟がもめる原因とは?

遺産相続で兄弟がもめる原因にはどのようなものがあるでしょうか。

大きく分けると、「遺産そのものをめぐる問題」、「遺産の取り分をめぐる問題」、「相続人をめぐる問題」の3つが考えられます。

この章では、兄弟で相続争いが起こる原因の代表例をご紹介します。

2-1.遺産そのものをめぐる問題

相続争いは、遺産が多い場合よりも少ない場合の方が深刻になりやすいです。

不動産のように分割が難しい財産がある場合のほか、想定よりも遺産が少ない場合や、借金がある場合にもトラブルが起こりがちです。

2-1-1.遺産を公平に分けることができない

相続する遺産が現金や預金であれば、兄弟どうしで遺産を公平に分けることができるため、あまりもめることはありません。

問題となるのは不動産を相続する場合です。不動産は物として細かく分割することができないため、相続人どうしで公平に分けることは困難です。

特に、遺産の大部分が自宅であって相続人の誰かがそこに住んでいる場合は、相続人一人ひとりにとって有利になる条件が異なるため、相続争いが起こりやすくなります。

下の図の例は、父が時価1億円の土地付き建物と現金2,000万円を残して死亡したケースです。相続人は母(配偶者)と長男・次男ですが、長男は夫婦で両親と同居していました。

このとき、次男が法定相続分のとおりに遺産分割することを要求すれば、相続争いに発展する可能性があります。

次男の法定相続分は、遺産総額1億2,000万円の4分の1にあたる3,000万円です。しかし、現金は2,000万円しかないため、次男に遺産を与えるためには土地付き建物を売却しなければなりません。

長男は自分たちが住む家を処分するわけにはいかないため、次男と争うことになってしまいます。

このように、相続争いは多額の財産を持つ家庭だけでなく、マイホームがある一般的な家庭でも起こり得るのです

2-1-2.想定よりも遺産が少ない

相続争いを避けるために、事前に兄弟どうしでいくら相続するかを決めておくケースがあります。

このように事前に準備していたとしても、親が亡くなったときに想定より遺産が少なくなっていれば、相続争いに発展する可能性があります。

たとえば、地価が下落すれば不動産の評価額は下がります。また、医療費や介護費用などの支出で財産が急激に減ることもあります。

2-1-3.被相続人に借金がある

被相続人の借金は、その他の財産と同様に相続人が相続します。つまり、相続人が返済の義務を引き継ぐことになります。

被相続人に多額の借金があると、返済の負担をめぐってトラブルが起こりやすくなります。

2-2.遺産の取り分をめぐる問題

遺産そのものの問題のほか、兄弟の間で遺産の取り分が公平でない場合にもトラブルが起こりやすくなります。

2-2-1.遺言書の内容が偏っている

被相続人が遺言書で遺産の分け方を指定していれば、基本的にはその内容に従います。

しかし、「長男に全財産を相続させる」といったように、兄弟の間で遺産の取り分が極端に異なる内容であれば、相続争いに発展する可能性が高くなります。

相続人には最低限相続できる割合として遺留分が認められています。遺言によって遺留分が侵害された(遺留分に相当する遺産を相続できなかった)相続人は、遺産を多くもらった人に金銭を請求することができます。

この手続きを遺留分侵害額請求といいますが、当事者どうしで交渉するためトラブルが起こりやすくなります。

2-2-2.被相続人の介護をしていた人が寄与分を主張した

被相続人の介護や事業の手伝いをしていた相続人は、寄与分を主張することができます。寄与分が認められると、その人の相続分を上乗せすることができます。

ある相続人が遺産分割協議で寄与分を主張すると、他の相続人の取り分が少なくなるため、兄弟どうしの相続争いに発展する可能性があります。

2-2-3.被相続人から多額の支援(特別受益)を受けた人がいる

海外留学やマイホーム購入などで被相続人から多額の資金援助を受けた相続人がいる場合は、特別受益があったとして、その人の相続分は減らされる場合があります。

通常は、他の相続人が遺産分割協議の場で、特定の相続人に特別受益があったことを主張します。多額の支援を受けていた人がそのことを認めない場合は、相続争いが起こります。

2-3.相続人をめぐる問題

家族関係が複雑な場合や、兄弟どうしのコミュニケーションが円滑でない場合にも、相続トラブルが起こりやすくなります。

2-3-1.思いもよらない兄弟が現れた

遺産相続では、次のような事実により思いもよらない兄弟が現れるケースがあります。

  • 被相続人に愛人がいて非嫡出子(隠し子)を認知していた
  • 離婚した前の妻との間に生まれた子供がいた
  • 実子に内緒で養子縁組をしていた

認知された非嫡出子や前妻の子供、養子はすべて実の子と同じ立場で相続人になります

このようなときは、面識がない人どうしで遺産相続について話し合わなければなりません。

思いもよらない兄弟が現れると、他の相続人の取り分が少なくなるためトラブルは避けられません

2-3-2.兄弟どうしで話し合いができていない

兄弟どうしの相続であっても、話し合いによる意思疎通がうまくいかなければ相続争いに発展します。

被相続人の配偶者と兄弟が共同で相続する場合も同様です。

遺産分割協議で遺産の分配を決めるときや相続の手続きを進めるときは、多くの場合で誰か一人が主導権を握ります。

このとき、相続人どうしの意思疎通が不十分であれば、他の相続人は次のような気持ちになります。

  • 遺産が公平に分けられているかどうかがわからない。
  • 相続の手続きがどの程度進んでいるかがわからず、相続税を払うべきかどうかも知らされない。

ひとたび疑心暗鬼に陥ってしまうと、兄弟どうしであっても意思疎通は困難になります。

2-3-3.兄弟の配偶者が口を出す

相続人でもないのに遺産相続に口出しする人がいれば、相続争いに発展します。

たとえば、兄弟の配偶者があれこれ口出しすれば、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。

3.亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース

続いて、兄弟で遺産相続するケースのうち、「亡くなった人の兄弟が遺産を相続するケース」について確認します。

亡くなった被相続人に子がなく両親も死亡している場合は、兄弟姉妹が遺産を相続します

ただし、被相続人に配偶者がいるかいないかによって、相続人の範囲と相続分は異なります。

3-1.亡くなった人に配偶者がいない場合

被相続人に配偶者がいない場合、つまり、続柄の近い家族が兄弟姉妹のみという場合は、兄弟姉妹が遺産を相続します。

残された兄弟姉妹が1人の場合は、その人が相続財産をすべて相続します。兄弟姉妹が2人以上いる場合は、人数で割ったものが相続分となります。

このようなケースでは、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性があります。

3-2.亡くなった人に配偶者がいる場合

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が遺産を相続します

このとき、配偶者は相続財産の4分の3を相続し、兄弟姉妹は残りの4分の1を相続します。兄弟姉妹が2人以上いる場合は、4分の1を人数で割ったものが相続分となります。

このようなケースでは、配偶者は義理の兄弟姉妹と遺産相続について話し合うことになります。兄弟どうしで相続する場合に比べて話し合いが難しくなり、トラブルが起こる可能性は高くなります

3-3.相続人になるはずの兄弟姉妹がすでに死亡している場合

相続人になるはずの兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その子、つまり甥や姪が代襲相続することになります。

代襲相続については、下記の記事で詳しく解説しています。

代襲相続とは?死亡した相続人の代わりに相続できる人について解説

4.亡くなった人の兄弟が遺産を相続するときの注意点

亡くなった人の兄弟が遺産相続をする場合は、子が相続する場合に比べて注意すべき事項が多くなります。

この章では、亡くなった人の兄弟が遺産を相続するときの注意点をご紹介します。

4-1.亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分がない

相続人には最低限相続できる割合として遺留分が認められていますが、亡くなった被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません

したがって、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合では、被相続人が遺言で指定すれば遺産はすべて配偶者のものとなります。

兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者に遺留分侵害額請求をすることはできません。

兄弟姉妹に遺留分がないことには、主に二つの理由があります。

4-1-1.理由(1)兄弟姉妹は相続の順位が低い

兄弟姉妹の相続の順位は「第三順位」と最も低い位置にあります。

相続は次の世代へ遺産を承継することを前提としているため、兄弟姉妹への承継は優先順位が低く、遺留分も認められないと考えられています。

4-1-2.理由(2)兄弟姉妹は生計が別々であることが多い

兄弟姉妹はお互いに年齢が近く、それぞれ独立して生計を立てていることが一般的です。

そのため、兄弟姉妹が遺産を相続できなくても生活に困るケースは少なく、遺留分で最低限の相続分を保証する必要はないと考えられています。

4-2.代襲相続は一代のみ(甥・姪まで)

被相続人より先に相続人が亡くなった場合は、亡くなった相続人の子が代襲相続します。

親が亡くなって相続人である子もすでに亡くなっている場合は、孫が代襲相続します。もし、孫も亡くなっている場合は曾孫が相続するというように、再代襲もできます。

しかし、兄弟姉妹が相続人になる場合の代襲相続は一代のみであり、再代襲はできません

相続人となるはずの兄弟姉妹がすでに亡くなっていて、代襲相続するはずの甥・姪もすでに亡くなっている場合では、死亡した甥・姪の子は代襲相続ができません。

4-3.相続税が2割加算される

被相続人の兄弟姉妹が遺産を相続したときは、相続税が2割加算されます。代襲相続で甥・姪が遺産を相続したときも同様です。

被相続人の遺産は配偶者と子が相続することが多く、兄弟姉妹が相続することは偶然性が高いと考えられます。一定範囲以外の相続人の相続税を加算することで、税負担の調整が図られています。

4-4.相続手続きに必要な戸籍謄本が多くなる

相続の手続きでは、被相続人と相続人の関係を確認するために、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要になります。

兄弟姉妹が相続人になる場合は、さらに被相続人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も必要になります。両親の戸籍謄本では、父母が異なる兄弟姉妹(半血兄弟)がいないかどうかを確認します。

戸籍謄本は制度の改正によって何度か作りかえられていて、出生から死亡までの戸籍謄本は何通かに分かれます。兄弟姉妹が相続人になる場合では、必要な戸籍謄本が数十通にのぼることもあります

4-5.兄弟が全員相続放棄すると相続人がいなくなる

兄弟姉妹が相続人になる場合で相続人の全員が相続放棄すれば、遺産を相続する人はいなくなります。相続放棄では代襲相続ができないため、甥・姪が相続することはできません。

相続人がいない場合は、相続財産清算人のもとで遺産を処分します。被相続人に借金があれば遺産から返済され、余った遺産があれば国に納められます。

相続人がいない場合の遺産相続については、下記の記事をご覧ください。
法定相続人がいない場合(相続人不存在)の手続きは?遺産が国に帰属することも!

5.亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース

次に、兄弟で遺産相続するケースのうち、「亡くなった親の遺産を兄弟で相続するケース」について確認します。

亡くなった親の遺産相続では、被相続人の配偶者、つまりもう一方の親が健在であるかどうかによって、相続人の範囲と相続分は異なります。

5-1.もう一方の親がすでに死亡している場合

もう一方の親(被相続人の配偶者)がすでに死亡している場合は、子が遺産を相続します

子が2人以上いる場合は、兄弟どうしで遺産を分け合います。相続分は相続財産を人数で割ったものとなります。

このようなケースでも、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性があります。間に入って仲を取り持つ親がいないため、相続争いが泥沼化する危険性もあります

5-2.もう一方の親が健在の場合

もう一方の親(被相続人の配偶者)が健在の場合は、配偶者と子が遺産を相続します。

この場合は、配偶者が相続財産の2分の1を相続し、子は残りの2分の1を相続します。子が2人以上いる場合は2分の1を人数で割ったものが相続分となります。

このようなケースでも、兄弟どうしでトラブルが起こる可能性がありますが、親が間に入って仲を取り持てば解決に向かうこともあります。

6.不動産を兄弟で分け合う方法

遺産に不動産があると、公平に分けることができないためトラブルが起こりやすくなります。

兄弟どうしで不動産を分け合うためには、遺産の分け方を工夫する必要があります。

この章では、不動産を兄弟で分け合う方法として、次の4つの分割方法をご紹介します。

  • 換価分割
  • 代償分割
  • 現物分割
  • 共有分割

6-1.換価分割

換価分割とは、不動産など現物の資産を換金して、その現金を相続人どうしで分け合う遺産相続の方法です。

相続した不動産を自宅や事業の用途で利用していない場合に適しています。

換価分割とは?遺産分割協議書の書き方や譲渡所得税等の税務

6-1-1.換価分割のメリット

換価分割のメリットは、兄弟どうしで遺産を公平に分け合えることです。分割が難しい不動産も、売却して現金に換えれば公平に分け合うことができます。

また、相続した不動産を利用する見込みがない場合は、売却によって固定資産税の負担や管理の手間をなくすことができます。

6-1-2.換価分割のデメリット

換価分割のデメリットは、不動産を希望する価格で売れない可能性があることです。

このほか、不動産の売却益には譲渡所得税がかかることにも注意が必要です。換価分割をしたものの、仲介手数料や譲渡所得税がかかったことで、想定以上に財産が減ってしまったというケースもあります。

6-2.代償分割

代償分割とは、相続人のうち1人が不動産など現物の資産を相続して、他の相続人に代償金を支払う遺産相続の方法です。

相続した不動産を自宅や事業の用途で利用している場合や、不動産を相続する人が十分な資金を準備できている場合に適した方法です。

代償分割とは?遺産を分割する方法や相続税の課税価格の計算方法

6-2-1.代償分割のメリット

代償分割のメリットは、不動産を手放すことなく兄弟どうしで公平に遺産を分け合えることです。

また、自宅や農地を特定の相続人が一人で相続すると、小規模宅地等の特例や農地の納税猶予を受けられるため、相続税を引き下げる効果もあります。

6-2-2.代償分割のデメリット

代償分割のデメリットは、不動産を相続する人が代償金を支払うために十分な資金を準備しなければならないことです。資金がなければ自身の財産を売却して代償金にすることもできますが、その場合は売却益に譲渡所得税が課税されます。

このほか、代償金の額を決めるときに、不動産の価格をどのように評価するかでもめることも多いです。代償金を支払う人は評価額を低く見積もりたいと考え、代償金を受け取る人は評価額を高く見積もりたいと考えるため、合意が難しくなります。

6-3.現物分割

現物分割とは、現物の資産を換金せずそのまま相続人どうしで分け合う遺産相続の方法です。

被相続人が複数の不動産を所有していた場合のほか、分割しても利用できるだけの広大な土地がある場合に適した方法です。

相続発生後でもできる!土地の分筆で相続税対策を行う2つの具体的な方法

6-3-1.現物分割のメリット

現物分割のメリットは、他の分割方法に比べて相続の手続きが簡単にできることです。

被相続人が複数の不動産を所有していた場合は、それぞれの物件について相続人が登記すれば手続きは終了します。

6-3-2.現物分割のデメリット

現物分割のデメリットは、現物の資産を公平に分割しづらいことです。

広大な土地であれば分筆して兄弟で分け合うことができますが、区画ごとに条件が異なれば必ずしも公平に分けられるとは限りません。分筆した土地が極端に狭くなると、利用も処分も困難になります。

6-4.共有分割

共有分割とは、現物の資産を分割せず相続人ごとの持分を定める遺産相続の方法です。

兄弟どうしで不動産を分け合うことができない場合は、共有分割を行うことがあります。

6-4-1.共有分割のメリット

共有分割のメリットは、どのような財産でも公平に分けられる点です。

相続人ごとの所有割合を数値で決めればよいので、不動産のように分割することが難しい財産でも公平に分けることができます。

また、相続した不動産の売却を予定している場合は、複数の相続人で共有することで税制上有利になります

被相続人が亡くなって空き家になった不動産を売却したときは、一定の要件を満たせば、所得税の計算上売却益から3,000万円を控除することができます。

この3,000万円の特別控除は、物件ごとではなく所有者ごとに適用できるため、兄弟2人で共有していた場合は、売却益から最大6,000万円を控除することができます。
(なお、令和6年1月1日以後の譲渡では、共有する相続人が3人以上いる場合、1人あたりの特別控除額は2,000万円となります。) 

空き家特例(3,000万円特別控除)と小規模宅地等の特例は併用できる

6-4-2.共有分割のデメリット

共有分割のデメリットは、不動産の処分や宅地造成、建物の建築に共有者全員の同意が必要であることです。

兄弟どうしで話し合いができるうちは問題になりにくいですが、兄弟の誰かが亡くなるとその持分は子に引き継がれます。やがて兄弟が全員亡くなれば、兄弟の子孫が全員で共有することになります。

このようにお互いの関係が希薄な共有者が増えると、不動産の処分について話し合うことが極めて困難になります。

7.兄弟の相続争いを避けるための対策とは?

兄弟どうしでひとたび相続争いが起こると、関係が悪化して泥沼化することもあります。家族にとって望ましいことではなく、できる限りトラブルは避けたいものです。

この章では、兄弟どうしで相続する場合や配偶者と兄弟で相続する場合に、相続争いを避けるための対策をご紹介します。

7-1.生前に法定相続人・財産を明確にする

遺産相続の前提として、誰が法定相続人になるのか、財産はいくらあるのかを生前に明確にしておくとよいでしょう。

財産の内容は財産目録として残しておくと、遺産分割協議やその後の手続きを進めやすくなります。

7-2.預金の使途をメモしておく

親や兄弟の預金口座から生活費や医療費、介護費用を引き出す場合は、その使途をメモに残しておくことをおすすめします。領収書を残しておくとなおよいでしょう。

これは、相続が起こったときに、被相続人の世話をしていた家族が財産を使い込んでいたと疑われる事例が多いからです。

7-3.遺言書を作成する

遺言書があれば、原則としてその内容のとおりに遺産を相続することになり、兄弟の相続争いを避けることができます。

遺言書は資産家だけが書くものという印象を持つ人も多いですが、資産家でなくても遺言書を作成しておくことをおすすめします。

特に、子供がいない夫婦の場合は、必ず遺言書を作成しておきましょう

遺言書がなければ、夫の死亡後に、妻が義理の兄弟と遺産相続について話し合わなければなりません。妻に余計な負担をかけずに確実に財産を継がせたいのであれば、できるだけ早く遺言書を作成するようにしましょう。

兄弟どうしで相続することになる場合でも、マイホームがあれば遺言書を作成しておくとよいでしょう。

遺言書については、下記の記事で詳しく解説しています。
遺言書にはどんな効力がある?効力を持たせるための注意点も解説

7-4.生命保険に加入する

兄弟どうしの相続争いを避けるための対策としては、生命保険への加入も有効です。

自宅以外に目立った資産がない場合ではトラブルが起こりやすくなりますが、生命保険に加入することで遺産を分け合うための資金を用意することができます。

下の図の例では、長男が不動産を相続する代わりに長男から次男に現金を渡す代償分割を行っています。長男がこの現金を持っていればよいですが、持っていない場合は長男を受取人にした生命保険を活用して準備します。

被相続人が死亡すれば長男に保険金が支払われ、次男に渡す現金に充てることができます。

8.遺産を相続させたくない・絶縁した兄弟がいる場合の対処法

親子や兄弟だからといってみんな仲がよいとは限りません。中には、遺産を相続させたくない事情があったり、すでに絶縁したりしていることもあります。

しかし、夫婦の離婚とは異なり、法的に親子や兄弟の縁を切ることはできません

それでも遺産を相続させたくない場合は、遺言の作成や相続廃除によって相続させないことができます。

8-1.遺言で相続させない(被相続人の兄弟が相続する場合)

兄弟姉妹が相続人となる場合は、特定の人に遺産を相続させないことを遺言で指定します。

兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で指定すればそれだけで遺産を相続させないことができます。

8-2.相続廃除をする(親の遺産を兄弟で相続する場合)

親の遺産を兄弟で相続することになる場合は、親が生前に相続廃除をします。

相続廃除では、一定の非行がある相続人に遺産を相続させないことができます。

一定の非行とは、被相続人を虐待・侮辱した場合のほか、被相続人の財産を勝手に処分したり多額の借金を負わせたりといった行為が該当します。

絶縁状態にあるとか、ただ気に入らないからといった理由だけでは、相続廃除は認められません。

相続廃除の手続きは、被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言書に相続廃除することを記載して遺言執行者が家庭裁判所に申し立てます。

相続廃除については、下記の記事もあわせてご覧ください。
相続廃除は相続させたくない相手に使える?相続欠格との違い

8-3.一定の非行があれば相続欠格となる

相続人となる人に重大な非行があった場合は、被相続人の意思にかかわらず相続権を失います。これを相続欠格といいます。

ここでいう重大な非行とは、被相続人を殺害したり、遺言書を破棄・改ざんしたりといった行為が該当します。

相続欠格については、下記の記事で詳しく解説しています。
相続欠格とは。相続人に重大な非行があると遺産を相続できない

9.絶縁した兄弟の連絡先が分からない場合はどうすればいい?

絶縁した兄弟であっても、法的には相続人であることには変わりありません。連絡が取れないからといって、その人を除いて遺産分割をすることはできません。

この章では、絶縁した兄弟の連絡先が分からない場合の対処法をご紹介します。

9-1.戸籍の附票で住所を調べる

連絡先が分からない相続人を捜すには、その人の本籍地の市区町村役場で戸籍の附票を取得します。

戸籍の附票にはその人の住民登録上の住所が記載されています。現住所が確認できれば、手紙を送るなどして連絡を取ることができます。

9-2.不在者財産管理人を選任する

絶縁した兄弟の連絡先が分からない状況でも、相続手続きは期限内にしなければなりません。

相続放棄は死亡から3か月以内、相続税の申告・納税は10か月以内が期限となっています。

これらの期限に間に合うように遺産分割をするためには、家庭裁判所に申し立てて不在者財産管理人を選任します。

不在者財産管理人は、行方不明になっている人の財産を代わりに管理します。遺産分割協議に加わるためには、別途家庭裁判所の許可が必要です(不在者財産管理人の権限外行為許可)。

不在者財産管理人の選任手続きについては、下記の記事をご覧ください。
不在者財産管理人とは?役割と選任申し立て手続きについて

9-3.失踪宣告を申し立てる

不在者財産管理人の選任は、絶縁した兄弟が生存していることを前提にした対処法です。

何年にもわたって連絡が取れていないときや災害に遭って生存の可能性が低い場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。失踪が宣告されると、法律上その人は死亡したことになります

失踪宣告の申し立て手続きなど詳しいことは、下記の記事をご覧ください。
失踪宣告の申立方法と流れを解説!相続や婚姻関係はどうなる?

失踪には、普通失踪特別失踪(危難失踪)があります。

9-3-1.普通失踪

普通失踪は、行方不明になって7年間生死が明らかでない場合に申し立てることができます。

普通失踪が宣告されると、生死が不明になってから7年後に死亡したことになります。

9-3-2.特別失踪(危難失踪)

特別失踪(危難失踪)は、戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇して、その危難がやんだ後1年間生死が明らかでない場合に申し立てることができます。

特別失踪が宣告されると、その危難がやんだときに死亡したことになります。

10.起きてしまった相続争いを解決する方法

いくら事前に対策をしていても、兄弟どうしの相続争いが起こってしまうことがあります。

起きてしまった相続争いを解決するにはどのような方法があるでしょうか。この章では解決方法を3つご紹介します。

10-1.代償分割で解決を図る

代償分割は、特定の相続人が多くの遺産を相続し、その代償として他の相続人に現金を支払う遺産相続の方法です。

代償分割をすると、相続した財産を手放すことなく兄弟どうしで公平に分け合うことができます。

代償分割をする場合は、その旨を遺産分割協議書に書く必要があります。文例としては次のようなものが考えられます。

「相続人鈴木一郎は、被相続人の自宅の土地建物をすべて相続する代わりに、相続人鈴木二郎に500万円の現金を支払うこととする。」

なお、本来の相続分を超えて代償金を受け取った場合は、贈与税の課税対象になるため注意が必要です。

代償分割については、下記の記事もご覧ください。
代償分割とは?遺産を分割する方法や相続税の課税価格の計算方法

10-2.相続分を譲渡する

相続分の譲渡は、相続した遺産ではなく、自身の相続分を他の相続人に譲り渡す方法です。

相続分を譲渡して相続争いから離れることで、解決を図ることができます。相続分は有償で譲渡することもでき、トラブルを避けて財産を受け取ることが可能になります。

相続分の譲渡について詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。相続放棄との違いについても解説しています。
相続分の譲渡で自分の相続分を人に譲る!目的・方法・注意点は?

10-3.遺留分を放棄する

遺留分は、被相続人の配偶者、子、親などが相続できる最低限の割合です。遺言書で特定の相続人に遺産をすべて相続させると書かれていても、他の相続人は遺留分に相当する遺産を受け取ることができます。

遺留分の放棄は、遺産を受け取る権利を放棄することでトラブルの解決を図る方法です。

相続争いが起こってから遺留分を放棄するのであれば、特に手続きは必要ありません。権利を主張しなければ放棄したことになります。(遺留分の放棄は生前にもできますが、家庭裁判所の許可が必要です。)

遺留分の放棄については、下記の記事で詳しく解説しています。
遺留分放棄は生前と相続発生後で手続き方法が異なる!遺留分放棄を理解しよう

なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹が相続人になっている場合はこの方法で解決を図ることができません。

11.遺産相続でもめたら専門の弁護士に相談を

兄弟どうしで起きてしまった相続争いが解決しない場合は、相続問題を専門にしている弁護士に相談しましょう。

第三者の専門家を話し合いに加えることで、お互いが冷静になって解決に向かうことが期待できます。

11-1.弁護士に相談するメリット

兄弟の間で遺産相続のトラブルが起こると、深刻になることが多いです。弁護士は兄弟の間に入って交渉を進めることができるため、精神的な負担は少なくなります。

また、遺産分割協議がまとまらずに家庭裁判所の調停や審判に移行する場合では、弁護士に手続きを任せることができます。

11-2.弁護士費用の相場

参考として、一般的な弁護士費用の内訳をご紹介します。

実際にはトラブルの程度や遺産の総額によって変動し、遺産総額が大きいと100万円単位の報酬がかかることもあります。

費用の内訳内容費用の相場
相談料相談にかかる費用30分5,000円から。初回無料の場合もあり。
着手金依頼に取りかかる際の費用20万円~30万円程度。相続財産により高額になる場合もあり。
報酬金依頼が成功したときに支払う費用依頼者が得た利益に対し所定の料率で計算。
実費必要書類の代行取得など必ず発生する費用1万円~5万円程度。
日当弁護士が手続きを行うときの出張費用往復2~4時間で3万円以上、4時間超で5万円以上。
手数料争いがない場合の事務手続きについて定められている費用業務ごとに異なるが相場は3万円~10万円。

詳しくは、下記の記事をご覧ください。
遺産相続の弁護士費用の相場!いつ誰が払う?払えない場合の対処法は?

12.まとめ

ここまで、遺産相続で兄弟がもめる原因と、相続争いを避ける方法をご紹介しました。

相続争いは、遺産を公平に分割することができない場合に起こります。財産が多い裕福な家庭よりは、自宅以外に目立った財産がないような一般家庭の方がより深刻になりがちです。

兄弟どうしで相続するときは、間に入って仲を取り持つ親がいないことから、相続争いが泥沼化する危険性があります。夫が死亡して残された妻が義理の兄弟と相続する場合も、間に入る夫がいないため話し合いは難しくなります。

兄弟の相続争いを避けるには、生前に遺言書を書いて、資金が必要であれば生命保険で準備するといった対策が必要です。

生前の相続対策は、相続問題に詳しい弁護士や税理士のアドバイスを受けて行うことをおすすめします

土地を換金したほうがよいかどうかのシミュレーションは、相続税に詳しい税理士にご相談ください。

相続税専門の税理士法人チェスターでは、相続税申告のほか、生前対策についてもご相談を承っております。
グループには不動産会社や司法書士法人もあり、土地の売却や分筆のお手伝いも承ります。

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相続税申告は相続専門の実績あるチェスターで安心。

税理士法人チェスターは相続に関する業務のみに特化している専門事務所であり、創業からこれまで培ってきた知見やノウハウがずっと引き継がれているため、難解な案件や評価が難しい税務論点にもしっかり対応致します。

初回面談から申告完了まで担当スタッフがお客様専任として対応しているので、やり取りもスムーズ。申告書の質の高さを常に追求しているからこそ実現できる税務調査率が0.6%であることも強みの一つです。

相続税申告実績は年間2,300件超、税理士の数は70名とトップクラスの実績を誇るチェスターの相続税申告を実感してください。

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